
ベトナム人技能実習生グエットさんの無罪判決を求める取組みに心を寄せていただける皆さんへ
2026年3月9日付で最高裁判所第二小法廷(三浦守裁判長)は、グエットさんの上告の申立てを棄却する決定を行いました。 グエットさんは上告棄却決定に対して、2026年3月13日に異議申立を最高裁に行ったのですが、2026年3月27日付で最高裁判所は異議申立の棄却決定を行い、2026年4月1日に主任弁護人に届きました。これで刑事裁判 死体遺棄被告事件は、一審福岡地裁の有罪判決(懲役1年6月、執行猶予3年)が確定することになりました。
ベトナム人技能実習生グエットさんの上告棄却決定及び異議申立棄却決定に対する抗議声明
最高裁判所(第二小法廷)は2026年3月9日、グエットさんの上告を棄却しました。また。そして同年3月13日上告棄却決定に対する異議申立に対しても、同年3月27日棄却を決定しました。この決定は、孤立出産という深刻な社会問題に対して司法が真正面から向き合うことを避けたものであり、極めて不当だと言わざるを得ません。
弁護団が最高裁に提出した上告趣意書は、本件が単なる死体遺棄事件ではなく、外国人技能実習生という極めて弱い立場に置かれた女性が、妊娠・出産に関する情報や医療、社会的支援から切り離され、孤立したまま死産に至ったという構造的問題を含む事件であることを指摘していました。また、本件が憲法上の権利侵害にあたる可能性があること、妊娠・出産という女性特有の状況を十分に考慮しない刑事判断が、結果として女性にのみ不利益をもたらす間接差別にあたること、さらに外国人・女性という立場が重なることによる交差性差別の問題についても訴えていました。それにもかかわらず、最高裁はこれらの重要な問題について実質的な検討を行うことなく、「上告理由に当たらない」として退けました。この決定は、孤立出産に追い込まれた女性の現実を見ようとせず、その責任を女性一人に負わせるものです。本来問われるべき日本社会の構造的問題に目を向けないまま、不正義をそのまま認めてしまう判断であると言わざるを得ません。
リプロダクティブ・ジャスティスの観点から見れば、すべての人が安全で尊厳のある環境の中で妊娠・出産・子育てに関する選択を行うことができる社会が実現されなければなりません。しかし日本では、子どもを持つ権利、子どもを持たない権利がいまだ十分に保障されておらず、孤立出産は社会的に弱い立場に置かれた女性ほど、医療や支援へのアクセスから排除されやすいという日本社会の構造の中で生じています。それにもかかわらず、全ての責任を負わされているのは女性一人です。社会の側にある責任は、いったい誰が問うのでしょうか。
本件は、同様の状況に置かれたベトナム人技能実習生リンさんの事件と比べても、極めて不合理な結果となっています。リンさんは無罪とされ、グエットさんは有罪とされました。しかし、その差は本質的なものではありません。出産後に子どもがどこに置かれていたかという違いにすぎません。出産直後の女性がどのような身体的・精神的状況にあるのかを考えれば、グエットさんが死産から医療機関に連れて行かれるまでのわずか8時間の短時間の中でどのような行動を取れるのかを慎重に検討する必要があったはずです。それにもかかわらず、その現実への配慮を欠いたまま結果のみで刑事責任を判断することは、女性の身体と出産の現実を著しく軽視した判断です。
さらに、医療機関で死産した場合には、遺体の処置は医療従事者が行う一方で、孤立出産をした女性に対しては、死産直後であっても適切な処置が求められ、それができないことが犯罪とされてしまいます。
孤立出産した女性を支援の対象とするのではなく、「無責任な母親」「母親になる資格のない女性」といったレッテルを貼り、犯罪者として扱ってしまう差別的構造が、女性たちをさらに沈黙と孤立へと追い込んでいます。今回の決定は、この構造を結果として正当化するものです。
このままでは、第二、第三のグエットさんのような事例が繰り返されることになります。孤立出産に追い込まれた女性が犯罪者として扱われる社会を、私たちは決して容認することはできません。
グエットさんは無罪です。正されるべきはグエットさんではありません。女性を孤立出産へと追い込む社会であり、不当な判断を下す司法制度です。
私たちは、女性にのみ責任を押し付けるのではなく、孤立出産に追い込まれた女性を処罰の対象ではなく支援と擁護の対象とする社会への転換を強く求めます。
2026年4月2日
支援団体連名 (順不同) 14団体
- コムスタカー外国人と共に生きる会
- ベトナム人技能実習生グエットさんの裁判を支援する会
- アジアに生きる会・ふくおか
- 日本ベトナム友好協会福岡支部
- アジア ソーシャルワーク創造協会-ASCA
- 東アジアに平和を!市民行動
- ふぇみん婦人民主クラブ
- ふぇみんベトナムプロジェクト
- (公財)日本キリスト教婦人矯風会
- 日本キリスト教婦人矯風会熊本グループ
- SOSHIREN女(わたし)のからだから
- もっと安全な中絶をアクションASAJ
- #なんでないのプロジェクト
- 私のからだデモ
グエットさんは現在、日本で働くための在留資格(「技能実習2号ロ」)の更新を申請中ですが、刑事裁判の影響により、その許可がどうなるか分からない状況に置かれています。
しかし、今回の有罪判決は退去強制の対象となるものではなく、これまで日本で適切に技能実習を継続してきた経緯もあります。そのため、私たちは、これまでの経緯や状況を踏まえ、引き続き日本での在留と技能実習の継続が認められるよう、在留期間の更新を許可することを求めて要請書を2026年3月25日付で福岡出入国在留管理局へ提出しました。グエットさんの在留更新が許可されるよう、引き続き皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。