こんにちは。6月2日に小金井市議会に陳情書を提出し、11日に厚生文教委員会にて意見陳述を行ってきました。以下に陳情書と発言内容を記します。なお、皆さまから頂いた署名は活用しておりません。
【陳情書内容】
令和2年6月2日
(西暦 2020年)
(宛先)小金井市議会議長
団 体 東京学芸大学に授業料の返還と文部科学省に支援を求める会
高等教育無償化プロジェクトFREE東京学芸大学
代 表 原太郎
国に対しCOVID-19対策としての学生・高等教育機関への支援と高等教育無償化の計画を求める意見書の提出を求める陳情書
1 陳情要旨
以下の内容を議会において採択し、その旨の意見書を、地方自治法第99条の規定により、国及び衆議院・参議院に提出されたい。
(1)新型コロナウイルス感染症対策として行われている学生・高等教育機関への支援策が、有効であるかを判断する実態調査を定期的に行い、学生・高等教育機関に対するさらなる緊急支援策を行うこと。
(2)市民が監視できるような高等教育における無償教育導入までの、期間と過程を明確にした計画を示すこと。
2 陳情理由
(1)国の新型コロナウイルス感染症に関する学生及び高等教育機関への不十分な支援対策
内閣は5月19日、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で困窮する学生に対し現金給付を閣議決定した。
募集の対象は、現在(2020年6月2日)のところ国内の大学(専攻科、別科及び大学院含む。)、短期大学(専攻科、別科を含む。)、高等専門学校(第4学年、第5学年及び専攻科に限る)、専門学校(専修学校(専門課程(上級学科を含む)))及び日本語教育機関に在籍する学生とされている。
支給金額は、住民税非課税の学生については20万円、他の学生については10万円である。受け取れる条件は以下の通り。(詳細は文部科学省ホームページを参照されたい
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/mext_00686.html
対象学生は、家庭からの仕送り額が年間150万円未満、自宅外で暮らしているあるいは家庭から援助を受けていない、生活費・学費に占めるバイトの割合が高い、家庭の収入減少等で家庭からの支援が受けられない、コロナの影響でバイトの収入が5割減し、さらに、かつ以下のいずれかに該当する人である。修学支援新制度を利用しているあるいは申請中である、日本学生支援機構の第一種奨学金を限度額まで借りている、日本学生支援機構の第一種奨学金が借りられず、民間等の支援制度を利用している、いずれかに該当する学生が支援対象となる。
しかし、上記の制度は全く不十分であると言わざるを得ない。高等教育無償化プロジェクトFREE(以下、FREE)の集めた「影響調査」には「家計収入の減少は5割」、学生の85%がバイトをしているという状況の中「7割の学生が減収」、「学生の5人に1人が退学を検討」などの実態が寄せられている。「バイト収入が途絶えて食事もかなり抑えて苦しい。母は失業した。家賃の支払いも厳しい。親の収入で奨学金の給付型と無利子も該当しないが、兄弟もいるので学費は有利子の奨学金を借りて払っている」(私立大学3 年、世帯年収:600~800 万円)などと、世帯年収関係なく学生の困難な状況が広がっており、学生が適切な支援を受けられていない状況が生じている。
(2)国の高等教育における無償教育の漸次的導入という法的義務の不履行
憲法第26条1項により、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とある。ここでいう「ひとしく」とは教育の機会均等を意味し、とくに経済的理由によって就学できないことがないようにすることを要求している。すなわち、すべての人が、お金の心配をせずに大学・短期大学・大学院・高等専門学校に行けるよう、国は法令を整備しなければならない。
これは国際的にも求められていることである。日本国も批准している社会権規約第13条1項には「教育についてすべての者の権利を認める」とある。また、社会権規約第13条2項(c)には「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」とある。同様に、子どもの権利条約28条1項も、「締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、〈略〉(c)すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする」としている。社会権規約においては第2条で、子どもの権利条約においては第4条で締約国の実施義務を規定している。
具体的に、国がどのように実施義務を果たすのかについては社会権規約の一般的意見第13パラグラフ52において整理されている。そこでは、締約国である日本が「規約に従った中等、高等および基礎教育の提供を含む国家的教育戦略(national educational strategy)を採択しかつ実施するよう求められ」ていることが指摘されており、それが最低限であるとしているのである。また、この戦略(あるいは計画)には、「教育への権利に関する指標および基準点のような、進展が緊密に監視できるようにするためのしくみが含まれるべきである」とされている。すなわち、国は、市民が監視できるような高等教育における無償教育導入までのロードマップを国民に示さなければならないのである。
1979年、日本国は、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第一三条2(b)及び(c)の規定の適用に当たり、これらの規定にいう『特に、無償教育の漸進的な導入により』に拘束されない権利を留保する」とした。その後2013年にはこの留保を撤回し「よって、日本国は、〈略〉これらの規定の適用に当たり、これらの規定にいう『特に、無償教育の漸進的な導入により』に拘束される」こととなる。ここでいう「無償教育の漸進的な導入」とは、一般的意見第13パラグラフ14において整理されており、「無償の中等教育および高等教育の達成に向けて具体的な措置をとる義務もあるということを意味する」とされている。
無償というのは、授業料や教科書代、入学金等学校でかかるお金がかからないということである。ここでいう無償とは、一般的意見第11パラグラフ7において整理されており、「この権利は、子ども、親または保護者に対して対価を要求することなく〈略〉教育が利用可能となること。〈略〉政府、地方の公的機関または学校が課す料金およびその他の直接の費用はこの権利の享受に対する阻害要因となり、その実現を危うくする可能性がある。〈略〉親に対する強制的負担要求(実際には任意ではないのに任意であるかのように説明されることもある)のような間接的な費用〈略〉も、同じ範疇に含まれうる」とされている。以上は、初等教育における無償の概念を整理したものであるが、同じ無償の概念が高等教育にも援用されているため、高等教育における無償教育を享受する主体は学習者と捉えられる。
以上により、学習者に負担を迫る、貸与型の奨学金制度を整備することは、無償教育の漸進的導入という国際的な法的義務も果たせていないことになる。
【意見陳述】
弊会は、新型コロナウイルス感染症に伴う社会活動の制限、および経済的な負担により、学生の学習権が侵害されているという問題関心のもと発足しました。この度小金井市議会に陳情書を提出いたしましたのは、新型コロナウイルス感染症の影響によって生じた学生の学習環境の悪化に対する支援策を、そして根本的な原因である高等教育の高額すぎる学費を無償にしていく方針を、学生からだけでなく、市議会からも国に要請していただきたかったからです。
まずは、小金井市内にある東京学芸大学に在籍する私たちの状況からお話ししたいと思います。4月中旬ごろ、新型コロナウイルス感染症に対する、国や東京学芸大学をはじめとした各大学の対応に、私は納得がいっていませんでした。そこで私が自身のSNS上で、大学の対応を批判していたところ、同じ関心をもつ学生が声をかけてくれ、弊会を作ることになりました。新型コロナウイルス感染症という状況下でしたので、会議はおもにZoomをつかったオンライン上で行い、はじめて直接会ったのはこの陳情を述べるための手続きをしたちょうど先週あたりでした。
弊会は「東京学芸大学に授業料の返還と文部科学省に支援を求める」署名活動を4月26日に開始しました。署名では大学構内への出入りが禁止され、構内の図書館や研究室、実習室、運動施設等が使用できないのにも関わらず授業料が例年通り徴収すること、そもそも高等教育にかかる費用は無償であるはずなのに年間約60万円の学費が徴収されること、の2点を問題点として主張しています。さらに、そこでは新型コロナウイルス感染症下において、保護者や学生本人の収入が減少し、学習権が侵害されているという状況を訴えています。署名は半月ほどで559筆集まり、東京学芸大学には提出済みです。現在のところ、文部科学省にも署名を提出する予定ですが、その方法については検討中です。
東京学芸大学に対し、署名とともに以下の要望書を提出しました。①学則内の「学長が認める特別の事情がある場合は、授業料相当額を返還することができる」という趣旨の規定を加えること。 ② 國分充学長は、新型コロナウイルス感染症に伴う学習権の侵害状況を「特別の事情」と認め、本学の全ての学生に対して前期に納入した授業料の相当額を返還すること。 相当額については、学生と大学側の協議のうえで決定すること。 ③ 本学が授業料返還により、大学運営等に関係する費用の支払いに支障をきたす場合、必要に応じて文部科学省に運営費交付金の増加など特例的な措置を求めること。
以上に対して、大学側はすべての要求を棄却しました。この間、大学側は緊急貸与型奨学金を東京学芸大学の学生に対して開設しています。大学側は当制度を開設することで弊会に対する理解を求めてきました。
それに対して弊会は、この緊急貸与型奨学金は学習権を保障するものたり得ないと、再度批判を行いました。当制度は、在学中かつ2年以内に借りた額だけ返納しなければならないと定めているため、学生は在学中の学習時間を削ってまでアルバイトをすることになります。在学中のアルバイトを強要する奨学金制度は、学生への十分な支援制度となり得ません。しかも、平時の対応として、授業料の全部または一部の免除をする支援を行っていますが、2019年秋学期の学部のみの選考結果をみると、申請者が476人いるなかで、不許可者が76人、半額免除者が135人と、多くの学生が支援の穴から零れ落ちている実態があります。そこで、大学側に以上のような支援策で、経済的理由により授業料の納付が困難なすべての学生を網羅できているのか、生活が困窮しているすべての学生にとって真に有効なのかと再度問い合わせました。さらに、学生の学習権保障義務のある国に対して、学生と連帯し、学生に対する緊急支援策と、高等教育が無償になるまでの期間とプロセスを明確にした計画を示すよう東京学芸大学に要求しました。
これをうけて大学側は、平時の授業料免除制度では、申請者全員が免除を受けられないと回答し、経済的な理由で授業料の納付が困難なすべての学生を網羅できているわけではないことを明らかにしました。そのため、新型コロナウイルス感染症対策として授業料免除の追加募集を始めたとしています。そして、緊急貸与型奨学金についての有効性は、支援の渦中において、回答は困難であるとしています。しかし、弊会の要求した、学生と連帯し、国に対して学生への緊急支援策と、高等教育が無償になるまでの、期間とプロセスを明確にした計画を示すという、内容については一切言及されませんでした。弊会として、引き続き粘り強く交渉していく予定です。
国レベルの支援策については、先日、高等教育を受けている学生を助けるための制度として、「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』が創設されました。この制度は、学生たちが実際に声を上げた結果として与党が動いて創設したものです。
4月22日には学生団体である高等教育無償化プロジェクトFREEが「新型コロナウイルス感染症の影響から大学・専門学校生を守るための緊急提言」を行い、4月9日から21日までのアンケートの結果を公表しました。その結果として、大学生の6割がアルバイトの収入が減った、あるいはなくなったこと、学生の13人に1人が退学を検討していることが明らかになりました。
4月24日には、#COVID19学費問題のツイートをきっかけに組織された学生団体が、一律学費半額を求めるアクションとして、署名運動を開始しました。また、この前後に、200を超える全国各地の大学で学生による署名運動が個別に始められ、その多くが一律学費半額を求めるアクションに賛同しました。そして、30日には、約1万筆集まった署名を文部科学省に提出しています。同日、高等教育無償化プロジェクトFREEは、アンケートの結果を再び発表しました。前回の結果からわずか6日間で、5人に1人が退学を検討しているという結果に変わりました。前回の結果の発表が多くの報道機関で報道され、それを見た学生がアンケートに答えたものだとすると、より実態に近いものとなっているのではないでしょうか。
そういうこともあり、5月4日には野党合同WEBヒヤリングが企画され、5月6日に実施されました。そこで聞いた学生の声をもとに、野党共同会派は学生を支援する法案の骨子をまとめ、11日に衆議院に共同提出しました。その法案の内容は、①学費軽減に同意する大学や専門学校などに通う全学生の授業料を、55万円程度を上限に国が半額負担する、そして②アルバイト代が一定以上減少した学生には、20万円を上限に減収分を支給するというもので、6月11日現在も審議中になっています。
野党が法案を提出した翌日の5月12日、「新型コロナウイルス感染拡大による困窮学生対策に関する自民党プロジェクトチーム」は、全学生の2割を支給対象とし、学生1人当たり10万円の給付を柱とする支援策を発表しました。こうして政府は、学業の継続が難しくなった大学生や大学院生ら約43万人を対象とする学生支援策を19日に閣議決定しました。以上が、「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』創設までのあらましです。
「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』は、その予算として2020年度第1次補正予算の予備費1兆5000億円から531億円をあてています。しかし、これは不十分であると言わざるを得ません。さらには、5月27日に閣議決定され、6月8日に国会提出された第2次補正予算案には、直接的な学生支援の予算は計上されていません。300万人以上の高等教育を受ける学生のうち5人に1人が退学を検討しているというのに、7人に1人以下しか救うことのできない制度だけでは不十分であることは明白です。まずは早急に、国会で現在も審議されている学生支援法案が実のあるものとなるように、国会で充分に審議されるよう小金井市として声明を出していただきたいところです。
そして、この問題の根本にあるのは、学費が高額すぎることです。このことついては弊会が小金井市議会に提出した陳情書の陳情理由(2)に詳しく書いてあるため、ここでは説明いたしませんが、国はそもそも高等教育を漸進的に無償化する義務を負っています。その義務を速やかに遂行していないが故の、学生の生活の厳しさなのであり、学生の子どもをもつ家庭生活の厳しさなのです。
弊会は、3人のメンバーそれぞれがそれぞれに授業や課題、自らの研究や生活費を稼ぐためのバイト、家庭の事情、自らの体調と闘いながら、ほぼ毎日活動し、東京学芸大学における学生運動を組織し、全国規模の学生運動を支援してきました。小金井市議会に陳情書を出すということを決めたのも、締め切りのかなりギリギリになってしまい、陳情書には必要最低限度のことしか載せることができませんでした。そこに書ききれなかった私たちの思いを、この発言で代えさせていただきたいと思います。この原稿は、弊会のTwitterアカウントに載せておきますので、大変恐縮ですが、再度参照する際は「東京学芸大学に授業料の返還と文部科学省に支援を求める会」と調べていただけたらと思います。
ありがとうございました。