Petition update求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!ゲーム条例関連の臨時レポート (世界各国で広まる、未成年のSNSの使用を禁止する法令の制定を受けて)
きしもと みつひろJapan
May 4, 2026

キャンペーンに賛同いただきました皆様へ

 

お世話になっております。

私は、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)そのもののほかに、ゲーム行動症の報道のされ方など、関連する動静も追っています。

今回は、世界各国で広まっている「未成年のSNSの使用を国が法で禁止もしくは制限させる法令(以下、SNS使用禁止法令)の制定」を受けての臨時レポートです。世界各国で広まる、当該法令における「SNS」には、オンラインゲームプラットフォーム『Roblox(ロブロックス)』が含まれるものがあること、また、ゲーム条例は「学習支援と家族間の通話以外の目的で、香川県に住む未成年が使う個人利用のインターネットサービスすべて」が対象になっていることから、ゲーム条例の内容と一連の動静とに関係がないとは言えません。

本文書の作成時点では、以下の国でSNS使用禁止法令が制定されています。EU地域が多いですが、これは、2024年に欧州委員会で定められたデジタルサービス法(Digital Services Act、略称:DSA)を、各国が国内法に順次ローカライズしているからです。

 

・国内法として制定済み、かつ、施行中

オーストラリア、インドネシア、ブラジル、ガボン、中国*

*中国はSNS限定ではなくインターネット上のサービスすべてが対象

・国内法として制定済み、かつ、施行の準備中

マレーシア、フランス、トルコ

・国内法として国会で審議中

オーストリア、デンマーク、ギリシャ、ドイツ、ノルウェー、ポーランド、スロベニア、イギリス

 

本文書の作成時点では、USA国内では以下の州でSNS使用禁止法令が制定されています。

・制定済み、かつ、一部もしくはすべての条項が施行中

フロリダ州、テネシー州、ミシシッピ州、ニューヨーク州、サウスカロライナ州、テキサス州、ユタ州、ジョージア州、ルイジアナ州、オハイオ州

・制定済み、かつ、かつ、施行の準備中

カリフォルニア州、アーカンソー州、アイダホ州、インディアナ州

・議会で審議中

バーモント州、マサチューセッツ州

 

< SNS使用禁止法令の特徴 >

SNS使用禁止法令の特徴は、以下のとおりです。

 

  • 対象となる未成年の年齢は14歳から16歳
  • SNSサービス提供事業者(以下、SNSプロバイダー)に対する罰則規定を設けることにより、SNSの使用者の年齢制限を行う
  • 年齢制限を行うための厳格な個人認証の使用をSNSプロバイダーに義務付けている
  • SNSの使用者である未成年やその親権者に対する罰則規定は設けられていない(ただし、SNSの使用に関して親権者の同意を義務化する形で罰則規定を設けている国もある)
  • 目的は、未成年のメンタルヘルスを守ること、ネットいじめなどの関連トラブル及びサイバー犯罪から保護すること、インターネット依存症*(スマートフォン依存症、SNS依存症)を予防すること

 

< SNS使用禁止法令の問題点 >

1. 医学的もしくは科学的根拠の信頼性が不十分な状態で年齢制限を行っている

これはゲーム条例と同じ問題点です。「対象となる未成年の年齢は14歳から16歳」と幅があることは、SNS使用禁止法令がよりどころとしている信頼性の高い医学的根拠が不十分であることを暗に証明しています。

本文書公開時点では、SNSの使用に関する悪影響の医学的な研究は途上段階にあり、原因と結果を明確に関連付けすることもかなっていません。原因が多岐にわたるためにさらなる調査や研究が必要である状態です。ちなみに、病気と認定されるには、症状が起こる原因が明確に特定されないといけません。世の報道ではインターネット依存症(スマートフォン依存症、SNS依存症)が病気扱いされていますが、前述の理由により、病気扱いするのは完全なる間違いで、それを裏付けるかのように、疾病(病気)としてWHOも厚労省も認めていません。

また、SNS使用禁止法令がよりどころとしている「SNSの使用によって悪影響が及んでいる旨の結果が出ている統計調査で出たデータ」は、回答者の自己申告によるものが大半です。加えて、医療業務で使える診断基準はインターネット依存症では確立されていません。それらの事実から、「データ」の信頼性は乏しいといえるでしょう。実際の統計データを見れば、ゲーム行動症と同じく、本当に深刻なインターネット依存症になっている人は、その国の未成年の全人数において非常に少ないことが見て取れます*1。

このことから、インターネット依存症についても、ゲーム依存症の時と同じで、誤った認識による報道や自称専門家による誤った知識の拡散がされているのが現状です。これは、モラルパニックをその国や地域に蔓延させる効果しかありません。

実際、トルコの大統領は、SNS使用禁止法令の策定にあたり「SNSは下水道に等しい存在」と言い放っています。

しかし、児童精神科医の臨床現場に行き、未成年のSNSの運用の現実をその五感で知っていれば、そのような感情論全開のセリフなどとても言えないはずです。残念ながら、外国のSNS使用禁止法令は、トルコの大統領のように、誤った内容の情報やモラルパニックを真に受けた政治家や行政が策定しているものと推察されます。つまり、関係のない多くの健常な未成年を巻き込む形で、SNS使用禁止法令が施行されたり策定中であったりします。

 

2. 厳格な年齢認証が技術的に不可能であるにもかかわらず、それを実装するよう事業者に強いている

現在のコンピューター関連技術では、特定の個人を100%確実に認証することはできません。もしできているなら、オンライン環境での国政選挙がとっくに行われていないといけないからです。それができていないので、技術的に不可能というわけです。

USAカリフォルニア州では、OSレベルで厳格な年齢認証を強制させる法令になっています。そのことから、上述した技術的限界がわかっているソフトウェアベンダーがUSA市場から撤退する動きが出ています。これは、ゲーム条例第11条 が罰則規定付きで施行された香川県の未来の姿といえるでしょう。

 

さて、デジタル環境で個人を認証する手段はいくつかありますが、それらのほぼすべてに突破手段がすでに確立されています。顔写真による認証、指紋や静脈などの生体認証、二段階認証など、セキュリティー面で強固とされるものも含みます。それ以前に、AIを駆使しても、今の技術では、14歳から16歳のヒトを「顔写真や声紋だけで」「確実に」年齢の違いを識別することは不可能です。そのため、SNS使用禁止法令では、デジタル技術でない個人認証の手段も併用することになります。未成年なら、生徒手帳、銀行口座番号、パスポートや国民ID(日本ならマイナンバー)になると思います。…が、あなたは、国民IDなど、あなたの機微情報にアクセスできる個人認証情報をSNSプロバイダーや政府にその使用をやすやすと許可するでしょうか? その懸念があるので、次にあげる問題も絡んでくるのです。

 

3. 政府やSNSプロバイダーに引き渡す個人情報の扱いに関して重大な懸念やリスクが発生する

前述の技術的背景により、SNS使用禁止法令の下では、未成年は個人を特定できる多くの資料をSNSプロバイダーや政府に供することが義務化されます。特に国民IDは、その人の機微情報にもアクセスできるので抵抗感のある方は多いかもしれません。加えて、個人を特定できる資料だけではなく、SNSでの行動履歴から使用者の年齢を判定することも検討されています。

その政府やSNSプロバイダーは「それらの情報の保護には万全を期する」と謳っています。しかし、人間の行動という辞書に「万全」なる文字はありません。これは、情報セキュリティー面での重大インシデントの発生が否定できないことを意味します。もし「それ」が発生すれば、機微情報を含めた個人情報のデータセットが漏洩することになるので、被害はすさまじく甚大です。個人情報がデータセットとして政府やSNSプロバイダーに集約されてしまっているからです。

また、認証技術が誤判定してしまうと、成人ユーザーが使用制限を受ける、その逆である未成年ユーザーが使用許可を付与される、などのプライバシーの侵害が発生します。これは立派な「個人情報漏洩事案」です。政府自身がそれをやらかすのですから、自分が被害に遭った場合は絶句するしかありません。

そして、個人が特定できるので、「サインインしたSNSでの行動履歴」というプライバシー情報が政府や企業に「完全に」把握されることになります。もちろん、政府やSNSプロバイダーは、その照会や追跡が「いつでも」可能です。最大の懸念がここです。個人認証技術は年齢に関係なく、ヒト全般に対して有効です。これは、法令が拡大解釈されて「我が国の国民全員のオンライン活動での安全を守る」に目的が変更された場合、年齢認証とそれにかかわるオンライン活動の履歴が、子どもだけではなく大人も監視や追跡がされることを意味します。それが実現してしまう可能性は「ゼロではありません」。その懸念があるため、SNS使用禁止法令は、その監視社会の土台となる法令の1つを政府が作ってしまったもの、とも解釈できるわけです。

 

< 日本国ではどうなっているのか >

日本国でも、SNS使用禁止法令の策定の検討がされ始めています。ただし、一部の報道機関がでっち上げたような「総務省が主体になって、インターネット依存症予防のために未成年のSNSの使用に年齢制限を課す」ことまでは決まっていません。現段階では、SNSプロバイダーに課す罰則や制約、子どもやその親権者に課す制約など、関連する内容の精査を慎重に行う方針を決めただけです*2。実際、総務省は「未成年のSNSの使用に一律的な年齢制限を課すことは望ましくない」と慎重な姿勢をとっています*3。しかし、国会議員には、先述したモラルパニックの影響や誤った根拠に基づく報道の影響を受けているのか、SNS使用禁止法令の策定を推す声のほうが多い*4ようです。

 

一連の時事は、インターネットサービス(SNS)と扱われているメディアこそ違いますが、「ゲーム行動症」の時と対応が似ていると私は判断しています。「子どもを守る」の目的が両者共通だからです。このことから、SNS使用禁止法令の策定にかかる事案は「もしゲーム条例が国内法として策定されたら」を暗に示しているともいえるでしょう。

 

ただ、「ゲーム行動症」の時と違う点は、ゲーム条例関連時事が、ビデオゲーム含めたICTサービスの使用で発生する悪影響に関する、医療分野およびICTの分野から見た正確な知識、そして、ICTサービスの使用にかかる行動嗜癖(依存症)に関して、医学的に正確な知識の普及を進めた点です。そして、それを国政や地域の政治の場できちんと述べることができる政治家がいる点です。

 

SNS使用禁止法令の運用開始後の時事を調べた結果、私は、「子どもを守る」と称して、実際は、子どもに技術的に「危険なこと」をさせたり、子どものプライバシーを「危険にさらす」恐れのある…長じて「国民全員のオンライン活動を厳しく制約したりする内容にグレードアップする」可能性がゼロでない法令の制定を安易に許してはならない、と捉えるようになりました。客観的に見ても、SNS使用禁止法令は、表現の自由や通信の自由といった基本的人権、および、子どもの権利条約にもかかわる内容なので、日本国内での関連時事を冷静に捉えて、私たち市民は、客観的な分析のもとで、SNS使用禁止法令の制定により懸念されることを政治の場に具申する必要があるでしょう。

 

< さいごに >

特に未成年を対象とした個人用ICTサービスの使用規制にかかる事案は、もはや香川県限定の問題ではありません。「ゲーム行動症/インターネット依存症の予防」や「子どもの安全を守る」なるスローガンを掲げ、ICTサービスの適切な利活用に対する意欲まで削ぎ取る、非科学的あるいは十分な信頼性のない根拠に従ったICTサービスの使用制限を目論む地方自治体は「これからも出てきます」。それらの施策は、長じれば、日本国の衰退をさらに早めます。

以上のことから、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らと「行政や議会による、ビデオゲームを含めた個人利用のICTサービスの使用規制」の問題点について話し合うことをお勧めいたします。もし、可能であれば、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

主催者 きしもと  みつひろ

 

[ 参考資料 ]

・関 正樹『子どもたちはインターネットやゲームの世界で何をしているんだろう?』(金子書房)

・関 正樹『思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?』(日本評論社)

・エミリー=ワインスタイン、キャリー=ジェームズ『スマホの中の子どもたち』(日経BP)

*1「スマホ依存で成績破壊」のバズツイート〜元論文が示すr=-0.12の意味〜(https://note.com/drneurosur/n/nc78f8daed49e

*2 山田太郎参議院議員によるXでのポスト(https://twitter.com/yamadataro43/status/2047261291644076303

*3 該当する総務省での会合での記録はこのXでのポストから閲覧可能(https://twitter.com/ogi_fuji_npo/status/2046955505235656808

*4 山田太郎参議院議員によるXでのポスト(https://twitter.com/yamadataro43/status/2042133578507808930

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