本日、札幌地方裁判所で行われた裁判期日の内容につきまして、猪野弁護士のブログ上のご報告をご本人の許可を得てこちらにも掲載します。
本日、札幌地方裁判所で裁判期日(弁論準備手続)が行われました。
これに先立ち、裁判所から当事者双方に対して和解による解決があり得るのかという打診がありました。
私たちはこの訴訟の目的として、札幌聾学校における日本手話教育の充実、ろう児が日本手話で授業を受ける権利が基本的人権の1つであることを認めさせることにありました。
そこで私たちは次の和解条項案を提示しました。
1 被告は、原告らに対し、日本手話による授業を提供することができず、それが原因で原告らの授業に遅れが生じたことについて真摯に反省し、謝罪する。
2 札幌聾学校に在籍する原告●●について、授業の遅れを取り戻すための補講を日本手話により行うことを約束する。
3 被告は、札幌聾学校の二言語クラスの在り方について、日本手話を用いた授業を基本としつつ、これに児童のニーズに応じて聴覚を活用した音声言語による指導も行い、日本語の読み書きも合わせて習得する授業を行うクラスであることを確認する。
4 被告は、札幌聾学校の二言語クラスを日本手話で円滑な授業を可能にする教員の養成、確保のための制度を具体化し、そのための予算を確保することを約束する。
5 被告は、札幌聾学校乳幼児相談室では、ろう児やその親に対し、日本手話による言語獲得を補償するための情報発信と親子への支援を担ってきたことの重要性の確認し、情報発信をコロナ禍以前の水準に戻すことにより、ろう児とその親に情報が届くよう積極的に発信することを約束する。
私たちからみればどれも当たり前の内容です。
法的な責任があるのかどうかはともかく、裁判を終わらせるのであれば、ろう児たちが全く授業になり得ないような状況に苦しめられたことは否定しようがないのですから、そこには真摯な謝罪があって然るべきです。それが教育に携わる大人の最低限の責任ではないでしょうか。
少なくとも生徒たちが苦しんだということについて道教委、札聾から道義的な謝罪はあって然るべきものです。
それからまだ在学している生徒については1年分の遅れを取り戻すために授業(補習)を行うこと自体、学校に対する要求としては当然のものだと思います。
二言語クラス(日本手話を基軸とした授業であり、このように表記されます)の内容の確認は、これ自体はこちらで考えたものではなく、札聾側が従来から示してきたものであり、この内容自体を当事者相互で確認するのも当然のことでしょう。決して無理難題ではありません。
それから今般、日本手話が全くできない教師が日本手話クラスを担当するなどあり得ないことで、日本手話を使いこなす教員の養成と確保は道教委の責任です。その責任を果たすためには対応する予算をつけなければ、結局、掛け声だけのものになってしまうため行政のあり方として予算の裏付はとても重要なものです。
当初、北海道が日本手話で授業を始めたとき250万円の予算を確保していましたが、額はともかく同じようにすべきということです。
札幌聾学校の乳幼児相談室は、難聴として生まれてくる子たちのための大事な情報を発信する場でした。特にろう児が産まれると聴者の親が慌てることになりますが、ここに来ればいいよという意味でとても大事な場所です。札聾として取り組んできましたが、コロナ禍では外部からの講師(ボランティア)がシャットアウトされていました。コロナは明けたのですから、そうしたことを再開することは札聾としては当然に求められていることです。
こちらとしては予算問題では難色を示すとかはあっても、もともと札聾が言ってきたこと、やってきたことを中心して作成した和解条項案なので、これがベースになるものだと考えていました。
ところが道教委側から提示された「対案」は次のようなものでした。
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被告が和解可能である和解条項案は、下記の通りである。
記
和解条項案
札幌聾学校においては、引き続き、日本手話を含む手話を活用しながら、学習指導要領に基づく適切な教育活動を進めてまいる。
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これには啞然とさせられました。全く内容がありません。2022年3月に保護者たちが道教委、札聾に申し入れたとき、道教委は北海道新聞社の取材に対して次のように回答しています。
「以前から日本手話による教育の充実を図っており、人材育成にも努めている。」
これと同じレベル。札聾自身が二言語クラスとはこのようなものだと示したことさえ、合意内容にできないということであり、原告たちに喧嘩を売っている内容であり、侮辱そのものです。当然、当事者はこの内容に怒りを覚えています。
この程度の内容であれば何も提示しない方がましです。教育に関わっている人たちがこんな姿勢とは酷すぎます。北海道の予算削減を狙う道官僚としては優秀なのかもしれませんが、教育者として、人として失格です。
和解で終えるという選択肢はなくなりました。
次回以降、人証へと進みます。いよいよ結審、判決が近づいてきました。
さらなるご支援をお願いいたします。