

目黒区区議会議員選挙の開始に合わせて公立の目黒区美術館の取り壊しに関する陳情(案)をインターネット上で公開することにしました。少し長いですがどうか是非全文をご覧頂けたら嬉しいです。
また大型のドローイングは現代アーティストの原口典之のBankART1929での「Noriyuki Haraguchi Sociaty and Matter」の2009年5月の展覧会から受けた強い印象を目黒区美術館解体の問題も含めて原口作品へのオマージュ、再解釈として描かれた永井雅人による最新作です。
目黒区議会議長様 2023年5月X日
目黒区美術館の取り壊しに関する陳情(案)
提出者
住所 目黒区内
電話番号 XXXXX
氏名(代表者)永井雪子(ながいゆきこ)
陳情事項
1 目黒区美術館を取り壊すのはやめて、そのままの形で維持して下さい。
2 美術館運営はこれまでのまま目黒芸術文化振興財団が続けるようにして下さい。
3 青木区長自ら今回の区民センター再開発問題、民間資金を獲得して現施設 を取り壊してどのような新しい施設を造るのかをもっと具体的な青写真、イメージ等を出して区民に説明して下さい。
陳情の趣旨
目黒区美術館、目黒区民ギャラリー、目黒区民センター、公園、下目黒小学校を一体として解体、再開発するという計画が区から出されています。区は条例を変えてでも一体開発として規制の20メートル以上の高層化を考えているようです。土地の一部を業者に70年ほどの定期借地権を与えて、70メートルの高層マンション等を建設させるとのことです。この計画は一般の区民にはまだ十分に知らされていません。未だ一般非公開資料である「目黒区民センター周辺地区まちづくり準備会活動報告書(案)令和5年4月」に載っています。区は美術館を壊して更地にして敷地面積を増やして70メートルという高層の建物を建てるという計画をしています。
美術館は面積による単純計算でも当時20〜40億円以上(推定)で造られ、築年数も本年3月で36年、新耐震ですし、修繕もしています。インフラに不具合があるわけでもありません。美術館は文化財としても、建築物としても非常に優れた建物です。全国的な建築賞も受賞しています。
その美術館を解体することは、目黒のみならず、日本全国からもそして世界中からも反対の声があがっています。これは愚挙と言うべきことであり、文化都市目黒の恥でもあります。
ちなみに反対のネット署名は1,700(change.org)を超えるものとなりました。シェアは800以上、閲覧者数は4万以上です(参考資料1)。Tokyo art beatというウェブ美術誌のトップ記事にもなりました(参考資料2)。記事で「解体は悪しき前例か」と書かれています。解体に反対しているのは、アーティストや建築設計の関係者や美術評論家、学者のみならず、一般の人や外国人も多くいます。
区はこのまま美術館を維持すると今後35年で大規模修繕2回の費用が計83億円、それ以外の改修修繕費用が20億円、維持管理に26億円かかり、計約130億円となり、財政を圧迫すると予算委員会で説明していますが、納得できる数字ではありません。もし新しいビルならば、今後大規模、小規模修繕や維持管理にお金が全くかからない、あるいはその費用はすべて民間が負担してくれるとでも言うのでしょうか。ビルの借地代がたとえ入ったとしても、区の負担が全くなしとは到底思えません。
また目黒区内外の多くの使用者に親しまれ長年利用されてきた目黒区民ギャラリーの展示室及び、美術館で毎年区内の小学校中学校を中心に開かれてきた「めぐろの子どもたち展」、目黒区民の参加と観覧も多数の「区展」(目黒区民作品展)も現状の形で開かれることが出来なくなってしまいます。
区の計画によると美術館全体の延床面積が現在より大幅に減らされて、新しく建てられる高層ビルの一部に入ってしまうのです。区は展示室、収蔵室、区民ギャラリーの面積は変えないと言っていますが、現状の1441.9平米ではなく、1200平米と減っていて、かつ専用のワークショップ室の面積(148.47平米)を入れては考えていません。このワークショップ室は美術品や資料の展示でも使用されている場所です。
美術館のエントランスロビー奥の壁には原口典之氏による鉄鋼の天井付近まで届くオブジェ(写真1)が取り付けられています。これは美術館建築時にあらかじめ設計サイズ、取り付け場所等を考慮して制作、設置されたものです。
この大型彫刻作品は日本でも世界でも他に類を見ない、美術館に据え付けられた作品です。他に移設することも簡単には出来ません。美術館を解体すると言うことは、この優れた美術品を壊すということになってしまいます。場合によっては原口氏側(息子の英興氏等)から訴訟されるようなことです。例えば町田市国際版画美術館では現在、設計者によって訴訟が起こされており、工事差し止めとなっております。
また今でも強烈な印象として残り、かつ歴代ベスト1の展覧会の一つだったのが、2000年に開催された「青木野枝 軽やかな、鉄の森」展(写真2)です。この展覧会は区立美術館の規模では異例なことに、日本の年間ベスト5に選ばれました。天井までの高さや床面積が十分に取れ、天井や窓からの外光も入るという目黒区美術館の良さをまさに生かした展覧会でした。天井から自然光を採れるという美術館は東京近辺には他にありません。
毎年開かれている「目黒の子どもたち展」(写真3)も区立の小中学生クラス全員、自分の作品が美術館に飾られるというワクワク感、親たちが見に来てくれるという子どもの嬉しさがあります。
また美術館の1階での子供のためのワークショップ(写真4と5)は、全国に先駆けてのものであって、広くて水場もあり、外とも繋がっていて、展示室の美術品もすぐそばにあるため子供達が作品を作りながらワークショップの先生に案内されて鑑賞し、考えるという利点があります。
美術館の左側にあって入り口の異なる区民ギャラリー(写真6)は、地下にあってとても広く、誰でも低料金で使用できる空間です。これだけ広いギャラリーは他にはないものです。予約がいつも先まで入っています。
在住在勤の一般の人が毎年美術館に出品出来る区展も、出品者にとって大切なものです。これが芸術文化に触れ、参加するきっかけになるからです。
このような美術館の活動は全国的な賞を受賞しています。
新しいビル内の多目的用の場所に美術品を飾って、多くの集まった人に見てもらうというようなことは、美術品の汚損、盗難、色あせ、退化の危険があって無理なのです。
そのようなことをしなくとも、目黒区美術館はコロナ以降でも6回の企画展の利用者数が3万5千人を優に超えています。美術館に収蔵されている美術品は2,000以上で、時価約20億円です。
以上のように優れた美術館の建物を壊すということは、SDGsにも反する行為であり、 二酸化炭素を出さないという最近の目標にも反していますし、環境を破壊することです。例えば竹橋の国立近代美術館は、旧耐震であり築70年を過ぎていても、大規模改修工事をされてまだ十分に使われています。
民間資金、民間のノウハウを利用するというPFI方式にも問題があります。行政は管理する側、指導する側なのですから、所詮民間と一緒になってやることには無理があるでしょう。その民間の財務が破綻するようなことも今後全くないとは言えません。
芸術は効率、採算で考えるものではありません。美術館だけの問題でなく、児童館、図書館、小学校ー体と、都市計画と文化と教育に関わる大問題でもあります。目黒区はさんま祭りや桜まつりだけではなく、公益性のある大切な文化施設保存について今こそ考える時です。美術館は集客目的のイベントをするだけの場所とは違うのです。区はあらかじめ区民に十分に情報を知らせて下さい。教育や福祉と同時にこの問題を扱って下さい。
何としても美術館の建物はこのまま残して下さい。これは目黒の文化財、宝なのです。美術館は現状のまま残して、その代わりに新しいビルは70メートルより低層にする、あるいは美術館として予定されている部分を他の用途に使用するといった別の案もせめて検討して下さい。美術館をこのまま使用すれば、作品の移管や保管の手間と費用が抑えられますし、長期間の休館もしないで済みます。美術を愛好する我々区民と協力して、さらに良いまちづくりをしていこうではありませんか。
また美術館の運営はこれまで通り、目黒芸術文化振興財団が続けるようにして下さい。民間の業者に任せると場合によっては使途が不明瞭になる恐れがあります。
原口典之の「社会と物質」展 2009年の記録映像
https://www.youtube.com/watch?v=1rAvLmGB-YA&t=27s
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10225529929129327&set=pcb.10225529930889371