

学術オリンピックに国の支援を
署名活動の主旨
支援を、 7教科の外へ。 代表の手前にも。
AIも、経済学も、言語学も、天文学も。知る・試す・学ぶ・世界へ進む、その全体に公的な土台を。
――――――――――
1. はじめに ── 7分野で止まった、限定的な公的支援
ニュースなどでたまに目にする、学術オリンピック。一般的には化学、生物、物理、地学、地理、情報、数学の7分野の国際大会と国内大会の双方を指して使われる言葉です。これらの大会を補助しているのが、独立行政法人 科学技術振興機構(以下JST)の次世代人材育成事業。JSTの制度は、先述の7大会とISEF(国際学生科学技術フェア)を、主に国内選抜・育成・国際大会参加・普及という側面から体系的に支えています。
物理オリンピックの日本代表は、このように国の支援を受けて世界に挑みます。一方、経済学、AI、言語学、哲学、天文学といったオリンピックの日本代表は、国の支援なしに渡航します。同じ「日本代表」でありながら、です。私たちは、JSTの支援の枠組みを公開された明確な基準の達成を条件に広げること、新制度の導入まで代表派遣を暫定的に支援すること、支援の配分と成果の見える化を求めます。
また、これは単に「日本代表」になる数十名に限った話ではありません。学術オリンピックは学びのきっかけ、学び続ける動機として大変重要な社会的意義を果たしているからです。現状の公的支援は日本代表の選抜及びその派遣に主眼をおいています。しかし、公的な土台を持たない分野では、住む地域ゆえに大会の存在すら知る機会がない人がいたり、家庭の経済的な事情のためにスタートラインにすら立てない人がいたりと、構造的な不平等が生じています。公的支援がある分野においても、普及活動は民間が中心になっており、十分とは言えません。教育の機会均等を掲げる社会において、この現状は放置できません。
すべての意欲ある若者が等しく「知る・試す・学ぶ」というステップを踏み出せる社会へ──。私たちは、JSTの支援の枠組みを公開された明確な基準の達成を条件に広げること、新制度の導入まで代表派遣を暫定的に支援すること、そして支援の配分と成果の見える化を求めます。さらに、代表としての世界への挑戦だけでなく、その手前にある「入口」としての国内普及や裾野の育成活動に対しても、公的支援を拡大することを強く求めます。
2. 現行制度の成果と、広がらない「学術の地図」
我が国(文部科学省及びJST)は2004年度に「国際科学技術コンテスト支援事業」を開始しました。この年度では数学オリンピック、化学オリンピック、ISEFと日本で開催された国際ロボットコンテストが支援対象となり、渡航費や国内大会実施の費用などが助成されました。
翌年に情報と物理が加わり、支援対象の「学術オリンピック」は5分野に。同じように、地学と地理が加わっていき、現在の「7分野+ISEF」という体制が出来上がったのです。この枠組みのもとで支援対象となった大会の運営母体は日本国内大会の運営、代表の選抜・育成、国際大会への派遣を行い、日本代表は毎年数多くのメダルを獲得してきました。この事業が長年果たしてきた役割を、私たちは強く支持します。
問題は、制度の前提となっている「学術の地図」が、設計当時のまま更新されていないことです。
この約20年で、学術の国際競技の世界は大きく広がりました。言語学オリンピック(IOL)は2003年から続く「国際科学オリンピック」の一つで、2025年大会には42の国・地域から227名が参加しました。経済学オリンピック(IEO)は2018年に始まり、国際AIオリンピック(IOAI)は2024年の創設からわずか2年目で参加国60か国を超えています。天文学・天体物理オリンピック(IOAA)も確立した国際大会で、第一回大会は2007年に開催されました。これらの大会はいずれも現行制度の対象外となっています。
あらかじめ申し添えますと、これらの大会は国際大会ないしその国内予選の規模が小さいために支援対象外になっているわけではありません。2026年の日本言語学オリンピックの応募者は過去最多の1,100人を記録しています。また、国際経済学オリンピックの一次選抜ルートの一つ、エコノミクス甲子園には、今年約1,700人が参加しました。参考までに、日本地理オリンピック・日本地学オリンピックの参加者数が初めて1,000人を超えたのは2013年、日本情報オリンピックについては2014年です。
現行事業は「科学技術分野」を対象要件としているため、経済学や言語学は構造的に排除され、AIのような新興分野も取り残されたままになっているのです。
3. 問題は支援の不在ではなく、「公的支援」の不在、不足です
誤解がないように現状を整理すると、これらの大会もまったくの無支援で運営されているわけではありません。AIや経済学といった分野では、企業の協賛や後援がすでに一定の役割を果たしており、国際大会そのものも世界的な企業の協賛を受けて運営されています。民間がすでに価値を認めて動いている──この事実は、これらの大会の意義を裏づけるものです。
しかし、民間の協賛には、公的支援の役割を代替できない構造的な限界が三つあります。
第一に、不安定であること。協賛は各社の年度ごとの経営判断に左右され、継続の保証がありません。代表の選抜と育成は何年もかけて積み上げる営みであり、毎年白紙から資金を集め直す体制の上には成り立ちません。また、大会が実施されないリスク、日本代表派遣がなされないリスクが存在することは、出場のために努力することを躊躇する要因となってしまいます。
第二に、分野間で著しく不均等であること。AIや経済学のように人材獲得の文脈で企業の関心を集めやすい分野には協賛が付きやすい一方、言語学のように商業的な受け皿の乏しい分野は、構造的に取り残されやすくなります。学術としての価値と、協賛の集まりやすさは、別。市場の原理に任せるわけにはいかないのです。
第三に、それでも届かないこと。協賛があっても、渡航費・参加費の相当部分は依然として生徒側の負担であり、国内選抜の運営は無給のボランティア委員会と教員の善意に支えられている。こういった大会は少なくありません。代表育成や国内大会の実施の便益は特定の企業ではなく社会全体に及ぶため、民間の自発的な支援だけでは必要な水準に届かない。これは経済学が「公共財の過少供給」と呼ぶ、極めて典型的な構造です。
現に、国の支援対象である7教科では、公的支援という土台の上に民間の協賛が重なっています。対象外の分野には、その土台がありません。その結果、実力で代表に選ばれながら家庭の経済事情で出場をためらう生徒が、住む地域ゆえに大会の存在すら知らずにいる生徒が、生まれています。選抜は実力で、出場は経済力で。教育の機会均等を掲げる国の制度として、放置してよい構造ではありません。
4. 世界はすでに動いている
新しい分野の学術オリンピックを「国が支えるべきもの」として扱う動きは、すでに世界の標準になりつつあります。
ブルガリアは、言語学オリンピックの全国組織委員会を教育省の下に置いて運営し、さらにIOAIを自国のイニシアチブで創設して、大統領と教育省がこれを後援しています。中国は2025年、IOAI第2回大会を北京に誘致し、世界中の若きAI人材を自国に迎え入れました。人口約55万人のマルタは、教育・スポーツ・青少年・研究・イノベーション省の予算で、2024年に初めて国際言語学オリンピックの代表団を派遣しました。インドでは、原子力省・科学技術省・教育省・宇宙機関(ISRO)等が資金を拠出する国家オリンピック・プログラムが日本では支援対象外の天文学オリンピックを含む多数の大会の代表選抜・派遣を1999年から支援し、各教科2万〜6万人が参加する選抜の土台を国家規模で築いています。
人口55万人のマルタが、教育省の予算で言語学の代表団を送り出す。その一方で、日本の代表は自費で渡航する。「科学技術立国」を掲げ、AI人材の育成を法律にまで書き込んだ国の現状として、これは説明がつきません。
5. 私たちの要望、みなさんへのお願い
私たちの要望は、以下の三つです。
要望1 支援対象を、公開された新しい適格性基準で拡大する
- 国際大会としての継続性と運営体制
- 参加国・地域数などの国際的な広がり
- 国内選抜の公平性・公開性
- 出題・評価の学術的水準
- 非営利性と利益相反管理
- 国内予選、教材、普及活動などの教育的波及効果
上記の基準を満たす国際大会及びその国内予選について、「科学技術分野」以外であっても支援できるように基準を拡大する(JSTの国際科学技術コンテスト支援事業を補完する枠組みの創設も視野に入れる)。
要望2 制度改正までの暫定派遣助成を創設する
制度の見直しには時間がかかりますが、国際大会は毎年開かれます。移行期間に、基準を満たす代表団の渡航費・参加費・保険・引率費を支える小規模な助成枠を設けてください。
まず2〜3大会で実証し、自己負担の減少、国内参加者数、地域分布、教材公開、運営の継続性などを評価して、本格支援へつなげます。
要望3 選定理由・支援額・成果指標を公開する
現行制度と拡大後の制度について、次の情報を年度別・分野別に公開してください。
- 支援総額と費目別配分
- 対象の選定基準、審議の概要、採否理由
- 国内予選参加者数、地域・学校分布、教材・普及実績
- 代表の成績だけに偏らない教育的成果
- 参加費・自己負担の変化
透明化は、既存支援を削るためではありません。成果と必要性が見えるほど、社会は支援総量を増やす判断をしやすくなります。
ネット署名は、国民の意思を示すための有効な手段です。日本のこれからを担っていく次世代のために、署名にご協力いただけますと幸甚です。
学術オリンピック支援拡大キャンペーン有志
2
署名活動の主旨
支援を、 7教科の外へ。 代表の手前にも。
AIも、経済学も、言語学も、天文学も。知る・試す・学ぶ・世界へ進む、その全体に公的な土台を。
――――――――――
1. はじめに ── 7分野で止まった、限定的な公的支援
ニュースなどでたまに目にする、学術オリンピック。一般的には化学、生物、物理、地学、地理、情報、数学の7分野の国際大会と国内大会の双方を指して使われる言葉です。これらの大会を補助しているのが、独立行政法人 科学技術振興機構(以下JST)の次世代人材育成事業。JSTの制度は、先述の7大会とISEF(国際学生科学技術フェア)を、主に国内選抜・育成・国際大会参加・普及という側面から体系的に支えています。
物理オリンピックの日本代表は、このように国の支援を受けて世界に挑みます。一方、経済学、AI、言語学、哲学、天文学といったオリンピックの日本代表は、国の支援なしに渡航します。同じ「日本代表」でありながら、です。私たちは、JSTの支援の枠組みを公開された明確な基準の達成を条件に広げること、新制度の導入まで代表派遣を暫定的に支援すること、支援の配分と成果の見える化を求めます。
また、これは単に「日本代表」になる数十名に限った話ではありません。学術オリンピックは学びのきっかけ、学び続ける動機として大変重要な社会的意義を果たしているからです。現状の公的支援は日本代表の選抜及びその派遣に主眼をおいています。しかし、公的な土台を持たない分野では、住む地域ゆえに大会の存在すら知る機会がない人がいたり、家庭の経済的な事情のためにスタートラインにすら立てない人がいたりと、構造的な不平等が生じています。公的支援がある分野においても、普及活動は民間が中心になっており、十分とは言えません。教育の機会均等を掲げる社会において、この現状は放置できません。
すべての意欲ある若者が等しく「知る・試す・学ぶ」というステップを踏み出せる社会へ──。私たちは、JSTの支援の枠組みを公開された明確な基準の達成を条件に広げること、新制度の導入まで代表派遣を暫定的に支援すること、そして支援の配分と成果の見える化を求めます。さらに、代表としての世界への挑戦だけでなく、その手前にある「入口」としての国内普及や裾野の育成活動に対しても、公的支援を拡大することを強く求めます。
2. 現行制度の成果と、広がらない「学術の地図」
我が国(文部科学省及びJST)は2004年度に「国際科学技術コンテスト支援事業」を開始しました。この年度では数学オリンピック、化学オリンピック、ISEFと日本で開催された国際ロボットコンテストが支援対象となり、渡航費や国内大会実施の費用などが助成されました。
翌年に情報と物理が加わり、支援対象の「学術オリンピック」は5分野に。同じように、地学と地理が加わっていき、現在の「7分野+ISEF」という体制が出来上がったのです。この枠組みのもとで支援対象となった大会の運営母体は日本国内大会の運営、代表の選抜・育成、国際大会への派遣を行い、日本代表は毎年数多くのメダルを獲得してきました。この事業が長年果たしてきた役割を、私たちは強く支持します。
問題は、制度の前提となっている「学術の地図」が、設計当時のまま更新されていないことです。
この約20年で、学術の国際競技の世界は大きく広がりました。言語学オリンピック(IOL)は2003年から続く「国際科学オリンピック」の一つで、2025年大会には42の国・地域から227名が参加しました。経済学オリンピック(IEO)は2018年に始まり、国際AIオリンピック(IOAI)は2024年の創設からわずか2年目で参加国60か国を超えています。天文学・天体物理オリンピック(IOAA)も確立した国際大会で、第一回大会は2007年に開催されました。これらの大会はいずれも現行制度の対象外となっています。
あらかじめ申し添えますと、これらの大会は国際大会ないしその国内予選の規模が小さいために支援対象外になっているわけではありません。2026年の日本言語学オリンピックの応募者は過去最多の1,100人を記録しています。また、国際経済学オリンピックの一次選抜ルートの一つ、エコノミクス甲子園には、今年約1,700人が参加しました。参考までに、日本地理オリンピック・日本地学オリンピックの参加者数が初めて1,000人を超えたのは2013年、日本情報オリンピックについては2014年です。
現行事業は「科学技術分野」を対象要件としているため、経済学や言語学は構造的に排除され、AIのような新興分野も取り残されたままになっているのです。
3. 問題は支援の不在ではなく、「公的支援」の不在、不足です
誤解がないように現状を整理すると、これらの大会もまったくの無支援で運営されているわけではありません。AIや経済学といった分野では、企業の協賛や後援がすでに一定の役割を果たしており、国際大会そのものも世界的な企業の協賛を受けて運営されています。民間がすでに価値を認めて動いている──この事実は、これらの大会の意義を裏づけるものです。
しかし、民間の協賛には、公的支援の役割を代替できない構造的な限界が三つあります。
第一に、不安定であること。協賛は各社の年度ごとの経営判断に左右され、継続の保証がありません。代表の選抜と育成は何年もかけて積み上げる営みであり、毎年白紙から資金を集め直す体制の上には成り立ちません。また、大会が実施されないリスク、日本代表派遣がなされないリスクが存在することは、出場のために努力することを躊躇する要因となってしまいます。
第二に、分野間で著しく不均等であること。AIや経済学のように人材獲得の文脈で企業の関心を集めやすい分野には協賛が付きやすい一方、言語学のように商業的な受け皿の乏しい分野は、構造的に取り残されやすくなります。学術としての価値と、協賛の集まりやすさは、別。市場の原理に任せるわけにはいかないのです。
第三に、それでも届かないこと。協賛があっても、渡航費・参加費の相当部分は依然として生徒側の負担であり、国内選抜の運営は無給のボランティア委員会と教員の善意に支えられている。こういった大会は少なくありません。代表育成や国内大会の実施の便益は特定の企業ではなく社会全体に及ぶため、民間の自発的な支援だけでは必要な水準に届かない。これは経済学が「公共財の過少供給」と呼ぶ、極めて典型的な構造です。
現に、国の支援対象である7教科では、公的支援という土台の上に民間の協賛が重なっています。対象外の分野には、その土台がありません。その結果、実力で代表に選ばれながら家庭の経済事情で出場をためらう生徒が、住む地域ゆえに大会の存在すら知らずにいる生徒が、生まれています。選抜は実力で、出場は経済力で。教育の機会均等を掲げる国の制度として、放置してよい構造ではありません。
4. 世界はすでに動いている
新しい分野の学術オリンピックを「国が支えるべきもの」として扱う動きは、すでに世界の標準になりつつあります。
ブルガリアは、言語学オリンピックの全国組織委員会を教育省の下に置いて運営し、さらにIOAIを自国のイニシアチブで創設して、大統領と教育省がこれを後援しています。中国は2025年、IOAI第2回大会を北京に誘致し、世界中の若きAI人材を自国に迎え入れました。人口約55万人のマルタは、教育・スポーツ・青少年・研究・イノベーション省の予算で、2024年に初めて国際言語学オリンピックの代表団を派遣しました。インドでは、原子力省・科学技術省・教育省・宇宙機関(ISRO)等が資金を拠出する国家オリンピック・プログラムが日本では支援対象外の天文学オリンピックを含む多数の大会の代表選抜・派遣を1999年から支援し、各教科2万〜6万人が参加する選抜の土台を国家規模で築いています。
人口55万人のマルタが、教育省の予算で言語学の代表団を送り出す。その一方で、日本の代表は自費で渡航する。「科学技術立国」を掲げ、AI人材の育成を法律にまで書き込んだ国の現状として、これは説明がつきません。
5. 私たちの要望、みなさんへのお願い
私たちの要望は、以下の三つです。
要望1 支援対象を、公開された新しい適格性基準で拡大する
- 国際大会としての継続性と運営体制
- 参加国・地域数などの国際的な広がり
- 国内選抜の公平性・公開性
- 出題・評価の学術的水準
- 非営利性と利益相反管理
- 国内予選、教材、普及活動などの教育的波及効果
上記の基準を満たす国際大会及びその国内予選について、「科学技術分野」以外であっても支援できるように基準を拡大する(JSTの国際科学技術コンテスト支援事業を補完する枠組みの創設も視野に入れる)。
要望2 制度改正までの暫定派遣助成を創設する
制度の見直しには時間がかかりますが、国際大会は毎年開かれます。移行期間に、基準を満たす代表団の渡航費・参加費・保険・引率費を支える小規模な助成枠を設けてください。
まず2〜3大会で実証し、自己負担の減少、国内参加者数、地域分布、教材公開、運営の継続性などを評価して、本格支援へつなげます。
要望3 選定理由・支援額・成果指標を公開する
現行制度と拡大後の制度について、次の情報を年度別・分野別に公開してください。
- 支援総額と費目別配分
- 対象の選定基準、審議の概要、採否理由
- 国内予選参加者数、地域・学校分布、教材・普及実績
- 代表の成績だけに偏らない教育的成果
- 参加費・自己負担の変化
透明化は、既存支援を削るためではありません。成果と必要性が見えるほど、社会は支援総量を増やす判断をしやすくなります。
ネット署名は、国民の意思を示すための有効な手段です。日本のこれからを担っていく次世代のために、署名にご協力いただけますと幸甚です。
学術オリンピック支援拡大キャンペーン有志
意思決定者
オンライン署名の最新情報
このオンライン署名をシェアする
2026年6月24日に作成されたオンライン署名
