4月21日(火)に奈良のシカを担当する県の部署、奈良公園室を訪問しました。県の担当者は、今回の署名についてすでにご存知でしたが、現状について改めて説明しました。
すなわち、一般の人の通報を受けて奈良の鹿愛護会の保護施設、鹿苑(ろくえん)に運ばれてくるシカの大部分が重傷であること、昨年度は年間119頭のシカが鹿苑に運ばれてきたこと、そのうち34頭は土日休日に運ばれてきたこと、そのような状況では、一人しかいない獣医師は休みの日であろうとリラックスできず、休養がとれないこと等。
「重傷のシカ」と言われても、見たことのない人はわかりづらいと思ったので、実際にお腹が大きく裂けたシカの写真(運ばれてきた直後)と獣医師によって処置された後の傷口を縫合したシカの写真をお見せしました。そして尋ねました。このようなシカを一般の職員が対処できると思いますか?このシカを獣医師が出勤する月曜日(約48時間後)まで治療せずに放置しておけるとお考えですか?そのまま置いておいたら死んでしまうかもしれませんよ、と。
県の担当者からは、交通事故などで保護したシカに対するスタンスは、「野生復帰を前提として、人の介入処置をできるだけ減らす」とのことでした。今回写真を見せたシカの症例の場合、介入処置とはどの程度のものを指すのか、担当者に尋ねましたが、回答は得られませんでした。
また22,500人以上(4月21日時点)の署名が集まっていることについては、「主張はわかるが、受け止めるかは、わからない」との返事でした。
なお動物愛護法第44条では、人の占有下にある哺乳類は愛護動物と扱うように定めており、疾病にかかり、または負傷した愛護動物を「適切に保護」しないと1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処すると書かれています。条文を素直に読むと、お腹が裂けたシカを獣医師が出勤するまで、48時間そのまま置いておくこと自体、動物愛護法上問題になると思いますが・・・
ちなみに愛護会幹部は、今回の署名について3月3日に労働組合と話し合った際、以下のように発言しています。
- 交通事故などで鹿苑にシカを連れて帰る理由について)「連れて帰るのは、人目につく所だから、いったんうちに入れて落ち着かせるだけ」
- 「うちの職員でもできる程度の治療しかしないんだよ、というのが基本。野生動物に薬をたくさん入れたり、点滴したりっていうのはありえない」 「やっちゃいけないんですよ」
- 「おだぶつになるやつ(シカ)を治療するのが虐待だと言っている。
- 「奈良県も(奈良のシカに対する救急医療の考え)を持っていない。」
- 「(奈良のシカの治療について)やらんでいいんです。」
2については、交通事故に遭ったシカに対し、数日シカに点滴するだけで回復が見られ、最終的に奈良公園に解放できたことを私は何度も経験しています。
3については、「おだぶつになるやつを治療するのは動物虐待」とは動物愛護法のどこにも書かれていません。
4については、愛護会幹部が言うように県も同じ認識なのかまでは、わかりませんでしたので、今回署名を報告した際に、愛護会側の発言について県も同じ認識なのか、質問を紙に書いて渡してきました。
愛護会が保護した重傷のシカに対して、「うちの職員でもできる程度の治療」しかしないことが、愛護会が活動内容として公表している「奈良のシカの救護・救出」にあたるのでしょうか?愛護会幹部は、このときの話し合いで、獣医師を雇う理由について「麻酔を使うから」だと答えています。愛護会の職員は毎年秋に人が雄ジカの角で突かれてケガをしないように、一頭一頭麻酔をかけて雄ジカの角を切っています。そのときに必要な麻酔薬は、獣医師免許がなければ買えません。いわば名義貸しとしての獣医師しか必要ないのであれば、なぜ愛護会の施設に重傷のシカを保護するのでしょうか?
今回は奈良県へ22,500人以上の人が署名に賛同していることを報告しましたが、署名を提出してこれで終わりというわけではありません。これからも、もっともっと一人でも多くの人にこの問題を知ってもらい、署名を集めていくつもりです。
奈良のシカは、世界でも類を見ない街中に暮らす人馴れした野生のシカです。またニホンジカの中でも独自の遺伝子を持っていることが最近判明しました。そして大仏さんとともに奈良の観光シンボルです。かつては春日大社の神鹿(しんろく)として信仰の対象であったシカ、今では観光客をなごませているシカ。しかし、奈良のシカは街中に暮らすため、交通事故は絶えません。傷ついた奈良のシカを365日たった一人の獣医師が対処するのは、不可能です。獣医師と動物看護師の増員が不可欠です。今後も引き続き署名を集めてまいりますので、皆さんのご支援とご協力をお願い申し上げます。
