北鎌倉・円覚寺の谷戸景観の保存を求める有志の会
Mar 14, 2016
鑑: 2016年3月10日 鎌倉市長 松尾 崇 様  拝啓 平素は大変お世話になります。このたび、円覚寺境内境界北尾根の開削について、ぜひご再考いただきたく、重ねてお願い申し上げます。  大きな理由は先に要望書で提出している通り、史跡指定に値するほどの貴重な歴史遺産であることです。さらにその後の過程で、文化財部長の文化財的価値がないとする根拠、および市議会議員各位からのご要望である安全性、および保存策についても調べるうちに、開削を早急に進めることの危険を知ることになりました。多くの人々から洞門保存の願いが寄せられる理由は、この道を通学路や生活の道として利用してきた人々にとって、「洞門」は安全安心な環境を守るものだと肌で感じているからなのだとを知りました。  このたびは、下記3点について提起させていただきます。 1. 文化財的価値がないとすることについての疑問について 2. 洞門開削から予測される危険性をお知らせします 3. 洞門の保全(安全)対策と、住環境の継続についての一考  どうぞよろしくお願いいたします。                        敬具 本文: 1. 文化財的価値がないとする文化財部長のご意見について   文化財部長は「この尾根先は切られているので、価値がない」ということを繰り返し言っておられます。ここで論証しなくてはならないのは、次の点です。 ① 尾根が本当に切られているか、切られたとしたらどの程度切られているか。これは、尾根の改変の度合いを知るために必要です。尾根の高さ、傾斜、(文化財部長が提示する以外の)複数の絵図・地図を検討し、どの程度の土石が持ち去られたものか否かを検証する必要があります。 ② ①が必要な理由は、現在の史跡円覚寺境内がどの程度「円覚寺境内絵図」の原状を保存しているか、あるいは他の史跡の原状保存状態と比較して、破壊に値するような保存状態であるのかを比較検証するためです。過日拝見したところ、史跡円覚寺境内も尾根部分が相当に改変を加えられているようにお見受けします。中世のままの岩肌は舎利殿の周囲に見ることができますが、他はいかがでしょうか。中世の谷戸景観を壊さずに歴史を経過してきたわけではありません。しかしながら、そこが円覚寺境内としての機能を果たしていることに価値を見出しているのではないでしょうか。 ③ 同様に、洞門の掘られた尾根は、先端に鉄道を敷かれた後も明治大正昭和平成を通して、円覚寺の結界としての役割を果たしてきました。雲頂庵がその外側に置かれているのは、まさしく円覚寺の中世の歴史によるものです。それは負の歴史ではありません。雲頂庵を塔所とする空山圓印は蘭渓道隆の直弟です。彼の死後、荒廃した塔所を円覚寺の塔頭と同様に列するために、円覚寺境界外であった雲頂庵が円覚寺境内に入ったわけで、雲頂庵という塔所はそこに歴史的価値があるのです。雲頂庵の結界を超える価値を今に伝えるのは、そこに結界があったという物証(境界の引かれた尾根が分断されていること)によるものです。 ④  白雲庵、雲頂庵の高台へと散策すると、そこは史跡指定内とはいえ、尾根としての様相はまったく遺されていません。さりながら、谷戸からその高台に登ることによって、修行空間である円覚寺中心部とは違って、風がわたり眺望の開ける清々しい景色が広がります。塔頭は、住持が下がって休息する場所でしたが、そこには五山文学を形成した多くの禅僧が集まりました。五山文学は円覚寺開山の無学祖元が中国より取り入れたとされ、円覚寺の精神文化の特徴のひとつです。白雲庵は東明恵日在世の折にはその中心として多くの禅僧が集ったと伝わります。  「円覚寺境内絵図」に見られる尾根の形状を保っていないとはいえ、当時の雰囲気を肌で感じることのできる高台の眺望や風情もまた、文化的景観として先人から後世に伝えられてきたものでしょう。 ⑤ このように、一つの尾根についての考察は様々に生まれてきます ただ「切られているに違いない」から「価値がない」という短絡的な説明では、市民に対する説明責任を果たせたことにはまったくならないと言わざるを得ません。これが世界遺産登録を推進する鎌倉市の文化財行政なのかと、2年前から考えれば、その衰退に驚くばかりです。 2. 洞門開削から予測される危険性について ① 「洞門が危険である、ほぼ100%の安全性を確保するには開削しかない」このことを、繰り返し、市議会の開削賛成派議員各位から伺いました。確かに、岩山に掘られたトンネルを通る際、100%の安全性はないかもしれません。  私は以前、逆の論理で「崖に密着した擁護壁の上に基礎を造って家を建てる危険性」について、県土木課長に伺ったことがあります。この場合は建築基準法に従った工法で造っているので安全であると言いつつ、実はこの安全性は「震度6の地震が来た時に耐えられると予想される」というだけで、それ以上の地震(震度6強以上)が来た場合には崩壊するだろうと予測される」と話しておられました。  今回、市議会議員の一部の方が問題にする安全性は、基準のない安全性であろうと思われます。現在、文化庁は礎石などの安全性の基準を策定中で、来年くらいに通達されるのではないかと伺っています。洞門の100%の安全性が開削にあるかどうかは、擁壁が震度6以上の地震に耐えられるかどうかにも関連してくると思われますので、開削が100%安全であるという考え方もやや神話的ではあります。 ② 洞門開削による交通の危険性 市議会より安全性について求められたため道として現地を探索したところ、実は、洞門トンネル開削によってもっとも危惧されるのは交通危険性であることがわかりました。 第一には風情が失われ、第二には車に追い立てられる道になります 洞門トンネルの保存を望む市民に、ここを通学路として利用していた高校生や小学生、そのOBがいます。今も通ってみると、通学路として車が通らず安全・安心の通行ができ、道沿いのお宅の庭の梅が咲いた風情は、線路脇とは思えない静寂で温かな雰囲気がします。 現在は、円覚寺境内境界の洞門トンネルと、小坂小学校通学のために昭和に掘られた小袋谷踏切脇のトンネルにより、車の通り抜けができなくなっています。権兵衛踏切からは車が入れますので、住民の方々はこれを通行路にしてT字形にマイカーを入れています。  しかしながら、洞門トンネルを4m道路に開削し、その前後の道をセットバックで4m道路にするということが、当初の安全対策の前提として書かれていました。トンネルを残す方法では、トンネルが車通行の「ボトルネック」になると明記してあります。ボトルネック回避の理由は、緊急車両を通すためとあります。  現在洞門トンネルを開削したところで、その先はすぐに人が通れる程度の路地になっていますから、ほとんど意味がないと思われます。つまり、開削は近未来的な路地の拡幅を前提としているわけです。 反対側の小袋谷踏切脇のトンネルにも、通行危険の立て札が複数立てられています。この場合、このトンネルも安全対策を取るほかありませんが、現在の考え方では4m道路としてトンネル内部を固めるか、開削することにならざるを得ません。その後、先々でボトルネックとなる場所はセットバックで4m道路に拡幅していくことになるはずです。 その結果、ここは車の抜け道になるのは明白です。 小袋谷踏切から北鎌倉―鎌倉間踏切への、踏切回避の抜け道の危険性  当初は、先にセットバックのできた方から権兵衛踏切経由の抜け道ができ、開通の折にはもう1本の道として機能し始めます。  ここを一方通行にすればよい、などの対策もありますが、小町通から今小路に抜ける窟屋小路のように、休日には車が数珠つなぎになるのは避けられません。さらに一方通行にすると非常に渋滞する道を迂回しなくてはならず、住民の不便が生じます。何より、これまで車に追い立てられることもなく安全・安心の通学路を確保していた高校生や小学生は、常に車の通行に怯えながら歩くことになります。また、線路脇にも関わらず北鎌倉らしい閑静な住宅地であった場所は、日常的に車の行き交う煩雑な通り道に変貌していきます。 別紙で、抜け道予想図を添付させていただきます。 3. 洞門の保全(安全)対策と、住環境の継続についての一考 市議会陳情において、陳情に賛同できないとする議員のご意見の大半は「これまで1年~2年かけて安全性を検討して開削に賛成したのに、それを覆すことになる陳情に賛成はできない」というもので、文化財的価値についての賛同の可否ではありませんでした。教育こども未来常任委員会では、純粋に文化財的価値を検証する必要性を感じて、賛成3、反対1、退席1で採択していただいたにも関わらず、本会議では、安全性で賛同した開削を覆すことに反対という理由で否決されたということになります。  700年前から先人が守り続けてきた円覚寺境内の谷戸景観を、1~2年、あるいは5年前の開削願いからの経緯によって、たとえ文化財的価値の検証が必要だと思われても、開削を強行するという姿勢は、市長にも市議会にも重ねて立ち止まって考えて頂きたいところです。とはいえ、ここでは、市議会の開削派議員さんたちからご要望のあった100%に近い安全性のある保全策と、通学路の安全対策について言及いたします。  逗子市所管・史跡名越切通の安全対策が、現在認可されている100%に近い安全対策と認められます  議員各位から、「100%に近い安全対策が提案されていない」と指摘されました。私たちは文化財的価値を訴えていますが、市議会からの要望のため、安全対策について調べました。  すでに別団体から提言されていますが、世界遺産登録のために切通崖地の安全対策として施工された「史跡名越切通」の安全対策が、洞門トンネルおよび周囲の崖に対しての安全対策として最適と考えます。これは、すでに国で認めた安全対策です。これに反論する場合には、文化庁が策定中と伺う礎石などの安全性の基準が公表されるのを待つ必要があります。トンネルそのものの崩壊危険性は、市が安全対策の委員としてお願いした学識者より「安全」の見解が出されています。        通学路の安全性継続と、住環境の維持対策、および緊急車両の通行について ①  洞門トンネルを人および自転車の通行可能なトンネルとし、反対側の小袋谷踏切脇トンネルも同様に人および軽車両通行のみとし、トンネルの崩落対策を行います。 ②  この間の路地は、3項道路(2.7メートル以上)とし、通行入り口は権兵衛踏切とし、緊急車両が通行できるようにセットバックの協力をお願いします。 ③  両トンネルをボトルネックにして権兵衛踏切からT字型に緊急車両および住民の車などが入れるようにし、他からの流入を阻止します。(他所からの車が通行可能な抜け道になると、4m道路であっても、緊急車両の身動き取れない状況が予測される)   以上、のどかな通学路が渋滞の抜け道になる危険性を避けていただき、同時に歴史的景観を守り、鎌倉の文化遺産を守るために、尾根保全(トンネル保全)の道をお考えいただきますよう心よりお願い申し上げます。 
Copy link
WhatsApp
Facebook
Nextdoor
Email
X