1月の朝日新聞には、19日に紙面、続く21日にはデジタル版に、明治神宮の外苑再開発担当者である成瀬伸之総務部長のインタビュー記事が掲載されました。
目下、事業者から樹木の保全対策の見直し案が提出されようとしている、このタイミングでのインタビュー記事掲載は、事業者の意見をリードする事になるのではないかと気がかりです。
19日の紙面記事の見出しは「外苑再開発『緑の更新に必要』〜明治神宮担当者に聞く」となっています。
事業者や都知事がよく使う「緑の更新」という言葉には人間味のない冷たさを感じます。
古い樹木は危ないというイメージを煽り、古木は不要だと切り捨てて、若木に取り替えてしまえばいいという考えは、あまりにも短絡的で、サステナブルな時代の感覚にあっているとはいえません。
東京都立大学の気候学が専門の三上岳彦名誉教授は、気候変動の観点から見ても「新しく若木を植えても、既存の樹木の代わりにはならない」「若い木は葉の密度が少なく、日射を遮る効果も、蒸散効果もありません。同じ本数の木を植えるのだから構わないというのは、詭弁である」と指摘しています。
「木を切らずにこの計画は成り立たない」と説明する明治神宮ですが、それならば、木を切らずにできる計画に見直せばいいのではないでしょうか。野球場とラグビー場の用地を入れ替えず、そして高層ビルを建設しなければ、大量の樹木伐採をすることなく、景観も破壊されず、周辺住民の被害も軽減するのです。
多くの建築の専門家が、二つのスタジアムの改修による保存活用は可能であると指摘しています。
日本イコモス国内委員会も新建築技術者集団も、樹木伐採を必要としない改修による代替案を出していますが、受け入れたくない事業者は、それを無視し続けています。
実際に、神宮球場より古い甲子園球場は、シーズンオフを利用し試合を継続しながら改修工事を行い、次の100年に向かって見事に再生を果たしています。
なぜ神宮球場はそうしないのか、現在の計画が唯一無二のプランであると言い張るのか。
どうして「古いものを壊して更新することが善である」という考えを押し通し、「老朽化」を開発の理由にしたがるのでしょうか。
表向きは「老朽化」による施設の建て替え、その際の「競技の継続性」を理由に、野球場とラグビー場の用地を入れ替えて新設するのだとしていますが、その一方でなぜ「3棟もの超高層ビル」の建設が必要なのかが全く説明されていません。
超高層ビルに固執するのは、この再開発の本質が「緑の更新」でも「老朽化した施設の更新」でもなく、また事業者のいう「にぎわいのあるまちづくり」でもなく、異常なまでに容積率を拡大した高層ビル建設によってもたらされる莫大な利益にあるからです。
21日のデジタル版記事の見出しは「内苑の護持のため」です。
これもまた「緑の更新」「競技の継続性」「老朽化」に加えて、外苑の開発を正当化し、批判をかわすために持ち出された理屈です。
「内苑の護持」という言い分は、より一層都知事の発言と口裏を合わせているようです。
これに対する都市計画の専門家、明治大学特任教授、大方潤一郎先生のコメントを以下に紹介します。
1/21 朝日新聞デジタル:「内苑の護持のため」、明治神宮側が語る外苑再開発 担当者に聞く
〈大方潤一郎先生のコメント〉
朝日新聞のデジタル版の記事の見出しにも、19日の紙面とほぼ同様な記事が載った。デジタル版は、字数の制限が緩いので、紙面の記事よりも情報量が多い。その中で、絵画館前広場について、現在軟式野球場になっているところを本来の広場に戻せるようにいっているが、実は広場に生育している樹齢百年超の多数の樹木を伐採し、広場面積の過半を会員制テニスコートで囲い込んでしまうことには触れていない(そのことは記事に付属する図からも分かるはずなのですが)。なにより明治神宮の所有地の一部を都市計画公園から外してもらって、その土地を三井不動産に貸して高さ185mと80mの超高層オフィスビル等を建てさせて多額の地代を取るという、この事業の基本スキームも隠したまま。神宮球場が神宮内苑を「護持」するための主要な収益源であるかのようにいっているが、現在はそうであっても、今後は、球場の建て替えのために明治神宮が多額の費用を投資するので球場経営は赤字になるはず(ちなみに新ラグビー場の経営も赤字)。したがって、宗教法人明治神宮の経営を支える財源は、三井不の超高層オフィスビル等の地代で稼ぐ形になるわけです。パブリックなオープンスペースである都市計画公園だった土地をプライベートな土地にして、明治神宮と三井不が、その土地の上で貸ビル経営をして大きな収益を上げるというのが、この再開発事業の核心なのだが、朝日新聞は(もちろん、日経も産経も読売も)、どうもこの件については、ツッコミが浅い。巨大広告主の三井不に遠慮しているのか。

