

この署名を立ち上げ、要望書を作成するに当たり、改めて「地域猫活動」について調べてみました。 前回のお知らせで、日本全国で地域猫セミナーの講師として「地域猫活動」の普及啓発に尽力なさっている特定非営利団体法人ねこだすけ理事長工藤久美子さんに、地域猫活動の始動から現状、法令の根拠や「合意」という文言の弊害につき解説していただきました。 今回も引き続き、工藤久美子さんに地域猫の現状につき解説していただきます。
【現在の地域猫活動の形態】
『現在の地域猫活動は、およそ3つに形態に分類されます。
1. 行政による登録ボランティア制度、登録団体制
2. 既存の不妊手術助成金申請制
3. 登録制度、IDなど何も設定しない緩やかな活動支援制
以下、それぞれの形態の概略です。
1. [登録制]予め行政講習会を受講し、行政に登録した個人や団体が行政と協働し活動する形態です。人口が多く予算や人員が不足している地方自治体で、限られたリソースできめ細やかな市民サービスを展開できる効果が期待できます 具体例として
・練馬区「登録ボランティアグループ制度」は登録希望者は2名以上で、区の方針などの説明を受け、自治会長、班長に説明に行く。職員も同行し、長の理解が得られたら登録の申請が可能となります。
・板橋区「猫の登録ボランティア制度」個人、団体いずれも申請可能。区の講習会受講、区の方針に賛同、協力できること。自治会長の関与は不要です。
・中野区「地域猫共生推進員制度」 中野区民である個人対象。区の講習会受講、区の方針に賛同、協力できること。 板橋区と同様、要件は講習会受講のみで自治会長の関与も不要です。
2. [助成金申請制]住民誰もが既存の不妊手術費用助成金を利用し、活動が可能です。意欲的な自治会が主体となり活動することもあります。 個人向けの助成金制度とは別に、対象を自治会に特化した助成金制度を別個に創設する行政も出てきています。 そこでは不妊費用の助成のみならず、広報などの支援も行政が担います。 自治会が助成金制度を利用し活動主体となることの最大の利点は、自治会主導の活動であることから、自ずと地域住民に広報されるという点です。
3. [緩やかな活動支援制]東京都で言えば世田谷区、港区がこれにあたります。 ID、腕章、講習会、自治会長の同意などの要件が何もありません。 例えば、港区の「地域地域猫活動協力者」、世田谷区の「動物連絡員」は区民どなたでも気軽に参加できるシステムです。』
一一ひと口に「地域猫活動」と言っても、1.登録制、2.助成金申請制、3.緩やかな活動支援制 と様々な形態があることが分かりました。
1.の登録制では申請の要件として行政講習会の受講のみの所と、それに加え、自治会長の了承を課している例もあります。 自治会長の了承を課す場合は自治会長の意向次第で活動始動が阻まれる場合があります。
2.の助成金申請制は、意欲のある住民がいれば、自治会長の個人的意見に左右されず自由度と柔軟性の高い活動が展開できます。更に、もし自治会が主体となると、活動が広がり町の環境は大きく変わります。
3.の緩やかな活動支援制は活動に参加する方に行政講習会の受講すら課さず、より多くの住民が活動に参加できます。 今回問題になっている大阪市の街ねこ事業は 自治会長の合意書を添付しての地区指定の申請の際、活動する組織代表の氏名・住所・電話番号 組織構成員の氏名・住所を申告する必要があるので、1.登録制の中で自治会長の承諾を要する態様に近いと思います。
それぞれの形態について、より詳しく解説していただきます。
【登録制】
『上に述べたように、限られた予算・人員できめ細かい市民サービスが展開できることから、全国行政でも登録ボランティア制度、団体制度を採用しているところは徐々に増えてきております。 問題となっている「自治会長の了承、地域の合意」これは少なからず自治会長の個人的意見に左右されます。さらに加入率の低下している自治会未入会の住民の意見は反映されません。 それを避ける為にも「行政と協働している登録ボランティア」をまず認定してしまい、その後必要に応じて自治会長、或いは住民へ広報を行う。 すでに行政と協働しているボランティアであれば、自治会としても苦情は出にくいでしょう。 何らかの登録制度を検討中の地方自治体は、今後はこの方法、つまり、「自治会長の了承や合意」などを要件としない登録制が一番お勧めでございます。』
一一地域猫活動先進地である東京でも、活動の展開を阻害しかねない「自治会長問題」があることが明らかになりました。
【助成金申請制】
『誰もが活動主体となれる助成金申請制ですが、自治会が活動主体となるメリットはやはり大きいです。
大田区は対象を自治会に特化した助成金制度を創設しています。
地域猫活動にご理解頂けない自治会長は、東京ではほぼ聞いておりませんが、どこにでも一定数はいらっしゃると思います。 地方からのご相談が多いのですが、現在受けている広島県の方、関西のURの方からは、かなり強硬な反対があり、難儀していらっしゃいます。 このような事態は、まず活動支援として行政が活動の説明、説得に動くべきでしょう。その際自治会への特別助成金制度があれば、大きな説得材料となります。』
一一全てを民間の善意に任せるのではなく、地域猫制度の拡充のために、反対をする住民に対して、住民全体の利益になる公共性、公益性ともに高い環境改善活動であることの説明等、行政のサポートが1番必要とされる場面です。
『東京都新宿区のある自治会での大きな成功例があります。 自治会長自ら捕獲、搬送。 また自治会説明会、捕獲講習会も開催されました。そして住民の方々の参加でおよそ120匹以上の猫の捕獲手術を行いました。 この町は東京都のモデル地区ともなり、助成金で不足した費用は自治会費とご寄付で賄い、定期的に住民ボランティア様が「猫たより」を制作・配布を現在も続けています。 しかしながら、隣町からの猫の流入が絶えず、それを解決すべく自治会長が隣町の自治会長に2年超しに何度も掛け合いまして、ようやく隣町も活動を開始しました。』
一一新宿区の自治会、素晴らしいですね。自分達の町の問題を誰かに丸投げするのではなく、自治会長を中心に住民自らが主体的に資金調達までして活動を継続。その上、別の自治会長の啓発までして活動を広げています。理想的な活動ですが、スムーズに始まったのでしょうか?
『住民からの意見や要望があれば、必ず自治会役員会会議・総会にかけ、議論し決をとります。 もし、一連の意思決定のプロセスも定められておらず、話し合いと決をとるプロセスすら経ずに自治会長単独の反対意見が通るとしたら非常に不公正です。 公共制の高い制度の実施の諾否を決めるまでの権限は、任意団体の代表にすぎない自治会長にはありません。 住民からの要望があれば、ボランティアが自治会役員会や総会で活動の主旨を説明する機会を設ける。 あるいは行政職員に説明に来てもらうなどのプロセスや手順が定められていなくてはなりません。
地域猫活動に限らず、どのような物事や制度に対してでも、自治会長の理解度や熱心さは異なって当然です。 だからこそ、合意という文言にとらわれない、理解と協力・広報という緩やかな要件が求められます。 住民全体の利害に関わる地域問題解決活動、環境改善活動であるのに、自治会長単独の判断で決める事、これがそもそも間違っています。 自治会長に過大な権限と責任が偏在しないように 敢えて型にはまり過ぎた制度の枠組を持たない地域猫活動が次に説明する緩かかな活動支援制です。』
一一大阪市でも、市職員が活動の主旨の説明をしに自治会長のお宅や自治会会議などに出張して下さいますがあくまでも中立の立場で、積極的に活動を推奨する説得などはしないとの回答を得ています。 住民の要望が出てからの自治会内での話合いのプロセス・手順も特に定められておらず、それぞれの自治会にお任せしてある、とのことです。 把握をする術はありませんが、会議にかけられることなく黙殺され、潜在化している住民の声も多いかも知れません。
【緩やかな活動支援制】
『東京都港区の例が挙げられます。港区の基本的な考え方は、広く人材を求めること。 一部の猫好きやボランティアだけではなく不特定多数の方が「地域猫活動協力者」として参画を促進することを志向しています。
保健所、支所に手術助成金の申請に来た方にまず活動のご案内をし、地域猫活動者としてリスト化します。 地域猫活動協力者を通して、餌やりさんや猫の個体識別・地域の状況あるいは区役所への苦情、相談などの把握が可能となります。
職員も機動力が高く何か問題が起これば、協力者に連絡し、情報共有、一緒に現場リサーチに参ります。 区民全体に同じサポートを支援する主旨で、地域猫活動協力者には、ご希望に応じて地域猫バッグ、地域猫餌皿を配布しています。 このバッグにも餌皿にも「港区は地域猫活動を支援しています。」と言う文言が入っております。 この発信ツールにより、地域の方々に活動広報が可能となり、港区が活動支援していることも明確に伝わります。
港区がなぜ、このような緩やかな方法を取っているのか?
考えられる理由としては、 今回の署名に繋がる「住民の合意」「自治会長の了承文書」が必要となれば、それはまさに一部の住民、自治会長の判断で地域猫活動が進められなくなる危険性があるから。自治会長の独断で活動開始、あるいは拒否が可能となることは誠に理不尽だからです。
国、都道府県、市町、都内23区が推進している活動を、その様な方法で開始か否か決める事は他の多くの市民の意見を黙殺することにも繋がり、加えてその決定により町内住民間に亀裂を生みかねません。
活動に賛成な方とそうでない方、その方達の間に感情的対立を生む可能性、それを避けるためにも活動のご説明、そこからご理解を頂き、そしてご協力へと進んで行く。区民誰でも始められるように、何の制度も制限も持たず、登録もIDも発行せず、広報や苦情対応など必要な支援を十分に行う方法を取っていると思います。』
一一何度も同じことを繰り返していますが、公共性の高い事業の実施の諾否を、選挙で選ばれた訳でもない任意団体の代表である自治会長の一存に委ね、必要とする市民サービスが受けられない住民の不利益がかえりみられないのは道理に反しています。
『・支援の方法も区職員と動物愛護推進員のボランティアが相談し合い、知恵を絞って随時柔軟に改良を重ねています。 改良の例として助成金の増額。 港区は助成金は、設立当初から区外問わずどこの病院でも使用可能でした。 助成額は雄5000円、雌8000円から 雄17000円、雌25000円に増額してもらいました。
・苦情対応についても「区としてマナーを守った餌やりは禁止してませんので、場所を変えるよう相談してみます。」とあくまでも中立の立場をとり、餌やり禁止看板を掲示したりはしません。 苦情者の意見を尊重しながら、餌やりさんに対しては餌やりの時間、場所、方法の変更を相談し、必要に応じて啓発に努めます。 公園についても同様です。 公園での活動の決まりごとも、餌をあげたらとにかく片付ける、これのみです。 片付けてさえいれば、まず問題となりません。 これは港区の区としての方針だと感じております。
・港区の特に優れた点は、飼い猫、犬は保健所が担当。 飼い主のいない猫、地域猫については区内5つの支所の協働推進課が担当となっております。 この協働推進課は自治会担当でもある為、自治会長へのご説明、自治会会議でのご説明、これも推進課がアレンジしてくれます。 このシステムに変わり、自治会へのご説明が実に容易になり、強く推奨したい運用形態です。 以上の例からも、地域猫活動開始の決定を、自治会長や一部の住民の判断に任せる、この方法は何よりも市民への公平性に欠け、活動の広がりを阻害するものと思わざるを得ません。』
一一どんなに素晴らしい制度でも定期的に見直しが必要です。港区では区職員とボランティアが随時相談しながら運用形態を柔軟に見直し、最適化していく。 地域猫と自治会を区の同じ部署が担当していくことの利点など、非常に風通しの良い制度運用を採用していることが分かりました。
東京都の特別区である23区内の事例と 政令指定都市である大阪市の制度を全く同列に語ることは難しいですが、地域猫活動始動の際の自治会長への権限と責任の偏在を避けるため、住民の要望が出た後の話合いや意思決定の手順確立の必要性などの具体的な課題も見えてきました。
ただ、特別区と政令指定都市の相違はあれど、東京都港区の人口は約25万人。270万人の政令指定都市である大阪市にも適用可能な利点は多々あるように思えます。
次回も引き続き、工藤久美子さんに 地域猫活動の今後のあり方や関係法令について解説していただきます。
大阪市だけでなく、同様の自治会長問題が地域猫活動始動の妨げになっているとのご意見・コメントが多数寄せられています。 大阪から、日本の猫問題解決のための更なる大きな第一歩を踏み出すお力添えをよろしくお願いします。 この署名をお友達やご家族にもシェアして応援して下さい。