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前回のお知らせでは及川の生体肝臓移植経験談をお伝えしましたが、今回のお知らせでは日本で多く行われている『生体臓器移植(生体移植)』について詳しくお伝えしたいと思います。
■生体臓器移植(以下:生体移植と表記)とは
生きている健康な方から臓器を提供してもらうことによって臓器移植をすることを言います。生体ドナーからの臓器提供は健康な人間に手術を行うという倫理的問題がある為、海外では脳死下臓器提供を推進する方策がとられてきました。
日本では亡くなった方からの臓器移植が少ない為、海外に比べて生体移植の割合が非常に高くなっています。
- 腎臓の臓器移植における生体移植の割合
日本 92%、アメリカ 22%、スペイン 10%、韓国 63%(資料:2020年日本移植学会データで見る臓器移植 ) - 肝臓の臓器移植における生体移植の割合
日本 78%、アメリカ 6%(資料:2019年 脳死肝移植と生体肝移植の割合:2019年の日米の症例数の比較 日本移植学会ファクトブック2020 )
海外でも昨今では、生体移植は臓器の状態(摘出~移植まで血液を止めている時間が短く済み、回復や正常に機能する期間が長いなど)が良く移植が行えるとして推奨されていたり、臓器不足の問題もあり生体移植が増えています。
◇生体移植が可能な臓器
- 肺
部分移植が可能、多くの場合で2人のドナーが必要。摘出した分、生体ドナーの臓器機能は低下しますが、日常生活に支障をきたすことはありません。 - 肝臓
部分移植が可能、1人のドナーからの移植が多い。ドナーの肝臓は提供後に残りの部分から再生。形は元に戻りませんが、容積の回復に伴い機能も回復します。採取部分が大きすぎた場合には肝不全になる危険性があります。 - 腎臓
2つあるうちの1つ、1人のドナーからの移植が多い。摘出した分、生体ドナーの臓器機能は低下しますが、日常生活に支障をきたすことはありません。 - 膵臓
部分移植が可能、1人のドナーからの移植が多い ※現在、生体膵移植はほとんど行われていない。 - 小腸
部分移植が可能、1人のドナーからの移植が多い。小腸は残存腸管が機能を補うようになります。採取部分が大きすぎた場合には腸管不全になる危険性があるため、切除部分を一定以下に留める必要があります。
◇2021年(生体移植可)臓器別移植件数
(※脳死下で肝腎同時移植が3例、膵腎同時移植が23例施行されており、肝臓、膵臓、腎臓で重なって集計されています)
肺 / 脳死: 74例、生体: 19例、総数: 93例
肝臓 / 脳死: 60例、生体: 361例、総数:421例
腎臓 / 脳死:106例、心停止:19例、生体:1,648例、総数:1,773例
膵臓 / 脳死: 23例、総数:23例
小腸 / 脳死: 2例、総数:2例
資料:日本移植学会データで見る臓器移植、日本移植学会 ファクトブック2022 より
日本では2021年の1年間で2,028例の生体移植が行われています。
◇2023年12月末時点 <脳死移植待機登録者数>と<待機中死亡者数>
肺 (1998年 5月~)/ 脳死移植待機登録者数: 572人、待機中死亡者数: 861人
肝臓(1997年10月~)/ 脳死移植待機登録者数: 376人、待機中死亡者数:1,744人
腎臓(1995年 4月~)/ 脳死移植待機登録者数:14,330人、待機中死亡者数:5,143人
膵臓(1999年 3月~)/ 脳死移植待機登録者数: 155人、待機中死亡者数: 82人
小腸(1999年 3月~)/ 脳死移植待機登録者数: 9人、待機中死亡者数: 7人
心臓(1997年10月~)/ 脳死移植待機登録者数: 865人、待機中死亡者数: 575人
引用:日本臓器移植ネットワーク 移植希望登録者数 累計登録者数 2023年12月末
■生体移植を受けるには
- 診てもらっているかかりつけの医師から移植施設を紹介してもらう、または移植施設へ問い合わせをして「移植が必要か」「その施設で対応可能かどうか」を検討してもらいます。
- 日本臓器移植ネットワークへの登録は不要です。また、日本循環器学会、日本肝移植学会などの関連学会の適応評価検討委員会の審査を受ける必要もなく、移植施設で移植が必要と判定されれば受けることができます。
- 臓器を提供していただくドナーの方が必要です
※移植後に血流障害、拒絶反応、感染症、ウイルスの再感染、疾患の再発、合併症、その他さまざまな要因で移植された臓器が再び機能不全に陥ることは一定頻度認められ、機能不全になった場合には再移植が必要となります。
※移植の適用やドナーの適格性の判断基準は施設により違いがありますので、移植施設にご相談ください。
※生体移植は健康な方からの臓器提供となり生体ドナーへのリスクを伴うため、慎重に判断されます。
■生体ドナーになるための基本的条件
- 「健康な人にメスを入れる」ことになり、ドナー手術にもリスクや合併症が起こることがある為、生体ドナーの方が『そのリスクを十分に理解し、自発的に臓器を提供すること』が重要です。
→精神科医など第三者による自己意思による提供であることの確認が必要です。 - ドナーはあくまでも本人の自発的な「自由意思」である必要があり、報償を目的とするものや強制されるものであってはなりません。
→臓器移植法によって「禁止事項」と「罰則」が定められています。 - ドナーは原則的にレシピエントの親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)である必要があります。
→レシピエントとの親族関係を戸籍などの書類で確認する義務が医療機関に課せられています。 - 体の状態や年齢、血液型、臓器機能など、各臓器ごとの医学的な適応基準を満たしている事。
→生体ドナー保護のため、それぞれの臓器で生体ドナーとしての適格性のガイドラインが出されています。悪性腫瘍や感染症などにかかっておらず健康であること。血液検査やX線(レントゲン)検査などさまざまな検査によって確認がされます。 - 提供に相応しくない心理的、社会的背景が無いこと
→例:親族内での問題、ドナーとなることを拒否できずにいる、ドナー家族の家庭環境など
■臓器移植法、ガイドラインでは以下のように定められています
◇「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)
第13 生体からの臓器移植の取扱いに関する事項 「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)
1 生体からの臓器移植は、健常な提供者に侵襲を及ぼすことから、やむを得ない場合に例外として実施されるものであること。(省略)
2 臓器の提供の申し出については、任意になされ他からの強制でないことを、家族及び移植医療に関与する者以外の者であって、提供者の自由意思を適切に確認できる者により確認しなければならないこと。
3 提供者に対しては、摘出術の内容について文書により説明するほか、臓器の提供に伴う危険性及び移植術を受ける者の手術において推定される成功の可能性について説明を行い、書面で提供の同意を得なければならないこと。
(略)
6 臓器の提供者が移植術を受ける者の親族である場合は、親族関係及び当該親族本人であることを、公的証明書により確認することを原則とし、親族であることを公的証明書により確認することができないときは、当該施設内の倫理委員会等の委員会で関係資料に基づき確認を実施すること。
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◇臓器移植法(正式名称「臓器の移植に関する法律」) より一部抜粋
(臓器売買等の禁止)
第十一条 何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。
臓器提供の対価として財産上の利益を与えたり要求してはならない。違反者は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処する。その他、書面作成などにも罰則が適用される。(略)
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■生体移植が受けられることも『奇跡』だということを知ってほしい
肝臓移植を例にさせていただきますが、先述した肝移植の数字にある『待機中の死亡者』とその数字のほかにも移植を受けられなかった方たちがいます。
日本移植学会ファクトブック2022 によると『年間2,000人近くの方々が、肝移植の適応がありながら受けることができずに死亡していると推定されます。』とあります。
この数字の中には「自分の意志で移植を受けなかった方」「移植の選択肢を知らなかった方」などのほかに「生体ドナーがいない方」「生体移植が移植手術可能なタイミング内に間に合わなかった方」などもいらっしゃいます。
◇生体ドナーがいないケースも
例えば・・・
- ドナーになる意思のある人が家族、親族にいない
- 親子3人家族で、両親以外にドナーになる意思のある人がいない。しかし、両親とも高齢でドナーの条件をクリアできない
- 家族の中に24時間介護が必要な人がいて、介護と生活を回すためには家族の1人でも万が一のことがあっては生活が破綻してしまう為にドナーの許可がおりない
- 家族全員がドナーになると言ってくれていたが、全員の臓器が適合しなかった
など
→家族親族がいない、関係が良くない為ドナーになってもらえる人がいないなど家族関係によって生体移植が受けられない事があるだけでなく、家族に負担をかけられない状況にあるため、生体移植を断念するケースもあります。
◇生体ドナーがいても移植が行えるとも限らない
例えば・・・
移植手術はレシピエントが移植に耐えられる体調にある期間の中で移植準備から移植手術までが行われる必要があります。さらに移植手術日にはドナーとレシピエントの双方が手術を受けられる体調である必要があります。
- 手術予定日にどちらかが体調不良になる→回復まで延期
- ドナーの臓器の状態が移植に適した状態になっていない→改善されるまで延期
→ドナーになる準備をすすめ移植予定日も決まっていたがドナーが体調を崩し延期に、そのままレシピエントが移植に耐えられない体の状態になり移植が行えなくなる。などのケースもあります。
◇生体移植がうまくいくためには家族やまわりの方の理解と協力が必要
生体移植では家族・親族の中から2人が大きな手術を受けることになります。その為、経済的にも、精神的にも(場合によってはサポートも必要になる為)体力的な家族の負担も大きくなります。
そのため、移植前からレシピエントやドナーの状況や困りごと、これから起こりうることに対して理解をしてもらい、家族や親族、職場など周囲の方たちからの協力や支援が得られるように準備しておくことが大切です。
◇生体移植は生きている人同士で行われる為、人間関係や精神面での影響も考えられます
- 力関係の強い人からドナーになることを強く求められたら断れるか?
- 断ってしまったら亡くなってしまう可能性が高いと知って断れるか?
- 臓器提供を受け、命を救ってもらった恩人から金銭等の見返りを求められたら断れるか?
- 別世帯で家族のいるドナーに障がいが残ったり、もしものことがあった時にレシピエントはどうするべきか
- 移植を受けられずにレシピエントが亡くなった場合、ドナーになることができなかった人の心中は
- 提供した相手を身近で見ていて、服薬や食事管理などを怠り、自分が提供した臓器を大切にしてくれていないと感じたら
などのリスクも考えられます。
◇「生体移植」は「脳死・心停止後の提供による移植」に比べて医療現場にとって十分に準備をして行えるというメリットもある
脳死・心停止後の提供による移植は緊急手術となるため医療現場の方たちの負担が大きいのに比べ、生体移植に関しては予定を立てて行える、また、ドナーの検査などを十分に行えるというメリットがあるそうです。
参考:J-STAGE 生体移植におけるドナー管理
■生体移植に関する記事のご紹介
- 読売新聞オンライン 1歳児に父親の肝臓を、日本初の生体肝移植「自分が逃げたら当分ない」使命の執刀…1989年11月「あれから」<38>
→「日本初の生体肝移植」についての記事です - NHK クローズアップ現代 夫婦で臓器分け合う 新たな選択めぐる葛藤 あなたはどうする?
→夫婦間の生体移植についての記事です
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■1月のお知らせでご紹介した読売新聞記事に対する東大病院看護部コメントをご紹介
◇読売新聞オンラインの記事
・2024/01/01 配信 移植見送り相次ぎ「救える命救えなくなる」…ドナー増加で体制整備急務
・2024/01/10 配信 調査研究 岐路に立つ臓器移植
◇東大病院HP 看護部NEWSより
・2024/01/10 臓器移植に関する報道について(一部抜粋)
前年度の1.54倍という脳死下臓器移植件数は、一人ひとりのスタッフの懸命な努力により実現したものであり、病院としても診療報酬上の配置基準を大幅に超える人員を配置し、臓器移植に対応する努力を続けています。このことはぜひご理解ください。
臓器移植でしか救えない命を救うために、ドナーとその家族の意思を大切に次の命につなげるために、看護部としても引き続き体制の強化に努めます。しかし、ドナーの増加に対応するには、わが国の臓器移植実施施設が増える必要があります。
現場の方たちの苦悩がよくわかる全文を以下より是非、皆さんにも読んでいただけたらと思います
→東大病院HP 看護部 NEWS 臓器移植に関する報道について
今回のお知らせは以上です。
次回のお知らせでは、生体移植当事者(生体移植の提供者ドナー、生体移植を受けた人レシピエント、生体ドナーを辞退した人)の思いについてお伝えしたいと思います。
引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

