【熊本地震被災者の皆様へのお見舞い】激甚災害時における医療支援ネットワーク


被災地で苦しまれている全ての皆様
本署名へのご支援をいただいている皆様
このたびの熊本地震で、被災された皆様と現地での人命救助・緊急支援を開始している皆様に、衷心よりお見舞いを申し上げます。
9年前ですが(2016年の熊本・大分地震の翌年)、私が大会長を務めさせていただいた学会において『激甚災害におけるアカデミアの連携と地域復興』という市民公開講座を行ったことがあります。
その中で議論されたテーマのひとつに、被災地で「現在進行中で休めない医療」を受けている患者さんやご家族をどのように支援するのか、という問題がありました。
平時の医療提供計画は都道府県ごとに定められているため、隣県に応援を頼む手続きなどで「支援が遅れる」のではないかと心配をお持ちの方もお見えと思いますが、数々の大きな災害の経験を経て、現在では、災害時には知事間の応援要請などの手続きを待たず、ただちに厚生労働省の規定に基づく「広域医療支援のフレームワーク」が優先的に作動する体制が整備されています。具体的には「DMAT(災害派遣医療チーム)」や「DPAT(災害派遣精神医療チーム)」などの専門チームが即座に動く体制が整えられており、これらのチームは被災地からの正式な要請がなくても、自主的判断のもとで即時に現地に赴くことが可能です。また、自衛隊やドクターヘリ、被害が少なかった陸上ルート等の活用により、都道府県境を越えて傷病者を他県の災害拠点病院へ運ぶ広域搬送のシステムがただちに稼働します。
このような時に「平時の医療」のことを論じるのは不適切であることをあらかじめお詫びいたしますが、今後、病院の集約化が進むと、がんや血液疾患など高い専門性が求められる医療を適切に提供するためには、同様のシステムを恒常的に作動させる必要が高まることは、ほぼ必然になると考えています(実際、現在でも都道府県境を超えて「平時医療」を受けている患者さんはたくさんいらっしゃいます)。専門的過ぎる話で大変恐縮ですが、血液がんの中には、出血傾向が激しい急性前骨髄性白血病(有名な格闘家・アンディ・フグさんの命を奪った疾患)のように、診断後、いかに早く治療を開始できるかが生死の分かれ目となる病気もあり、その際には「うちの県では診れません」で済ますわけには行きません。すなわち、まさに今こそ、災害医療に学び、地域の医療計画を都道府県に任せている現在の「医療法」(医療法 第30条の4に自治体の役割が定められています)を見直す必要が生じているということです。
全国各地の施設のご協力により、おかげさまで血液専門研修/教育施設の実状調査もすでに約30%の診療科からご回答をいただいており、前回7月8日に配信した際の中間解析の時よりも、さらに深刻な現場の窮状が明らかになってきました。今月末の締め切り後、できるだけ早く集計を行い、皆様と共有させていただきます。
まずは、「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」として、今回の震災で被災された皆様の悲しみと苦しみに寄り添い、一日も早い復興を強く願います。
一戸辰夫(「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」代表)[連絡先:tatsuo.ichinohe@icloud.com いつでも皆様からの建設的ご批判・ご意見をお待ちしています]