Petition update求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!「ゲーム条例違憲訴訟(第一審)」原告側の訴状を読もう
きしもと みつひろJapan
Dec 19, 2020

キャンペーンに賛同いただきました皆様へ

 

お世話になっております。

まず、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)の動静に関する重要なイベントの最新情報をお知らせいたします。

 

[ ゲーム条例違憲訴訟の第一回口頭弁論(第一審)の日程が決定 ]


これは、2020年12月22日、11:30から、高松地方裁判所にて行われます。当該裁判の傍聴は、抽選で権利を得た人限定となっています。この抽選券は10:45から11:00まで、高松地方裁判所1F玄関前で配布されます。

ちなみに、原告が高松地方裁判所に持ち込んだ訴状ですが、現在、公開を一時的に停止しています。

今回は、入手した訴状の概要について、簡単に要約(A4版文書約130ページを約5ページに圧縮)の上解説いたします。

個人的には、この裁判の注目点は、ゲーム条例の違憲性を訴求する、原告の論旨展開の内容と捉えています。裁判における原告や被告の論旨展開は、一定のシナリオに沿って行われることが殆どです。このことから、訴状から読み取れる論旨展開の理解は重要と考えます。本文書が、原告の論旨展開を理解する一助になれば幸いです。

 

[ ゲーム条例を違法とする根拠は何か ]

A.日本国憲法第31条(法律で定める手続きは適正でなければならないこと、法律で定められた実体規定も適正でなければならないことの規定)

ゲーム条例のコンセプト、用語の定義、記載されている規制の対象範囲、そのすべてが法令として定めるものとして、全くもって明確、かつ、明瞭なものではありません。

具体的には?

1.ゲーム症の扱い方や定義が事実と異なる

WHOは、2022年1月から、ゲーム症を「疾病分類データベース」の項目に正式に加えると決めてはいますが、疾病とは正式に認定していません。しかし、ゲーム条例では「2019年5月からWHOが正式にゲーム症を疾病と認定した」と明記しています(国内マスメディアの報道もこれと同じ内容です…)。仮にこれが正しいとみなしても、インターネット依存症が対象外なので、どのみち、ゲーム条例にいう「ネット・ゲーム依存症」に関する記載事項とに齟齬が生じる結果は回避不可能です。

2.科学的根拠に基づかない、かつ、曖昧過ぎる内容

ゲーム条例の象徴、第18条2項「ビデオゲームだけ時間制限」は、国ですら科学的根拠を把握していない*1 にもかかわらず、それがあたかも解決策であるかのように規定しています。

よって、ネット・ゲーム依存症が国内外で社会問題となっている(ゲーム条例前文)、愛着が安定し、子どもの安心感や自己肯定感を高めることが、ネット・ゲーム依存症対策について重要(ゲーム条例前文)、社会全体で子どもがその成長段階において何事にも積極的にチャレンジし、活動の範囲を広げることも、ネット・ゲーム依存症対策について重要(ゲーム条例前文)などの「それらしい」根拠も、当然不明瞭です。該当する記載は、すべて、科学的根拠に基づかないうえ、明確な数字や範囲の規定もない曖昧なものばかりだからです。

3.科学的根拠に基づかない、かつ、曖昧すぎる用語の定義

3-1.ネット・ゲーム依存症

訴状では、ここに関する記載は厳しいです。ゲーム症やインターネット依存症はあくまでも行動の傾向を示す「状態」をいうもの(だから行動嗜癖という医学的な分類名が付与されている)ですが、ゲーム条例では、それに対して「ネット・ゲーム依存症」という「疾病としての名称」を付与しています。つまり、「ネット・ゲーム依存症」は「香川県が勝手に作った疾病」です。実際、WHOは、ビデオゲームに対する行動嗜癖のみを「疾病分類データベースの項目」に正式に加えると決めただけで、インターネット依存症は対象外です。この事実があるため、ゲーム症とインターネット依存症を論じるなら、これを混在して捉えてはなりません。もちろん、疾病として扱うなど論外です。これは、国会答弁において、日本国政府としての見解として厚労省が述べている*1ことでもあります。

このことから、「賛同」意見がどれほど多くとも、質した内容の関係で、パブリックコメントの結果を論拠とすることは意味がありません。パブリックコメントでは「ネット・ゲーム依存に陥ること」とする「行動の状態」に対して意見の公募をしたからです。それに対して、ゲーム条例は「ネット・ゲームにのめりこむことにより、日常生活または社会的生活に支障が生じている」という「疾病」に対する法令です。つまり、対象が異なるものに対してパブリックコメントで諮っているのです。これでは、パブリックコメントを募った意義がありません。

もちろん、訴状では、パブリックコメントについては、応募「内容」の疑惑も追及しています。それについては、各種報道での指摘事項と同じです。

ちなみに、「ネット・ゲーム依存症」は「ネット・ゲームにのめりこむことにより、日常生活または社会的生活に支障が生じている状態」と定義されていますが、これはWHOが定義したゲーム症の判定基準の1つでしかありません。

また、実際のゲーム症は、最新の研究に基づくと、ビデオゲームの活動に携わるほんの一部にしか影響を与えない*2ので、香川県内に居住するすべての子どものいる家庭で規制を敷く根拠が成立していません。そして、ゲーム症やインターネット依存症は、ビデオゲームやインターネットなどのITサービスを介して顕現する事象であり、その原因は別にあります*2。「ネット・ゲーム依存症」を克服する手段としてのITサービスの時間制限に、科学的(医学的)な根拠がない理由はここに依ります。

3-2.ITサービスやIT機器

・コンピュータゲーム(オンラインゲーム、“射幸性の高い”ゲーム、eスポーツ向けの競技性が高いゲームを含む)

…ゲーム条例で散見されるこのビデオゲームの定義ですが、これだけでは全く具体的ではありません。当然ですが、これは、娯楽の枠を超えて多様な運用がされているビデオゲームの現状には即しません。

・インターネット

…ゲーム条例では、この言葉だけの記載なので、ゲームサービス限定なのかWebサービスすべてなのかなどの具体的なサービスの種類、用途の指定が不明です。

・スマートフォン等、パソコン等

…ゲーム条例では、この2つが完全に混同されて記載されています。IT業界標準の技術用語解釈から著しく逸脱していることは、言うまでもありません。

法令として規制するなら、対象となるITサービスに関して、その特徴をすべて具体的に挙げないといけませんが、そのすべてで「~等」とあいまいな表記(=不明確)にしています。これは、拡大解釈の危険性もありますが、それ以前に法令として不適格、と訴状では断じています。また、学習に必要な検索等を除く(ゲーム条例第18条2項)とされていますが、これにしても、訴状に言う学習の範囲を論じる前に、ビデオゲームのジャンルとしてエデュテイメントやシリアスゲームがあり、音を奏でる要素や絵画の要素を備えたビデオゲームがある以上、定義が不明確と言わざるを得ません。この点は、パブリックコメントで指摘がされている個所でもあります。

3-3.ゲーム条例の対象とする範囲

・18歳未満ですか?

…ゲーム条例2条7項「子どもは17歳以下と定義する」とあります。

・20歳未満ですか?

…ゲーム条例2条7項「保護者とは親権を行う者もしくは未成年後見人これらに準じるものと定義する」とありますが、民法でいう「親権の対象者もしくは後見の対象者」はいずれも「20歳未満」です。つまり、18歳と19歳が宙に浮いています。もちろん、18歳と19歳の年齢にある人の扱いについては、ゲーム条例に記載はありません。

・香川県民の成人全員ですか?

…ゲーム条例第6条「保護者は~自覚しなければならない」とあります。これは、ゲーム条例が、成人を対象としていることを意味します。

このように、ゲーム条例全般において、規制対象とする県民の層がバラバラになっています。法律の知識が乏しい一般市民の視点から見てもここは法令として不自然、というより、明らかに欠陥です。この点は、パブリックコメントで指摘がされている個所でもあります。

 

B.日本国憲法 (第94条、条例の属地規定)
C.地方自治法第 (第14条1項、条例の有効範囲の規定)

日本国政府は、ゲーム条例に似た法令を作成する予定はないことが国会答弁で明言しています*1。判例によると、国が作る法令で規律する明文の規定がなくても、法令全体から判断して、矛盾があると解釈される場合は、地方自治体が定める同様の法令は、国の作る同様の法令に違反します。この法的な解釈の前例があるので、ゲーム条例の内容は同法に反する、と、訴状では解釈しています。

また、ゲーム症やインターネット依存症の対策やその疾病への認定は、その影響を鑑みると本来国が行う業務であり、科学的根拠も得られていない状態にもかかわらず、地方自治体が科学的根拠に基づかない勝手な解釈をもって独断専行することは、国の当該業務に干渉します。家庭への教育方針に関しても、原則「親が決めること」で、国は「その外の範囲の分野で」政策としての教育内容を取り決める権限を持つ、と、判例にあります。つまり、香川県には子どもを直に教育する権限はありませんし、地方自治体の行う業務の管轄外ゆえに、それを定める法令を作成する権限もありません。

これは、ゲーム条例には「努力規定」と称して実際は「強制」する条項が多いですが、それらは法的には違法である上に無効であることを意味します。

 

D.日本国憲法(第13条、親権者が行使する教育権の保障、幸福追求権の保障)
E.日本国憲法(第21条、表現の自由の保障)
F.日本国憲法(第22条、職業を選択する自由の保障)
G.日本国憲法(第26条1項、教育を受ける権利の保障)
H.日本国憲法(第29条1項、財産権の保障)
I.児童の権利に関する条約(いわゆる“子どもの権利条約”12条…自己の意見を述べる権利の保障、13条…表現の自由の保障、第16条…尊厳の保障、第31条…余暇を得る権利の保障)

日本国では、日本国憲法が最高法規に位置していますが、国際条約は、その内容に影響を及ぼすことがあります。本訴訟で関係のある国際条約「児童の権利に関する条約」は、内戦などで政情が不安定な国での運用を考慮に入れて策定されている背景があることから、子どもの人権において最小限の保障を定める内容になっています。

一方、COVID-19の世界的な感染の拡大を受けてWHOが提案、展開した「Play At Homeキャンペーン」は、その時事に伴う、長期間にわたる家への拘束による子どもの精神的健康の損壊を抑えるため、オンラインゲームを含めたビデオゲームで家族や友人、ゲーム内フレンドと遊んで過ごそうという内容です。

それらを踏まえたうえで、訴状では、『あつまれ どうぶつの森』を介した、子ども同士や親子でのコミュニケーションが、子ども同士や親子間の幸福な時間を充足する貴重な環境を提供していること、また、『あつまれ どうぶつの森』を介して、国内外の名だたる美術館や博物館が所蔵品の貴重な画像を提供することによって、この作品をプレイすることを仮想的な展示会への誘いの(学びの)空間に変える効果があること、特に、後者は、大人にとっても教養を高める一つの手段となっている点を言及しています。

訴状ではこの記載が多いため、それだけ、ビデオゲームは子どもにとっても大人にとっても有害コンテンツではないことを言及していることを意味しています。

 

[ 原告の渉さんとその保護者は、ゲーム条例の施行後、どのような悪影響を実際に受けているか ]

特に、渉さんの職業選択の幅が狭くなったことは、日本国憲法第22条を侵害しています。また、科学的根拠に基づかない不当な法令によってITサービスの使用時間に制限が加わったことについては、日本国憲法第13条(親権者が行使する教育権の保障、幸福追求権の保障)、第21条と31条を侵害しています。そして、ゲームのプレイによって得られる幸福感の獲得を制限することは、訴訟を起こした時点における「渉さん」という17歳の「子ども」に関して、児童の権利に関する条約を侵害しています。

これによって、渉さんと彼の保護者は、多大な精神的苦痛を負ったと訴えています。

具体的には?

1.渉さんは、家計補助として行っているアルバイトの就業先から帰宅するまでの時刻が22:00を超えた場合、家人に安否を伝えることや、各種情報、例えば、安全確保などの経路選択のための情報の取得が(ほぼ)不可能になりました。東京都と比べると人口が約15分の1である香川県であっても、帰宅途中に犯罪などの危険に遭遇するリスクは存在しています。

2.渉さんは、家庭内ルールで取り決めたわけでもないのに、ITサービスの使用時間が制限されるようになりました。もちろん、その根拠は、医学的に正しいものではありません。渉さんでなくても不平を抱くことは、想像に難くありません。

3.職業選択の幅が狭まりました。訴状によると、渉さんは、将来、eスポーツ(関連)業界で職を得たいと望んでいますが、ビデオゲームを敵視するゲーム条例が施行された香川県では、それはほぼ叶わなくなりました。

4.渉さんは、eスポーツ大会に参加してよい成績を残したい希望を持っていましたが、そのために行うビデオゲームのプレイが、ゲーム条例の存在によって制限されるようになりました。

 

[ 香川県議会が提出した抗議書についての見解は ]

基本的な内容は、ゲーム条例に対する指摘と重複している個所が多いので省略しますが、その重複箇所以外では、以下の項目が、訴状における香川県議会が公表した「香川県弁護士会会長による抗議声明に対する見解」に対する内容となります。

1.資料の調査対象

見解で示された資料の調査対象は「小学生以上中学生以下の年齢層に属する香川県民」です。一方、ゲーム条例は18歳未満の香川県民が対象なので、対象の範囲の設定が不適切とみなされます。よって、添付資料はエビデンスとして使用できません。

2.資料の標本抽出の方針

「10~18歳の年齢層が多くなるよう意図的にフィルタリングしている」と、見解で示された資料で明言されています。標本抽出の方法が作為的とみなされるので、添付資料はエビデンスとして使用できません。

3.資料の調査結果

学業成績との比例的な関係性がスマートフォンの使用時間以外の項目で複数存在します。これは、見解で示された資料の調査結果では「IT機器の使用時間が長いことが学業成績低下をほう助する」と断言できないことと同義です。よって、添付資料はエビデンスとして使用できません。訴状は、ここについては厳しく指摘しています。

ちなみに、この指摘については、統計学的な観点でも「作為的に結果を見せている」と断言できるいわくつきの代物です。

 

[ 結論 ]

以上のことから、「違法の総合デパート」といっても過言ではないゲーム条例を放置することは、「立法の内容が国民に憲法上保証されている権利を違法に侵害することが明白な場合(以下省略)…それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってそれを怠る場合」、つまり、「立法不作為」に該当します。香川県議会は、これを解消するために、ゲーム条例を少なくとも廃止しなければなりません。

……

以上が、原告の訴状の要約と簡単な解説となります。原告の訴状で指摘している点は、パブリックコメントでの指摘と多くが重なります。
その指摘は、以下の2点に集約されます。


・ゲーム条例は、法的な観点で述べても、ほとんどすべての箇所で高品質なエビデンスの取得もないうえ、曖昧さや不明瞭さが散見される「欠陥品」である

・ビデオゲームを含めたITサービスの使用時間の取り決め方針については、家庭内で決めればよいことを、また、世界的に科学的根拠が確定してから国レベルで啓発すればよいことを、勝手な思い込みに従って、一介の地方自治体が独断専行の上あれこれと決めつけて家庭内教育の方針に介入すること自体が、法的な観点でも一般市民の視点でもおかしい

 

[ 個人的な見解 ]

日本における行政訴訟の勝率は「10%以下」と見聞しています。特に、本稿投稿時点では、ゲーム条例に関して「社会問題化したトラブル」の例がないので、ゲーム条例の問題点のアピールについては苦しい側面があります。その意味でも、現実的には、この訴訟で条例が撤回される可能性は極めて低いかもしれません。ただし、これはあくまでも傾向であり、今回のゲーム条例違憲訴訟がそれに当てはまるとは限りません。

というのも、県議会の見解を見るに、訴状の提示する見解と論旨に対して、香川県の提示するそれは、論理的に納得できる裏付けや確証が圧倒的にとりにくいものであると考えられるからです。そこをどのように論旨展開して被告である香川県に打撃を与えるのか、その手管とシナリオ次第では、原告勝訴の機会が全くないわけではありません。

なお、これをお読みの方が為政者や教育行政の関係者である場合は、特に、以下の点で留意が必要です。

文化的なコンテンツの表現内容を医学的な理由で制限するなら、ハーディングチェック*3 のように、科学的に検証を地味に重ねたうえで、子細を徹底的に数値化していなければなりません*4。特に、ビデオゲームは、コンピュータープログラムの1つであるため、子細にわたって徹底的に数値化した形で表現内容を提示しない限り、設計図であるプログラム仕様書に反映させることはできません。よって、このことはより重要な要素となります。拙稿となりますが、それを厳しく指摘した意見を書いているので、参考として こちら からぜひご高覧いただければ幸いです。 

また、ビデオゲームのクリエーターとして職を得ている方におかれましては、ゲーム条例のような「お気持ち法令」にひるんではいけないと考えます。ご存じとは思いますが、テクノロジーの使い方を決める主体はその使用者であり、それに基づいて使役されるだけの存在でしかないテクノロジーには一切罪はないからです。

 

最後になりましたが、引き続き、ご家族や知人らとゲーム条例の問題点について話し合っていただき、可能であれば、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いです。

ゲーム条例が改廃されない限り、本キャンペーンは終わりません。

 

何卒よろしくお願いいたします。

 

主催者 きしもと  みつひろ

 

[ 参考資料 ]

*1 2020年3月5日、参議院本会議における、音喜多駿氏による質問

 (https://www.youtube.com/watch?v=eG2qKYFLafg&feature=youtu.be)

*2 『ゲーム依存からわが子を守る本』花田照久、八木眞佐彦

*3  Wikipedia「ポケモンショック」

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF)

*4 日本民間放送連盟「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」

(https://www.j-ba.or.jp/category/broadcasting/jba101033)

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