実際に農薬散布が未明に始まった9日、このキャンペーンに賛同してくださった大磯町にお住まいの方2名が、神奈川県議とともに「神奈川県藤沢土木事務所」を訪ね、松枯れの現状と農薬散布の状況について担当の方から直接お話を聞き、意見交換ののち、第一次集約分としてこちらに集まった署名8691筆を、いただいたすべてのコメントと合わせて提出していただきました。
話し合いの内容(要約)は以下の通りです。
■連休明けの散布について
藤沢~大磯まで11キロ80ヘクタールが神奈川県の管理する砂防林。 ここで予定通り害虫防除目的に薬剤散布を実施する。 (※本日現在9日未明、10日未明、11日未明の実施エリアはすべて散布済み)
■使用薬剤について
使用する薬剤は「チアクロプリド」。 (ネオニコチノイド系農薬が諸外国で禁止されるなどの状況に対して)そのような指摘があることは把握しているが、政府がその安全性を確認し、「人体に被害が少ない」として使用を認めているものに対して異議を唱える立場にはなく、政府の判断をよりどころにせざるを得ない。 松枯れ対策に使用する農薬は他にもあるが、平成24年度に独自に農薬の比較表を作成し、より毒性が低く、地域的な条件なども勘案して(人や環境に)影響が最小のものとして、チアクロプリド(とその用法)を採用した。
■散布方法について
地上の車からホースで散布する方法で、空中散布ではなく、霧状でもなく、水鉄砲のようなイメージ。「マツノマダラカミキリ(いわゆる松くい虫)」が餌とする松の梢に付着するように散布する。 散布の時間帯は、深夜0時~4時、1時~5時など、人がいない時間を設定し、車で走行する場合も窓を閉めるよう呼びかけ、また散布当日は立ち入り禁止にするなどの措置をとっている。
■環境影響調査について
住民の方からの訴えを受け、令和4年度に平塚の国道の北側の地点で環境影響調査を実施した。 今年度と同様の散布方法で、散布から6時間後の空中の薬剤濃度はゼロであった。 また、散布中であっても60メートル離れた地点では地上の濃度はゼロであった。 (チアクロプリドが、地下水など環境汚染への影響もあるという指摘について)令和4年度の調査は住宅地側で行ったもので、海側(海水や河川水、砂浜など)での調査は行っていない。
■別の方法の検討について
住宅地に隣接する個所などでは、「薬剤散布」ではなく、「樹幹注入」という方法をとっている。実際に国道134号線の北側の対象地域の8割は樹幹注入を行っている。 チアクロプリドの散布が、松枯れを引き起こす「マツノザイセンチュウ」を媒介する(運ぶ)役割の松くい虫をターゲットにし例年5~6月頃成虫(孵化)するタイミングで餌となる松の梢に薬剤が付着するよう散布するのに対し、「樹幹注入」は、「マツノザイセンチュウ」そのものをターゲットにするもので、いわば「予防接種」のようなもの。しかし、樹幹注入をした木でも松枯れの被害がでることもあり、その場合は薬剤散布の対象にせざるを得ない。
■周知の方法について
散布の時期に体調不良になるという化学物質過敏症の住民の方からの訴えを受けて、周知方法の改善を図ってきた。 令和3年度からウェブサイトに散布区域の地図を掲載するようになり、今年度からは対象区域のある自治体への通知を開始した。 散布エリアに設置する看板も、住民の方のご意見を反映させながら改善を図ってきている。また、砂防林内におられるホームレスの方々に対しては、自治体の生活援護関連部署と連携して周知を行っている(20数名ほど)。
■意見交換
- そもそも、松林である必要があるのか。松枯れが続くのであれば別の植物で砂防はできないのか。
乾燥、塩害、飛砂にもっとも強いのがクロマツと言われている。大震災の被害にあった東北地方でも松枯れに強いとされる抵抗性のある松を砂防に利用していくことになっている。
- 松は、裸地に最初に芽を出し、その後、松に虫などが集まってきて、徐々に次の植生が育っていくパイオニアプランツ。ほかの植生が育つにつれて松は自然に枯れていくと聞いている。松ばかりの林にするのは不自然な状態なのではないか
昭和58年頃より、クロマツだけでなく、スダジイ、モチノキ、タブノキ、ヤブニッケイなど15種の植樹のほか、自然に入り込んだ樹木も加わって、現在は混合林が形成されている(横浜国立大学の故宮脇昭教授が唱えた「潜在自然植生」(その土地に本来自生し、生態系に最も適した樹種群)に基づく。ただし、平塚のあたりは松の割合が高いようだ。
- 松枯れが多いのは、松の割合が高いからではないか。
枝払いなどで松の密度管理を行いながら、現在は理想の保全の形を形成していると考えている。平成20年ごろには、日本海岸林学会より「湘南海岸砂防林は理想的」との評価をいただいている。
- ネオニコチノイド系の農薬によって、ミツバチが激減しているなどの報告がある。実際にこの農薬で影響を受けている生物がおり、生態系の破壊も懸念されている。特に、近年危機的となってきた海洋汚染は、地上から流出する農薬や化学肥料によるところが大きいと言われている。砂防におけるクロマツの有用性の一方で、農薬を延々と使い続けていくというのが果たして妥当なのか、検討していく必要があるのではないか。
飛砂から近隣住民の生活を守るために砂防林を維持管理していくというミッションがある。森林の専門家としては次々に枯れていく松を放置することはできない。
■署名提出者からのご意見
-より影響の低い薬剤の選定や、散布の方法、周知方法の改善など、ご尽力されていることは理解できる。だが、実際に薬剤散布によって健康被害を訴えている人もいる。人の健康、海岸林の在り方、生物多様性など、様々な観点から、100年、200年スパンで代替案も含めて、住民や専門家を交えた議論の場が必要ではないか。
■今後の動きについて
多くの皆さんに署名をしていただきましたが、今年度の農薬散布は予定通り行われる事になりました。県としても、県民の意見を取り入れつつ改善を図っておられる様子はわかる一方で、もう少し踏み込める部分もあると感じます。
「政府がその安全性を確認し、「人体に被害が少ない」として使用を認めているものに対して異議を唱える立場にはなく、政府の判断をよりどころにせざるを得ない」という回答について
国の許可が必ずしも正しいとは限らないのは、過去に使用禁止になった農薬があることから明らかです。チアクロプリドの危険性を訴える報告や他国の動きを見れば、国に先駆けて県が規制する事を検討してもよいのではないでしょうか。国の許可の有無に限らず、利用するのにふさわしい薬剤なのか、改めて検討してもらいたいです。
広報、掲示について
現地の掲示物や県公式サイトではチアクロプリドに生殖毒性の恐れがありEUでは登録抹消になっている事などは書かれていません。
県民の知る権利を保証し、できる限り暴露を避けてもらうためにはこれらの情報は必要なことと考えます。たばこのパッケージにも健康被害があると書かれていますが、それと同様です。
湘南海岸の未来を考える議論の場を作ること
今回のことを通して、危険性が指摘される薬剤に頼らないと維持できない松林の存在に違和感を覚えました。そもそもなぜ防砂林が必要になるのかは、沿岸地域の在り方も含めて考える必要があるのではないでしょうか。
署名提出者の方々の意見にもあるように、沿岸自治体や様々な立場の市民、専門家が、100年、200年先も見据えてフラットな目線で話し合える場が必要だと思います。
農薬散布は来年度も続くでしょう。
より良い方法はないのでしょうか。
#湘南海岸にネオニコは必要か とつけて、SNSで皆さんのご意見を聴かせてください。
