Petition update求む「守り人」! 若者と地域を侵す香川県のゲーム規制条例を改廃させよう!ゲーム条例関連の時事レポート (2024年4月~2024年9月)
きしもと みつひろJapan
22 Sept 2024

キャンペーンに賛同いただきました皆様へ

 

お世話になっております。

 

私は、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)そのもののほかに、ゲーム行動症の報道のされ方など、関連する動静も追っています。

今回は、2022年4月から2024年9月中旬までに、香川県内外で起こった関連時事を紹介させていただきます。

なお、訴訟関係は 前回のレポート で扱っていますので、本稿では除外させていただきます。予めご了承ください。

 

[ 補足 ]

2024年9月19日、厚生労働省は、WHO(世界保健機関)のICD-11(国際疾病分類および関連健康問題 第11版)に収載されている「Gaming Disorder」の日本語訳を「ゲーム行動症」とすることを正式に決定しました *1。これを受けて、本キャンペーンでは、本稿以降「ゲーム依存症/ゲーム障害」は「ゲーム行動症」と記述します。

 

< 1.国政ステージにおけるゲーム行動症関連の動静 >

2024年4月24日、参議院予算委員会で、公明党所属の伊藤孝江氏が、ゲーム行動症やインターネット依存症に関する政府の見解とその対策について、厚労省や総理大臣に 質疑応答を行いました 。しかし、彼女が質疑応答において展開した内容は、多くの国内メディアが報道している「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関するもの」でした。質疑応答の録画映像からは「WHOはゲーム行動症を病気と認定した」「ビデオゲームやインターネット上のサービスに過度にかかわることでゲーム行動症やインターネット依存症を起こす」など、事実や医学的見地から逸脱したものが散見されます

実際は、現時点におけるゲーム行動症は、厚生労働省はもちろんWHOも病気と認定していません。そもそも、ICD-11に収載されている事象すべてが病気ではありません。また、「ビデオゲームやインターネット上のサービスに過度にかかわる」だけでは、医学的見地から言えば、ゲーム行動症と診断されることはありません。ICD-11に記載されているゲーム行動症の診断要件を満たしていないからです。

後述しますが、上記の「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関する知見」は、業界を問わず国内に浸透しています。しかし、その仕事が国政を左右する国会議員がそれを信じ込んで知識のアップデートをしていないことは、結果として私たち市民と医療従事者に少なからぬ悪影響をもたらします。

若者のゲーム行動症が「重大な懸念の1つ」と宣うなら、まず伊藤氏自らが関連知識を最新版にアップデートすべきでしょう。

 

その一方で、「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関する知見」を、国政のレベルでアップデートさせる活動を継続的に行っている国会議員もいらっしゃいます。山田太郎参議はその1人です。

8月12日、東京都内で開催された「表現の自由を守る会フォーラム」において、山田氏は、時間の関係で文字通りさらっとしか触れませんでしたが、「インターネットやそれが稼働するICT機器の使用を規制すれば関連問題が解決すると捉えてはならない」ことを言及していました。*2 

 

< 2.ビデオゲーム開発者向けカンファレンスでゲーム行動症に関する講演が行われる >

2024年8月21日から23日まで、神奈川県にあるパシフィコ横浜にて、ビデオゲームおよびその関連機器の開発者・研究者向けカンファレンス「CEDEC(せでっく、コンピューターエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)」が開催されました。

このカンファレンスに登壇した山根信二氏(NPO法人国際ゲーム開発者協会日本理事)は、ビデオゲームのユーザーインターフェースデザイン論の観点から、ゲーム行動症に関する内容を含む 講演を行いました 。氏のXの投稿でも触れられていますが、ビデオゲーム業界においても、ゲーム行動症に関する知見は、先述した国会での質疑と同じく「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関する知見」からアップデートされていないのが現状です。

本稿掲出時点では、ビデオゲームというコンピュータープログラムの仕様設計に落とし込めるレベルの「信頼性の高い世界共通の科学的根拠に基づいた数値」が不明なので、開発者側は、ゲーム行動症対策をゲーム(サービス)の中では行うことはできません。しかし、対策の一翼を担う知識のアップデートは行えるはずです。

-ビデオゲーム業界も「脳汁がドバドバ出る」といった俗流心理学を率先して語ってきた過去があり,組織の科学リテラシーをアップデートしていく必要がある*3

 

< 3.香川県内でゲーム条例関連のゼミナールや講演会が行われる > 

2024年6月29日、高松市中心部にある商業施設で開催されたゼミナール『ヨス&シンジの連続公開ゼミ「#世界はもっと生きやすい!」香川出張編』の中で、ゲーム条例が扱われたセッション がありました。同条例の動静を継続的に取材しているTV記者、山下洋平氏を招き、パブコメのあり方や条例の意義など、地方議会から投げかけられた普遍的な課題についてお話を伺うイベントです。

お話の中で、山下氏は、条例のターゲットである「香川県内にいる18歳以下のゲーム行動症当事者」の数、そして、その調査もろくにされないまま、一部の県議会議員の先入観やお気持ちだけで策定されていることなど、同条例の内容の杜撰さを改めて厳しく批判していました。同条例の策定段階から取材し問題点を提起できていれば、現状のようにならなかったのではないか、と、行政や政治の動向を監視するマスコミ本来の仕事をきちんと行うことの重要性についても触れていました。

このゼミについては、私も参加させていただきました。

 

2024年9月15日、高松市にある香川短期大学で開催された『社会情報学会 第13回研究大会』内のセッション『地方の情報化社会とデジタルウェルビーイング―情報教育と「ゲーム規制条例」とを事例として―』で、ゲーム条例が扱われました。こちらでは、山下洋平氏がコメンテーターとして招かれています*4。

人口減少と少子高齢化が不可避のなか、活力のある地域づくりにはICT(情報通信技術)の力が不可欠になっているのが現状ですが、ICTの力をより良い方向で引き出すためには、使用者のメンタルヘルス等健康に配慮したICTの運用が求められます。それは、ICT教育(デジタルシティズンシップ教育におけるメディアバランス分野)の中で啓発されるものですが、ゲーム条例は、そのICT教育を歪める存在になっています。同条例の内容が、ビデオゲームや個人向けのインターネットサービスの利用そのものを委縮させたり、恐怖感や偏見を植え付けたりする方向にしか作用しないからです。皆が真に望むICTの利活用の促進と、その延長上にある地域のより良い発展、を目指す工程で同条例が犯したものを改めて考えるたたき台として、このセッションが設けられたと思われます。

ちなみに、このセッションの報告者には、ゲーム行動症に関して医学的に正確な知見を発信している児童精神科医の関正樹氏や社会学者の井出草平氏が名を連ねています。

 

< 4.香川県で行われたゲーム条例関連施策 >

夏季休暇前、香川県教育委員会は、“ネット・ゲーム依存症”の予防を目的に掲げた啓発資料「ネット・ゲーム依存予防対策学習シート」を、県内すべての小中高校に配布しました。

問題点は、その啓発資料の内容にあります。同資料は、前述している「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関する知見」に準拠した情報を掲載しているからです。それがあまりにも医学的、科学的に誤っている内容であることから、行動嗜癖を専門に研究する学会から「なぜ、そのようなデマ同然の情報を学校教育用の啓発資料に掲載したのか」と公開質問状を叩きつけられているほどです。それを受けて内容の修正がされたと思いきや、質問状で厳しく指摘された「ネット・ゲームの使いすぎによる脳への影響」の情報は、内容を一字一句変えることなく掲載されていました

これについては、取材の中で「科学的な因果関係もないような図を載せることで、ビデオゲームに今ハマりすぎている子どもたちに罪悪感を抱かせたり、偏見や誤解を与えたりすることになっていないのか?」と、記者が厳しい口調で質しましたが、それに対する教委の答えは曖昧の極みともいえるものでした。ニュース映像を見ればわかりますが、記者が質した質問のすべてにおいて「~と思う」「そういう意見もある」と、県の教育行政を司る立場にあるにもかかわらず、無責任としか捉えられない回答しかしていません。

このやり取りの一部は、こちら からご覧いただけます。

さらに厄介な問題点は、「学校教育の一環」として、そのデマ同然の情報を教室で流布していることにあります。

県教委は「教育の過程ですから、(当該資料が配布され始めた時から)5年が長いか短いかというのは人それぞれだと思いますけれど」と回答していますが、一般的に、5年は「十分すぎるほど、長い」です。中学1年生が成人年齢(手前)になる長さです。その5年間、県教委は、誤った情報を、学校教育を介して流布しました。子どもが大人になるその工程の中、その誤った情報を意図せず、家族、知人、就業先の関係者、そして、彼ら彼女らが時を経て自分たちの子どもに流し込む恐れがあることを「たいしたことはない」と断言するなど、まともな思考を有していれば、到底できるものではありません

そのまともな思考を有していない、組織としての県教委の認識には、恐怖感と愚鈍さの両方を併せ持った“戦慄”に近いものを個人的には感じます。

 

その夏季休暇終盤に差し掛かった2024年8月18日から24日まで、高松市にて、ゲーム条例の施策の一環として、ゲーム行動症治療キャンプが実施されました。この模様を報道したニュース映像は、こちら から視聴いただけます。

キャンプの主催者は香川県、実施者は、高松市内でゲーム行動症の診察を行っている三光病院です。参加者の目線では、このキャンプでゲーム行動症が少しでも寛解すればよいことになりますが、治験としては疑問が残ることが行われています。それは、以下の事柄が挙げられます。

  • 世界的には「効果が薄い」とのエビデンスが固まっている認知行動療法を採用している*5
  • キャンプ内講演会に招聘したゲーム行動症罹患経験者が、実はゲーム行動症になっていなかった疑いがある*6
  • 三光病院は、効果が出そうな被験者のみを選抜したうえでキャンプを実施した疑いがある*7

特に、最後の項目は、治験データの属性を偏らせ、「効果がある」との検証結果を導きやすくする細工が容易にできます。それを受けた事後検証の結果も、必然的に「結果ありき」の「偏ったもの」になる確率が高くなります。

また、「ICTサービスの利用習慣の見直し」がこのキャンプの目的なら、それは、ICD-11 にいうHazardous Gaming (意訳:健康を損ねる恐れのあるビデオゲームの運用)の是正のほうに該当します。この事象は、ゲーム行動症とは全く別のものであり、かつ、病気として分類されていません。これは、本来の使途から逸脱した用途に県税が投じられたことを示唆します。

ちなみに、このキャンプは、テスト版を含めると3回目の実施となります。しかし、上述した懸念事項は一切払拭されていません

 

ただ、臨床現場の面では、ゲーム条例の誤った内容を是正する動きが見受けられます。

4月11日、高松市にある県立文書館で開催された研修会は、香川県と、上記で紹介した三光病院が主催していますが、そこで登壇した方の講演は、臨床現場の知見から見ればまっとうなものでした。

報道 によると、スクールカウンセラーを務める山下輝美氏は「子どものインターネットサービスやビデオゲームの長時間利用という “目に見える問題”ではなく、背景にある家族や学校生活などの問題に目を向けることが必要」と説いていましたし、引きこもりの家族支援を研究する境泉洋氏(宮崎大学教授)は「ビデオゲーム(のプレイ)はひきこもりからの脱却に必要な、元気回復行動にもなる」と指摘していました。ちなみに、ゲーム条例では「ゲームの過剰な使用が学力低下やひきこもりを引き起こす」と、堺氏の講話とは正反対のことを論っています。

三光病院単体では、依存症治療拠点機関の認証を得る工程の関係で「レガシーであり、今では通じない誤ったゲーム行動症に関する知見」を是としている国立医療機関の影響が回避できません。ゆえに、香川県は、今回の講演のように、正確な知見を備えた第三者的な立場にある識者や医療関係者に啓発活動を委託するほうがよいかもしれません。

 

< 5.ゲーム条例検証報道がギャラクシー賞(選奨)を受賞 >

2024年5月、国内の優れた放送番組を表彰する「ギャラクシー賞」の報道活動部門で、ゲーム条例を検証した瀬戸内海放送(テレビ朝日系列)による一連の報道が「選奨」を受賞しました。2020年の同条例の制定以降、関連する動静を継続的に取材、検証した一連の報道活動に対して「条例の不透明な成立過程を追及し、行政の監視という役割を果たした」ことが評価され、受賞を勝ち得ました。

同条例の検証を行った特別番組『検証ゲーム条例』は、行政の監視を行い市民に正確な情報(判断材料)を提供する、マスメディア本来の仕事を忠実に遂行した結果生まれた、良質な報道コンテンツです。こちら からぜひご鑑賞ください。

 

[ さいごに ]

ゲーム条例の違憲性を問う手段では、同条例の改廃が極めて困難であることが明らかになりました。しかし、同条例の内容が懸念だらけである現実は変わりません。また、特に未成年者向けのビデオゲームや個人用インターネットサービスの使用規制は、香川県限定の問題ではありません。「ゲーム行動症/インターネット依存症の予防」や「健全な青少年の育成」を掲げ、ICTサービスの適切な利活用に対する意欲まで削ぎ取る、非科学的な根拠に従ったICTサービスの使用制限を目論む地方自治体はすでに存在するからです。それらの施策は、長じれば、日本国の衰退をさらに早めます*8。

以上のことから、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らと「行政機関による、ビデオゲームを含めた個人利用のICTサービスの使用規制」の問題点について話し合うことをお勧めいたします。もし、可能であれば、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

主催者 きしもと  みつひろ

 

[ 参考資料、引用元 ]

WHO『ICD-11』Gaming Disorder(https://icd.who.int/browse/2024-01/mms/en#1448597234

*1 毎日新聞、2024年9月20日『性同一性障害は「性別不合」に WHO新疾病分類の政府和訳』

(https://mainichi.jp/articles/20240920/k00/00m/100/209000c

*2 マリンバ⋈氏のXへの投稿より(https://twitter.com/marinba_555/status/1822937440929354058

*3 山根信二氏のXへの投稿より(https://twitter.com/shinjiyamane/status/1803268081936113901

*4 山下洋平氏のXへの投稿より(https://twitter.com/y0he1_yamash/status/1835287846942634104

*5 井出草平氏のXへの投稿より(https://twitter.com/Sohei_IDE/status/1559863275613192192

*6 井出草平氏のX への投稿よりhttps://twitter.com/Sohei_IDE/status/1560675807861030913

*7 三光病院 「S-NIP OFFLINE CAMP 2024の開催について」

(https://www.sanko-hp.com/topics_detail/?id=2656

*8セミナー「10年後を見据えたICT教育」における、田中たつや氏の質問より

(https://drive.google.com/file/d/1b9Jp2S7Zs324fSrSiH0FAIaZeS9yBwbb/view

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