Mise à jour sur la pétitionいのちのバトンがつなげられる日本の移植医療システム整備と普及を!【移植医療普及のための署名】肺移植の待機と患者家族の負担について
及川 幸子Japon
26 nov. 2023

皆様からの賛同と拡散、change.orgへのご支援のおかげで11月26日現在 19,956名からの賛同をいただいております。
このオンライン署名活動を応援していただき、本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願い致します。


今回のお知らせでは『肺移植の待機と患者家族の負担』についてご紹介します。
後半では薬剤師・医学生でもあるL-TRIP(間質性肺炎と肺移植を伝える会)名倉 慎吾さんに移植待機生活とご家族の負担についてお聞きしました。また、臓器移植の予後について医学生の視点で補足して下さっています。

 


■肺移植とは

「肺」は空気中から酸素を血液内に取り入れ、血液中の炭酸ガスを空気中に排泄します。肺の機能が低下すると血液中の酸素の量が減少し、さらに悪化すると炭酸ガスの量が増加してきます。最初は運動時の息切れを強く感じるようになり、やがては静かにしていても呼吸困難(息苦しさ)を覚える「呼吸不全」になります。

血液中の炭酸ガスの量が増加すると体内バランスが破綻し、生命維持が困難になります。酸素の不足に対しては酸素吸入である程度対処できますが、肺の機能が廃絶すると酸素を投与しても生命の維持ができなくなります。

肺移植はレシピエントの病気の肺を取り出し(片肺もしくは左右両方の肺)、ドナー(提供者)の方から提供された新しい肺を移植します。重い肺の病気を持つ患者さんに行われます。


◇臓器移植の対象となる病気の例

肺高血圧症/特発性間質性肺炎/その他の間質性肺炎/肺気腫/造血幹細胞移植後肺障害/その他の呼吸器疾患 など
※病状によっては肺移植の適応とならない場合があります。


肺移植には【脳死肺移植】のほか、健康なドナーから肺の一部の提供を受ける【生体肺移植】があります。

【脳死肺移植の場合】

両肺が提供された場合は片方ずつ2人の患者さんに移植する方法と、両肺を1人の患者さんに移植する方法があります。どちらの方法をとるかは移植される患者さんの病気によって決まります。

【生体肺移植の場合】

2人(移植を受ける方が小さなお子さんの場合は1人のこともあります)の健康なドナーから、それぞれ肺の一部分を提供いただいて移植します。「健康な人にメスを入れる」ことになる為、ドナーはあくまでも本人の自発的な「自由意思」である必要があり、報償を目的とするものや強制されるものであってはなりません。また、レシピエントの血族または配偶者に限られます。
生体肺移植の場合、一度切除した肺が元通りに大きくなることはありませんので、ドナーの肺活量は生涯にわたって低下したままになります。
これは日常生活に支障を及ぼすものではありませんが、ドナー手術にもリスクや合併症が起こることがあるためドナーになる方の十分な理解と同意が必要です。他にも医学面・環境面など適応基準が定められています。生体肺移植で提供される肺の量は少ないため、患者さんと提供者の体格の違いなどの問題から、これを行える場合はかなり限定されます。

参考:日本移植学会HP 臓器移植Q&A 肺 移植について 、日本移植学会 ファクトブック2022 

 

生体移植についてはまた改めてお伝えしたいと思います。

 

 

■肺移植患者さんの移植待機生活とご家族の負担

『L-TRIP(間質性肺炎と肺移植を伝える会)』 の名倉慎吾さんにそのご経験と活動を通じて集められた複数の患者さんやご家族の思いについて聞かせて下さいました。

 

Q:肺移植の待機中、患者さんとご家族にはどのような負担がありますか?
A:大きく2つの負担があります。
1つが『在宅酸素(HOT)の治療に関する補助』、2つは『感染症に対する厳重な警戒(特に冬)』です。

 

<在宅酸素療法(以下HOT)とは>
血液中の酸素が不足している方が、自宅など病院以外の場所で、不足している酸素を吸入する治療法で、酸素供給機器(酸素濃縮装置、酸素ボンベ、液化酸素装置)を使用して行います。

参考:NPO法人 日本呼吸器障害者情報センターHP


◇HOTの治療に関する補助の問題

肺移植が必要になる疾患では呼吸状態が悪い患者さんが多く、日常動作酸素によるSpO2(酸素飽和度:低下している場合は低酸素状態にあると考えられます)の低下に家族は敏感になります。
また、実際にはHOTによる呼吸補助が必要になることがほとんどです。

  • 重量のある酸素ボンベを患者本人の移動とともに運搬すること
  • 火気を避けること
  • 吸入量が増えたときのCO2ナルコーシス(酸素療法の合併症の1つ)の危険を理解して見守ること

    などが必要となります。

費用面ではサポートが用意されています。HOTは健康保険の対象になるため、機材のリース、ボンベの交換などを合計し、3割負担の場合は1ヶ月20,000円強程度の負担になります。他の治療と合わせ、高額療養費制度の適応を受けることも可能です。また、在宅酸素療法を受けていると身体障害者3級の認定を受けられることが多いです。身体障害者認定の程度によっては、重度心身障害者医療費助成制度が適応され、医療費負担がさらに減ります(自治体により助成基準が異なります)。
しかし、常時の見守りが必要な点については支援体制がありません。

 

◇感染症に対する厳重な警戒(特に冬)とは

肺は外界と接している臓器であり、無事移植にたどり着くためには、感染等をきっかけとした「急性増悪」を防ぐことが大切です。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザはもちろんですが、少しの風邪も命取りになることがあります。共同生活を送る家族はそれをうつしてしまう危険を孕んでいます。人混みを避ける、マスクの着用、家族全員予防接種、感染に対する意識が高くない空間との接触を最小限にする、などの取り組みが必要です。
また、部屋の中のアレルゲンによる肺炎を防ぐため、部屋を生活に保つ事に通常よりも気を遣ったり、ペットを飼うことを諦める場合もあります。
本人は優先的に予防接種を受けられることがありますが、家族は優先対象になりません。


Q:なるべく負担を軽くするために何か工夫をされていましたか?
A:身体障害者の認定については、指定医の診断が必要になります。主治医などに積極的に日々の生活のお困りごとなどを伝えることで、早期の診断・認定が得られるよう働きかけをされている方もいらっしゃいます。
また、在宅酸素を使用した状態でも家の中である程度動けるようにするため家の中をバリアフリー化する、などの工夫をされている方もいます。
感染症予防の負担を軽減する方法はあまりないかもしれません。


Q:移植が普及して待機期間が短くなることで負担は減りますか?
A:家族は呼吸状態を常に気にしているため、待機期間の短縮はすなわち負担軽減となります。特に、食事や入浴などの日常生活動作に伴うSpO2の変化や呼吸の息苦しさの出現には過敏になるので、待機期間が短縮すれば、患者本人・家族ともに不安感が払拭されます。
また、2023年11月現在の脳死肺移植の平均待機期間は3年程度です。
感染症に注意しなければならないのは冬だけではなく1年中である以上、待機期間が短くなれば警戒期間も多少短く済むので、患者本人・家族の実際的・心理的な負担は小さくなります。


Q:肺移植について伝えたい事はありますか?
A:肺移植では、患者が3年以上の長い期間、呼吸状態が芳しくない状態で待機することになります。家族は生活をともにしているため、家族は患者本人の状態や感情の変化を場合によっては本人以上に気にしています。様々な支援に当たっては、もちろん患者本人が第一優先でよいのですが、ほんの少しだけでも医療従事者や一般の方が、家族の尽力に目を向けてくださると幸いです。
そして、移植を待つ方々が沢山いらっしゃることを、ぜひ認識して頂きたいと思います。

 

 

■臓器移植の長期予後について:肺移植を例に

以前、各臓器移植の予後について以下のお知らせでお伝えしましたが
【移植医療普及のための署名】臓器移植の予後について 

医大生である名倉さんに医学的視点で肺移植を例にした移植の予後について解説していただきました。

 

―移植後の予後は悪いのか?

臓器移植の長期予後について簡単にまとめさせて頂きます。
最新データの肺移植を例としますと、わが国の脳死肺移植の5年生存率は74.4%となっております。
※2021年12月末日までに移植され、2022年3月末日現在の状況で算出 ※同時移植を含む
<参考>日本臓器移植ネットワークHP 脳死臓器移植の分析データ 臓器移植後の生存率・生着率


―臓器移植後の長期予後が悪いということはない

「予後が悪い」という言葉はやや相対的ですので、その定義にもよるものですが、「予後が悪いのか?」への回答としては基本的に「否」となります。
肺移植の74.4%をどのように評価するかですが、同じ臓器である肺の悪性腫瘍と比較してみたいと思います。

最新のがん統計によると、非小細胞肺癌(肺癌で最も一般的な分類)のI期(一般にステージ1と呼ばれているもので、)の5年生存率が74.6%です。
<参考>国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 肺がん 

 

つまり、初期に見つかった癌と同程度の予後であり、比較対象にもよりますが現代の医療において「移植をすると長くは生きられない」と言った主張は、もっともらしいものではないと考えます。
これは術後管理が比較的難しい肺移植でもそうなのですから、より生存率の高い肝移植や腎移植においては、なおさら「予後が悪い」とは言えないでしょう。

※肺移植の特殊性について

肺移植の5年生存率が他の臓器移植と比べて低いことには理由があります。
第一に、移植臓器の中で唯一外界と接しており、術後に感染症を起こすリスクが小さくありません(健康な人でも肺炎を起こしますよね)。さらに、移植肺は粘膜の上皮機能が低下し、さらに気管支吻合部等の感染に弱い部位が存在することも、リスクを助長します。
第二に、また肺は他の臓器と免疫の状態が異なります。具体的には専門的になるので差し控えますが、抗原性が高く、拒絶も同時に起きやすくなっています。つまり、拒絶も感染も起きやすい臓器であるため、他の臓器移植と比較しても、免疫抑制剤を調整しながら慎重に経過観察を行う必要があります。
引用:Dokkyo Journal of Medical Sciences, 45(3):145~151, 2018
 白石ら,.『移植』Vol. 53(4-5):269-275, 2021


―予後成績は臓器移植医療の選択肢を狭める理由にはならない

ここまでは予後の数字をどう捉えるかという話をしてきましたが、「移植後に合併症で命を落とし、結果として寿命が短くなってしまうことがあるのではないか」という反論もあるでしょう。勿論、その可能性がないとは断言できません。医学に絶対は無いからです。
しかし、その可能性が高いと移植前に評価される場合には移植が行われない、すなわち移植によって予後を縮めることが無いように十分な検討を行う仕組みがあります。

移植の待機登録を希望する際には、一度入院して様々な検査を行います。この際に様々な身体・精神・社会的状態を加味し、以下に該当するかと検討します。

【肺移植レシピエントの適応基準】

  1. 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で、肺移植以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にない。
  2. 移植医療を行わなければ、残存余命が限定されると臨床医学的に判断される。(おおむね2年生存率が50%以下)
  3. レシピエントの年齢が、原則として、両肺移植の場合55才未満、片肺移植の場合には60歳未満である
  4. レシピエントが精神的に安定しており、移植医療の必要性を認識し、これに対して積極的態度を示すとともに、家族および患者を取り巻く環境に充分な協力体制が期待できる
  5. レシピエントが移植手術後の定期的検査と、それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき、心理学的・身体的に充分耐えられる

<参考>肺移植レシピエントの適応基準 (肺移植関連学会協議会)

最終的には、肺移植関連学会の検討により「肺移植を行わなかった場合、肺移植のリスクで亡くなる予後よりも状態が悪いと予測される場合」に待機登録となります。つまり、移植をしなかった場合よりも、移植後の方が予後の延長が期待できる方が「移植待機登録」の対象になるのです。(患者さんの健康を害しないためにも、また貴重なドナー肺をムダにしないためにも重要です)

このことからも、肺移植は「ただの延命に過ぎない」手術ではなく、機能が低下してしまった肺をお持ちの患者さんにとっては、根治に近い結果を得られる前向きな手段として考えられます。

なお、実際に呼吸状態がかなり悪かった患者さんが、肺移植を行って現在ではフルタイムで仕事をできるまでに回復している、という例も珍しくありません。


―臓器移植後の長期予後は改善傾向にある

最後に、臓器移植の予後は医学の進歩とともにあるということもお伝えしておきます※。
移植医療が始まったのは20世紀後半ですが、導入当初は十分な免疫抑制剤も開発されていなかったため、拒絶反応との戦いは厳しいものとなり、術後1年の生存すら困難なものでした。しかし、当時と比べると移植後の予後はまさに劇的に改善しています。免疫抑制剤のエビデンス増加とともに、感染症の制御に関しても研究が進み、ある程度適切なコントロールができるようになっています。また、手術の低侵襲化(傷を少なくすること)も研究が進められております。

※長期予後について、医療が発展すればするほど今まで困難だった例にも移植を行うことができるようになるため、純粋な「5年生存率」での比較は層別化を行わないと難しいと考えています。

 

日本では、まだまだ移植数が少ないのが現状ですが、個々の移植が実施されることでそれが新たな医療のエビデンスとなります。つまり、ドナーからレシピエントへ繋がれた命は、他の移植を待つ患者さんの命をも救うのです。


-------------------------------------------------------------

L-TRIP名倉さんありがとうございました。

L-TRIPさんのNOTEでは実際に肺移植やその原疾患を経験された方のインタビュー企画などを公開されています。
よろしければこちらのサイトもご覧ください。
L-TRIP(間質性肺炎と肺移植を伝える会)NOTE 

 

 

 

■肺移植に関するデータ

肺移植希望登録者数:569名(2023年10月31日現在)
脳死肺移植の国内での実施件数:合計 658件(2021年12月末時点)
生体肺移植の国内での実施件数:合計 270件(2021年12月末時点)
JOTへ肺移植希望登録:合計1,965人(1998年8月~2021年12月/心肺同時移植登録を含む)
待機中死亡:736人(37.5%)(1998年8月~2021年12月)


ちなみに2021年には京都大学病院で新型コロナ後遺症により生体肺移植を受けた患者さんがいらっしゃるそうです。

NHKニュース| 新型コロナの後遺症で生体肺移植 女性患者が退院 京都大学病院

このニュースからも誰もが突然臓器移植が必要な当事者になりえることがわかるのではないでしょうか。

 

 

■小児の臓器移植にも関係する「飛ばそう、ドクタージェット プロジェクト」のクラウドファンディングのご紹介

心臓血管外科医の福嶌先生が「飛ばそう、ドクタージェットプロジェクト」というクラウドファンディングをはじめられました。

「飛ばそう、ドクタージェットプロジェクト」HPより-----------------------

長距離・天候悪条件で飛べない、ドクターヘリの壁を超えるためにー

高度な医療機関のない地域でも一定距離から、治療を実施できる病院に搬送するシステムの一つとして、ドクターヘリがあります。日本でもドクターヘリ制度が充実し、すべての都道府県にドクターヘリが配備されるようになりました。

しかし、「事故や急患が発生した際に、一刻も早い治療開始を目的に医師を患者のもとへ運ぶこと」を主目的とするドクターヘリによる患者搬送は、いくつかの課題が指摘されています。

(略)

この計画は、全国各地から、医療用ジェット機搬送を要する小児患者の搬送要請を受付け、重症小児患者をPICUをはじめとする、高度専門医療機関へのジェット機搬送ができる状態を目指しています。

-------------------------------------------------

よろしければこちらのプロジェクトについても知っていただけたら。

 

 


今回のお知らせは以上です。

 

引き続き宜しくお願い致します。

Soutenir maintenant
Signez cette pétition
Copier le lien
Facebook
WhatsApp
X
E-mail