「香り」とは、空気中を漂う、一般的には好ましい匂いのある化学物質です。(嫌なにおいの場合は、「悪臭」と呼ばれます。)香る製品を作るには、何十種類もの「におい物質」を溶剤に溶かし、液体(油)の形の「香料」にして利用されます。
香料には、アレルギー性、神経毒性、変異原性、発がん性、内分泌かく乱作用などの有害性があり得ます。アメリカの市民団体が、国際香粧品香料協会(IFRA)に情報公開を求めたところ、においのある物質や香料の調合に用いる、約3000の化学物質のうち、およそ半数は、GHS(化学品の危険有害性について、世界的に統一した分類基準で、世界共通の表示を行うルール)に照らして、危険有害性のあるものでした。
日本では、洗剤・柔軟剤に関しては、製品中の「におい物質」がメーカーのHP上で部分開示されています。開示されている「におい物質」の中に、有害な化学物質を見つけることが出来ます。
ところが、香料の溶剤や添加剤にどんな化学物質が使われているかは、開示されておらず、私たちにはわかりません。ラベルには、ただ「香料」とだけ表示されます。
* 家庭用品品質表示法の指定品目である洗剤の場合、香料が入っていても、1%未満の場合は、香料の表示義務がありません。お馴染みの抗菌消臭洗剤である、アタック、アリエール、ナノックスなどには香料が入っていて、HPを見ると香料成分が開示されている物でも、容器の裏のラベルには「香料」の文字すらない物があります。そういう事情を知らず、ラベルを見て、「香料が入っていないから、香害にはならない」と勘違いして、こうした商品を選んでいる使用者もいます。注意が必要です。
海外の日用品の状況も日本と似ています。オーストラリアの研究者、アン・スタイネマン博士の研究論文*によると、134種類の一般的な消費者製品(化粧品、芳香剤、洗浄・洗濯用品等)から放出される化学物質(VOC=揮発性有機化合物)は、1538種類が特定され、そのうちの517種類の化学物質が有害な可能性があるものでした。ところが、製品のラベルに記載がある化学物質名は、全VOCの4%未満に過ぎず、有害な可能性のあるVOCの10%未満だったとのことです。つまり、製品のラベルを見ても、製品から揮発する有害な可能性がある化学物質は、私たちにはほぼ分からないのです。
*Nematollahi N., Kolev S.D. & Steinman A. : Volatile chemical emissions from 134common consumer products
Air Quality, Atmosphere & Health (2019)
https://link.springer.com/article/10.1007/s11869-019-00754-0
もう一つ、カナダのズッパ博士の調査報告*を紹介します。
「フレグランスフリー(無香料)対応の職場」と、「フレグランスフリー非対応の職場」、各17ヵ所の空気質を比較調査したところ、無香料対応の職場では、室内の空気中の化学物質(TVOC=総揮発性有機化合物)が70%も減少するという結果が得られました。発がん性物質で知られるベンゼンは検出されなくなり、その他のVOCも最大80%削減されていたとのことです。
*Dino Zuppa, PhD., CEO Accessibility Standards Canada : Developing Housing and Built-in Standards
From Summary of Day 2(May 2, 2025), Resilience : An International Conference on Multiple Chemical Sensitivity
(MCS)
https://aseq-ehaq.ca/wp-content/uploads/2025/06/Day-2-Summary_Dr-Dino-Zuppa-ASC.pdf
以前の「お知らせ」で、「環境ホルモン作用のあるフタル酸エステル類が、香料には含まれている可能性があるから無香料を推奨する」とお伝えしましたが、実は、フタル酸エステル類だけの問題ではないのです。
香料製品にはどんな有害な物質が入っているのか、私たちにはわからないのですから、無香料製品を選ぶことが健康につながります。
無香料にすると、空気中の化学物質VOCが70%も減り、空気がきれいになり、有害物質の一つが検出されなくなるという、カナダの報告は、「学校を『無香料』に」する根拠の一つになり得ると思われます。

