

今回は神宮球場について、建築家大橋智子さんのゲスト投稿です。
専門家の立場から、神宮球場の歴史とその文化財的価値を紹介していただきます。
多くのファンから愛されている神宮球場は、解体せずにリノベーションして保存、活用するべきですね。
魅力ある神宮球場のことをもっと詳しく知りたい方、日曜日の朝10時から作家ロバート・ホワイティングが神宮球場の歴史について語るオンラインセミナーがあります。是非ジョインして下さい。申込みはこちらです:https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_g6IasByGSOS6OBVAjj93xA
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神宮球場は重要文化財「聖徳記念絵画館」と同じ1926年(大正15年)に、設計者も同じ小林政一によって建築されました。小林政一は当時明治神宮造営局の技師で、明治神宮内外苑の建築の統括的な役割を果たしていました。その後建築学会の会長や、千葉大学の学長も歴任するエリートでした。
明治神宮の建築が計画されていた時、1923年(大正12年)に関東地方を襲った関東大震災で、首都は甚大な被害を受けましたが,震災後約7年で復興を果たしました。117校の復興小学校や青山や代官山同潤会アパートの名前で知られた共同住宅などの公共建築は、関東大震災の教訓を生かして鉄筋コンクリート造の耐震耐火建築物として、建築されました。神宮球場もその時期の建築です。その頃の建築は既に100年近く経過していますが、様々な実証研究が行われ、その保存活用方法も提案されています。
鉄筋コンクリート造建築の耐震診断には,以前はコンクリート強度と中性化が表面からどこまで進んでいるかが判定基準の入口とされてきました。
その結果により、耐震補強を行うまでもなく、「老朽化」しているとされてきました。しかし、最近の研究で「中性化」だけでは「老朽化」しているとは言えないことが立証され,その基準も書き改められています。
専門外の方は「100年も経ったコンクリートは経年変化で劣化して,まるで人の骨の骨粗鬆症のようにコンクリートがもろくボロボロになってしまうのではないか?」と想像していたかもしれません。
しかし、そうではありません。
建築時に品質の良いコンクリートで施工されていれば,100年経ってもコンクリートの強度が大きく下がるものではありません。当時コンクリート造の建築は誰でも設計できるものではなく、高度な教育を受けたごく一部の設計者が設計に携わり、品質の良い硬いコンクリートが使われていました。
中性化が進行していたとしてもそこに水が入ることがなければ、建物の強度が下がることはありません。
適切な塗料などで保護すれば、それ以上の中性化の進行を止めることができます。水がコンクリートの中に入ることがなかったら、鉄筋がさびることもありません。むしろ「老朽化」するのは設備配管などで、それは取り換えて更新していけばいいものです。
神宮球場は2014年に耐震補強が行われて、現在の法規基準により安全性が確認されていました。そのことは、神宮球場のコンクリートが現在の法規に合う強度があるということにほかなりません。耐震補強時に、コンクリートコア抜き調査が行われるからです。
また神宮球場より2年前に建築された「甲子園球場」は足掛け4年かけ,オフシーズンだけの工事で、試合を止めることなく耐震補強と機能更新が行われ、今も使い続けています。これも「神宮球場」にとって、良い先行事例になります。
大橋智子