

2024 年3月6日、社会福祉法人グローにおける性加害問題を考える会・滋賀は、滋賀県に2,921 筆の署名をつけて次の 2 点を要望した。
- 滋賀県は、この問題に対する検証なしに社会福祉法人グローを県立2施設の指定管理者に選定し続けたこと、女性活躍推進企業に認定したことについて見直してください。今後は指定管理者の選定や女性活躍推進企業の認定の基準に、実質的なハラスメント防止対策の実施を必須項目として入れてください。
- 滋賀県は、県や県の外郭団体、指定管理施設等(「県関連機関」とする)で働いたり利用したりする者が安心して相談できるハラスメント相談窓口を設け、専従の職員を置き、職員・利用者に周知を徹底してください。また県や県関連機関で起きたハラスメント事案に対応する第三者委員会の設置や運用の方針を明確化して県民に示してください。
このことについて、滋賀県から3 月 29 日付で回答が届いた。これにかかる当会の受け止めは以下の通りである。
全体として、滋賀県の回答は、先の滋賀県議会における三日月知事の答弁や3月7日の知事記者会見の内容を越えるものではないといえる。その点では、ほぼゼロ回答と考える。
とはいえ、冒頭に、3 月 25 日にグローに対して「4 月からの指定管理更新にあたり」滋賀県として正式に申し入れを行ったとあり、これ自体は評価したい。しかし「施設利用者をはじめとした県民に対する説明責任を果たす」目的での申入れが、今回が初めてであったとすれ ば、既に提訴から3年以上が経っており遅すぎると言わざるをえない。また、社会福祉法人グロー(以下、グロー)に説明を求めるべきは「法人として実施しているハラスメント防止対策やその取組状況」以前に、そもそものハラスメント・性暴力事件に関する検証と対応方針であるはずだ。実際に組織内で起きたことの検証と反省の伴わないハラスメント防止の取り組みは意味がない。県は今頃になって「法人として実施しているハラスメント防止対策やその取り組み状況を自ら公表する」よう求めただけで、性加害事案に向き合い、安全配慮義務違反の責任を認め謝罪することに関して、何らの言及もなかったのか、疑問だ。
組織のトップによるハラスメントが耳目を集めた事例と、グローの事例を比べてみる。
一つ目は、甲賀広域行政組合消防本部の事例だ。職員がワクチン・ハラスメントにより退職を余儀なくされたことについてマスコミが報じたことをきっかけに、第三者委員会が設置さ れ、当該退職者が受けたハラスメント以外も含めて、現役職員のみならず退職者に対してまでアンケート調査やヒアリングが実施された。その結果、多くの被害実態が明らかになり、懲戒処分も行われた。
二つ目は、ENEOS のトップがセクハラが理由で相次いで解任された事例だ。直近では 2023 年 11 月にコンプライアンス窓口に通報があり、外部弁護士らによる社内調査を実施、事実と認定して 12 月には辞任の謝罪記者会見も開かれた。
ひるがえってグローにおいては、現職職員にのみ内部アンケート調査が行われたとされているが、その結果すら全く公表もされていない。第三者委員会や外部弁護士による調査もなされていない。誰も懲戒を受けておらず、記者会見すら開かれていない。「退職者有志の会」が行った調査によれば、回答者 14 人のうちセクハラは 7 割、パワハラは全員が認知していたといい、パワハラの加害者としては北岡賢剛氏以外の役職者も挙がっていたという(「社会福祉法 人グローのハラスメント裁判開始から 1 年」、2021 年 1 月 31 日)。
私たち滋賀県民は、県内の障害者福祉を預かる社会福祉法人およびそのトップに対し、せめて甲賀広域行政消防本部や ENEOS 並の対応と説明責任、倫理観を求めているにすぎない。そして、甲賀広域行政消防本部や ENEOS 並の対応と説明責任、倫理的な行動をグローが実行するように県が指導することを求めているだけである。
一般に、ハラスメント・性暴力に限らず、県が指定管理者に選定している法人が何らかの不法行為をおかすことは、常にあり得ることであり、それに対して県がどういう対応を取るのかが問われているということを重ねて強調したい。
以下では、要望項目への県の回答内容に則してコメントを述べる。
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1. 滋賀県は、この問題に対する検証なしに社会福祉法人グローを県立2施設の指定管理者に選定し続けたこと、女性活躍推進企業に認定したことについて見直してください。今後は指定管理者の選定や女性活躍推進企業の認定の基準に、実質的なハラスメント防止対策の実施を必須項目として入れてください。
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現在、社会福祉法人グローは、前理事長が在職当時に起こした不法行為(ハラスメント、性暴力)とそれへの安全配慮義務違反の損害賠償責任を問われている状態である。性暴力事件に限らず、一般に、不法行為が民事裁判で争われる場合、判決が確定するまでに数年はかかる。県が指定管理者として選定している、あるいは候補となっている法人に重大な不法行為の疑 いがあり、それが裁判で争われているという場合、その不法行為に関する検証無しに、一般的な監査等のみで「契約の相手方として問題ないものと判断」できるものなのか疑問である。前出の甲賀広域行政組合消防本部の例に則して言えば、マスコミでワクチン・ハラスメントについて問題視されてもそのことについて何らの検証もなく、ただ単に「ハラスメント対策に取り組んでいるか」という一般的な確認だけで問題なしと認めているのと同じではないのか。
また、指定管理の見直しは、2023 年度に事務を進めてきているので、年度末の時点での見直しは困難であることは致し方ないものの、これから 5 年間の中でどのような指導やチェックをしていくのかの記載はなく、これまでの3 年間のやり方と同様でしかないように受け止める。今後の裁判の動向も踏まえ、これからグローが本件事案について向き合うよう指導するべきであるにもかかわらず、5 年間スルーするつもりなのかと言わざるを得ない回答である。
女性活躍推進企業認定については、男女雇用機会均等法を前提としたこの認定制度であり、グローが本件事案を抱えていてこの告発に向き合っていないことだけをとらえても、既にアウトであることは署名提出時に伝えており、直ちに認定取り消しがあってしかるべきだ。それなのに、「グローが県の指定管理の契約の相手方として問題ないものと判断されていること」を持ち出して、よって、「認証見直しは必要ないとしているもの」としている。しかし、この女性活躍企業認定は、グローを指定管理者認定するためのプラス要件になっていることを考えると、全くおかしなトートロジーのような「理屈」ではないか。
そもそもハラスメント、性暴力に関する不法行為を問われていることに対して何ら検証な く、一般的なハラスメント対策をしていることを確認しただけで「指定管理の契約の相手方として問題ないものと判断」したこと自体が問題なのではないか。
裁判の原告女性は「活躍」どころか退職を余儀なくされ PTSD に苦しんでいる。その責任に向き合うこともしない法人に対して「女性活躍推進企業」のお墨付きを県が与えたことは二次加害ではないのか。この点について回答してほしい。
ただ、現時点で認証見直しはしないとしつつも、ハラスメント防止対策やその取組状況の公表に関する県の申し入れの対応如何では認証の見直しの可能性へ含みを持たせた回答となっている点は多少評価できる。グローによる「公表」後は、本件事案に対する対応も踏まえて直ちに厳しく判断してもらいたい。
次に、指定管理の選定基準については、「指定管理者が人権への配慮に努めているかどうかについて、モニタリングによる確認を行っている」とのことだが、グローが長年にわたり指定管理者に選定されている間、どのようなモニタリングがなされていたのか。少なくともそのモニタリングは全く機能していなかったことが、今回のハラスメント・性暴力の訴えによって明らかになったことを踏まえて、今後はどのようにすれば、ハラスメントの防止を含め人権が守られた組織運営がなされているのかをチェックしていけるのか、この回答では全くわからない。
なお、「実質的なハラスメント対策につながる『職員の指導育成、研修体制は十分か』『人権等に配慮した業務の 遂行が可能か』等の項目を設けるよう努め」るとのことだが、真に実効性ある項目設定・基準改定を早急に実施していただきたい。
また、女性活躍推進企業の認証基準については、要するに、ハラスメント対策が適切に取られているかを認証対象資格要件において確認するべきところ、これまで何も確認せずに認証を行ってきたということだとすれば、まずもってその点を反省すべきではないか。いくら「育児休業制度や短時間勤務制度などにおいて法定以上の取り組み」がなされていても、ハラスメントが蔓延して申し立てることすらできないような組織では安心して働けない(当然「活躍」できない)。今後は「申請法人が自らチェックする欄を設け」ることで、「実質的なハラスメント防止対策の確認を徹底」をするというが、単に申請者任せにしているだけで実効性が見込めない。どうすれば「実質的なハラスメント防止対策の確認」ができるのか、もう少し踏み込んで考えてほしい。
そのためには、これまでグローのように男女雇用機会均等法における「事業主の義務」を怠りハラスメント防止体制に不備があった法人を認証してしまってきたことを反省し、認証基準を定めることを規定した滋賀県女性活躍推進企業認証制度実施要綱第 2 条の「認証対象資格」において、第 3 号として、「第 1 号に規定する関係法令に抵触するハラスメント事案等を現に引き起こしていないこと、および過去に引き起こしていた場合は当該事案等を解決していること。」等と明記するなどして、実効性を担保していただきたい。
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2.滋賀県は、県や県の外郭団体、指定管理施設等(「県関連機関」とする)で働いたり利用したりする者が安心して相談できるハラスメント相談窓口を設け、専従の職員を置き、職員・利用者に周知を徹底してください。また県や県関連機関で起きたハラスメント事案に対応する第三者委員会の設置や運用の方針を明確化して県民に示してください。
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県においては、相談窓口等設置していて取り組んでいるとのことであり、「職員懲戒審査委員会」において審査し対応しているというが、事案が発生したときに懲戒等の処罰は必要であるものの、それだけでは全く不十分であり、事案の原因調査、当該加害者教育、職員全体への再発防止研修内容の検討等々、再発防止対応が不可欠であり、そのようなことを提起できる第三者委員会の設置が必要と考える。
また、外郭団体や指定管理者における相談窓口設置については、「それぞれの団体・法人において対応いただくべき事項」としているが、指定管理者等の団体は滋賀県の実施するべき事業を県に代わって、または県と連携して行っているものであり、その従事者が安心して働けるようにすることはもとより、県民・市民がその事業展開を安心して享受できるようにするためにも、滋賀県が明確な方針を打ち出し指導を徹底するべきだと考える。そのためにも、団体等に任せてしまうのではなく、共にハラスメント対策の運用を着実に進め、そのことを県民に示すことに大きなメリットがあると考える。
以上であるが、この度の要請に対しては、三日月知事はじめ県職員の皆さんには、丁寧に対応していただき、速やかな回答をいただいたことに感謝するとともに、本事案の真の解決と今後の滋賀におけるハラスメントのない社会環境づくりに、当会として貢献していきたい。
2024 年 4 月 22 日
社会福祉法人グローにおける性加害問題を考える会・滋賀