17 feb 2024

 今回は、元新宿区保健所職員として、2001年度に東京23区内で初めて、東京都が提唱した「飼い主のいない猫との共生モデルプラン」で地域指定を受け、行政マンとして地域猫事業の取り組みを牽引した高木優治氏の地域猫活動講座です。
 日本全国を奔走し、講師として地域猫活動の普及に尽力し、大阪市公園猫適正管理推進事業の策定のアドバイザーとして大阪市のノラ猫対策にも深く関わった方です。これから地域猫活動を始める方にも参考になることばかりです。
是非、ご一読ください。


地域猫活動 理論編
〜はじめに
 地域猫対策とは、「地域で取り組むノラ猫対策」のことです。地域におけるノラ猫による糞尿被害や地域環境の悪化を防ぎ、ノラ猫に起因する人間関係のトラブルを解決し、人と猫との共生を目指すために検討されたもので、「地域・猫対策」と表記したほうが適切ではないかと思います。
 具体的にはノラ猫の頭数抑制のための、捕獲(トラップ・T)不妊化手術(ニューター・N)元の場所に戻す(リターン・R)を行い、術後の猫を見守る管理(マネージメント・M)対策を実施することです。
-------猫好きの人たちだけの取組みではなく、地域の、地域による、地域のためのノラ猫対策が「地域猫活動」であると読み取れます
1 地域猫対策の誕生と発展の経緯
 <餌やり禁止の時期~1982(昭和57)年~2002(平成14)年ごろ>
 昭和の終わりごろから、自治体に対する野良猫に関する苦情が増大し、東京都全体では1982(昭和57)年から1万件を超える申し立てがあり、2002(平成14)年ぐらいまでほぼ同数の苦情が寄せられました。
 この期間は、苦情に対する対処方法として多くの行政では、「餌やり禁止」看板の設置や、餌やりに対する口頭注意・指導を行うも、苦情が減少することはなく、問題解決の方向性が見いだせない時期でもありました。
-------50年以上前から場当たり的な対処として講じられていた「餌やり禁止」ではノラ猫問題は全く解決しないことがよく分かります。
 一方、家庭飼育動物に対する不妊化手術の必要性が、獣医師会や先行する動物愛護団体から提唱され始め、自主的にノラ猫に対する不妊化手術が進められていきました。
 これらの動きを受け、1972(昭和47)年に東京都武蔵野市で犬・猫の去勢不妊化手術費助成金制度が発足したのが、自治体での助成金制度の初めと思われます。
 東京23区では1987(昭和62)年、世田谷区飼い猫の不妊化手術費助成金制度が発足。
その後1989(平成元)年に練馬区で、1990(平成2)年に大田区・葛飾区で、1991(平成3)年新宿区で同様な制度がスタートしました。同年文京区では、文京区ホームレス猫の不妊化手術費助成金制度が始まり、各区がノラ猫問題解決にむけて動きはじめました。
 また、動物愛護団体より、自治体に対しノラ猫問題に関する要望が多く出されるようになってきました。
-------餌やり禁止の時代を経て、猫の繁殖制限の必要性が認知された時期と同じくして、ノラ猫対策が民間主導で始動し、市・区という行政単位で不妊化手術の助成金制度が発足、発展していきました。

<地域猫対策が始まる~1997(平成9)年ごろ>

 1997(平成9)年に横浜市磯子区の地域住民が、ノラ猫を地域で管理することを始めるようになり、当時の担当者、横浜市職員の黒澤泰さんが「地域猫のすすめ」を2005(平成17)年に出版、それより以前に、早稲田大学地域猫の会を立ち上げた、松浦美彌子さんが「猫ちゃんを救え」を2001(平成13)年に出版、このころから「地域猫」との呼び方が生まれたと思われます。
-------現在はかなり浸透した「地域猫」という言葉を、大阪市に対する要望書と署名の呼びかけの連名者黒澤泰氏が、それまで住民の有志で取り組んできたノラ猫対策を[地域猫活動]として定義・発案しました。

<自治体の取り組みがスタートする2000(平成12)年~>

 1998(平成10)年東京都が「東京都動物管理審議会」に猫問題について答申を求め、翌年、飼い猫対策とノラ猫対策に関する答申が出されました。東京都は2000(平成12)年に、この答申を受け「飼い主のいない猫との共生モデルプラン」を作成し、市区町村に取り組みの依頼を行いました。
 2003(平成15)年度までの3年間で20地域がモデル地域として指定を受け、『地域猫対策』が自治体・地域住民・ボランティアの3者による協働事業としてスタート。
 モデル地域の選定には東京都と、NPOねこだすけが協力をして働きかけを行いました。
その第1号が新宿区で20地域中4か所がモデル地域に指定されました。これにより全国の自治体に先駆け、地域猫対策の基本的なスタイルが確立されました。

<国の取り組みはそれより遅れる2010(平成22)年>

 国の方針としては、それより遅れること10年経過後、環境省により「住宅密集地における猫の適正飼養ガイドライン」が2010(平成22)年2月に出され、この中に「地域猫対策」が明記され、2013(平成25)年には改正された、「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」が環境省告示として出され、この中の2施策別の取組・(3)動物による危害や迷惑問題の防止・②講ずべき施策・アで「飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の十分な理解の下に管理する地域猫対策について、支援と推進を図ることが明示されました。
 さらに、2020(令和2)年に出された基本指針においても、2、施策別の取組(3)周辺の生活環境の保全と動物による危害の防止・②講ずべき施策ア・イ・ウにも同様の内容が記載されました。
-------民間の有志→市、区という行政単位から徐々に広がったノラ猫対策にようやく国が乗り出し、ガイドライン、基本指針という環境省の文書に「地域猫活動」という文言が明記されるに至りました。地域猫活動が猫問題に苦悩する現場から産みだされ、小さな行政単位に続き国が追認する形で創生された流れがよく分かります。


2 地域猫対策の地域と解決策
 地域猫対策は、猫に起因する直接的・間接的トラブルを解決する方法として考えられてきました。トラブルの多くは猫による糞尿被害・繁殖期の鳴き声・マーキングの臭いなどで、餌やりをする人とそれ以外との対立が多くみられます。
 しかし、餌やりの人も、猫が増えすぎることで餌代がかさんだり、世話ができなくなったりと困ることが起きます。
 つまり、被害を訴える人、餌やりをする人にとっても「これ以上猫を増やさない」ことで両者の目的や利害が一致します。
------遺棄されたり、ノラ猫が繁殖し、既に地域に棲息している猫に餌やりをしてお世話をする人を感情的に責めても何の解決になりません。これ以上トラブルの原因である猫を増やさず、減らしていく為に役割分担をして合理的にアクシションを起こしていくのが、理知ある人間の責務ではないでしょうか

 

 今回は地域猫活動講座 理論編として、地域猫活動の誕生の歴史と社会的背景、意義について述べました。

次回は実践編として、具体的な活動の進め方について踏み込んでいきます。

 引き続き、この署名をお友達やご家族にお知らせいただいたり、シェアで応援していただけると幸いです。

大阪から日本を変えていきましょう。

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