
12月21日、環境大臣、放射線審議会へ以下の申し入れ書を提出しました。ぜひお目通し下さい。
2024年 12月21日
環境大臣 浅尾 慶一郎 殿
放射線審議会会長 甲斐 倫明 殿
「過酷事故との共存」を目指す「現存被ばく状況」を、 汚染土再利用のどさくさ紛れに国民的議論もなしに 是認しないよう求めます!
環境省はさる10 月29 日、汚染土再利用の技術的基準について放射線審議会に諮問しました。その「技術的基準」では、住民・作業員の被ばく線量の上限を年1 ミリシーベルトに抑える理由について、「事故後の対応であることを踏まえ、現存被ばく状況における参考レベル( 1~20mSv/年)、計画被ばく状況における公衆被ばく線量限度 1mSv/年)の両方を勘案し、1mSv/年を超えないこととする。」としています 6頁)。
その後、12 月10 日の「技術的基準・補足資料」2 頁でも、「福島第一原子力発電所事故からの復興に向けた取組であることから、現存被ばく状況における参考レベル 1~20mSv/年)を議論の出発点とし」としています。
「現存被ばく状況」とは「管理に関する決定をしなければならない時点で既に存在する状況」と定義されています ICRP2007 年勧告日本語版・用語解説) 。
同じ年間1 ミリシーベルトでも、現行の1 ミリシーベルトは「超えてはならぬ線量限度」ですが、事故後の福島のような「現存被ばく状況」と認められれば「線量限度」ではなく、超えてもよい目標値とされます。どちらが体に良いか、自明です。
「現存被ばく状況の参考レベル」はICRP 国際放射線防護委員会)の2007 年勧告に盛
り込まれました。事故当時、高線量の被ばくを強いられた住民たちは、「こんな時こそ、年間1ミリシーベルト未満でなければならないのに、なぜ20ミリシーベルトでいいの?」と疑問をふくらませました。
答は、ICRPが、“原子力発電の稼働には被ばくの害を超える大きな便益がある”という立場に立っているからです。
1986年のチェルノブイリ原発事故後、ソ連政府が年間1ミリシーベルトでも移住の権利を認めたのに対し、ICRPは2007年勧告で“現存被ばく状況では年間20ミリシーベルトまでは避難させなくてもよい”と助け船を出し、「過酷事故との共存」、過酷事故が起こっても原発を続けられる態勢を目指し日本政府を支えたのです。「現存被ばく状況」の導入は、国民的議論の必要な大問題です。
日本の現行の原子力法制はICRP1960年勧告を基礎としており、放射線審議会などで「現存被ばく状況」をはじめ2007年勧告の日本法制への取り入れが検討されている真最中に福島第1原発事故が起こり、「現存被ばく状況」など2007年勧告の取り入れは頓挫しました。「現存被ばく状況」という概念の問題点が、福島原発事故によって明らかになったからでしょう。13年も経過している中で、計画被ばく状況で足りる本件事業の諮問に関して、「現存被ばく状況」を考慮することが必要でしょうか。
ICRP 2007年勧告を導入すべきかについて最も重要な利害関係人である国民抜きに、事実上避難の権利を否定する現存被ばく状況を考慮に入れることは、絶対に認められません。これを強行することは、日本の被ばく被害防止体系に「現存被ばく状況」という概念やその状況に相当する線量を、国民抜きでこっそり持ち込み、ゆくゆくは過酷事故後の除染基準引き上げなど、被ばく防止対策をゆるめようとしているおそれがあります。
環境省および放射線審議会に対し、国民的議論もないまま、汚染土再利用のどさくさ紛れに「現存被ばく状況」を是認しないよう、申し入れます。
放射能拡散に反対する会