香川県立体育館を壊さないで。Don't tear down Kagawa Prefectural Gymnasium !

香川県立体育館を壊さないで。Don't tear down Kagawa Prefectural Gymnasium !

4,329 人が賛同しました。もう少しで 5,000 人に到達します!
開始日
署名の宛先
香川県知事:池田豊人様

この署名で変えたいこと

English version of the text

「香川県立体育館を壊さないで。」

 昔から当たり前のように身近にあるものに対し、失ってからその大切さに気付くことは多々あります。3度にわたる耐震改修工事の入札不調から耐震化の目途が立たず2014年9月30日に閉館となった香川県立体育館が、未来へ向けて継承すべき建物であると私たちは信じています。

私たち船の体育館再生の会(旧香川県立体育館 保存の会)は2014年に発足以来、船の体育館の存続再生の活動を続けています。
この建物は2017年にワールドモニュメント財団(米国)から緊急に保存か必要な建物として危機遺産に選定されました。Kagawa Prefectural Gymnasium | World Monuments Fund (wmf.org)

2022年、公に開かれた議論もしないまま解体の方向へ進む可能性が高まっています。

  そこで以下のことを香川県に対し要望します。

1.香川県立体育館の今後のあり方に「取り壊し」を含めないこと。

2.建物を可能な限り維持し、活用すること。

3.利用者となる県民の意見を広く聴き、細やかな情報開示をした上で、長期的視点に立ち利活用方針を決定すること。

 

 香川県立体育館は、世界に初めて認められた日本人建築家である丹下健三(1913~2005)によって設計され、東京オリンピックの年(1964)に完成した建物です。それは丹下が設計した広島平和記念資料館本館や国立代々木屋内総合競技場、香川県庁舎東館と共に代表作のひとつとして世界中に知れ渡り、完成から50年が経過した現在でも見学者が訪れ続けています。

 「香川県立体育館の今後について、取り壊しも含め検討する」というニュースが流れてから、私たちは改めて体育館を訪れ、この建物が未来へ向けてどうあるべきかを考えました。そこで気付かされた事があります。それはこの建物には丹下建築という価値以外にも様々な記憶と可能性があり、そこには人びとの想いがあるという事です。

 

 以下にその一部を述べます

 

 1.地域のシンボルとして

 香川県民からは和船を思わせる個性的な外観から「船の体育館」との愛称で呼ばれ続け、アート県を謳う香川県のシンボルのひとつとなっています。

 

 2.屋内スポーツの殿堂として

 香川県内でスポーツをする少年少女が「いつかあの場所で試合をしたい!」「あの場所から全国へ行きたい!」と目指していた憧れの舞台であり、50年もの長きにわたって県の屋内スポーツの殿堂であり続けていました。

 

 3.皆に開かれた場所として

 香川県立体育館のロビー建物の周囲の空間は街に開かれた場所でした。街の人びとは施設の利用に関係なくロビーのソファーに腰掛け築山や池を眺めたり、外を散策しながら、思いおもいの時間を過ごし交流しました。そして人びとにとって当然そこにある場所として街の中に溶け込んでいました。

 

 4.戦後と高度成長期を見てきた建築として

 高松は先の大戦の空襲によって多くの人命と、長い時間をかけて築いた城下町の風景を消失しました。私たちは焦土と化し暗闇となった県都をひとつひとつ明かりを灯すように復興してきました。香川県立体育館のような巨大な建物が目の前で建ち上がる様子は、当時の人びとにとって未来を照らす明かりのひとつであったことでしょう。

 街の復興や発展と共にあり続けたこの建物は、閉館されるまで子供からお年寄りまでの幅広い世代に利用されてきました。そして世代を超えた多くの人びとに思い出を共有できる数少ない建物として記憶されています。それゆえにこの建物は、これからも街の人びと共に歩む力を持っていると感じさせます。

 

 5.ドラマチックな建築として

 香川県立体育館のエントランスは、伸び上がる大きな軒下のような空間です。そこは街に対して緩やかに開かれており、来館する人びとを招き入れてきました。3階に位置する競技空間は左右対称に曲面で覆われており、競技や式典に際し緊張感や高揚感を演出してきました。体育館には珍しく、アリーナと観客席が段差なく一体的に繋げられ、観客は選手の目線で観戦ができます。

 体育館を訪れた人びとは日常と繋がるエントランス空間を抜け、その先にある期待を追うようにして緩やかにカーブする階段を上り、非日常性を帯びた競技空間へと辿り着きます。その移りゆく空間体験はドラマチックなものであり、印象深い記憶となりました。この様な建築的特徴はもし体育館以外の用途となった場合でもきっと活かせるでしょう。

 

 6.技術の結晶として

 技術の発達した今日においても三次曲面の建築物を鉄筋コンクリート造で建設することは容易ではありません。パソコンや電卓のない50年前の時代に、曲線を持ち複雑な形状の香川県立体育館を建設できた職人ひとりひとりの技術の精度と練度の高さには驚かされます。また、今では施工できる職人が少なくなった杉板による曲面型枠寒水石の掻き落とし、打放し面への建具とガラスの納まりなどの技術が数多く使われています。現在では技術の高さとその継承の観点から、それらは稀少な存在です。そして上手に改修することでその様な先人の優れた技術の結晶が、新たな空間として生まれ変わる可能性が十分にあります。

 

 7.丹下建築として

 香川県下には代表的な丹下建築がふたつあります。それは香川県庁舎東館と香川県立体育館です。1950年代に作られた香川県庁舎東館では日本の伝統的な柱と梁の構造を現代建築に応用する挑戦が、1960年代に作られた香川県立体育館では丹下の最高傑作と云われる東京の国立代々木屋内総合競技場の原型として、鉄筋コンクリート造による大空間への挑戦がなされています。当時の日本建築界を牽引した丹下が追い求めていたテーマがどちらにおいても表現されています。これら様式の異なるふたつの丹下建築がひとつの街の中に存在することは、世界的に見ても、近代建築史においても貴重な文化的財産です。そしてそれは香川県の観光資源としても大きな可能性を秘めています。

 

 8.親しまれ続ける公共建築として

 体育館を利用したことのある人びとや地域の人びとは香川県立体育館に一般の公共施設の枠を超えた親しみを持っています。耐震改修工事の入札不調や閉館の報せを受け、多くの人びとは体育館に改めて注目し今後の行く末に関心を寄せています。(香川県立体育館保存の会Facebookページ開設3ヶ月で「いいね!」2,000件超)

 

 たくさんの代え難い魅力を持つ香川県立体育館が活用されず、ゆくゆくは取り壊されるというのは社会にとって大きな損失だと思います。この建物の記憶や可能性を丁寧に汲み取り、新しい活用法や価値を与え次の時代に繋いでいくことが、今、求められているのではないでしょうか?

 終戦から約20年後のまだ貧しかった時代に、県民の大きな夢と希望を乗せて大海原へ漕ぎ出した一隻の巨船が今、行き先が見えずに彷徨っています。このまま沈むのをただ待つのではなく、新たな帆を掲げ出航させたいと願っています。その為には、ひとりひとりの気持ちが不可欠です。ご賛同頂ける方はご署名をお願いします。

 

「建築概要」

 名 称 :香川県立体育館

竣 工 年:1964年

意匠 設計:丹下健三+都市建築設計研究所/集団制作建築事務所

構造 設計:岡本建築設計事務所

設備 設計:建築設備研究所

現場 監理:香川県土木部建築課

 施 工 :(建築)清水建設株式会社

      (電気)近畿電気工事株式会社

      (機械)斉久工業株式会社

総 工 費:215,500,000円(当時)

 構 造 :プレストレストコンクリート造

      一部鉄筋コンクリート造

      吊り屋根構造

敷地 面積:6,640m2

建築 面積:1,512m2

延べ床面積:4,707m2

固定座席数:1,300席

4,329 人が賛同しました。もう少しで 5,000 人に到達します!