キャンペーンに賛同いただきました皆様へ
お世話になっております。
私は、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)そのもののほかに、ゲーム行動症(医学的に正しい『ゲーム障害』の名称、以下はこちらで記述)の報道のされ方など、関連する動静も追っています。
今回は、その中でも、香川県外で起こった、2021年2月~2021年3月中旬までの関連時事を紹介いたします。
以前のお知らせ でも示しましたが、ゲーム条例の根幹をなす思想は、静かに国内各地に拡散されており、仕事や生活の現場という地上戦領域だけではなく、国政やアカデミア分野という空中戦領域など、あらゆる領域で「適切な対処」が求められるような状態になっています。このレポートは、それを知るに好適です。
[ 国政の階層 ]
< 参議院 内閣委員会 >
2021年3月16日、参議院内閣委員会において、ゲーム行動症に対する厚生労働省の見解や対応について、山田 太郎参議院議員が関係省庁の担当者に質しています。「日本国政府としてのゲーム行動症に対する対応」に関する言質を改めて取ることによって、2022年に迫ったICD-11(国際疾病分類 第11版)の正式発効の際、信頼のおける科学的根拠に基づいたゲーム行動症の診断基準や治療ガイドラインの策定を行うよう認識させる目的があると推察されます。
具体的には、以下の言質を厚生労働省から得ることに成功しています。
- ネット依存、スマホ依存の定義は存在しない
- ゲーム依存、ネット依存・スマホ依存の原因に関する科学的知見はない
- ゲーム依存、ネット依存・スマホ依存の治療法、予防法に関する科学的知見はない
後述しますが、厚生労働省に釘を刺すことによって、同省管轄の国立病院機構訟への適切な指導監督を促す目的も兼ねているものと思われます。この委員会の模様は、こちら からご覧いただけます。
< 東京都内 某所 >
2021年3月16日、東京都内某所にて、国会議員の有志による「活字文化議員連盟・子どもの未来を考える議員連盟」が主催となり、「学校教育のデジタル化・子どもの未来」なる題目で講演が行われました*1。講演内容は不明ですが、登壇者の顔ぶれと講演の題目からして「子どもが使う個人向け娯楽用ITサービス=悪」のテクノフォビア(科学技術恐怖症)思想に偏りすぎているきらいがあるため、大体はお察しが可能と思われます。
- 「ゲーム・ネット依存の現状と今後の課題」樋口 進(国立病院機構久里浜医療センター 院長)
- 「スマホ脳と子どもの学力」川島 隆太(東北大学教授)
- 「紙の本・新聞は人間をつくる」阿刀 田高(作家)
< 内閣府+文部科学省 >
2021年3月5日、内閣府から、今後の国内の教育政策の指針となる「子供・若者育成支援推進大綱(案)」が公開されました。が、その内容は絶句するものでした。ICT教育における懸念としてゲーム行動症がこじつけられた形で掲載されていたほか、科学的根拠が不明であるにもかかわらず、ゲーム行動症患者に対する隔離施設での集団キャンプを用いた治療を強く推奨するよう言及されていたからです。修正前の案は、こちら からご覧いただけます。
当然、この問題に詳しい国会議員や有志の方が懸念を公表しました。このゲーム行動症治療キャンプについては、先例である中国で、人権侵害に等しい行為がされていたことが報告されており、あまつさえ、効果がほとんどないとの調査報告すらあるいわくつきの代物*2 だからです。そのようなデタラメな知見に基づいた国策を打たれてはならない、と、Webなどを通じて、パブリックコメントへの公募が呼びかけられました。結果、該当する記載は、後日提示された修正候補案で、無事に消去されていました*3。
[ 地方行政の階層 ]
< 東京都 >
2021年2月24日、東京都議会にて「ゲーム行動症対策として、科学的根拠に基づかない一律の時間制限等は行わない」と、小池百合子知事から答弁がありました*4。この答弁が得られるまでの経過は、こちら から知ることができます。
東京都は国内最大のIT産業の集積地です。また、東京都は、全国知事会での発言力が大きいため、ほかの道府県への影響も強いうえ、一国に匹敵する経済基盤を持つことから、国に対しても、単独で議論の殴り合いができる力を持っています。つまり、東京都による「ゲーム条例と酷似した法令や政策は策定しない」旨の公での発言は、ゲーム条例の拡散を抑止する”強力な”一手になります。
< 神奈川県横浜市 >
2021年3月12日、神奈川県横浜市の健康福祉部付けで、依存症対策の推進に向けた「横浜市依存症対策地域支援計画(仮称)」の策定に際して、パブリックコメントを受け付ける旨の発表がありました。
しかし、この計画の素案に問題があります。というのは、この素案では、依存症のカテゴリーに「ビデオゲームを含めたITサービスの使用」が含まれており、かつ、ゲーム行動症(やインターネット依存症)の定義が「ITサービスの使用時間が長い状態」とされているからです。
なお、素案は、こちら からご覧いただけます。
本キャンペーンでも幾度となく申しておりますが、少なくとも2022年までは、ゲーム行動症は、WHOも厚生労働省も病気と認めませんし、ITサービスの使用時間が長いとゲーム行動症になると断言した医学的根拠はありません。よって、この素案を放置すると、高確率で、ゲーム行動症に苛まれている人に対して、デタラメな知見に基づいたアプローチがされてしまうことによって、彼ら彼女らがさらに苦しむ状態になることが予想されます。
同市にお住まいで、ゲーム条例の思想が横浜市を汚染することに懸念を抱いている方は、ぜひ、パブリックコメントへの公募をお勧めいたします。
< 岡山県津山市 >
2021年3月9日、岡山県津山市議会にて、同市教育委員会が進めている、デタラメな知見と偏見に基づいたゲーム行動症及びICT教育の啓発の方針に対して、三浦 拓市議が答弁を行いました。
同市教育委員会は、ゲーム条例と根幹的な思想が酷似したIT機器の「適切な」使用に関する啓発を行っています。それを是正すべく、三浦氏は、かねてから教委と内密に折衝していましたが一向に埒が明かないため、議場という公開の場で厳しく批判する“公開処刑”に踏み切りました。ゲーム条例が施行されて以降の香川県のICT教育の方針は大きく歪んでいるため、その轍を踏もうとしている故郷の自治体の関連政策を目の当たりにした「まともな科学リテラシーや情報リテラシーを備える大人」なら、かの方針に激昂することは当然の成り行きです。
こちら から視聴できる答弁を見ると、彼のような県議があと1人いたら、と、香川県在住者である私はつい羨望してしまいます。
しかし、“公開処刑”をもってしても全く効果がありませんでした。こちら の宛先* (教育委員会学校教育課)へ、忌憚のない厳しいクレームを遠慮なく入れて差し上げましょう。
* お使いのメールクライアントアプリが起動します
< 鹿児島県警察本部 サイバー犯罪対策課 >
2021年2月10日、鹿児島県警サイバー犯罪対策課が、ゲーム行動症に関するデタラメな知見をTwitterに投稿するインシデント発生させました。当然のごとく、それに対しては、批判という重機関銃を浴びせられました。しかし、その批判に対して、定型文同然の謝罪文だけを残して該当する投稿を削除してしまう措置をしたことから、俗にいう「炎上」案件になってしまいました*5。
ちなみに、炎上した投稿をした場合は「速やかに謝罪の旨の投稿をするとともに、該当の投稿を削除せず、その投稿をするに至った経過の説明を書いた投稿をあわせて行う」ことが、適切な解決の手段*6です。
鹿児島県警サイバー犯罪対策課は、業務を通して、ゲーム行動症に苛まれている人の現状を認識しており、それを踏まえてゲーム行動症について啓発したかったようですが、ゲーム行動症に関して正確な知見を備えていなかったことが原因で、ゲーム行動症に関するフェイクニュースを拡散してしまう顛末を導いてしまいました。
よって、この時事は、科学リテラシーや情報リテラシーを鍛える重要性を再認識する反面教師と言えます。
[ 現場の階層 ]
< 関東地域の鉄道駅 >
2021年2月ころから、関東地域の鉄道駅にて、ゲーム行動症を「治療法がある病気」と明記した屋外広告が掲示されていました*7。これについては、有志がWeb上で報告したことによって、公に発覚しています。本キャンペーンでも幾度となく申しておりますが、少なくとも2022年までは、ゲーム行動症は、WHOも厚生労働省も病気と認めませんし、医療従事者向けの治療ガイドラインも決めることができません。
よって、この屋外広告は、虚偽の情報を掲出していた*8のです。
ちなみに、虚偽を書いた広告の出稿が発覚すると罰せられます。法に抵触するためです。
この時事の顛末ですが、ゲーム行動症に関して正確な理解をしている国会議員が、しかるべき行政機関へ指摘したため、ほどなくして、当該箇所の修正が施された広告が掲示されました*9。医師法違反の疑いがあったため、この国会議員の指摘を介して、当該広告を出稿した久里浜医療センターは、管理者である国立病院機構や、その上位にある厚生労働省から厳しく指摘を受け、やむなく訂正したものと推察されます。
[ さいごに ]
以上、紹介させていただきました実例にあるとおり、ゲーム条例の歪んだ思想は、静かに、かつ、知らない間に、お住まいの地域に拡散されます。
心ある国会議員もその浸透の抑止に奮闘していますが、その職務の性質上、国会議員は、地方行政に直接干渉することができません。よって、ゲーム条例の歪んだ思想の拡散を食い止める「勇者」となるのは、国会議員ではなく、むしろ、そこのあなた!なのです。
もし、懸念とされる事象を見つけられた場合は、勇気を振り絞り、お住まいの自治体にクレームを入れる、あるいは、お知り合いの議員に一報を入れることをお勧めいたします。
なお、「勇気ある行動」は、法と倫理に則って行っていただきますようお願い申し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。
主催者 きしもと みつひろ
[ 参考資料 ]
*1 古屋範子氏のツイートに基づく
(https://twitter.com/Noriko_Furuya/status/1371789229886300162
*2 井出草平の研究ノート「キャンプではインターネット依存症は治らない(Global Times)」
(https://ides.hatenablog.com/entry/2020/11/16/142629
*3 藤末健三氏のツイートに基づく(https://twitter.com/fujisue/status/1372348425807667203
*4 ねとらぼ「ゲーム規制条例、東京都は追随せず」
(https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2102/24/news150.html
*5 ねとらぼ「鹿児島県警、“ゲーム障害という精神疾患”ツイートで謝罪」(https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2102/13/news020.html
*6 東洋経済オンライン「炎上!そのとき絶対やっちゃいけないこと 投稿の炎上への正しい対処方法を教えます」(https://toyokeizai.net/articles/-/111466
*7 桜音桜花様のツイートに基づく(https://twitter.com/Gamble_Striker/status/1361899198115770377
*8 是正の理由について(https://twitter.com/mopamopa0/status/1362438875356884996
*9 らよーる様のツイートに基づく(https://twitter.com/layolu/status/1368425927131230209

