
カバー写真:毎日新聞社 岩崎歩記者 提供
2026年4月16日付で逆転勝訴的な和解が成立しました。
多くの方にご賛同をいただき、深く御礼申し上げます。
以下のとおり、ご報告いたします。
控訴人 験馬綾子
川崎重工業(株)・中国出向エンジニア過労死事件のご遺族を支える会
川崎重工業(株)・中国出向エンジニア過労死事件 弁護団
海外労働連絡会
【サマリー】
川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)のエンジニア・清島浩司さん(当時35歳)は、2013年、中国の合弁会社に出向中に過重労働により自死し、2016年、神戸東労働基準監督署は労災を認めました。妻・験馬綾子さんが会社側の責任を問うため川崎重工を提訴しました。
一審において神戸地裁は、清島さんが過酷な過重労働下に置かれていたさまざまな事実があるにもかかわらず、訴えを認めませんでしたが、大阪高裁で行われた控訴審においても験馬さんと弁護団は粘り強く主張を続け、また「川崎重工業(株)・中国出向エンジニア過労死事件のご遺族を支える会」、海外労働連絡会などを中心として支援の輪が大きく広がり、各種メディアでも報道されるなど世間の注目を集めていました。
その結果、3月4日の結審と同時に大阪高裁の裁判官から和解勧告があり、川崎重工がこれを受け入れたことで、昨日4月16日付で逆転勝訴的な和解が成立しました。
和解の内容については、残念ながら川崎重工から一定の金銭給付があったこと以外はお伝えできませんが、逆転勝訴的な和解であると報告させていただきます。
【本和解の意義】
まず、①海外派遣労働者には労働基準法が適用されません。また、②出向(国内も含む)が行われる場合において、出向労働者に対する安全配慮義務を一次的に負うのは出向先の企業であるとされています。
本件のような海外出向の事案は、①②の二重の意味で出向元の企業の責任を問うことが困難であり、少なくとも弁護団が調べた中では、海外出向の場合に出向元の企業の安全配慮義務を明確に認めた判例はありませんでした。
本和解は、このように非常に困難な事例において、出向元の企業である川崎重工から一定の金銭給付が行われたという点で極めて画期的であり、海外出向者の安全を考える上で非常に大きな意味を持つものです。
我々としては、本和解が海外の過酷な労働環境の改善に繋がり、海外労働者の方々が少しでも安心して働くことができるようになることを心より願っています。
【事件の経緯】
▼ 二重雇用の過重労働、二社からの指示の板挟みに
本件は、川崎重工で働いていた35歳のエンジニア・清島浩司さんが、中国の合弁会社へ出向し、わずか3カ月後の2013年7月10日に、自宅マンションから飛び降り自死した事件です。清島さんは、綾子さんと1歳と5歳のお子さんを日本に残したまま赴任していました。合弁会社に所属していながらも川崎重工からも業務指示を受け、二重雇用の過重労働であっただけではなく、それぞれの会社の板挟みになっていました。
▼ 複雑で過酷な過重労働の実態
清島さんは川崎重工から、セメントプラントの焼成部門の設計者として、中国の合弁会社CKE社に出向しました。しかし、本来業務に加え、川崎重工の設計業務、さらには全く専門外である装置のトラブル対応に追われることに。トラブルに対して両社は意見が対立しており、清島さんは相反する指示を受ける板挟み状態になり、過重労働と強い心理的な負荷の要因となりました。
▼ 労災認定にもかかわらず、川崎重工は過重労働を否定
2016年、本件に関して、神戸東労働基準監督署は「業務起因性」を認め、労災が認定されました。川崎重工側は、清島さんの中国での仕事は日本での業務の延長で、「過重なものではなかった」と説明しました。しかし、神戸東労働基準監督署は清島さんの業務は過重な業務であったと労災認定しました。綾子さんが謝罪と賠償を求めたところ、川崎重工は責任を認めませんでした。
▼ 想定外の神戸地裁の不当な判決
2022年5月、綾子さんは、会社の責任を問うべく、川崎重工を提訴しました。神戸地裁は会社側の安全配慮義務違反を認めず、訴えを棄却しました(2025年1月15日判決)。川崎重工側は、誤って転落しただけではないか、自死であったとしても業務は過重なものではなく、自死とは関係ないなどと主張し、判決は、自死を認めた一方で業務は過重でなかったとして川崎重工の責任を否定しました。
▼ 控訴中の現在。過重労働の実態がより浮き彫りに
一審を受け、2025年1月、控訴。現在進んでいる大阪高裁での控訴審では、清島さんが業務で使用していたパソコンに残っていた作業データをあらためて解析しました。清島さんが二重雇用の状態となっており、相矛盾した命令を受け、苦悩していた実態が浮き彫りとなりました。
▼ 海外で働く人々の命と尊厳を守るために。同じことを二度と繰り返さないための控訴
原告である綾子さんは個人的な感情のみから控訴をしたわけではありません。綾子さんは控訴への思いをこう語っていました。
「夫の経験した過酷な環境は、個人の問題ではなく、会社の構造的な問題であったと考えます。私は、この事実を裁判で明らかにすることが、同じ状況に置かれる人を守ることにつながると信じています。一審判決では会社の責任が否定され、深い失望と怒りを覚えました。日本を代表するようなグローバル企業が、社員の命を奪ったあとに、遺族とここまで裁判を続けることが、本当にあるべき姿なのでしょうか。誠実に向き合い、謝罪し、責任を果たすことこそが、社会的責任のある企業の姿ではないでしょうか。この裁判は、私たち家族のためだけでなく、同じように海外で働く方々の命と尊厳を守るためにも、大きな意義を持つものです。外国企業へ出向した労働者に対して、出向元企業の安全配慮義務違反を認めた判決は、まだありません。だからこそ、この裁判が指針となり、同じように働く人々の命と尊厳を守る、一歩になってほしいと願っています。裁判を通して、川崎重工が社員の命と健康を守り、その家族の人生や思いにも誠実に向き合う企業へと変わってくれることを、心から望んでいます。夫が懸命に携わった川崎重工の技術の発展が、これからも社会の役に立ってほしいと願っています。けれど、人の命や心を犠牲にしてまで進めてはいけないと強く感じています」
【本件に関する報道一覧】
・日付:2026年3月18日
・媒体:神戸新聞
・記事名:海外赴任中の過労リスク知って 労基法の原則適用外 神戸の自死遺族が訴え『見落とされてきた問題』
・掲載形式:紙面/Web版
・日付:2026年4月11日
・媒体:毎日新聞
・記事名:『利益より人の命大切に』川崎重工・過労自死訴訟 原告側がチラシ
・掲載形式:紙面/ Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:毎日新聞
・記事名:海外勤務中の労災、出向元と初の和解 遺族側は「画期的」と評価
・掲載形式:紙面/ Web版
・記事名:海外出向中の労災、責任は誰に… 遺族が問うた「法の死角」
・掲載形式:紙面/ Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:神戸新聞
・記事名:川重社員自死の賠償請求訴訟、高裁で和解成立 会社側が金銭支払い
・掲載形式:紙面 / Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:朝日新聞
・記事名:海外の関連企業に出向した男性が自殺 遺族が川崎重工訴えた裁判和解
・掲載形式:紙面(4月18日掲載)/ Web版
・日付:2026年4月18日
・媒体:毎日新聞
・記事名:『夫の尊厳取り戻せた』海外出向中に過労自殺、川崎重工と和解
・掲載形式:紙面/ Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:神戸新聞
・記事名:夫の過労自死で川重と和解、妻『尊厳を取り戻せた』『海外勤務の安全上で大きな意味』
・掲載形式:紙面(4月18日掲載)/Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:産経新聞
・記事名:海外出向のエンジニア過労死、川重異例の解決金で遺族と和解成立 大阪高裁
・掲載形式:紙面(4月18日掲載)/ Web版
・日付:2026年4月18日
・媒体:読売新聞
・記事名:海外赴任で死亡、出向元の川崎重工が遺族に解決金...大阪高裁で和解成立
・掲載形式:紙面/ Web版
・日付:2026年4月18日
・媒体:日経新聞
・記事名:川崎重工と社員遺族が和解 海外合弁出向のエンジニア 死亡に解決金
・掲載形式:Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:関西テレビ
・記事名:川崎重工業 中国出向エンジニア過労自殺 会社側が解決金支払い和解
・掲載形式:Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:読売テレビ
・記事名:中国出向中に過労自殺…川崎重工と遺族が和解
・掲載形式:Web版
・日付:2026年4月17日
・媒体:NHKニュース
・記事名:川崎重工業 中国の合弁会社に出向の社員自殺 遺族と和解
・掲載形式:Web版