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国際条約による大麻規制の見直しを求める要望[UNGASS2016]

趣旨
 現在の大麻に関する科学的知見は、1961年の麻薬単一条約制定当時の評価とは大きく異なり、大麻の危険性がアルコールやたばこ以下である事や治療薬として優れた効能を有する事が多くの研究によって報告されている。既にウルグアイやアメリカの一部の州では嗜好目的の大麻が合法化され、麻薬関連条約は事実上、機能不全に陥っており、2016年のUNGASS開催に向けて世界的に見直しの議論が高まっている。わが国においても、科学的根拠に基づいて50年以上前の規制分類を見直し、大麻、大麻樹脂並びに大麻の抽出物及びチンキを1961年の麻薬に関する単一条約の附表I及びⅣから除外し、より広い範囲での治療薬としての利用、健康と人権に配慮した適切に機能する政策の実現を可能にするよう国連に働きかける事を求める。


問題点
 科学的根拠に基づく薬物の害の適切な評価が無ければ、効果的な薬物政策の策定は不可能である。アメリカのオバマ大統領は、2014年1月19日に発行された米誌ニューヨーカーのインタビュー記事で、”大麻にアルコール以上の危険はない”との見方を示し、「何度も紹介されている通り、私も子どもだった頃に大麻を吸ったことがある。悪い習慣だという点では若い時から大人になるまで長年吸っていたたばこと大差ない。アルコールよりも危険が大きいとは思わない」と語った。さらに、「個々の消費者に与える影響という点では」アルコールより危険は小さいとも指摘した[1]。大麻は数千年もの間、様々な目的に用いられているが、大麻樹脂並びに大麻の抽出物及びチンキは、”乱用の深刻なリスクと極端に限られた治療的な価値という有害な特徴を理由として”、”特に危険であると考えられる物質”として、1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)の附表I及びⅣに掲げられ、ヘロインと同等の最も厳しい統制措置の対象とされている。これによって、大麻植物(カンナビス属の植物)は、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、けし、コカ樹などと同等の最も厳しい統制を受けている。また、THC(大麻の主要な精神賦活性の成分)は、1971年の向精神薬に関する条約の4つの付表の第一にもまた掲げられており、その使用は学術上と非常に限られた医療上の目的を除いて禁止されている(第7条a)。これらの国際条約による大麻に対する規制分類は50年以上前の不確かな古い情報に基づいており、大麻の幅広い治療の用途や健康影響などに関する近時の科学的知見とは遥かにかけ離れている。


 当初から、大麻の国際的な規制分類についての問題に意見の相違が包含されていたことを示唆する証拠があり、大麻あるいはその派生物の分類の問題は常に論争の的であった。2003年にWHO薬物依存専門家委員会は、批判的総説の結果、ドロナビノール(THC、大麻の主な活性成分)の1971年の条約の付表IVへの分類変更を推奨した[2]。これは大麻の活性成分が、当該物質があるとしても非常に限られた治療的な有用性を有し、その乱用が公衆衛生に対して特に深刻なリスクを与える付表から、当該物質がある程度の治療的有用性を有し、乱用されやすい性質によって、公衆衛生に対し、より小規模な(それでも尚、有意な)リスクを与える付表へと移動するであろうということを意味する。もし実施されるならば、これはおそらく、大麻とその世界的な規制要件の全般的な分類における重要な結果であるが、更なる手続き上の処置はなんら執られていない[3]。

 

 大麻の適切な使用がストレスや精神の緊張の緩和を促し、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらすことは広く知られている[4,5]。また、大麻は古くから医薬品として用いられており、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[6,7]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[8]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[9]、アルコール依存症[10]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[11]、神経保護作用薬[12]、精神疾患治療[13]などへの応用が試みられている。実際に、大麻やイギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可され使用されている「サティベックス(Sativex)など、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国も数多くある[8]。大麻が様々な疾病に対する治療薬として有用であり、その有害性がアルコールやたばこ以下である事は広く知られている事実である[14,15,16]。それにもかかわらず加盟国が条約を破棄することなく、合法化政策を採択し、非医療的な使用を許可することが出来ないことはウルグアイやアメリカの2州の合法化政策に反対するINCBの見解からも明らかである[17,18]。


 現在の国際条約による大麻の規制は、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[9]。このような大麻に関する近時の知見と照らし合わせて考えると現在の国際条約による大麻の規制は科学的根拠や論理的整合性を欠く内容であり、これを改めなければ大麻問題の根本的な解決や適正に機能する薬物政策の実行は不可能である。


 先進諸国の間では、大麻の健康への影響に関する最新の科学的知見、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策(ハームリダクション政策)として、個人使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国も多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じている。


 日本国においては、大麻が国際条約によって規制されている植物であることを理由に、禁止政策(ゼロトレランス政策)が採用されており、大麻の個人使用目的や非営利的な目的の為の所持や栽培、医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることが懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、産業上の目的の大麻の栽培のために、大麻栽培者免許の取得を正当な手続きを行って申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在の日本国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、取締りに費やされる多額の税金の浪費や犯罪組織への不正利益の供給、国民の薬物政策への信頼性の低下、持続可能な社会の構築と発展の著しい妨害など様々な問題を引き起こし、末端の使用者に懲役刑を課すことや重病患者の生存権を著しく脅かすことなどで重篤な人権侵害を引き起こしている。現在の国際条約による大麻規制の不備がもたらす問題は主に以下のような内容である。

  • 大麻の有害性はアルコールやたばこより低いことが明らかにされているにも関わらず、より安全な代替として大麻を選択する権利が認められておらず、個人使用や非営利目的の大麻の所持や栽培、配布を懲役刑をもって禁止することによって、大麻使用者への重篤な人権侵害が行われている。
  • 医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止することによって、患者の生存権を著しく脅かしている
  • 大麻使用者を犯罪組織と結び付け、覚せい剤などの危険なハードドラッグとの接触の機会を増加させている。
  • アルコールやたばこ、覚せい剤などの、より有害性の高い依存性薬物の依存症の治療に代替として大麻を使用することが認められていない為、薬物依存症患者の依存性薬物からの脱却を困難にしている。
  • 極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を流し続けることにより、未成年者や若年層に、薬物に関する情報への信頼性を著しく低下させ、深刻な混乱を引き起こしている。
  • 繰り返し利用することが可能な環境問題を改善する貴重な資源である大麻の栽培者免許の取得を過剰に厳しく制限することにより、持続可能な社会の構築と発展を著しく妨げている
  • 野生の大麻までも撲滅の対象としている為に、重篤な環境破壊を引き起こし、税金を浪費している。実際に、アサカミキリという昆虫が絶滅の危機に瀕している

要望
 このように現在の国際条約による大麻規制は非常に大きな矛盾を孕んでおり、使用者への人権侵害、治療を望む患者の生存権の侵害、国連の薬物政策全体への信頼性の低下など様々な歪みを社会に及ぼしている。
 大麻の有害性と現在の大麻規制による弊害とを比較すると、規制による弊害のほうが遥かに大きく、現在の大麻規制は適正に機能する政策であるとはいえない。世界各国における大麻政策の諸問題が、古い国際条約による大麻の規制分類に起因するものであり、これを早急に改める必要がある事は明らかである。このような問題に適切に対処するために、日本政府に対して以下のように要望する。

  全ての人の生命と人権を尊重し、科学的根拠に基づいて、50年以上前の古い規制分類を見直し、大麻、大麻樹脂並びに大麻の抽出物及びチンキを1961年の麻薬に関する単一条約の附表I及びⅣから削除し、加盟国に国際条約を破棄することなく、大麻のより広い範囲での治療薬としての利用、適切に機能する政策の採択を可能にするよう国連に働きかけることを求める。


参考文献
1. 「マリファナにアルコール以上の危険ない」オバマ大統領 . January 19, 2014
http://www.cnn.co.jp/usa/35042744.html
2. WHO EXPERT COMMITTEE ON DRUG DEPENDENCE,Thirty-third Report: (WHO technical report series ; 915): 2003 ISBN 92 4 120915 1
http://whqlibdoc.who.int/trs/WHO_TRS_915.pdf
3. Danilo Ballotta, Henri Bergeron and Brendan Hughes (2008): A cannabis reader: global issues and local experiences, Monograph series 8, Volume 1, Chapter 7: Cannabis control in Europe, European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction, Lisbon.
http://www.emcdda.europa.eu/attachements.cfm/att_53377_EN_emcdda-cannabis-mon-vol1-ch7-web.pdf
4. Robert Melamede: Harm reduction-the cannabis paradox. Harm Reduction Journal: 22 September 2005
http://www.harmreductionjournal.com/content/2/1/17
5. Kazuhito Watanabe,Toshiyuki Kimura,Tatsuya Funabashi,Satoshi Yamaori,Ikuo Yamamoto: A study on the culture and sciences of the cannabis and marihuana XV
渡辺和人,木村敏行,舟橋達也,山折 大,山本郁男: 大麻文化科学考(その15) 第15章 大麻からの創薬 -治療薬への応用-. 北陸大学 紀要 第28号 (2004) pp.17-32
http://www.hokuriku-u.ac.jp/library/pdf/kiyo28/yaku2.pdf
6. H.M. Meinck, P.W. Schonle, and B. Conrad: EFFECT OF CANNABINOIDS ON SPASTICITY AND ATAXIA IN MULTIPLE SCLEROSIS. J Neurol (1989) 236: pp.120-122

7. Paul Smith: Cannabinoids and spasticity. Multiple Sclerosis International Federation. Spasticity in MS. MS in focus. Issue 12. 2008, pp.19-20
http://www.drugs.com/clinical_trials/gw-opens-ind-phase-iii-sativex-trial-15953.html
8. 大塚製薬News Release 2007年2月14日
http://www.otsuka.co.jp/company/release/2007/0214_01.html
9. WORLD HEALTH ORGANIZATION: Cannabis : a health perspective and research agenda
http://whqlibdoc.who.int/hq/1997/WHO_msa_PSA_97.4.pdf
日本文「大麻:健康上の観点と研究課題」: 世界保健機構(WHO). (1997)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/kokusaikikan01.pdf
10. Amanda Reiman: Cannabis as a substitute for alcohol and other drugs. Harm Reduction Journal 2009, 6:35
http://www.harmreductionjournal.com/content/6/1/35
11. Taku Yamaguchi, Yumi Hagiwara, Hiroyuki Tanaka, Takayuki Sugiura, Keizo Waku, Yukihiro Shoyama, Shigenori Watanabe and Tsuneyuki Yamamoto: Endogenous cannabinoid, 2-arachidonoylglycerol, attenuates naloxone-precipitated withdrawal signs in morphine-dependent mice. Brain Research Volume 909, Issues 1-2, 3 August 2001, pp.121-126
12. Carol Hamelink1, Aidan Hampson1, David A. Wink, Lee E. Eiden, and Robert L. Eskay: Comparison of Cannabidiol, Antioxidants, and Diuretics in Reversing Binge Ethanol-Induced Neurotoxicity. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 2005
http://jpet.aspetjournals.org/cgi/reprint/314/2/780.pdf
13. Wen Jiang, Yun Zhang, Lan Xiao, Jamie Van Cleemput, Shao-Ping Ji, Guang Bai and Xia Zhang: Cannabinoids promote embryonic and adult hippocampus neurogenesis and produce anxiolytic- and antidepressant-like effects. The Journal of Clinical Investigation. 115(11): 3104-3116 (2005)
http://www.jci.org/articles/view/25509/pdf
14. House of Commons Science and Technology Committee;Drug classification: making a hash of it? Fifth Report of Session 2005-06 HC 1031
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmselect/cmsctech/1031/1031.pdf
15. David Nutt, Leslie A King, William Saulsbury, Colin Blakemore: Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse. The Lancet - Vol. 369, Issue 9566, 24 March 2007, pp.1047-1053
http://www.ukcia.org/research/developmentofrationalscale/DevelopmentOfARationalScale.pdf
16. Jack E. Henningfield, PhD for NIDA, Reported by Philip J. Hilts, New York Times, Aug. 2, 1994 "Is Nicotine Addictive? It Depends on Whose Criteria You Use."
http://drugwarfacts.org/addictiv.htm
17. Uruguay is breaking the International Conventions on Drug Control with the Cannabis Legislation approved by its Congress (pdf): UN Information Service. 11 December 2013
http://incb.org/documents/Publications/PressRelease/PR2013/press_release_111213.pdf
18. Legalizing cannabis poses grave danger - UN: Autonomous Non-Profit Organisation (ANO) the RT NEWS Channel. March 04, 2014
http://rt.com/news/cannabis-legalize-international-drugs-792/

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