Petition update不正を通報した人が人生を壊されない社会を求めます ― 鳥取大学補助金不正・賃金不払い事件が示した公益通報制度の課題

【ご報告】控訴審判決について ― 公益通報者が守られる社会を目指して、上告します ―

松江 和子Japan
Jul 29, 2026

「公益通報者の命と尊厳が守られる社会を求める活動」にご理解とご支援をいただき、心より感謝申し上げます。

2026年7月29日、広島高等裁判所松江支部において、控訴審判決が言い渡されました。

結果は、双方の控訴を棄却し、一審判決を維持するというものでした。

皆さまから多くの署名とご支援をいただきながら、このような結果となったことは大変残念であり、無念な気持ちでいっぱいです。

私は鳥取大学で勤務していた際、補助金が申請段階から申請条件を満たさないのに申請され、流用され続け、内部で改善を求めても不正に流用され続けた為、文部科学省、厚生労働省などへ通報しました。

しかし、その後、私は職場で様々な不利益な対応を受けることになりました。

裁判では、私が受けた対応の一部について、5件のパワーハラスメントに当たると認められました。

認められたパワーハラスメントを含む一連の対応は、公益通報後の時期に発生しています。

しかし、判決では、それらが公益通報をしたことへの報復であったとは認められませんでした。

私は、この判断には重要な問題があると考えています。

なぜなら、公益通報に対する報復は、通常、「通報したから報復する」などと明確に示されるものではないからです。

不正を指摘された側が、「公益通報をしたから処分する」「報復する」と公に認めることは通常考えられません。

だからこそ、通報後に何が起きたのか、通報内容に客観的な裏付けがあるのか、その後の組織の対応がどのようなものであったのかを、時系列に沿って総合的に判断することが必要ではないかと考えています。

本件では、文部科学省、労働基準監督署、厚生労働省、AMEDへの通報後、

・補助金問題への対応会議における罵倒発言
・その後に認定された複数のパワーハラスメント
・主治医が就労可能との診断書を発行している中での自宅待機・休業命令
・他の職員との一切の接触禁止命令
・大学敷地内への立入り禁止命令

など、人格や生活に重大な影響を及ぼす不利益取扱いがありました。

また、これらは国による監査・調査や補助金問題への対応が行われていた時期とも重なっています。

その上、パワハラ行為は補助金の不正流用をしていた上司からのみ行われています。

今回の裁判では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公表した、鳥取大学関係者の補助金不正使用認定に関する資料も証拠として提出(甲33)しています。

これは、単なる新聞報道ではありません。

AMEDという公的機関が公表した公式資料であり、現在でも以下のホームページで確認することができます。

国立大学法人鳥取大学における研究費の不正使用に対する措置の決定 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/news/other/20171117_02.html

この資料には、

・鳥取大学が調査を行い、不正使用を認定したこと
・教授について不正使用認定がされたこと
・不正使用額986,022円
・AMEDによる申請・参加資格制限措置
・不正使用額の返還請求

が公表されています。

さらに、この不正使用認定を受けた教授は、一審および控訴審でパワーハラスメントが認定された病院長による事実に基づかない理由で業務変更をしたことに関与している教授です。また、深夜、早朝でも業務命令を出し、電話をかけるなどした上に、時間外労働賃金不払いを決めた教授で、私の告発によって、後に労基署による勧告をへて告訴状の検察送致という措置に至った教授です。

裁判では、他の職員もこの補助金流用の改善を求めて相談したにもかかわらず、この教授が流用を続けたことを示すメール証拠(甲42の2頁)、私がこの教授に改善を求めた会議の録音記録(甲494)、さらにこの教授が補助金流用に関わる指示をしていたことを示す証拠(甲103)も提出しています。

しかし、判決文では「補助金不正使用の実態は不明」とされています。

その上、公的機関による不正認定資料や不正な出張報告書、部下への補助金流用指示などの証拠が提出されているにもかかわらず、判決文では、「証拠としては、原告本人の供述、新聞報道が提出されているにとどまる」と事実ではない記載があります。

もし、公益通報後に不利益な取扱いを受けたとしても、今回の判決文が述べているように直接的な「報復の証拠(例えば、不正をした人が、「おまえが通報したからパワハラをしているんだ」などという証言をした記録など)」がない限り救済されないという考え方が広がれば、職場の不正をみつけた人は声を上げることをためらわざるを得ません。

また、この度の判決のように、公的機関による不正認定資料や不正な出張報告書、部下への補助金流用指示など多数の証拠を提出しているにもかかわらず、「証拠は本人の供述と新聞報道に留まる」「補助金不正の実態は不明」とされるのであれば、裁判で公益通報者が守られる望みなどないと思ってしまうのではないでしょうか。

その結果、国民の生命、安全、財産に関わる不正が見過ごされることにもつながりかねません。

今回の裁判で問われていることは、私個人が職場で不利益を受けたという問題だけではありません。

公益通報をした人が、その後の不利益を恐れずに声を上げることができる社会をどう作るのかという、社会全体に関わる問題です。

私は、この判断が今後の公益通報者保護制度のあり方にも大きな影響を及ぼす可能性があると考えています。

そのため、私は上告することを決意しました。

「公益通報を理由とする不利益な取扱いがあったかどうかを判断する際、直接的な証拠(『不正を告発されたから報復した』というような会話記録のような証拠)の有無だけを見るのではなく、通報後の一連の経過、通報内容の客観的裏付け、組織の対応、不利益取扱いの時期や内容などの間接的事実を総合して判断すべきではないか」

と最高裁に問いかけたいと思います。

これは今後、同じように組織の問題を指摘しようとする多くの人に関わる問題でもあります。

ここまで活動を続けてこられたのは、署名にご賛同くださった皆さま、支えてくださった皆さまのお力があったからです。心より感謝申し上げます。

私は、これからも、公益通報者の命と尊厳を守るための活動を続けていきます。

一人でも多くの方にこの問題を知って頂き、ご署名いただけるよう、引き続きご協力・ご支援を賜れますよう、なにとどよろしくお願い致します。

2026年7月30日

松江 和子

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