【血液専門研修/教育施設の現状調査(第2報)】:成人血液内科集計・「命の砦(とりで)が崩れゆく」戦慄の実情


ご支援をいただいております皆様
連日の配信となり、失礼いたします。
本日は、昨日の小児血液診療科に続き、本調査にご協力をいただきました成人診療科(94施設)を対象とする中間集計結果を、皆様と共有させていただきたく存じます。調査へのご協力をお願いした成人診療科は603施設で、そのうち約16%のご施設からの回答の分析結果となりますので、昨日お伝えしましたように、施設バイアス(注)により正確な現状が反映されていない可能性があることにはご留意ください。(注:回答してくださった施設の顔ぶれに偏りがあるため、全体のデータが実態からズレてしまう現象。回答数が少ないため、「特に医師不足が深刻な地域」や「特定の診療スタイルの施設」のデータだけが強く反映されている可能性があり、これが日本全体の縮図とは言い切れないことにご留意ください。)
まず、今回の解析対象となった診療科の所在都道府県の内訳は以下の通りです。事前の連絡もなく不躾なお願いでございましたにもかかわらず、快くご協力を賜りました各施設の先生方に、心より深く御礼申し上げます。
大都市圏(36施設): 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県
大都市圏以外(58施設): 北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、
群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、島根県、
岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県
沖縄県
1. 週間外来受診者数の比較: 大都市圏における診療規模の大型化
成人血液内科において、大都市圏と大都市圏以外の施設の間で、診療規模の相違がどの程度あるのかを週間外来受診者数で比較してみました。大都市圏とそれ以外の地域では、受診する外来患者数の規模に明確な差が見られます。
大都市圏の傾向: 「200名以上」の回答が41.7%と最多を占め、「100〜200名」(36.1%)と合わせると、約8割の施設が週間100名以上の多くの患者を診療しています。
大都市圏以外の傾向: 「50〜100名」(36.2%)が最多であり、「50名未満」も20.7%存在します。小〜中規模の診療体制をとっている施設の割合が半分以上を占めています。
2. 全体の医師数比較: 1施設あたりの確保数とネットワークの差
1施設あたりの平均医師数を比較すると、大都市圏の方が手厚い人員配置となっています。
1)平均合計医師数: 大都市圏が平均6.06人であるのに対し、大都市圏以外は4.36人と、約1.7人の格差があります。
2)非常勤医師の活用: 常勤医数(大都市圏4.25人 vs 以外3.40人)の差に加え、特に「非常勤医(大学以外からの派遣)」において大都市圏(0.83人)がそれ以外の地域(0.24人)を大きく上回っており、大都市圏の施設では外部の医療機関からの応援を得やすい環境にあることが伺えます。
3. 年齢階級別の医師数比較: 中堅層(40代)における格差の顕著化
すべての年齢層において大都市圏の平均医師数が上回っていますが、その差は年代によって異なります。
若手層(20代〜30代): 20代(大都市圏0.53人 vs 以外0.47人)、30代(大都市圏1.03人 vs 以外0.97人)と、若手医師の在籍数にはそれほど大きな開きはありません。
中堅・ベテラン層(40代以上): 最も差が開いたのは「40代」であり、大都市圏(1.25人)に対してそれ以外の地域(0.86人)と約1.5倍の開きがあります。大都市圏以外では、診療の中心を担う中堅医師の不足感が強まる傾向にあります。
4. 2024-2026年度の新規採用者数: 「3年間を通じて0-1名」の施設が全体の6割
実は、この質問により、今回の解析全体を通じて、もっとも深刻な事実が判明しました。2024-2026年度を通算して新規採用者者が0名と回答している施設が34施設(36%)、1名と回答した施設が23施設(24%)もありました。すなわち、各地域の中で、血液専門医を育てるために一定の要件を満たしている専門研修/教育施設の約4割には、3年間にもわたり血液内科医を志望する若手医師が全く入らなかったということになります。しかも大都市圏においても、0名の施設が19%にものぼり、大都市圏以外ではほぼ半数(45%)にまで至っています。この3年間の空白がこれから10年後、各施設における血液疾患の診療能力にどのように影響するかを想像すると、実におそろしい結果です。
もし、まだ回答をいただいていないご施設からは「0-1名という回答が全くない」と極端な仮定をしても、血液内科専門医教育施設のおよそ1割には、3年間で若手医師が1名以下しか入職していないということになり、この結果には実に重いものがあります。あなたの住む地域から「血液内科」が消滅するという危機が、まさにすぐそこまで迫っているのかもしれません。
なお、はじめにお断りしておきましたように、これらは今回の調査に比較的早くご回答をいただいた成人診療科(94施設)で見られた傾向であり、日本全体における血液専門研修/教育施設のより正確な実態を行政に伝えるためには、より多くのご施設にご協力をいただく必要がございます(私が調べた限り、これまで血液内科の実情に関して、このようなデータが統計資料として公開されているものはありません)。
日々のご激務に加え、血液内科は公的病院に設置されていることが多く、施設ごとのご事情から、ご回答いただくのが非常に困難な状況であることは、私も痛いほど理解しております。 それでも、「患者さん・市民の皆さまとともに血液内科の未来を守る」ためには、この実情調査がどうしても欠かせません。 現在、回答をご検討中の血液専門研修・教育施設の先生方には、あらためて、伏してお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
一戸辰夫(「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」発起人)[連絡先:tatsuo.ichinohe@icloud.com いつでも皆様からの建設的ご批判・ご意見をお待ちしています]