

世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!
署名活動の主旨
【お知らせ】この署名は、2017年の開始から約10年が経過したことを受け、2026年7月21日に最新の状況と客観的データを反映して全文をリライトしました。
しかし、私たちが求めるただ一つのこと「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」の即刻中止は、開始時から何一つ変わっていません。
目次
- はじめに ─ 猫は本当に「絶滅の原因」なのか
- 1_そもそも、アマミノクロウサギは激増していました
- 2_新しい数字が出ても、計画は止まりませんでした
- 3_8年たっても、目標の3割しか捕れていません
- 4_その計画は、こうして決められました
- 5_その間、多額の税金が使われ続けています
- 私たちが目指すもの/求めること
- 出典・参考資料
【はじめに ─ 猫は本当に「絶滅の原因」なのか】
国が「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(2018〜2027年度)を続けています。
10年間で3,000頭もの猫を捕獲し、引き取り手がなければ殺処分できるとする計画です。私たちは、これに反対します。
反対する理由は、感情ではありません。この計画は、科学的な根拠が乏しく、実績も上がらず、多額の税金を使い続けているからです。
そもそも、猫を駆除したことで希少種が増えた、ということを、環境省は証明できていません。
希少種が減っていた原因が猫の捕食だけとは限らず、猫を減らせば希少種が増えるという因果も、確かめられていないのです。
猫は数百年前に人が奄美へ連れてきた動物ですが、その長い年月のあいだ、アマミノクロウサギをはじめとする希少種は絶滅せず、いまも島に生きています。
もし猫が希少種を滅ぼす存在なら、数百年ものあいだにとうに滅んでいたはずです。滅んでいないという事実が、「猫が希少種を絶滅させる」という前提を否定しています。
(同じ外来動物でも、1979年に持ち込まれ数十年で1万頭に急増して在来種を襲ったマングースとは事情が違います。マングースは生態系が受け止めきれない速さで増えましたが、猫は数百年という時間をかけて低い密度で島の暮らしに溶け込んできました。)
考えてみれば、猫も人間も、遠い昔に海を渡って奄美にやってきた、いわば「外来の生きもの」です。
その猫だけを、いま「外来種」として取り除こうとしています。かつて環境省自身が、猫を「家族の一員」と呼んでいたにもかかわらず、です。
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この計画には、2008年に撮影された、猫がアマミノクロウサギの幼獣を咥えている一枚の写真が、いまも繰り返し使われています。

(環境省奄美野生生物保護センター提供)
たしかに、痛ましい光景です。しかし、この一枚の写真が、18年前から今日まで、計画を正当化する象徴として使われ続けています。
写真が示すのは猫が「食べた」ことだけで、種を「絶滅させる」ことの証明にはなりません。ライオンがシマウマを食べる写真があっても、シマウマは絶滅しません。
それを確かめるには、数を数えるしかない——そして実際に数えれば、クロウサギは、増えているのです。
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「猫は世界の侵略的外来種ワースト100」という決まり文句も、そのまま奄美に当てはめるのは正確ではありません。
猫の深刻な被害が科学的に示されてきたのは、その多くが、大陸から遠く離れ、もともと捕食者のいなかった孤島での事例です(世界で知られる生きものの絶滅の6割以上は島で起きています)。
しかし奄美には古くからハブという頂点捕食者がいます。
環境省自身、管理計画の中で「奄美大島は、本来は肉食性哺乳類がいない島であり、ハブを頂点とした生態系の中で様々な生物がはぐくまれてきた」と述べており、ハブが頂点捕食者であることを自ら認めています。「哺乳類ではない」という一言で、あたかも猫が初めての捕食者であるかのような印象がつくられているのです。
さらに、環境省は10年に一度の「生態系被害防止外来種リスト」の見直しで、飼い猫やノラネコを新たに「防除推進外来種」に加えようとしています。
その際、この奄美の計画が「猫の駆除で希少種を守った成功例」として参照されています。しかし、これから見るとおり、クロウサギは駆除の前から増えていて、増え方も駆除で変わらず、8年たっても目標の3割しか捕れておらず、実態は成功例とは言えません。
その一枚の写真と「成功例」という印象だけが独り歩きし、いま、全国すべての飼い猫・ノラネコにまで話が広げられようとしています。
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【1_そもそも、アマミノクロウサギは激増していました】
環境省は「猫がアマミノクロウサギを食べて絶滅させる」として、2018年にこの計画を始めました。
しかし、実際のアマミノクロウサギの数は、こうです。
2003年推定 | 奄美大島 2,000〜4,800頭
2021年度推定 | 奄美大島 10,024〜34,427頭(最大値で約5倍)

※ 上の表の数字は、推定の幅(最小〜最大)です。
グラフの折れ線は、その幅の真ん中の値(中央値)を、環境省の推定表からとって、毎年つないだものです。どちらも、同じ環境省の推定によります。
しかもこの増加は、猫の駆除計画が始まるより前から起きていました。
環境省は2003〜2017年にかけて糞塊調査を、2012年度からは自動撮影カメラ調査もほぼ毎年続けており、回復傾向を継続的に把握できる立場にありました。
それにもかかわらず、2018年の計画は2003年の古い推定値を、そのまま前提にしたのです。

増加の主な要因について、環境省自身が「マングース防除事業の成果」と説明しています。猫の対策は「効果もあると考えられる」という副次的な位置づけです。環境省は、駆除の後にクロウサギが「急増した」グラフを示します。
しかし、それは数が大きくなれば増え幅も大きく見えるからで、勢い(増加率)で見れば、駆除の前後で変わっていません。猫の駆除が回復させた、という証拠は、数字に表れていないのです。

環境省は2000年からマングースの防除を進め、とくに2001〜2006年に集中的に約16,000頭を駆除、2018年には最後の1頭が捕らえられました。
この間、クロウサギは2014年ごろから年10〜16%ほどで安定して増え続けています。実際、クロウサギの年あたりの増加率は、猫の駆除を始める前(年およそ15%)も後(年およそ14%)も、ほとんど変わっていません。
マングースがいない徳之島でも、クロウサギの増加率は奄美大島とほぼ同じ(どちらも年13〜14%)です。もし猫の駆除が増加率を左右するのなら、マングースの有無で両島に違いが出るはずですが、そうなっていません。

マングースの駆除数・スダジイ(餌となる木の実)の豊凶・ノネコの駆除数のいずれについても検討しましたが、クロウサギの増加とのあいだに、はっきりした対応関係は見あたりませんでした。
マングースのいる奄美大島(平均1.13倍)と、マングースのいない徳之島(平均1.14倍)で、増加のペースがほとんど同じであることが、はっきりと見てとれます。
環境省は「猫に捕食されているのはクロウサギだけではない」とも言いますが、ケナガネズミやアマミトゲネズミなど他の希少種は、そもそも生息数の推定自体が行われていません。
環境省がクロウサギと同じように個体数を推定したのは、ほかにアマミヤマシギがあるだけです。むしろ環境省は、マングース根絶宣言の際、これら希少種の生息数は「近年、増加傾向にある」と自ら述べています。
そもそも、アマミノクロウサギを昔から捕えてきたのは、ハブと、そして人間です。クロウサギはかつて食用にもされ、1921年に天然記念物に指定されて、ようやく捕獲が規制されました。実際、国の専門家会合(2017年)では、ある委員が「田舎へ入っていけば、密猟なんてたくさんあるんですよ」と発言しており、クロウサギの減少要因を猫だけに求めるのも一面的です。
さらに、同じ取材で、計画に関わる立場からは「その数が増えていようが減っていようが、個体が食べられている。それ自体が世界自然遺産登録にマイナスになると我々は感じています」(プレジデント誌 2022年)と語られる一方、別の場面では環境省が「(保護増殖事業計画と)ノネコ管理計画とは、別計画で見ている……切り分けている」とも説明しています。かたや「世界遺産にマイナスだから猫を捕る」と言い、かたや「世界遺産や希少種の計画とは切り分けている」と言う。説明は、その場その場で変わっているのです。
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【2_新しい数字が出ても、計画は止まりませんでした】
クロウサギが数倍に増えているという新しい推定結果が正式に公表されたのは、2022年12月のことでした。しかし、その数字が出てもなお、猫の捕獲計画は見直されることなく、いまも続いています。
「猫がクロウサギを絶滅させる」という前提となる危機は、数字の上ではすでに揺らいでいます。それでも計画が止まらない理由を、私たちは問うています。
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【3_8年たっても、目標の3割しか捕れていません】
計画は、年間300頭、10年で3,000頭の猫を捕獲するとしています。
ところが、実績はこうです。
計画の目標(8年分) |約2,400頭(年300頭×8年)
実際の捕獲数(2018〜2025年度末) |783頭 ── 目標の、およそ3割
それでも捕獲域は、2018年の南西部森林のみから、2021年には島内全域へ広げられ、集落で暮らすノラネコ(島全体で1,000頭以上と把握)も対象に加えられました。
そして2025年度には、名瀬・古仁屋といった市街地の猫にまで広げられています。「森にいる、専ら野生生物を食べるノネコ」を捕るはずだった計画は、森から集落へ、街なかへと対象を広げ続けています。
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【4_その計画は、こうして決められました】
2017年の国の専門家会合(第8回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合)の議事録には、「1人ボランティアで狩猟してくださる方がいれば何の問題もない。現地でどんどん撃てばいい。狩猟獣なので」「飼い主のいないネコは全部捕獲するでいい」といった委員の発言が残っています。
批判が集まるのではないかという座長の問いには、「その人は黙っていればいいので」と続きました。一方で「地域ではやっぱり無理です。判断できないです」と、猫の判別の難しさを認める委員もいました。
計画は、増えていたクロウサギの実態ではなく、こうした強い声に押されるように2017〜2018年にかけて作られ、いまも続いています。
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【5_その間、多額の税金が使われ続けています】
環境省が国会で示した奄美大島分の契約額は、次のとおりです(単位:万円)。

環境省分と5市町村分を合わせると、5年間だけで約4億2,000万円。これに捕獲器・カメラ購入費(5年で約1,600万円)も加わり、事業費は2027年度まで毎年この規模で続いています。しかも計画には、猫を殺処分するための費用として「1頭あたり3万円」が、あらかじめ計上されています。
計画では、捕獲した猫は1週間以内に引き取り手が見つからなければ殺処分できるとされています。
考えてみてください。生きものを愛するボランティアにとって、この「1週間で殺処分」という仕組みは、「あなたが引き取らなければ、この猫を殺します」と告げられているのと、同じことです。
だからこそ、彼らは断れませんでした。目の前の命を見捨てられず、身銭を切って、時間を割いて、走り続けるほかなかったのです。
その役割を担ってきたのは、NPO法人ゴールゼロをはじめとする民間団体です。
島外搬送や一時預かりの費用の多くを自ら負担し、捕獲された猫の9割以上の里親を探し続け、これまで殺処分は1頭も出ていません。
けれど、この殺処分ゼロという結果は、しばしば行政の側から「取り組みの成果」として語られます。捕獲された猫を一頭ずつ引き取り、育て、里親を探してきた民間の人たちの努力を、あたかも制度がうまくいっている証しのように語るのは、順序が逆ではないでしょうか。
しかも、その捕獲の網は本来の対象を超えて広がっています。
捕獲された猫の相当数は、すでに不妊去勢手術を終えた「さくらねこ」(耳先をV字にカットした猫)でした。
増える心配のない猫を捕獲することは「発生源対策」として意味をなさず、地域の人々やボランティアが築いてきた見守りの仕組みを壊しかねません。
さらに深刻なのは、その捕獲器に、守るべき希少種そのものがかかっていることです。
2020年度だけで、捕獲器に誤ってかかった野生生物は238頭にのぼり、うちアマミトゲネズミ・アマミノクロウサギ・ケナガネズミなど希少種19頭が含まれていました。
長時間放置されて死んだ個体もあり、動物愛護管理法違反にあたるのではとの指摘も国会議員からなされています。
守るための事業が、守るべき希少種を捕獲器で死なせている——これは、本末転倒ではないでしょうか。加えて、捕獲器は人や車が通る旧道の周辺などにも置かれ、その設置のあり方をめぐっても、以前から疑問の声が上がっています。
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■私たちが目指すもの/求めること
猫を減らすのに本当に効果があるのは、駆除ではなく、TNR(不妊手術をして元の場所に戻す)です。“取り除く”のではなく、“増やさない”。希少種の保全もまた、命を奪う方法ではなく、この人道的で科学的な方法によって進めるべきです。
どうぶつ基金は、1988年から38年間、猫たちのために活動してきました。
環境省動物愛護管理室、そして全国598の自治体やさくらねこサポーター、ボランティアの皆さんと手を組み、これまでに44万頭を超える猫に、無料で不妊手術を行ってきました。
もちろん、どうぶつ基金の関係者だけではありません。全国のシェルターや一時預かりのボランティアの皆さんが、殺処分の前に猫を引き取り、育て、新しい家族を見つけてくださいました。その一つひとつの積み重ねが、この結果を支えています。
その結果、年間23万頭(2006年度)だった猫の殺処分を、4,866頭(2024年度)へ——約98%も減らしてきました。これは、駆除ではなく、TNR(不妊手術をして戻す)と里親探しという人道的な方法で、みんなで成し遂げた成果です。
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世界遺産の島を、税金で猫を追い立て、守るべき希少種まで捕獲器にかける島にしないでください。
そして、この奄美の誤った「成功例」という印象を根拠に、全国の猫を「防除推進外来種」に指定することも、あってはなりません。
私たちは、ノネコもイエネコも、防除推進外来種リストに掲載しないことを、あわせて求めます。
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どうか、署名で、声を届けてください。
「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」を、即刻中止してください。
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【呼びかけ人・署名提出先】
呼びかけ人:
公益財団法人どうぶつ基金、NPO法人ゴールゼロ、Hope to LifeチームZERO、琉球わんにゃんゆいまーる ほか
署名提出先:
環境大臣、ユネスコ(公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)、IUCN、沖縄県知事、鹿児島県知事、奄美市(奄美大島5市町の代表として)、大島郡龍郷町、徳之島三町ネコ対策協議会 ほか
※ 呼びかけ人・提出先・各数値は、掲載前に最新の情報でご確認ください。生息数・捕獲数は環境省・報道の公表値によります。
■出典・参考資料
① 環境省の「科学的な根拠が不十分でも…」「世界遺産にマイナス」発言、死因調査、5年で約4億円
→ 笹井恵里子「世界遺産・奄美大島の『猫3000頭殺処分計画』はなぜ止まらないのか」PRESIDENT Online 2022年
https://president.jp/articles/-/54855
② 文春による報道(計画の問題を最初に告発)
→ 「世界遺産のために猫を殺すのか」文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/12543
③ アマミノクロウサギの推定生息数が大幅増(2021年度 最大3万4427頭)
→ 「アマミノクロウサギ大幅増」奄美新聞 2022年12月16日
https://amamishimbun.co.jp/2022/12/16/41382/
④ 増加の主因は「マングース防除事業の成果」(環境省の説明)
→ 環境省 奄美野生生物保護センター 増殖検討会 公表資料
https://kyushu.env.go.jp/okinawa/awcc/pdf/20230601.pdf
⑤ 捕獲数は8年で783頭(目標の約3割)、市街地まで対象拡大、2027年度目標
→ 「ノネコ管理、おおむね計画通り ロードマップ推進評価」南海日日新聞 2025年 https://news.yahoo.co.jp/articles/4acd57de6087f857fa7f4028f2130348f6691669
⑥ 計画の正式名称・年300頭・3000頭・1週間で殺処分の規定
→ 「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」計画本文(奄美市)
https://www.city.amami.lg.jp/kankyo/documents/kanrikeikaku.pdf
⑦ 「猫を減らせば希少種が増える」という明確な根拠はない
→ 動物環境・福祉協会EVA 財務省予算執行意見箱への意見
https://www.eva.or.jp/noneko_zaimusyou

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署名活動の主旨
【お知らせ】この署名は、2017年の開始から約10年が経過したことを受け、2026年7月21日に最新の状況と客観的データを反映して全文をリライトしました。
しかし、私たちが求めるただ一つのこと「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」の即刻中止は、開始時から何一つ変わっていません。
目次
- はじめに ─ 猫は本当に「絶滅の原因」なのか
- 1_そもそも、アマミノクロウサギは激増していました
- 2_新しい数字が出ても、計画は止まりませんでした
- 3_8年たっても、目標の3割しか捕れていません
- 4_その計画は、こうして決められました
- 5_その間、多額の税金が使われ続けています
- 私たちが目指すもの/求めること
- 出典・参考資料
【はじめに ─ 猫は本当に「絶滅の原因」なのか】
国が「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(2018〜2027年度)を続けています。
10年間で3,000頭もの猫を捕獲し、引き取り手がなければ殺処分できるとする計画です。私たちは、これに反対します。
反対する理由は、感情ではありません。この計画は、科学的な根拠が乏しく、実績も上がらず、多額の税金を使い続けているからです。
そもそも、猫を駆除したことで希少種が増えた、ということを、環境省は証明できていません。
希少種が減っていた原因が猫の捕食だけとは限らず、猫を減らせば希少種が増えるという因果も、確かめられていないのです。
猫は数百年前に人が奄美へ連れてきた動物ですが、その長い年月のあいだ、アマミノクロウサギをはじめとする希少種は絶滅せず、いまも島に生きています。
もし猫が希少種を滅ぼす存在なら、数百年ものあいだにとうに滅んでいたはずです。滅んでいないという事実が、「猫が希少種を絶滅させる」という前提を否定しています。
(同じ外来動物でも、1979年に持ち込まれ数十年で1万頭に急増して在来種を襲ったマングースとは事情が違います。マングースは生態系が受け止めきれない速さで増えましたが、猫は数百年という時間をかけて低い密度で島の暮らしに溶け込んできました。)
考えてみれば、猫も人間も、遠い昔に海を渡って奄美にやってきた、いわば「外来の生きもの」です。
その猫だけを、いま「外来種」として取り除こうとしています。かつて環境省自身が、猫を「家族の一員」と呼んでいたにもかかわらず、です。
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この計画には、2008年に撮影された、猫がアマミノクロウサギの幼獣を咥えている一枚の写真が、いまも繰り返し使われています。

(環境省奄美野生生物保護センター提供)
たしかに、痛ましい光景です。しかし、この一枚の写真が、18年前から今日まで、計画を正当化する象徴として使われ続けています。
写真が示すのは猫が「食べた」ことだけで、種を「絶滅させる」ことの証明にはなりません。ライオンがシマウマを食べる写真があっても、シマウマは絶滅しません。
それを確かめるには、数を数えるしかない——そして実際に数えれば、クロウサギは、増えているのです。
────────────────────
「猫は世界の侵略的外来種ワースト100」という決まり文句も、そのまま奄美に当てはめるのは正確ではありません。
猫の深刻な被害が科学的に示されてきたのは、その多くが、大陸から遠く離れ、もともと捕食者のいなかった孤島での事例です(世界で知られる生きものの絶滅の6割以上は島で起きています)。
しかし奄美には古くからハブという頂点捕食者がいます。
環境省自身、管理計画の中で「奄美大島は、本来は肉食性哺乳類がいない島であり、ハブを頂点とした生態系の中で様々な生物がはぐくまれてきた」と述べており、ハブが頂点捕食者であることを自ら認めています。「哺乳類ではない」という一言で、あたかも猫が初めての捕食者であるかのような印象がつくられているのです。
さらに、環境省は10年に一度の「生態系被害防止外来種リスト」の見直しで、飼い猫やノラネコを新たに「防除推進外来種」に加えようとしています。
その際、この奄美の計画が「猫の駆除で希少種を守った成功例」として参照されています。しかし、これから見るとおり、クロウサギは駆除の前から増えていて、増え方も駆除で変わらず、8年たっても目標の3割しか捕れておらず、実態は成功例とは言えません。
その一枚の写真と「成功例」という印象だけが独り歩きし、いま、全国すべての飼い猫・ノラネコにまで話が広げられようとしています。
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【1_そもそも、アマミノクロウサギは激増していました】
環境省は「猫がアマミノクロウサギを食べて絶滅させる」として、2018年にこの計画を始めました。
しかし、実際のアマミノクロウサギの数は、こうです。
2003年推定 | 奄美大島 2,000〜4,800頭
2021年度推定 | 奄美大島 10,024〜34,427頭(最大値で約5倍)

※ 上の表の数字は、推定の幅(最小〜最大)です。
グラフの折れ線は、その幅の真ん中の値(中央値)を、環境省の推定表からとって、毎年つないだものです。どちらも、同じ環境省の推定によります。
しかもこの増加は、猫の駆除計画が始まるより前から起きていました。
環境省は2003〜2017年にかけて糞塊調査を、2012年度からは自動撮影カメラ調査もほぼ毎年続けており、回復傾向を継続的に把握できる立場にありました。
それにもかかわらず、2018年の計画は2003年の古い推定値を、そのまま前提にしたのです。

増加の主な要因について、環境省自身が「マングース防除事業の成果」と説明しています。猫の対策は「効果もあると考えられる」という副次的な位置づけです。環境省は、駆除の後にクロウサギが「急増した」グラフを示します。
しかし、それは数が大きくなれば増え幅も大きく見えるからで、勢い(増加率)で見れば、駆除の前後で変わっていません。猫の駆除が回復させた、という証拠は、数字に表れていないのです。

環境省は2000年からマングースの防除を進め、とくに2001〜2006年に集中的に約16,000頭を駆除、2018年には最後の1頭が捕らえられました。
この間、クロウサギは2014年ごろから年10〜16%ほどで安定して増え続けています。実際、クロウサギの年あたりの増加率は、猫の駆除を始める前(年およそ15%)も後(年およそ14%)も、ほとんど変わっていません。
マングースがいない徳之島でも、クロウサギの増加率は奄美大島とほぼ同じ(どちらも年13〜14%)です。もし猫の駆除が増加率を左右するのなら、マングースの有無で両島に違いが出るはずですが、そうなっていません。

マングースの駆除数・スダジイ(餌となる木の実)の豊凶・ノネコの駆除数のいずれについても検討しましたが、クロウサギの増加とのあいだに、はっきりした対応関係は見あたりませんでした。
マングースのいる奄美大島(平均1.13倍)と、マングースのいない徳之島(平均1.14倍)で、増加のペースがほとんど同じであることが、はっきりと見てとれます。
環境省は「猫に捕食されているのはクロウサギだけではない」とも言いますが、ケナガネズミやアマミトゲネズミなど他の希少種は、そもそも生息数の推定自体が行われていません。
環境省がクロウサギと同じように個体数を推定したのは、ほかにアマミヤマシギがあるだけです。むしろ環境省は、マングース根絶宣言の際、これら希少種の生息数は「近年、増加傾向にある」と自ら述べています。
そもそも、アマミノクロウサギを昔から捕えてきたのは、ハブと、そして人間です。クロウサギはかつて食用にもされ、1921年に天然記念物に指定されて、ようやく捕獲が規制されました。実際、国の専門家会合(2017年)では、ある委員が「田舎へ入っていけば、密猟なんてたくさんあるんですよ」と発言しており、クロウサギの減少要因を猫だけに求めるのも一面的です。
さらに、同じ取材で、計画に関わる立場からは「その数が増えていようが減っていようが、個体が食べられている。それ自体が世界自然遺産登録にマイナスになると我々は感じています」(プレジデント誌 2022年)と語られる一方、別の場面では環境省が「(保護増殖事業計画と)ノネコ管理計画とは、別計画で見ている……切り分けている」とも説明しています。かたや「世界遺産にマイナスだから猫を捕る」と言い、かたや「世界遺産や希少種の計画とは切り分けている」と言う。説明は、その場その場で変わっているのです。
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【2_新しい数字が出ても、計画は止まりませんでした】
クロウサギが数倍に増えているという新しい推定結果が正式に公表されたのは、2022年12月のことでした。しかし、その数字が出てもなお、猫の捕獲計画は見直されることなく、いまも続いています。
「猫がクロウサギを絶滅させる」という前提となる危機は、数字の上ではすでに揺らいでいます。それでも計画が止まらない理由を、私たちは問うています。
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【3_8年たっても、目標の3割しか捕れていません】
計画は、年間300頭、10年で3,000頭の猫を捕獲するとしています。
ところが、実績はこうです。
計画の目標(8年分) |約2,400頭(年300頭×8年)
実際の捕獲数(2018〜2025年度末) |783頭 ── 目標の、およそ3割
それでも捕獲域は、2018年の南西部森林のみから、2021年には島内全域へ広げられ、集落で暮らすノラネコ(島全体で1,000頭以上と把握)も対象に加えられました。
そして2025年度には、名瀬・古仁屋といった市街地の猫にまで広げられています。「森にいる、専ら野生生物を食べるノネコ」を捕るはずだった計画は、森から集落へ、街なかへと対象を広げ続けています。
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【4_その計画は、こうして決められました】
2017年の国の専門家会合(第8回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合)の議事録には、「1人ボランティアで狩猟してくださる方がいれば何の問題もない。現地でどんどん撃てばいい。狩猟獣なので」「飼い主のいないネコは全部捕獲するでいい」といった委員の発言が残っています。
批判が集まるのではないかという座長の問いには、「その人は黙っていればいいので」と続きました。一方で「地域ではやっぱり無理です。判断できないです」と、猫の判別の難しさを認める委員もいました。
計画は、増えていたクロウサギの実態ではなく、こうした強い声に押されるように2017〜2018年にかけて作られ、いまも続いています。
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【5_その間、多額の税金が使われ続けています】
環境省が国会で示した奄美大島分の契約額は、次のとおりです(単位:万円)。

環境省分と5市町村分を合わせると、5年間だけで約4億2,000万円。これに捕獲器・カメラ購入費(5年で約1,600万円)も加わり、事業費は2027年度まで毎年この規模で続いています。しかも計画には、猫を殺処分するための費用として「1頭あたり3万円」が、あらかじめ計上されています。
計画では、捕獲した猫は1週間以内に引き取り手が見つからなければ殺処分できるとされています。
考えてみてください。生きものを愛するボランティアにとって、この「1週間で殺処分」という仕組みは、「あなたが引き取らなければ、この猫を殺します」と告げられているのと、同じことです。
だからこそ、彼らは断れませんでした。目の前の命を見捨てられず、身銭を切って、時間を割いて、走り続けるほかなかったのです。
その役割を担ってきたのは、NPO法人ゴールゼロをはじめとする民間団体です。
島外搬送や一時預かりの費用の多くを自ら負担し、捕獲された猫の9割以上の里親を探し続け、これまで殺処分は1頭も出ていません。
けれど、この殺処分ゼロという結果は、しばしば行政の側から「取り組みの成果」として語られます。捕獲された猫を一頭ずつ引き取り、育て、里親を探してきた民間の人たちの努力を、あたかも制度がうまくいっている証しのように語るのは、順序が逆ではないでしょうか。
しかも、その捕獲の網は本来の対象を超えて広がっています。
捕獲された猫の相当数は、すでに不妊去勢手術を終えた「さくらねこ」(耳先をV字にカットした猫)でした。
増える心配のない猫を捕獲することは「発生源対策」として意味をなさず、地域の人々やボランティアが築いてきた見守りの仕組みを壊しかねません。
さらに深刻なのは、その捕獲器に、守るべき希少種そのものがかかっていることです。
2020年度だけで、捕獲器に誤ってかかった野生生物は238頭にのぼり、うちアマミトゲネズミ・アマミノクロウサギ・ケナガネズミなど希少種19頭が含まれていました。
長時間放置されて死んだ個体もあり、動物愛護管理法違反にあたるのではとの指摘も国会議員からなされています。
守るための事業が、守るべき希少種を捕獲器で死なせている——これは、本末転倒ではないでしょうか。加えて、捕獲器は人や車が通る旧道の周辺などにも置かれ、その設置のあり方をめぐっても、以前から疑問の声が上がっています。
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■私たちが目指すもの/求めること
猫を減らすのに本当に効果があるのは、駆除ではなく、TNR(不妊手術をして元の場所に戻す)です。“取り除く”のではなく、“増やさない”。希少種の保全もまた、命を奪う方法ではなく、この人道的で科学的な方法によって進めるべきです。
どうぶつ基金は、1988年から38年間、猫たちのために活動してきました。
環境省動物愛護管理室、そして全国598の自治体やさくらねこサポーター、ボランティアの皆さんと手を組み、これまでに44万頭を超える猫に、無料で不妊手術を行ってきました。
もちろん、どうぶつ基金の関係者だけではありません。全国のシェルターや一時預かりのボランティアの皆さんが、殺処分の前に猫を引き取り、育て、新しい家族を見つけてくださいました。その一つひとつの積み重ねが、この結果を支えています。
その結果、年間23万頭(2006年度)だった猫の殺処分を、4,866頭(2024年度)へ——約98%も減らしてきました。これは、駆除ではなく、TNR(不妊手術をして戻す)と里親探しという人道的な方法で、みんなで成し遂げた成果です。
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世界遺産の島を、税金で猫を追い立て、守るべき希少種まで捕獲器にかける島にしないでください。
そして、この奄美の誤った「成功例」という印象を根拠に、全国の猫を「防除推進外来種」に指定することも、あってはなりません。
私たちは、ノネコもイエネコも、防除推進外来種リストに掲載しないことを、あわせて求めます。
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どうか、署名で、声を届けてください。
「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」を、即刻中止してください。
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【呼びかけ人・署名提出先】
呼びかけ人:
公益財団法人どうぶつ基金、NPO法人ゴールゼロ、Hope to LifeチームZERO、琉球わんにゃんゆいまーる ほか
署名提出先:
環境大臣、ユネスコ(公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)、IUCN、沖縄県知事、鹿児島県知事、奄美市(奄美大島5市町の代表として)、大島郡龍郷町、徳之島三町ネコ対策協議会 ほか
※ 呼びかけ人・提出先・各数値は、掲載前に最新の情報でご確認ください。生息数・捕獲数は環境省・報道の公表値によります。
■出典・参考資料
① 環境省の「科学的な根拠が不十分でも…」「世界遺産にマイナス」発言、死因調査、5年で約4億円
→ 笹井恵里子「世界遺産・奄美大島の『猫3000頭殺処分計画』はなぜ止まらないのか」PRESIDENT Online 2022年
https://president.jp/articles/-/54855
② 文春による報道(計画の問題を最初に告発)
→ 「世界遺産のために猫を殺すのか」文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/12543
③ アマミノクロウサギの推定生息数が大幅増(2021年度 最大3万4427頭)
→ 「アマミノクロウサギ大幅増」奄美新聞 2022年12月16日
https://amamishimbun.co.jp/2022/12/16/41382/
④ 増加の主因は「マングース防除事業の成果」(環境省の説明)
→ 環境省 奄美野生生物保護センター 増殖検討会 公表資料
https://kyushu.env.go.jp/okinawa/awcc/pdf/20230601.pdf
⑤ 捕獲数は8年で783頭(目標の約3割)、市街地まで対象拡大、2027年度目標
→ 「ノネコ管理、おおむね計画通り ロードマップ推進評価」南海日日新聞 2025年 https://news.yahoo.co.jp/articles/4acd57de6087f857fa7f4028f2130348f6691669
⑥ 計画の正式名称・年300頭・3000頭・1週間で殺処分の規定
→ 「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」計画本文(奄美市)
https://www.city.amami.lg.jp/kankyo/documents/kanrikeikaku.pdf
⑦ 「猫を減らせば希少種が増える」という明確な根拠はない
→ 動物環境・福祉協会EVA 財務省予算執行意見箱への意見
https://www.eva.or.jp/noneko_zaimusyou

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2017年9月19日に作成されたオンライン署名