

神宮外苑再開発で計画されている新野球場棟については、外野席の削減、超高層ビルに囲まれるために発生する野球環境への影響、応援規制など、さまざまな懸念が指摘されてきました。
こうした施設・立地に伴い発生する問題に加えて、新たに神宮球場の伝統を放棄することにもなる新たな問題が浮上しています。
神宮球場は、プロ野球・東京ヤクルトスワローズの本拠地ですが、同時に学生野球(東京六大学野球、東都大学野球)に優先使用権が認められていることが大きな特徴となっています。これは、神宮球場の建設と拡張に東京六大学の尽力や資金提供があったという歴史的経緯に基づくものです。
実は、この学生野球優先使用権が放棄される可能性が浮上しているのです。
学生野球優先使用権に関する質問に対し、口を閉ざす事業者
再開発で計画されている新野球場棟において、学生野球はこれまでと同じように使用できるのか、とりわけ神宮球場の伝統であり、大きな特徴ともなっている「学生野球の優先使用権」は維持されるのかという点は、野球ファンにとって重大な関心事です。
私たちはこの点に関する質問を、2024年4月、5月、6月の3回にわたり、事業者サイトの質問受付ページで投げかけてきました。
事業者の回答はどうだったでしょうか。なんとこの質問は、3回続けて無視されたのです!!
現在、事業者サイトのQ&Aは2024/6/28付けで最新版が公開されています。
この中で、学生野球に関連する項目は以下の通りです。
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Q32:学生野球は現在と同じように利用できるのでしょうか? また、学生野球とプロ野球が併用する日は、プロ野球は室内練習場や軟式グラウンドで試合前練習を行っているかと思いますが、新しい計画ではどこで試合前練習を行うのでしょうか?
A:運営の詳細についてはこれまで通り各主催者と協議しておりますが、学生野球とプロ野球の併用を想定し、試合前ができる場所の確保についても、協議・検討をしてまいります。
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私たちは、新球場においても「学生野球優先使用権が維持されるのか」という点を具体的に質問したにも関わらず、優先使用権には触れることもせず「運営の詳細についてはこれまで通り各主催者と協議しております」と繰り返すだけです。
質問に答えない以前に、質問自体を3回にわたって無視しているのです。いったいなぜ、事業者はかたくなに優先使用権の質問への回答を避け続けているのでしょうか?
神宮球場の伝統である学生野球の優先使用権の放棄を検討しているからではないでしょうか?
神宮球場の伝統を破壊する再開発
神宮球場はもともと大学野球、特に早慶戦の圧倒的な人気を背景に、六大学野球連盟の財政的支援のもと建設されたものです。その数年後の拡張工事も連盟の費用負担により実施され、この時現在のスタジアムの外形が築かれました。神宮球場の歴史の初めに六大学野球があり、プロ野球の隆盛にもつながる日本の野球文化の発展に多大な貢献を果たしてきました。
神宮球場は、学生野球優先の原則にしたがいながら、プロ野球と共存をはかることで「野球の聖地」となってきたのです。優先使用権の放棄は、神宮球場の伝統を支え、この地で独自の応援文化を育んできた学生野球の軽視を意味するものです。
問題は、こうした重大な問題を公にすることなく、こっそりと計画を進めていることです。野球ファン無視の姿勢がここに表れています。
目先の儲け最優先で切り捨てられるのは学生野球だけではない
事業者は”宗教活動の収入のみでは財政を維持できず、稼ぎ頭である神宮球場の建て替えが必要”と語っています。財政問題が動機であるならば、プロ野球ほどの収益が期待できない学生野球の優先使用権が邪魔だという発想が出ても不思議ではありません。
軽視され、切り捨てられるのは学生野球だけではありません。外野席スタンドのコアな野球ファンも同じです。新野球場棟では、外野席が削減される一方、試合観戦ができるホテルが併設されることになっている。いったい誰のための新野球場棟計画でしょうか。ちなみに、新野球場棟の所有者は、土地と野球場は明治神宮ですが、ホテル部分のみ三井不動産とされています。
再開発はいったん立ち止まって見直しを
再開発計画は、歴史的建造物として価値のある神宮球場を取り壊すだけでなく、「野球の聖地」としての伝統そのものを放棄するものであることは明らかではないでしょうか。野球ファンの声を無視して強引に進められようとしている再開発計画は、いったん立ち止まって見直すしかありません。