
(前回のお知らせが字が小さかったので、書き出して送ります。)
都 市 と は 誰 の も の か
京都に移住してまだ3年だが、生活を通して新たな魅力を発見し、この街に夢中になっている。
なかでも魅力なのが自然の近さだ。常に山の存在を感じる。 鴨川沿いを歩けば、これほど多くの野鳥がいる。昔からお住まいの方にはごく当たり前のことかもしれないが、都市にいながら豊かな自然を享受できるのは、これまで暮らしたどの街にもない魅力だ。
京都府立植物園もまた、都市と豊かな自然の共存という、私にとってまさに京都の魅力を体現する場のひとつである。それだけに、植物園一帯で進められようとしている再開発計画の行方がとても気にかかる。
計画の見直しを求める住民団体「なからぎの森の会」は、植物園のスペースが縮小・改変されることで、植物や樹木への大きな影響が及ぶのではないかと危機感を募らせている。
問題は自然環境だけではない。現在の植物園は入園料大人200円、中学生以下と70歳以上の高齢者は入場無料で、老若男女、所得にかかわらず、誰にも開かれた場となっている。だが再開発で新たに建設される娯楽や飲食関係の施設は一定の料金を払わなければ利用できない。
公有地を商業空間化する事業が多額の税金を投じて進められようとしている点も看過できない。 再開発の事業費だけでなく、施設の維持にも多額の費用がかかるが、それはどれだけ住民の利益にかなうものなのか。
自治体の土地という「皆の土地」の再開発を一部の企業に任せる手法が広がっている。契機となったのが1999年に成立した「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法」、通称 PFI法だ。
2001年、全国初の事業対象地となったのは、私の実家に近くにあった都営南青山一丁目団地だった。7千平方㍍近い広大な敷地が大手不動産業者に貸与され、商業施設と住宅が混在する高層ビルに様変わりした。東京五輪にともなう再開発でも都営霞ケ丘団地の解体など公的施設が消失し、現在でも神宮外苑の再開発事業で樹木の大量伐採や公的施設が消失することに抗議の声があがっているが、これらも同様の手法に基づいた公有地の民間再開発といえる。
多額の利益と権力が絡み合う再開発事業が、住民の声によって中止に追い込まれた事例もある。京都府立植物園と同規模のニューヨーク・ブルックリン植物園では、2018年に隣接エリアで超高層ビル建設などの再開発が発表されたが、植物園の日照時間の大幅な減少をはじめ、利用者や住民の環境を大きく損なうとして反対運動が広がった。当初は計画に賛成していた市長、区長も運動の広がりを前に態度を変え、昨年9月に一度承認された再開発計画が市議会で正式に棄却された。
再開発の見直しを求める運動は、単に計画に反対する保守的な運動ではない。「みんなのもの」をどう定義するのか。 都市とは誰のものなのか、といった社会の未来に向けた問いを提起している。
(同志社大教授、国際社会学・都市社会学)