篠原 陽子Japan
Sep 6, 2016
連載:ニュースQ3
(ニュースQ3)陸自エンブレムに日本刀、なぜ?
陸自が新しく作ったエンブレム/陸自のシンボルマーク
陸上自衛隊が記念品などに使うために作ったエンブレムが物議を醸している。日本刀をあしらったデザインで「日本人らしい強さ」を表したというが、陸自の装備に日本刀はない。かつての日本軍を思い起こさせるとして、「アジア諸国への配慮が足りないのでは」との見方も。自衛隊と日本刀の組み合わせ、是非は――。
上段に日の丸、下に陸自のモチーフの「桜星(おうせい)」。そして真ん中には、交差する抜き身の日本刀とさや。エンブレムは「桜刀(さくらかたな)」と名付けられ、5月に公表された。
陸自の中枢・陸上幕僚監部の広報室によると、安倍政権が掲げる「積極的平和主義」を具現化したデザインだという。国連平和維持活動(PKO)や国際共同訓練などで他国軍と交流する際、エンブレムを刻印したメダルや盾を記念品として贈る予定だ。
なぜ日本刀なのか? 陸幕広報によると、古くから武人の象徴とされてきたことから選ばれたという。「外国の陸軍のエンブレムにも銃や銃剣を使う例が多い。陸自では日本人らしさを示す観点から刀が適切だと考えた」
■撤回求め署名活動
これに対し「国内のみならず海外でも大きな反発を引き起こす」と主張し、エンブレム撤回を求める活動を始めた人もいる。埼玉県ときがわ町の市民団体代表世話人、篠原陽子さん(66)は6月、オンライン署名サイト「Change.org」で署名集めを開始。約3週間で2万2千人以上の署名が集まった。「軍刀は帝国日本軍の略奪や脅迫を思い起こさせるシンボル。自衛隊のエンブレムにふさわしいとは思えない」
民主党政権時に観光庁の事業につくエンブレムの監修に関わった劇作家、平田オリザさんは「アジアの人がどう考えるかといった調査をしたのだろうか」と疑問視する。観光庁のエンブレムについては事前に、日の丸入りのデザインへの反応を探るため、在外公館を通じて中国や韓国の反応を探ったという。
デザインの観点からの苦言も。2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムの白紙撤回後、仕切り直しのエンブレム委員会で委員を務めた柏木博・武蔵野美術大教授は「刀の細さ、翼の大きさなど、すべての要素がコントロールされていない。すっきりしないデザインで、アナクロな感じがする」。美術評論家で多摩美術大教授の椹木野衣さんも「刀剣を記号化せず、具象的に扱っており、現代のデザインとして洗練されているとは言い難い」と厳しい。
■安保法の関係否定
陸自には00年から使ってきたシンボルマークもある。手のひらで日本列島を包み込むようなマークの横に、「守りたい人がいる」との言葉が添えられたものだ。エンブレムとは使い分け、自衛官募集などのために活用するという。
昨年、安全保障関連法が成立し、自衛隊の海外任務の役割は拡大する。国内ではソフトなイメージを維持しつつ、主に海外向けにはハード路線のエンブレムが作られた狙いは何なのか。
陸幕はエンブレムと安保法の関係は否定しつつ、「災害派遣などを通じて陸自の優しさ、頼もしさは幅広く理解してもらっている。ただ、(国防には)精強さも不可欠。それをエンブレムで感じてほしい」と説明している。
(福井悠介、守真弓)
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