求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!


求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!
署名活動の主旨
[ 更新:2025年11月23日…最新の時事を反映させて文面を書き換えました ]
2020年3月18日、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 (以下、ゲーム条例)」が、香川県議会にて可決、4月1日から施行されました。
詳細は後述しますが、ゲーム条例は、法令としての内容が極めて杜撰です。そのため、多くの専門家、香川県内外の地方議会議員、そして、国会議員が、その杜撰さを厳しく指摘し、各人の業務の範囲で、ゲーム条例に似た思想や法令の拡散の抑止に奮闘しています。施行から4年以上経過した本稿掲出時点でも、同条例を取り上げた セミナー の開催や、気鋭あるジャーナリズムが残っているマスコミ各社によって、検証を含めた 継続的な報道 や 書籍の出版 が行われている代物です。
あまつさえ、ゲーム条例は「最終到達目標は、中央政府で定める法令へ昇華させること」と明言しています。それらの事実から、私は、ゲーム条例については、最低でも無効にさせ、そのうえで全面的に改訂すべきと考えています。
そのようなゲーム条例の「内容」に関する問題点を5つにまとめて、以下に説明させていただきます。長文ではありますが、お付き合いいただければと存じます。
-----
補足:2022年11月1日に高松地方裁判所が下した判決内容「ゲーム条例の内容に違憲性はない」で、ゲーム条例国家賠償請求訴訟の結果が正式な裁判例となりました。また、2023年11月17日、高松高等裁判所は「ゲーム条例国家賠償請求訴訟で被告側の香川県が契約した弁護士の活動関連費用の金額は適切である」との判断を下しました。ただし、これらの結果は、同条例の内容が良いもの、もしくは、間違いがないものであることを意味したり、担保したりするものではありません。
-----
一方で、ゲーム条例は「制定過程」にも重大な問題点を孕んでいます。その解説は こちら からご覧いただけます。
- ゲーム条例(2020年4月1日版)は、こちら から閲覧・入手できます(PDF文書の読み込みが可能なアプリを事前にご用意ください)
- ゲーム条例に寄せられたパブリックコメントは、 こちら から閲覧・入手できます(PDF文書の読み込みが可能なアプリを事前にご用意ください)
< ゲーム条例の「内容」に関する問題点 >
【1.“独自に作った、実在しない病気”を、法令で扱っている 】
ゲーム障害/ゲーム依存症(以下、ゲーム行動症)については、「“国際疾病”として認定された」と、多くの国内のメディアで報道されています。しかし、これは事実と反します*1。また、2022年1月から、ゲーム行動症がICD-11(国際疾病分類および関連健康問題 第11版)に正式に収載されましたが、これは「疾病としてのゲーム行動症を正式にWHOが認めた」を意味するものではありません*2。厚生労働省も、疾病としてのゲーム行動症は正式に認めていません。これは、国会答弁で厚生労働省自ら証言*3 しています。
補足:インターネット依存症は、ICD-11に収載されていません。つまり、WHOは、インターネット依存症を疾病と認めていません。スマートフォン / SNS依存症も同様です。
それらの事実があるにもかかわらず、ゲーム条例の策定を推進した香川県議会議員は、「名称にインパクトがあるから」だけの理由で、世界中の誰も疾病として正式に認定していないインターネット依存症まで絡めて「ネット・ゲーム依存症」という「実在しない疾病」を勝手に作り、条例の名称に据えたのです。地方自治体が疾病を独自に法令で定義することは、地方自治体が行う業務の権限を越えています。このことから、ゲーム条例は、地方自治法(第94条)に抵触すると推測されます。
また、条例には、地域限定であっても市民の権利を拘束する内容を含むため、「条例の条文を作るには、その条文に対する説明責任が果たせるだけの信頼できる科学的根拠や資料がなければいけない*4」と、地方自治体職員向けの専門書で明記されています。ゲーム条例の問題点の1つは、それが著しく欠損している点です。
-----
追記:2022年2月に行われたICD-11の改定により、ゲーム行動症の診断要件が厳格化され、それと同時に「除外項目(排他対象)」として「Hazardous Gaming (意訳:健康を損ねる恐れのあるビデオゲームの運用)」が明記されました。詳細は ICD-11(英語表記)を参照 いただきたいのですが、簡単に書けば、この改定によって、ゲーム条例に言う「ネット・ゲーム依存症」の「すべての症状と、同病の罹患により懸念される事象」が「Hazardous Gaming」に属するものになりました。これは、ネット・ゲーム依存症を是とさせる信頼性の高い医学的根拠が存在しなくなったことを示唆します。
香川県は、その事実を知らないか、巧妙に隠蔽しているか、どちらかの状態であると推測します。なぜなら、上述した“事実”をまともに公表すれば、「ビデオゲームのプレイ時間が長い=ゲーム行動症になる→ビデオゲームのプレイ時間を極力減らす(≒ゼロにする)とゲーム行動症を予防できる」という、ゲーム条例の「ネット・ゲーム依存症の予防対策」の骨子と、その骨子に基づいて展開されている各種施策の意義が根底から崩れるからです。現実的には、当事者からビデオゲームやそれが稼働するICT機器を無理やり取り上げても、ゲーム行動症は寛解しないどころかさらに“病状”を悪化させる恐れがあるもかかわらず、です。
実際、現在香川県が行っている“ネット・ゲーム依存症“予防対策”を謳った施策は、本来のゲーム行動症の抑止対策とは明後日の方向を向いたものであることが徐々に顕現しています。2022年に行われた香川県主催のキャンプ療法(試験版)の結果を受け、報道機関に対して香川県の担当者が放ったコメントに、それがよくあらわれていると思います。
-キャンプに参加した子どもたちは、(インター)ネットやゲームの使い方を見直してほしい*5
これは、本来なら「Hazardous Gaming」への対策で話されるべきコメントです。「生活習慣の見直し」も「Hazardous Gaming」への対策の1つです。
-----
【2.学校で行うICT教育の内容をねじ曲げ、日本国の国力の衰退を幇助する】
ゲーム条例の内容は、結果から書くと、日本国の国力の衰退を幇助する一因になりえます。理由は簡単です。ゲーム条例の内容に基づくICT教育は、世界各国における標準的なICT教育である「デジタルシティズンシップ教育」の真逆を進む内容だからです。
ゲーム条例の内容に基づくICT教育では、ゲーム行動症予防対策の名のもとに、ICTサービスの「適切な」利活用をする目的を含めて、その使用自体に恐怖感を抱かせるよう子どもたちを仕向けます。そのためには、情報セキュリティーやICTリテラシー、対人マナーといった関連事項の内容を捻じ曲げてまで授業で諭し、啓発で展開することも躊躇しません。そのような愚行を、香川県は実際にやっています *6。
-----
補足:ICT機器における、フィルタリングを含めたペアレンタルコントロール機能を設定する理由、ビデオゲームや映画のレーティング制度の説明を「ゲーム行動症の予防のため」と諭す授業や啓発はデマです。本来、ICTサービスの使い過ぎは、情報リテラシーやデジタルウェルビーイングといったICT教育の分野で、依存症は精神病理で扱う分野です。いかなる講義や啓発においても、この二者を混在させて論じることは、絶対に行ってはいけません。この二者は全く関係がない、かつ、全く異なる分野の問題だからです*7。
-----
そして、「学業の補完での使用」「家族間の通話」以外のICT機器の用途すべてがゲーム条例の規制対象となっています。このため「危険性もいかがわしさもない」、「趣味の」プログラミングや創作活動、娯楽以外のデジタルコンテンツの使用はもちろん、LINEでのチャットですら、子どもはのびのびとできませんし、視力障害の治療のためにビデオゲームをある程度長時間遊ばせるよう医師から言われている場合でも、問答無用で規制対象になります。
加えて、将来、デジタルシティズンシップ教育が学校教育に浸透するほど、ゲーム条例の内容に基づくICT教育は“乖離”が目立つようになります。これは、香川県在住者が転勤などで県外に出た場合、お子様が正しいICTの知識を学び直さなければならなくなる、すなわち、学校と家庭において、子どもへの教育に充てる資源が無駄に消費されることを意味します。要は、ゲーム条例の内容に基づくICT教育は、お住まいの地域やご自身の家庭に不利益をもたらすのです。
-----
補足:同じアプリを使用しているにもかかわらず、LINEでのテキストおよびビデオチャットはゲーム条例の規制対象になりますが、LINEでの通話サービスはゲーム条例の規制対象にはなりません。このような意味不明の内容が決められている法令が、ゲーム条例です。
-----
以上のように、まともなICTサービスの利活用の意欲までも委縮させるため、物的資源が乏しい(≒頭脳労働や知識産業を主力産業の1つにしなければ世界で生き残れない)日本国で、ゲーム条例に似た法令が国内に拡散されることとは、日本国の国力の衰退の幇助に高確率で直結することを示唆します。これについては、ICT教育の専門家も懸念していることです*8。
【3.ゲーム行動症に苛まれる子どものことが一切考慮されていない】
ゲーム条例に記載されているゲーム行動症関連事項のほぼすべては、非科学的、かつ、根拠薄弱なロジックに基づいたデマです。これは、国内外のまじめな研究者、医療従事者から厳しく指摘されています*7。これは、訴訟の結果にかかわらず、決して覆ることのない事実です。
ゲーム条例の策定時、香川県議会が招いた医療従事者が、そのデマの拡散を主導している人だったことと、まじめにゲーム行動症の研究や治療に従事している人を全く招聘しなかったことが、これに大きく影響しています。医療従事者も、内容の杜撰さを懸念しています*9。
そのような杜撰な内容なので、ゲーム条例における医療従事者向けの施策では、ゲーム行動症はおろか、子どものひきこもり(不登校)、発達障害の正しい理解や治療が進むどころか、状況を悪化させる恐れが高いです。実際の臨床では、ひきこもり(不登校)のつらさを埋める唯一の心理的な支えとしてビデオゲームを使う時間が異様に長くなっている当事者に対して、医師は、ゲーム行動症とは診断しない*10 のですが、ゲーム条例は、それと齟齬がある内容を前文に書いています。条例自身が誤った知識を拡散しているのでは、正確な理解が進むことはないでしょう。
また、事務面でもずさんな取り決めしかされていないため、「患者」の認定の段階から医療事務系の業務に支障をきたします。
それらを差し引いても、ゲーム行動症対策を法令に落とし込むには時期尚早です。世界的に確証された医学的(科学的)根拠が定まった後で法制化しない限り、皆が真に望むべき効果が発揮できないからです。
【4.非科学的な内容の強制を、すべての個人向けICTサービス提供事業者に強いている】
ゲーム条例に対応したコンプライアンス対策を事業体が行うには「特定の地域からの利用を厳密に判定する機能を、商品に実装する工程」が必要です。当然、事業者は、そのためだけに、経営資源を余分に投入しなければなりません。そのコストの補填は、商品価格の上乗せや、サービスの初期設定の煩雑化などの形で行われます。これは、ゲーム条例が、日本国民全員に不利益をもたらすことを意味します。
さらに、ゲーム条例は、「射幸性や暴力性を著しく高める恐れのあるデジタルコンテンツ」の流通の規制を、各種情報サービスの通信データを流す回線事業者や、その回線の利用契約を個人に対して行うインターネットサービスプロバイダー、そして、それらの事業者に機器を納入する事業者に強いています。この内容があるため、政治家によっては、ゲーム条例を「表現の自由を侵す法令」とみなし、拡散の抑止のために動いています。
ちなみに、ゲーム条例第11条にいう事業者のうち、電気通信事業者は、どのような事情があろうとも、検閲をする目的で、特定のICTサービス、地域、そして、ユーザーに対して通信を遮断する行為は、電気通信事業法(第3条)で禁止されています。
【5.「“青少年の健全な育成のため”と称すれば、家庭教育に行政が介入してもよい」機運を政界に高めてしまう 】
ビデオゲームを含めた、個人利用のICTサービスの運用状況に対する貧弱な知見と、誤ったゲーム行動症に関する知見、の双方に基づいて策定されたゲーム条例は、それらに関心の薄い大人や「即効性のある安易な答え」を欲しがる大人をことごとく汚染します。根拠薄弱なロジックとデマが満載の書籍『スマホ脳』が売れている理由*11 もまさにそれでしょう。
さて、SNSやビデオゲームなど、家庭内で使用するICTサービスの運用ルールは、子どもの自主的な理解と意思を尊重したうえで、親子間双方が納得するまで行う綿密なコミュニケーションの積み重ねと、ICTに関する正確な知見を組み合わせない限り、作ったとしても全く有効に作用しません。
保護者がそのようなルール作りの方針を放棄して法令にそれを委ねることは、政界で「“公教育のため”と称すれば、根拠薄弱であっても政治が家庭教育に介入して問題ない」という、民主主義国家では決して許してはいけない機運を高めることにつながります。この「青少年の健全な育成のため」というパワーワードは、ゲーム条例のような法令を容易に世論に承認させる魔力を秘めています。それは、法学の分野でも「懸念に値する事象」として指摘*12 されています。
-----
補足:法令の内容から見れば、ゲーム条例は「ICTサービスの利活用でオブラートされた家庭教育支援法*13」の一面を持っています。家庭教育支援法の内容の危険さ*14は、専門家から厳しく指摘されています。
-----
以上となります。貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
残念なことに、秋田県大館市や愛知県豊明市のように、「ゲーム行動症/インターネット依存症/スマートフォン依存症/SNS依存症の予防」や「青少年の健全な育成」を掲げ、非科学的な根拠に従ったICT機器および個人利用向けICTサービスの使用制限を目論む香川県以外の地方自治体は、すでに存在します。国賠訴訟の結果も考慮すると、ゲーム条例の抱える問題は、日本国内すべての地方自治体に影響を及ぼす存在となっています。つまり、あなたがお住まいの地域も「無関係ではない」のです!
それを抑止する意味でも、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らと「行政機関による、ゲームを含めた個人利用のICTサービスの非科学的な根拠に基づく使用規制」の問題点について話し合うことをおすすめいたします。もし、可能でございましたら、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いにございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
主催者 きしもと みつひろ
[ 参考資料、引用元 ]
*1 井出草平の研究ノート「国際疾病という言葉を作ったのは誰か?」
(https://ides.hatenablog.com/entry/2020/08/09/140854)
*2藤末健三ブログ「香川県ゲーム規制条例などの根拠とされるWHOのICD-11が公表されました」
(https://ameblo.jp/fujisue-kenzo/entry-12727190515.html)
*3 2020年3月5日、参議院本会議における、音喜多 駿氏による質問
(https://www.youtube.com/watch?v=eG2qKYFLafg&feature=youtu.be)
*4 田中孝男『条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実』
*5 NHK高松 News Web 「生活習慣の見直しでネットやゲームの使用1時間余り減る(期間限定公開です)
(https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20230427/8030015740.html
*6 香川県「ネット・ゲーム依存予防対策学習シート(小中学校版、2023年版)」
(https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/gimukyoiku/syokai/sonota/internet/gakusyusheet.html
*6 香川県「学校現場におけるネット・ゲーム依存予防対策マニュアル(2021年版)」
(https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/kyoisomu/syokai/sonota/internet/manual.html)
*7 日本行動嗜癖学会「香川県ネット・ゲーム依存予防対策学習シートに関する公開質問状」(https://jssba.org/?p=1651
*7 香川県ネット・ゲーム依存症予防対策条例 オンライン勉強会
(https://www.youtube.com/watch?v=MN2xrFaOO5g&t=220s)
*8 セミナー「10年後を見据えたICT教育」における、田中たつや氏の質問より
(https://drive.google.com/file/d/1b9Jp2S7Zs324fSrSiH0FAIaZeS9yBwbb/view)
*9 齋藤光晴氏のポストに基づく
(https://twitter.com/saito_mitsuharu/status/1239765903887101954)
*10 講談社、ナナトエリ/亀山 聡『ゲーマーズダンジョン 僕はゲーム依存症じゃない(第1巻)』
*11 井出草平の研究ノート「スマホ脳」
(https://ides.hatenablog.com/entry/2021/01/13/005503)
*12 日本評論社『法学セミナー』2020年11月号「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が動き出すとき」
*13 2020年9月「みんなで考える 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」主催者の弁護士によるコメントに基づく
*14 imidas「家庭教育支援法・青少年健全育成基本法がもたらす「家族」と「教育」」

775
署名活動の主旨
[ 更新:2025年11月23日…最新の時事を反映させて文面を書き換えました ]
2020年3月18日、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 (以下、ゲーム条例)」が、香川県議会にて可決、4月1日から施行されました。
詳細は後述しますが、ゲーム条例は、法令としての内容が極めて杜撰です。そのため、多くの専門家、香川県内外の地方議会議員、そして、国会議員が、その杜撰さを厳しく指摘し、各人の業務の範囲で、ゲーム条例に似た思想や法令の拡散の抑止に奮闘しています。施行から4年以上経過した本稿掲出時点でも、同条例を取り上げた セミナー の開催や、気鋭あるジャーナリズムが残っているマスコミ各社によって、検証を含めた 継続的な報道 や 書籍の出版 が行われている代物です。
あまつさえ、ゲーム条例は「最終到達目標は、中央政府で定める法令へ昇華させること」と明言しています。それらの事実から、私は、ゲーム条例については、最低でも無効にさせ、そのうえで全面的に改訂すべきと考えています。
そのようなゲーム条例の「内容」に関する問題点を5つにまとめて、以下に説明させていただきます。長文ではありますが、お付き合いいただければと存じます。
-----
補足:2022年11月1日に高松地方裁判所が下した判決内容「ゲーム条例の内容に違憲性はない」で、ゲーム条例国家賠償請求訴訟の結果が正式な裁判例となりました。また、2023年11月17日、高松高等裁判所は「ゲーム条例国家賠償請求訴訟で被告側の香川県が契約した弁護士の活動関連費用の金額は適切である」との判断を下しました。ただし、これらの結果は、同条例の内容が良いもの、もしくは、間違いがないものであることを意味したり、担保したりするものではありません。
-----
一方で、ゲーム条例は「制定過程」にも重大な問題点を孕んでいます。その解説は こちら からご覧いただけます。
- ゲーム条例(2020年4月1日版)は、こちら から閲覧・入手できます(PDF文書の読み込みが可能なアプリを事前にご用意ください)
- ゲーム条例に寄せられたパブリックコメントは、 こちら から閲覧・入手できます(PDF文書の読み込みが可能なアプリを事前にご用意ください)
< ゲーム条例の「内容」に関する問題点 >
【1.“独自に作った、実在しない病気”を、法令で扱っている 】
ゲーム障害/ゲーム依存症(以下、ゲーム行動症)については、「“国際疾病”として認定された」と、多くの国内のメディアで報道されています。しかし、これは事実と反します*1。また、2022年1月から、ゲーム行動症がICD-11(国際疾病分類および関連健康問題 第11版)に正式に収載されましたが、これは「疾病としてのゲーム行動症を正式にWHOが認めた」を意味するものではありません*2。厚生労働省も、疾病としてのゲーム行動症は正式に認めていません。これは、国会答弁で厚生労働省自ら証言*3 しています。
補足:インターネット依存症は、ICD-11に収載されていません。つまり、WHOは、インターネット依存症を疾病と認めていません。スマートフォン / SNS依存症も同様です。
それらの事実があるにもかかわらず、ゲーム条例の策定を推進した香川県議会議員は、「名称にインパクトがあるから」だけの理由で、世界中の誰も疾病として正式に認定していないインターネット依存症まで絡めて「ネット・ゲーム依存症」という「実在しない疾病」を勝手に作り、条例の名称に据えたのです。地方自治体が疾病を独自に法令で定義することは、地方自治体が行う業務の権限を越えています。このことから、ゲーム条例は、地方自治法(第94条)に抵触すると推測されます。
また、条例には、地域限定であっても市民の権利を拘束する内容を含むため、「条例の条文を作るには、その条文に対する説明責任が果たせるだけの信頼できる科学的根拠や資料がなければいけない*4」と、地方自治体職員向けの専門書で明記されています。ゲーム条例の問題点の1つは、それが著しく欠損している点です。
-----
追記:2022年2月に行われたICD-11の改定により、ゲーム行動症の診断要件が厳格化され、それと同時に「除外項目(排他対象)」として「Hazardous Gaming (意訳:健康を損ねる恐れのあるビデオゲームの運用)」が明記されました。詳細は ICD-11(英語表記)を参照 いただきたいのですが、簡単に書けば、この改定によって、ゲーム条例に言う「ネット・ゲーム依存症」の「すべての症状と、同病の罹患により懸念される事象」が「Hazardous Gaming」に属するものになりました。これは、ネット・ゲーム依存症を是とさせる信頼性の高い医学的根拠が存在しなくなったことを示唆します。
香川県は、その事実を知らないか、巧妙に隠蔽しているか、どちらかの状態であると推測します。なぜなら、上述した“事実”をまともに公表すれば、「ビデオゲームのプレイ時間が長い=ゲーム行動症になる→ビデオゲームのプレイ時間を極力減らす(≒ゼロにする)とゲーム行動症を予防できる」という、ゲーム条例の「ネット・ゲーム依存症の予防対策」の骨子と、その骨子に基づいて展開されている各種施策の意義が根底から崩れるからです。現実的には、当事者からビデオゲームやそれが稼働するICT機器を無理やり取り上げても、ゲーム行動症は寛解しないどころかさらに“病状”を悪化させる恐れがあるもかかわらず、です。
実際、現在香川県が行っている“ネット・ゲーム依存症“予防対策”を謳った施策は、本来のゲーム行動症の抑止対策とは明後日の方向を向いたものであることが徐々に顕現しています。2022年に行われた香川県主催のキャンプ療法(試験版)の結果を受け、報道機関に対して香川県の担当者が放ったコメントに、それがよくあらわれていると思います。
-キャンプに参加した子どもたちは、(インター)ネットやゲームの使い方を見直してほしい*5
これは、本来なら「Hazardous Gaming」への対策で話されるべきコメントです。「生活習慣の見直し」も「Hazardous Gaming」への対策の1つです。
-----
【2.学校で行うICT教育の内容をねじ曲げ、日本国の国力の衰退を幇助する】
ゲーム条例の内容は、結果から書くと、日本国の国力の衰退を幇助する一因になりえます。理由は簡単です。ゲーム条例の内容に基づくICT教育は、世界各国における標準的なICT教育である「デジタルシティズンシップ教育」の真逆を進む内容だからです。
ゲーム条例の内容に基づくICT教育では、ゲーム行動症予防対策の名のもとに、ICTサービスの「適切な」利活用をする目的を含めて、その使用自体に恐怖感を抱かせるよう子どもたちを仕向けます。そのためには、情報セキュリティーやICTリテラシー、対人マナーといった関連事項の内容を捻じ曲げてまで授業で諭し、啓発で展開することも躊躇しません。そのような愚行を、香川県は実際にやっています *6。
-----
補足:ICT機器における、フィルタリングを含めたペアレンタルコントロール機能を設定する理由、ビデオゲームや映画のレーティング制度の説明を「ゲーム行動症の予防のため」と諭す授業や啓発はデマです。本来、ICTサービスの使い過ぎは、情報リテラシーやデジタルウェルビーイングといったICT教育の分野で、依存症は精神病理で扱う分野です。いかなる講義や啓発においても、この二者を混在させて論じることは、絶対に行ってはいけません。この二者は全く関係がない、かつ、全く異なる分野の問題だからです*7。
-----
そして、「学業の補完での使用」「家族間の通話」以外のICT機器の用途すべてがゲーム条例の規制対象となっています。このため「危険性もいかがわしさもない」、「趣味の」プログラミングや創作活動、娯楽以外のデジタルコンテンツの使用はもちろん、LINEでのチャットですら、子どもはのびのびとできませんし、視力障害の治療のためにビデオゲームをある程度長時間遊ばせるよう医師から言われている場合でも、問答無用で規制対象になります。
加えて、将来、デジタルシティズンシップ教育が学校教育に浸透するほど、ゲーム条例の内容に基づくICT教育は“乖離”が目立つようになります。これは、香川県在住者が転勤などで県外に出た場合、お子様が正しいICTの知識を学び直さなければならなくなる、すなわち、学校と家庭において、子どもへの教育に充てる資源が無駄に消費されることを意味します。要は、ゲーム条例の内容に基づくICT教育は、お住まいの地域やご自身の家庭に不利益をもたらすのです。
-----
補足:同じアプリを使用しているにもかかわらず、LINEでのテキストおよびビデオチャットはゲーム条例の規制対象になりますが、LINEでの通話サービスはゲーム条例の規制対象にはなりません。このような意味不明の内容が決められている法令が、ゲーム条例です。
-----
以上のように、まともなICTサービスの利活用の意欲までも委縮させるため、物的資源が乏しい(≒頭脳労働や知識産業を主力産業の1つにしなければ世界で生き残れない)日本国で、ゲーム条例に似た法令が国内に拡散されることとは、日本国の国力の衰退の幇助に高確率で直結することを示唆します。これについては、ICT教育の専門家も懸念していることです*8。
【3.ゲーム行動症に苛まれる子どものことが一切考慮されていない】
ゲーム条例に記載されているゲーム行動症関連事項のほぼすべては、非科学的、かつ、根拠薄弱なロジックに基づいたデマです。これは、国内外のまじめな研究者、医療従事者から厳しく指摘されています*7。これは、訴訟の結果にかかわらず、決して覆ることのない事実です。
ゲーム条例の策定時、香川県議会が招いた医療従事者が、そのデマの拡散を主導している人だったことと、まじめにゲーム行動症の研究や治療に従事している人を全く招聘しなかったことが、これに大きく影響しています。医療従事者も、内容の杜撰さを懸念しています*9。
そのような杜撰な内容なので、ゲーム条例における医療従事者向けの施策では、ゲーム行動症はおろか、子どものひきこもり(不登校)、発達障害の正しい理解や治療が進むどころか、状況を悪化させる恐れが高いです。実際の臨床では、ひきこもり(不登校)のつらさを埋める唯一の心理的な支えとしてビデオゲームを使う時間が異様に長くなっている当事者に対して、医師は、ゲーム行動症とは診断しない*10 のですが、ゲーム条例は、それと齟齬がある内容を前文に書いています。条例自身が誤った知識を拡散しているのでは、正確な理解が進むことはないでしょう。
また、事務面でもずさんな取り決めしかされていないため、「患者」の認定の段階から医療事務系の業務に支障をきたします。
それらを差し引いても、ゲーム行動症対策を法令に落とし込むには時期尚早です。世界的に確証された医学的(科学的)根拠が定まった後で法制化しない限り、皆が真に望むべき効果が発揮できないからです。
【4.非科学的な内容の強制を、すべての個人向けICTサービス提供事業者に強いている】
ゲーム条例に対応したコンプライアンス対策を事業体が行うには「特定の地域からの利用を厳密に判定する機能を、商品に実装する工程」が必要です。当然、事業者は、そのためだけに、経営資源を余分に投入しなければなりません。そのコストの補填は、商品価格の上乗せや、サービスの初期設定の煩雑化などの形で行われます。これは、ゲーム条例が、日本国民全員に不利益をもたらすことを意味します。
さらに、ゲーム条例は、「射幸性や暴力性を著しく高める恐れのあるデジタルコンテンツ」の流通の規制を、各種情報サービスの通信データを流す回線事業者や、その回線の利用契約を個人に対して行うインターネットサービスプロバイダー、そして、それらの事業者に機器を納入する事業者に強いています。この内容があるため、政治家によっては、ゲーム条例を「表現の自由を侵す法令」とみなし、拡散の抑止のために動いています。
ちなみに、ゲーム条例第11条にいう事業者のうち、電気通信事業者は、どのような事情があろうとも、検閲をする目的で、特定のICTサービス、地域、そして、ユーザーに対して通信を遮断する行為は、電気通信事業法(第3条)で禁止されています。
【5.「“青少年の健全な育成のため”と称すれば、家庭教育に行政が介入してもよい」機運を政界に高めてしまう 】
ビデオゲームを含めた、個人利用のICTサービスの運用状況に対する貧弱な知見と、誤ったゲーム行動症に関する知見、の双方に基づいて策定されたゲーム条例は、それらに関心の薄い大人や「即効性のある安易な答え」を欲しがる大人をことごとく汚染します。根拠薄弱なロジックとデマが満載の書籍『スマホ脳』が売れている理由*11 もまさにそれでしょう。
さて、SNSやビデオゲームなど、家庭内で使用するICTサービスの運用ルールは、子どもの自主的な理解と意思を尊重したうえで、親子間双方が納得するまで行う綿密なコミュニケーションの積み重ねと、ICTに関する正確な知見を組み合わせない限り、作ったとしても全く有効に作用しません。
保護者がそのようなルール作りの方針を放棄して法令にそれを委ねることは、政界で「“公教育のため”と称すれば、根拠薄弱であっても政治が家庭教育に介入して問題ない」という、民主主義国家では決して許してはいけない機運を高めることにつながります。この「青少年の健全な育成のため」というパワーワードは、ゲーム条例のような法令を容易に世論に承認させる魔力を秘めています。それは、法学の分野でも「懸念に値する事象」として指摘*12 されています。
-----
補足:法令の内容から見れば、ゲーム条例は「ICTサービスの利活用でオブラートされた家庭教育支援法*13」の一面を持っています。家庭教育支援法の内容の危険さ*14は、専門家から厳しく指摘されています。
-----
以上となります。貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
残念なことに、秋田県大館市や愛知県豊明市のように、「ゲーム行動症/インターネット依存症/スマートフォン依存症/SNS依存症の予防」や「青少年の健全な育成」を掲げ、非科学的な根拠に従ったICT機器および個人利用向けICTサービスの使用制限を目論む香川県以外の地方自治体は、すでに存在します。国賠訴訟の結果も考慮すると、ゲーム条例の抱える問題は、日本国内すべての地方自治体に影響を及ぼす存在となっています。つまり、あなたがお住まいの地域も「無関係ではない」のです!
それを抑止する意味でも、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らと「行政機関による、ゲームを含めた個人利用のICTサービスの非科学的な根拠に基づく使用規制」の問題点について話し合うことをおすすめいたします。もし、可能でございましたら、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いにございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
主催者 きしもと みつひろ
[ 参考資料、引用元 ]
*1 井出草平の研究ノート「国際疾病という言葉を作ったのは誰か?」
(https://ides.hatenablog.com/entry/2020/08/09/140854)
*2藤末健三ブログ「香川県ゲーム規制条例などの根拠とされるWHOのICD-11が公表されました」
(https://ameblo.jp/fujisue-kenzo/entry-12727190515.html)
*3 2020年3月5日、参議院本会議における、音喜多 駿氏による質問
(https://www.youtube.com/watch?v=eG2qKYFLafg&feature=youtu.be)
*4 田中孝男『条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実』
*5 NHK高松 News Web 「生活習慣の見直しでネットやゲームの使用1時間余り減る(期間限定公開です)
(https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20230427/8030015740.html
*6 香川県「ネット・ゲーム依存予防対策学習シート(小中学校版、2023年版)」
(https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/gimukyoiku/syokai/sonota/internet/gakusyusheet.html
*6 香川県「学校現場におけるネット・ゲーム依存予防対策マニュアル(2021年版)」
(https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/kyoisomu/syokai/sonota/internet/manual.html)
*7 日本行動嗜癖学会「香川県ネット・ゲーム依存予防対策学習シートに関する公開質問状」(https://jssba.org/?p=1651
*7 香川県ネット・ゲーム依存症予防対策条例 オンライン勉強会
(https://www.youtube.com/watch?v=MN2xrFaOO5g&t=220s)
*8 セミナー「10年後を見据えたICT教育」における、田中たつや氏の質問より
(https://drive.google.com/file/d/1b9Jp2S7Zs324fSrSiH0FAIaZeS9yBwbb/view)
*9 齋藤光晴氏のポストに基づく
(https://twitter.com/saito_mitsuharu/status/1239765903887101954)
*10 講談社、ナナトエリ/亀山 聡『ゲーマーズダンジョン 僕はゲーム依存症じゃない(第1巻)』
*11 井出草平の研究ノート「スマホ脳」
(https://ides.hatenablog.com/entry/2021/01/13/005503)
*12 日本評論社『法学セミナー』2020年11月号「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が動き出すとき」
*13 2020年9月「みんなで考える 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」主催者の弁護士によるコメントに基づく
*14 imidas「家庭教育支援法・青少年健全育成基本法がもたらす「家族」と「教育」」

775
意思決定者
賛同者からのコメント
2020年1月14日に作成されたオンライン署名