Jan 21, 2021

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今回は、商標登録のリスクについて精査していきたいと思います。私たちの中でも出版に詳しい仲間が、弁護士や弁理士に相談し得た回答に依拠して説明します。

論点を3つに分けます。
1)「エスペラント/esperanto」が雑誌タイトルに使用できなくなるかどうか。
2)世界107カ国で使用できなくなるかどうか。
3)商標権は商品価値を持つ

1)「エスペラント/esperanto」が雑誌タイトルに使用できなくなるかどうか
GO社からは「esperanto culture magazine」とローマ字とカタカナで商標の出願がされています。創刊号のレイアウトは特に変わったものではなく、一般的なフォントです。創刊号の表紙には「esperanto」のみが目立って大きく少々波打ったレイアウトで掲載され、左端に小さく「Cultural Magazine」と表示があります。
知的財産専門の弁護士によれば、「esperanto culture magazine」が商標登録され、創刊号の表紙のような使われ方を続けた場合、「esperanto」というタイトルが日本国内において後々に使えなくなることが想定されるとの回答でした。

実際に起きた具体的な例をあげます。
「百ます計算」という言葉をご存知でしょうか?はじめて聞いたのはいつだったでしょうか。ご自身が小学生の時か、お子様が小学生のときにやった記憶をお持ちの方もいるかもしれません。
この「百ます計算」という言葉を小学館が、2003年5月出願で商標登録しました。(1992年以降この教育メソッドを小学館は築いてきたからとおっしゃっています)
この時の出願では「書籍・ムック・写真」の区分でしたが、その後2004年にこの商標権を背景に、他社のCD-ROMの販売をやめさせています。またケータイアプリの商品名でない表示にも警告を出しています。(参考:「編集者の危機管理術」堀田貢得 大亀哲郎 青弓社2011年)

小学館にこのようなことができたのは、単に商標だけではなく、「百ます計算」がたくさん売れ、かつ有名になり、小学館の「ブランド」として機能したからです。今回の「esperanto」がただちに同じようなブランド力を持つとは言えませんが、通常ビジネスとは発展する方向で考えるべきものです。

当初、菅付氏のツイッターでは「ESPERANTO」と広報されていました(誤認性の証拠)。12月中の報道も、すべて雑誌名「エスペラント」「ESPRANTO」と表記されており、誤認性の問題は十分ありえることでした。
のちに菅付氏はツイッターでは「Esperanto Culture Magazine」と言い換えるようになり、1月以降の報道でもそのように表記されています(菅付氏発言)。これは誤認性が認められる可能性があると判断したからではないでしょうか。
以上により、初期段階では「雑誌名に【エスペラント/esperanto】が使用できなくなる」は、決してデマではなかったとご理解いただけると思います。

2)世界107カ国で使用できなくなるかどうか
理論上は可能です。「そうはならない」という根拠は現GO社社長・菅付氏の約束(日本エスペラント協会への回答)によるところしかありません。しかし私企業による約束には限界があります。

以下2点に分けて説明します。

2-1)マドリッド協定議定書
日本国はマドリッド協定議定書に参加しています。これは国際出願をスムーズにする世界的システムで、1カ国で登録されている商標を一国一国に出願するよりも遥かにスムーズに登録することができます。今日時点で107カ国が加盟しています。国際出願には1カ国ごとに費用がかかりますが、たとえば欧州連合での商標登録には弁理士費用を除けば20~30万円ほどの費用と算出されます(参考・経産省HP)。企業であれば出せない金額ではありません。 

2-2)海外マーケットへの展開
GO社は日本エスペラント協会への回答のなかで「日本国内における出版物の領域においてのみ『Esperanto Culture Magazine』という商標登録の申請をしております。しかし、これはほかのエスペラントの表記を使った出版活動に制限をかける意図は全くないことを明言します。あくまで国内における全く同名の出版物だけはやめて欲しいと思っています」と述べています。

しかし東京新聞の報道によると、この雑誌は日本国内だけでなく7割を海外で販売することを想定しているとのことです(東京新聞12/9)。別の報道でも「全編英語テキストで海外マーケットをメインにしたカルチャー・マガジン「ESPERANTO」(エスペラント)が、12月15日に季刊で創刊される」と報道されています(SHIFT日本語版12/7)。メインが海外市場にもかかわらず、商標登録を日本でのみにする理由は明らかにされていません。

出願されている分類は、雑誌・書籍・電子書籍の分類で、GO社は、オンラインのコミュニティなどにも言及していて、この雑誌を中心に幅広いビジネスを展開する予定と推定されます。
商標についての法律は国によって違いますから、日本国内で商標登録したとしても外国ではできない場合もありますが、日本で商標登録していることは重要な意味を持ちます。またオンラインのサービスの場合も、日本だけの問題ではなくなります。

3)商標権が商品価値をもつこと
現在のところ、現社長のいう「約束」のみが、ESPERANTO CULTURE MAGAZINEはエスペラント運動を侵犯しないという根拠です。
しかし、編集長の交代やGO社の倒産により、売買されたり、まったく異なる会社の手に渡ることは十分ありえます。商標権はブランドとしての商品価値を持ち売買の対象となります。一度商品化されれば、それが渡る先でどうなるかはわかりません。
この「商品化」こそが私たちの問題視するところです。

今回の分析を担った仲間からのメッセージ:
雑誌「esperanto (culture magazine)」の創刊号を取り寄せて中を拝読しましたが、「コスモポリタン」「ボーダーレスワールド」「ノーバウンダリー」という言葉のイメージで表現されるような内容で、英語が第一言語でない人でも英語で自由に発信できることを目的とした雑誌だと思いました。この概念を「esperanto (culture magazine)」でブランドにするというのは、また別の大きな問題をはらんでいます。
なお「COSMOPOLITAN」という女性向け雑誌はすでに32言語で100以上の国と地域に流通しています。(WIKIPEDIAによる)該当地域では当然商標登録もされています。この雑誌があるために、コスモポリタニズムについての雑誌を新しく作る際「COSMOPOLITAN」として発行することは困難です。単語として使うことは不可能ではありませんが、かなりの制約を伴うことの証明です。
最後になりますが、日本のエスペラント話者がみんな日本エスペラント協会に入っているわけではないということを確認しておきます。あるいは未来にエスペラントを学ぶ人たちまで、代表できるわけではありません。今回、グーテンベルグオーケストラ社とJEIが何か協定を結んだり声明を出したとして、まったくそれを知らないエスペラント話者がエスペラントの文化について自分たちの雑誌や書籍を作ろうとして登録商標を調べたら、通常は類似の商標も避けるべきものですから、タイトルにかなりの制約が出ることになります。

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