教員志望だったのに、大学入学後に「定額働かせ放題」の実態を知って、公務員に志望を変更した学生がいます。教育実習に行って、教員の多忙さを目の当たりにし、とても自分にはできそうもないと教職をあきらめた学生もいます。その一方、様々な困難を抱えた子どもたちに寄り添える教師になりたいと学んでいる多くの学生がいます。彼らが、やりがい搾取されることなく、ワークライフバランスを保障され、心身の健康を維持しながら教職を続けていけるような学校であってほしいです。大好きな仕事だったのに、心身を病んで休職し、復帰できずに教職を離れざるを得なかった卒業生たちに思いをはせながら、この署名活動を広げていきたいです。
片岡洋子(千葉大学 名誉教授)
「教職の危機」から希望の未来へ
これほど幅広い専門分野の教育研究者らが共通の危機意識をもって全国署名活動に取り組むのはこの国の歴史でも初めてのことではないでしょうか。それほどまでに、いま教育をめぐる環境は危機的状況にあります。今月公表させていただいた『教職を離れる若者たち』からは、教育実習等のリアルな経験をふまえて教員への道を選ばなくなっている当事者の切実な声が聴こえてきます。「子どもの数」「生産性」云々ではなく、そもそもケアしケアされ、育ち合い学び合う社会が毀損されている現状を憂います。これを機会に、自分自身も教員をはじめケア労働を担っている方々が置かれている状況をなお一層自分事として考え行動してまいりたいと思っています。一人でも多くのみなさんにご理解ご賛同をいただき、この国に生きる人々の未来を希望のあるものにしていくことに力をお貸しいただければ幸いです。
菊地栄治 (早稲田大学 教授)
子どもが安心して学校で学ぶために必要なこと
文部科学省の最新の調査では、2021年度の小中学生の不登校は24万人となり、2020年度より小学校・中学校ともに約25%前後増加し、過去最多を更新しました。この数字は、こどもたちが安心して学校で学ぶための前提条件が年々悪化していることを示唆しています。
子どもたちが自らの学習する権利を安心して行使する環境を学校において整備するためには、その前提として、教師たちの人権が学校において保障されていることが必要です。自らの人を保障されていない大人が、どうやって子どもの人権を保障し得るのでしょうか。教師の自己犠牲にのみ問題の解決を期待するのには限界があります。
学校での子どもの学ぶ権利をよりよく保障するための前提として、人間らしく暮らせる労働環境をすべての教師に保障することを求めたいと思います。
小国喜弘(東京大学 教授)