2025年7月30日の文学部通知について
1 はじめに
本お知らせは、2025年7月30日に文学部からもたらされた通知について、署名発信者の見解を綴ったものです。
2 通知の概要
2025年7月30日に、「文学事務部教務担当」より、「【お知らせ】★重要★追加周知_文学部の履修コース・研究室配属について」と題した通知がありました。
この通知には、以下の2つのPDFファイルが添付されています。
(1) 【重要追加周知】_7月30日通知_文学部研究室配属について.pdf
1 「御関係の学生のみなさんへ」
文学部長である川端康弘先生と、文学部教務委員長である谷本晃久先生の連名。履修コース・研究室配属に関する方針の変更について「説明とお詫び」を述べている。「今年度の定員調整に限り、定員を超過した研究室の判断によっては、可能な限り調整を行いたい」という記述がある。
2 「研究室配属について」
「通算GPAの利用について」「研究室定員と配属シミュレーションについて」「今後の対応について」の3パートから成る。
(2) 参考資料_過去5年の配属学生数.pdf
通知の本文ならびに添付PDFファイルの内容については、X(旧Twitter)にて投稿する画像をご確認ください。
Xのスレッドのリンクは以下の通りです。
https://x.com/lit_hokudai/status/1951180715296694361?s=46
3 7月30日文学部通知の問題点
(1) 新制度の導入の背景について
「近年いくつかの研究室に多くの学生が偏って配属される傾向がみられるようになり、教育・研究環境が十分ではない状況が生じている」という点については私も承知しております。学部として、質の高い環境を整備しようとするのは、当然のことでしょう。
しかしながら、「教育の質の保障のためには、教育環境の改善を急ぐ必要があるとの判断により、次年度の進級者からの導入を決め」たことについては、その正当性に疑問が持たれます。「全員が希望する研究室に配属される」旨は、令和7年度入学生の多くが出願前に参照したであろう『北海道大学文学部案内2025年版』に記載がありました。それだけでなく、オープンキャンパス等の受験生向け説明会の場においても、口頭での言及がなされた例があると聞いています。これはすなわち、今年度入学生は、北海道大学文学部が、希望した研究室に配属されるという制度を採っていることを前提としたうえで、出願し、試験を受けて、入学したということです。今回の新制度の導入は、入学前に提示されていた方針に矛盾するものであり、学生に対する「裏切り行為」であると結論付けることができるでしょう。
今回の通知の中では、このような「裏切り行為」を取ってまでして、制度を変更しなければならなかった必然性が示されていません。研究室ごとの学生の偏りは数年来見られていたのであり、より早期に対応の方針を示したり、新制度の提供対象を令和8年度入学生以降としたりすることは、決して不可能ではなかったはずです。ゆえに、この決定は合理性を欠いていると結論付けることができるでしょう。
(2) 1年次の通算GPAの利用について
「定員調整に1年次の通算GPAを用いるのは、公平・公正な基準での調整を行うためであり、みなさんの努力をより明確に反映するための判断です」と綴られていますが、果たして本当にそうでしょうか。
学部別入試で文学部に入学した学生は一般に、「成績の取りやすさ」を重視することなく、自分の興味・関心に応じた科目を履修する傾向にあります。私自身も、「鬼仏表」などという俗物に惑わされることなく、自分自身の将来を見据えたうえで、真に自分の役に立ちそうな科目を幅広く積極的に履修しました。このスタンスは、全員がGPAを問わず希望する研究室に配属されるというシステムがあってこそです。一方で、総合入試を経て入学してきた学生は、「移行点レース」にさらされるため、多くの場合、「高GPAを取るために最適化された履修」を行う傾向にあります。このように、そもそもの全学教育科目の履修方針が異なっている二者を同じ土俵で戦わせるという制度が、適切なものであるとは言い難いでしょう。
また、通算GPAを用いることによって反映される「努力」は、当然のことながら「単位を取るための学習」に限られます。たとえば、全学教育科目の学習はそこそこに、2年次以降の自分の専門となりえる分野について、熱心に文献を読んでいた学生も少なからず存在していたでしょうが、彼らは「努力を欠いている」と判断されてしまうのでしょうか。北海道大学では、多くの学部において、成績に基づく移行点によって学科への振り分けがなされていますが、その中で文学部は「全員が希望する研究室に配属される」という制度を30年以上貫いてきました。この制度は、(文学部側の意図はさておき)「文学部は単なる『成績』に捉われることのない多様な学びを許容する」というメッセージを発しているようにも思われます。私自身も、そのスタンスに感銘を受け、北海道大学文学部への入学を決めました。私が入学前に感じていた文学部のある種の寛容さが、幻のものであったのならば、これほど悲しいことはありません。
(3) 研究室定員の余裕について・研究室の判断による「可能な限りの調整」について
「文学部の1学年の定員総数の約1.2~1.4倍の総定員数を設定することで、できる限り多くの学生が希望する研究室に配属されるよう配慮しています」とありますが、希望する研究室に配属されないケースが生じる可能性はきわめて高いと言えるでしょう。入学前の説明の通り、「全員が希望する研究室に配属される」ことが筋であり、生半可な「配慮」では不十分です。文書には、「第二希望以降の研究室でも学びを支える教育・研究指導体制が整っている」との記載がありましたが、これは論点を履き違えているのではないでしょうか。
また、「今年度の定員調整に限り、定員を超過した研究室の判断によっては、可能な限り調整を行いたい」という記載がありましたが、これも根本的な解決策とはなり得ません。
今回の通知では「過去5年間の配属学生数」が参考資料として示されました。文学部としては、「大半の学生が希望する研究室に配属される」すなわち「大半の学生は、新制度の影響を直接には被らない」という点を示すことで、事態の鎮静化を図る意図があったものと思われます。しかしながら、たとえ大半の学生が結果的に希望する研究室に配属されることになったとしても、そもそも「文学部当局による唐突かつ一方的な制度変更」を許してしまってはいけないのです。前例を作ってしまってはいけないのです
(4) 昨年度の文学部案内がホームページに掲載されていたことについて
文書には「通知の時点において昨年度の文学部案内がホームページに掲載されていたため、混乱を招く結果になったことについて、重ねてお詫びいたします」との記載があります。しかしながら、学生の間で問題視されているのは「昨年度の案内が掲載されたままであったこと」ではありません。先述の通り、「昨年度の案内に『全員が希望する研究室に配属される』という旨の記載があった」という事実そのものに、問題の所在があると考えています。
(5) 文学部の対応の姿勢について
文学部長・文学部教務委員長名義の文書には、「通知時期や変更のプロセスについては、みなさんに不安や負担をかけてしまったことを真摯に受け止め、今後はより丁寧な説明と周知に努めてまいります」とあります。しかし、その一方で、定員を超過した研究室の判断によって行われる調整について、「詳しくは、9月30日開催の学部・学科等紹介(文学部)」の際に説明します」と記されています。
より詳細に説明すべき事項が存在し、なおかつ「丁寧な説明と周知」を行う意思があるのであれば、なぜ今すぐにそれを公表せず、2か月後の学部・学科等紹介の場を待つのでしょうか。今回の研究室配属に係る新制度の導入は、学生自身の人生設計に多大な影響を与えうるものです。可能な限り早く、詳細な形で、制度に関する情報を提供するのが真摯な態度というものではないでしょうか。文学部側の対応は、この変更の重大さを軽視しているように思われてなりません。
4 おわりに
以上に述べた通り、文学部の根本的な方針・姿勢に関しては何一つ変化がありません。私は、署名発信者として、これまで通り、本制度の導入の来年度以降への延期を求めてまいります。引き続き、ご支援・ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。