Petition update求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!ゲーム条例 法廷闘争(第一審、第6回審理)+住民訴訟(第2回審理)のレポート
きしもと みつひろJapan
Feb 19, 2022

キャンペーンに賛同いただきました皆様へ

お世話になっております。

 

2022年2月7日、高松地方裁判所において、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)違憲訴訟の第一審、第6回審理と、2回目のゲーム条例住民訴訟が執り行われました。前者では裁判を傍聴し、後者では当事者として参加しました。

今回は、テレビ朝日系ローカル局のKSB(瀬戸内海放送)が、この時事をニュース映像として報じました。

この時事を報じたKSBのニュース記事は こちら からご覧いただけます。

ゲーム条例違憲訴訟に関しては、今回の審理で、被告と原告の主張がほぼすべて揃いました。ただし、双方の主張は平行線をたどっています。

 

[ゲーム条例違憲訴訟、今回は香川県(被告側)のターン…しかし… ]

ゲーム条例違憲訴訟の被告側である香川県は、ゲーム条例は「一定の科学的根拠」に基づいて策定した旨を、今回の口頭弁論用の文書として追補、言及しています。しかし、原告側の弁護士である作花氏は、その科学的根拠と、被告側が追補した文書の内容について矛盾やおかしい点があることを指摘しています。それが何かを箇条書きで以下に示します。

 

< 1.ゲーム条例で規制するインターネットとスマートフォンの制限内容に矛盾がある >

ゲーム条例では、ビデオゲームのみならず、インターネットとスマートフォンの利用も規制の対象としています。

これは、ゲーム条例の素案が民間団体にスクープされた*1 結果、条例で規制する内容を慌ててビデオゲーム限定にした際、条例の内容を子細に検証しなかった香川県(議会)のずさんな仕事の結果が出ていることが原因と私は考えています。ゲーム条例では、22:00以降のスマートフォンの利用が禁止されていますが、当のゲーム条例の規制の対象は、あくまでも「ビデオゲームのみ」です。規制対象がずれているので、ゲーム条例の内容はこの点で矛盾を内包しているといえます。

 

< 2.コンピューターやスマートフォンの定義がおかしい >

さらにおかしい点は、ゲーム条例では、同一のアプリやサービスにもかかわらず、機能によってこれは規制の対象、あれは規制の対象ではない、と、条例の主要対象である子どもから見れば意味不明の内容で規制をかけていることです。例えば、LINEでは、グループチャットやトークルームでのコミュニケーションは「規制対象」としていますが、LINE電話を使ったコミュニケーションは「規制対象ではない」のです。Skypeも同様の扱い(文字ベースのものは規制、Skype電話は規制対象外)です。

このことから、実際は、香川県は、規制をかけたつもりがバックドアを作ってしまっています。「学校貸与の端末機でゲームを遊んでしまうから」と、学校のGIGAスクール端末でScratch(ソフトウェア開発ツール)の使用制限をされても、別の手段を探してゲームを遊ぶ目的を達成する今どきの子どもにとって、これほど「ザル」の法令では、法による規制の意味はないでしょう。

この事象が発生している原因はシンプルです。ゲーム条例が、コンピューターやスマートフォン、学習、といった要の用語の定義をずさんに行っているからです。この点は、パブリックコメントでの投稿でも、私を含めて「反対派の人」によって、苛烈なほど指摘がされていた点でもあります。

 

< 3.ゲーム行動症(ゲーム依存症/ゲーム障害)は病気ではない >

ここは住民訴訟と共通しています。

2022年1月から、ICD-11(国際疾病分類および関連健康問題 第11版)が正式版として発効されました。これには、ゲーム条例が「科学的根拠」のよりどころとしている「ゲーム行動症」が収載されています。しかし、ICD-11正式版におけるゲーム行動症の扱いは「類似例が各地で報告されているので問題事象として登録した」です。「疾病(病気)としての登録」ではありません

そもそも、ICDは「この世のあらゆる疾病を子細に一覧化したデータベース」ではありません。

さて、ゲーム条例では、ゲーム行動症を「ネット・ゲーム依存症」なる名前で呼称し、かつ、病気としてのゲーム行動症への対策を法令で定めることを役割としています。しかし、そのゲーム行動症がICD-11(≒WHO)では病気として扱われていません

現在、ICD-11の正式発効を受けて、WHO加盟各国はそのローカライズを行っています。日本もWHOに加盟しているので、日本国の医療行政を所轄する厚生労働省は、ゲーム行動症を含めてICD-11の内容を検証し、実際の医療現場で運用できるようにローカライズを行います。藤末健三参議が、この点について厚生労働省の担当者と打ち合わせをしたときに確認できたことは、下記のとおりです。

 

- 厚生労働省は、今後、現在入手可能な情報を用いて、これまで作業を行ってきているものとの比較検証等、告示改正に向けて必要な作業を行います。過去の例で行くと今後4~5年はICD-11への対応を行うために時間が必要なようです。検証を通じて抽出される課題を整理し、来年度前半には審議会でスケジュールや告示改正に向けた作業についてご議論していく計画です -*2

 

つまり厚生労働省は、ゲーム行動症を疾病として定義し、検討を行うことはない*2 のです。このことは、香川県にとっては衝撃的な事実といえます。ゲーム条例を支える最重要の柱としていたものが「存在しない」ことを意味するからです。加えて、「ネット・ゲーム依存症」なるものは病気でもないうえに、医学的根拠がないこともここで分かります。

また、精神疾患の研究を行っている国内のまじめな学者も「WHO が ICD-11 でゲーム行動症を定義したのは事実だが、少なくとも、香川県の条例にある『ビデオゲームは平日なら60分まで』という上限設定に根拠を与えるものでないのは確かだと思う」と言い切っています *3。

ちなみに、「ゲーム行動症を病気として定義するには、現時点では根拠薄弱な状態である」ことは、ICD-11ドラフト版作成時の初期段階から、世界中の多くの学者、医療関係者から厳しく指摘されています。

 

以上の事実を踏まえて、ゲーム条例住民訴訟では、以下の点を追加して被告側に訴求しています。

 

< 4.法令として成立しないものを法令と定めたうえに、訴訟をもってそれを擁護するのは県税の無駄遣い >

ゲーム条例のように「市民の権利を規制する類の条例(これは『規制条例』と呼ばれます)」には、規制の理由を理論的に説明できる、精緻で信頼性の高い科学的根拠が必要」です。これは、作花弁護士に教えていただいたことではありますが、その引用元は、地方自治体の職員が条例案を成文化する際に「守るべき事柄」を記載した教本*4 の内容です。

ゲーム条例はICD-11を根拠としていますが、先述したとおり、そのICD-11は根拠になっていません。ICD-11においても、ゲーム行動症を病気と定義するために必要な、精緻で信頼性の高い科学的根拠が存在しないからです。その性質上、ゲーム条例は規制条例に属しますが、規制の根拠となる「精緻で信頼性の高い科学的根拠が存在しない」ため、論理的には条例として成立できないことになります。条例として成立もできない法令を「正当な法令である」として、(過剰に)県税を投入し、訴訟を通して擁護している香川県は、貴重な県税の使い道を誤っている、もしくは、無駄遣いをしている、とみなされても仕方ありません。

そのようにみなして、ゲーム条例意見訴訟の関連費用を返せと訴えているのが、ゲーム条例住民訴訟の原告です。

 

次回のゲーム条例違憲訴訟の審理は、2022年5月16日、住民訴訟の審理は、2022年4月8日に開かれる予定です。可能でございましたら、ぜひ、裁判の傍聴に訪れていただきたく存じます。

 

[ 関連時事 ]

この裁判近辺で起こった、関連時事を合わせて紹介させていただきます。

 

< 1.経済産業省とゲーム業界団体によるゲーム行動症の調査が実施中 >

議員ブログによれば、ゲーム行動症に関する国レベルの学術調査が、経済産業省とビデオゲーム業界の4団体の協業で行われているとのことです。こちらは、しっかりとした科学的、医学的な調査を行っています。COVID-19の関係で調査の進行に遅延が発生していますが、その結果は2022年第3四半期頃にまとまる見込みです。続報を待ちましょう。

 

< 2.第3回ゲーム行動症勉強会が執り行われる >

2月15日、東京都内にある参議院会館にて、山田太郎参議主催のゲーム行動症勉強会が執り行われました。

この勉強会では、講義の後、この勉強会に参加した1人である赤松氏は厚労省の担当者に質問し、以下の回答が得られたことをSNSで報告しています *5。

  • 現時点では、ゲーム行動症は(WHOと同じく)病気や疾病ではないと捉えている
  • 差別的な意味合いを含む嗜癖(Addiction)という単語の取扱いは検討を要する

分野を問わず、専門領域では特に用語の定義は厳密に行わなければなりません業務に支障をきたすからです。この勉強会では、その意味で、ゲーム行動症の定義に関する重要な内容を厚労省としてコメントしたことを意味します。もちろん、ゲーム行動症に苛まれている当事者のことを考えると、定義はできるだけ早く行ってほしいものです。

 

< 3.厚労省主催『ゲーム依存症対策関係者連絡会議』、事実上頓挫か >

厚生労働省自身も、識者や専門医を招聘して、ゲーム行動症対策を推進する会合を執り行って「いました」。しかし、藤末健三氏によると、次回の開催日程が未定の状態になっているとのことです。事実上、頓挫しているかもしれません。

原因は、この会合に「専門医」として招聘された久里浜医療センター院長、樋口進氏です。彼が供出した関連資料の医学的、科学的な信頼性に疑問を抱く関係者が多かったことから、建設的な議論を進めようにも進められなくなってしまったようです。

第2回会合の議事録は こちら から閲覧できます。私も閲覧しましたが、その内容はグダグダである感想を抱きました。

 

< 4.香川県、ネット・ゲーム依存対策でさらに予算と事業規模を拡張 >

当の香川県は、2022年会計年度の予算案を説明する中で、ネット・ゲーム依存対策として約1,100万円を割り当て(前年会計年度から120万円増額)、新しい関連事業として「オフラインキャンプの試験的な実施」を計画していることを挙げました。

オフラインキャンプは、ゲーム条例の趣旨にのっとったものと考えれば自然と想起されるものではあります。しかし、「ネットより楽しいものがアウトドアとか である、というのを体験していただいて」という担当者のコメントからは、ビデオゲームをはじめとする個人向けの娯楽用ICTサービスに対する蔑視や差別思想を垣間見ることができます。このような方針をちらつかせてオフラインキャンプを行うことは、かえって、ゲーム行動症に苛まれる子どもが抱えている悩みの原因や、その悩みを生んでいる背景を見えにくくさせる恐れがあります。しかしながら、何にせよ、このオフラインキャンプの検証結果に注目する価値はあります。県税を投入して行うものなのですから。

また、「インターネットやゲームへの依存状態(=ネット・ゲーム依存症、という病気)」に陥ることを未然に防ぐことを目的とした、小・中・高校生向けの学習シート(入手先は こちら)の作成と頒布や県民向け啓発資料の頒布を再度行うことも公表されました。ちなみに、これらの啓発文書は、質の低いデマ同然の医学的根拠を「ゲーム行動症の予防対策やその理由」として堂々と掲載したいわくつきの代物*6です。オフラインキャンプに注目が集まりがちですが、こちらの学習シートの内容にも注目が必要です。

実は、この類の啓発資料は、正しく作成すれば、ICTとの望ましい付き合い方とゲーム行動症対策とは、内容が完全に切り離されたものでなければなりません*7。そうなっていなかった場合は、香川県(教育委員会)は、この2年間さんざん指摘された、誤ったゲーム行動症対策を是正する気がないと判定してよいからです。ちなみに、信頼性の高い医学的根拠に基づくと、依存症の予防はできません。

詳しい内容は、KSB社による こちら のニュース報道から参照いただけます。

 

そして、ゲーム条例は2年で見直すこととされています。しかし、香川県は、見直し含む抜本的な内容の改定をする気は一切ない模様です。内容の見直しは、ゲーム条例の附則にも書いている*8 ので、県民に約束していることともいえます。それをしないのですから、香川県は「県民をコケにしている」といえなくもありません。

 

[ さいごに ]

以前のお知らせ でも示しましたが、ゲーム条例は、もはや香川県限定の問題ではありません。このことから、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らとゲーム条例の問題点について話し合うことをお勧めいたします。もし、可能であれば、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

主催者 きしもと  みつひろ

 

[ 参考資料、引用元 ]
*1 コンテンツ文化研究会「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に関する資料の公開」(https://icc-japan.blogspot.com/2020/01/blog-post_10.html)

*2 藤末健三ブログ「香川県ゲーム規制条例などの根拠とされるWHOのICD-11が公表されました」(https://ameblo.jp/fujisue-kenzo/entry-12727190515.html)

*3 高尾啓三氏のTwitterの投稿に基づく(https://twitter.com/keizotakao/status/1493895008860405763)

*4 田中孝男『条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実』

*5 赤松健氏のTwitterの投稿に基づく(https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1493591406732263429)

*6 実際に香川県内の全戸に配布された、保護者向けネット・ゲーム依存予防啓発資料

(https://twitter.com/Attihelo37392M/status/1287078384233615360)

*7 井出草平「香川県ネット・ゲーム依存対策条例を考える 講演資料 2020年2月9日版」

*8 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 (https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/10293/0324gj24.pdf)

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