Petition updateあなたとあなたの家族を守るための緊急署名!:地方でのがん治療医と血液内科医の不足を解消するため具体策を求める

【オフトーク(Off-talk)・その8】 国はがん治療医の不足をどこまで認識し、対策を始めているのか?🧐

一戸 辰夫Hiroshima, Japan
Sep 25, 2026

全国の支援者の皆様へ

おはようございます。

いよいよ私たちは、来週10月1日(木)、今回、全国の血液内科・小児血液腫瘍科の皆様のご協力により得られた若手医師の採用状況等についての調査結果について、厚生労働省の記者クラブ(厚労記者会)で正式な会見を開いて報告する予定としております。
その調査結果を見た時(「オンライン署名の進捗状況」2026年8月2日配信)、次のような疑問を持たれている皆様も多いのではないでしょうか。
「そもそも国は、がんを治療する医師が足りなくなっていることを、どこまで認識しているのだろう?」

そこで、本日のオフトークでは、厚生労働省や文部科学省などがこれまで公表してきた資料や、すでに実装している対策を、皆様にご紹介しておきたいと思います。

🧐実は、この問題は10年以上前から指摘されていました:
2014年、日本学術会議は「わが国におけるがん研究・診療・教育体制の問題点と対策について」という重要な報告書を公表しています。
そこでは、がん研究について「人材の確保が困難」であること、そして診療についても、各種専門医をはじめとする専門的人材が不足していることが問題として指摘されました。
つまり、がん医療を支える「人」の問題は、最近になって突然現れた問題ではありません。
少なくとも10年以上前から、研究・診療・教育を将来誰が担っていくのかという問題が、学術界から国に向けて発信されていたのです。

その後も日本学術会議は、がん研究を担う人材の支援や安定したポストの必要性、さらには診療だけではなく研究・教育を担う医師まで含めて必要な医師数を考える必要性を指摘してきました。
この問題を考えるとき、「患者さんを診る医師の数」だけを数えていてはいけないということです。
今日の患者さんを診療する人。
明日の治療法を研究する人。
そして、その次の世代の医師を教育する人。
この三つがそろって初めて、がん医療は次の世代へ引き継がれていきます。

🧐文部科学省も、がんを学ぶ教育を強化してきました:
もちろん、国もさまざまな対策を試みてきました。
文部科学省は医学教育の中で、腫瘍学教育を明確に位置付けてきました。
医学教育モデル・コア・カリキュラムでは、がんの病態、遺伝子異常、診断、病期、治療などを医学部で学ぶべき内容として定めています。
そして、その改訂過程では、「がん治療専門医の育成のため」腫瘍に関する専門的な教育を推進する必要があることも明確に示されていました。
これは非常に重要な政策だったと思います。

しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。
「すべての医学生にがんについて教えること」と、「将来がんを治療する医師になりたいと思う医学生を増やすこと」は、同じではありません。
がんについて正しい知識を身につけることは、すべての医師に必要です。
しかし、その中から、
「私は血液内科医になろう」
「私は腫瘍内科医になろう」
「放射線治療を専門にしよう」
「がん研究者になって新しい治療法を開発しよう」
と思う若者が一定数現れなければ、将来のがん医療を支える人材は増えていきません。
ここには、医学教育とはまた別の「進路選択」という問題があります。

🧐「がんプロ」という大きな人材育成政策も行われてきました:
文部科学省は2007年度から、「がんプロフェッショナル養成プラン」、いわゆる「がんプロ」を開始しました。
大学間で連携し、質の高いがん専門医などを育成するという、非常に重要な事業です。
現在も「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」として続いており、
・がん医療の現場で生じている課題に対応できる人材
・がん予防を推進する人材
・新しい治療法を開発できる人材
などを育てることが目的とされています。
現在のプログラムには、地域に定着する放射線治療医や病理診断医、CAR-T療法や免疫療法、新しい創薬を担う人材なども含まれています。
これは日本のがん医療・研究を支えるうえで、極めて重要な政策だと思います。
しかし、「がん治療医を増やす」という観点から見ると、がんプロだけでは解決できない問題があります。

がんプロは基本的に、大学・大学院などを中心として、がん医療を担う高度専門人材を育成する仕組みです。一方、まだ進路を決めていない医学生や初期研修医に、がん診療やがん研究の魅力を伝え、「自分もこの分野に進みたい」と思ってもらうことを中心目的とした制度ではありません。
これは大きな違いです。
すでにがん医療に関心を持った若者を優れた専門家へ育てる仕組みがあったとしても、その入口にやって来る若者そのものが減ってしまえば、最終的な専門家の人数を維持することはできません。

実は2026年度の文部科学省の行政事業レビューでも、がんプロについて興味深い指摘がなされています。人材を育成するだけでなく、その専門性を発揮できる「受け皿」を作る必要があること、さらに、「市場原理だけではがん専門家が増えない職種や地域」について、集中的な人材育成のための工夫が必要であるという指摘です。
国も、この問題の難しさに気づき始めているのだと思います。

🧐一方、厚生労働省の認識も変化してきました:
では、実際の医療提供を所管する厚生労働省はどう考えているのでしょうか。
近年の厚生労働省の資料を読むと、こちらもかなり明確な危機感が示されています。
現在、日本の抗がん薬治療は、「がん薬物療法専門医」だけが行っているわけではありません。血液内科、消化器外科、泌尿器科、婦人科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科など、さまざまな診療科の医師が支えています。しかし厚生労働省は、その一部で薬物療法を提供する医師が減少している診療領域があることを認めています。そして現在では、
「現状の薬物療法の提供体制の維持には、薬物療法を担う医師の確保が重要」
とはっきり記載しています。

つまり、国はすでに「がんを治療する医師を確保しなければ、現在の医療提供体制そのものを維持できなくなる可能性がある」と認識し始めているのです。

🧐地方では、さらに別の問題があります:
がん治療医の問題には、大きな地域差があります。
現在、日本には336の「がん医療圏」がありますが、その中には、がん診療連携拠点病院等が一つもない、いわゆる「空白のがん医療圏」が56地域(17%)あります。
当然ながら、拠点病院がないことと「がん治療が全くできない」ことは同じではありません。
しかし、住んでいる地域だけでは必要ながん診療を完結できず、別の医療圏まで移動しなければならない患者さんがいることは、国も認識しています。

そして厚生労働省は、2040年を見据えた今後のがん医療について、人口減少や医療従事者不足が進む地域では、すべての治療を現在と同じように提供し続けることが難しくなる可能性を前提に、「均てん化」と「集約化」を進めようとしています。
高度な治療は一定の病院に集約する。
一方、身近な地域で提供すべき治療は、地域の医療機関や遠隔医療などを組み合わせながら維持する。
限られた医療資源を有効に使うという意味で、これは必要な議論でしょう。

🧐しかし、進行がんの薬物療法は簡単には集約できません:
ここで重要なのが、抗がん薬などによる薬物療法です。
手術なら、遠方の専門病院へ行き、入院して治療を受けることもできます。
しかし進行がんの患者さんは、数週間ごとに抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などによる治療を受けながら、何か月、場合によっては何年にもわたって通院することがあります。
副作用が起これば、予定日以外にも病院を受診しなければなりません。
ですから、薬物療法をすべて都市部の大病院に集約すればよい、という単純な問題ではありません。

厚生労働省もその点を認識しています。薬物療法は患者さんが定期的・継続的に受ける必要があるため、患者さんのアクセスを考慮し、拠点病院以外でも質を確保しながら一定の薬物療法を提供できる体制が望ましいとしています。
ところが、それを実現するためには当然、
地域で抗がん薬治療を行う医師
が必要です。
病院だけ残しても、医師がいなければ治療はできません。

🧐では、その医師は次の世代へ引き継がれているのでしょうか?
ここで、私たちが今回行った全国調査の問題意識につながります。
これまでの国の議論では、
「現在、専門医が何人いるか」
「どの地域に拠点病院があるか」
「どの施設で手術や放射線治療が行われているか」
といった指標が主に使われてきました。
もちろん、どれも大切です。
しかし、10年後、20年後の医療を考えるなら、もう一つ非常に重要な数字があります。
「その診療科に、若い医師が毎年何人入ってきているのか」
です。
例えば、現在10人の医師がいる診療科が二つあったとします。
一方には毎年2人ずつ若い医師が入ってくる。
もう一方には3年間、一人も入ってこない。
現在の医師数だけを見れば、どちらも「10人」です。
しかし、10年後の姿は全く違うでしょう。
私たちが全国の血液内科・小児血液腫瘍科にお願いして調査したかったのは、まさにこの部分でした。
現在の人数ではなく、「次の世代が入ってきているか」を知りたかったのです。
今回の調査では、2024~2026年度の3年間に新規採用医師が一人もいなかった診療科が約30%も存在しました。特に地方では、現在の常勤医師数が少ない診療科も珍しくありません。
つまり、一部の地域では、
「現在の医師が何とか診療を維持しているが、その後を引き継ぐ若い医師が十分に入ってきていない」
という可能性が見えてきました。

🧐ここまで調べて、ようやく一つの線につながりました:
2014年、日本学術会議は、がん研究・診療を支える人材の不足を指摘しました。
文部科学省は、医学教育の中で腫瘍学教育を強化し、「がんプロ」を通じて高度ながん専門人材の育成を進めてきました。
厚生労働省も現在では、薬物療法を担う医師の確保が重要であることを明確に認識し、2040年に向けて、がん医療の均てん化・集約化を始めています。
つまり、
問題は認識されています。
対策も行われています。
それでもなお、十分に見えていないものがあります。
それが、「がん治療医の再生産が適切に行われているか」という問題です。「現在、何人いるのか」だけではありません。

「毎年、何人がこの仕事を選んでいるのか」
「なぜ若い医師がこの分野を選ぶのか、あるいは選ばなくなったのか」(急激に進歩する治療を支える過密な診療、臨床と両立困難な研究環境、他科との負担の不均衡など、若手が二の足を踏まざるを得ない現場の壁は何なのか)
「その若者を誰が教育し、どこで育てるのか」
「育った医師が地方でも働き続けられる環境があるのか」
ここまでを一続きの問題として考えなければならないのではないでしょうか。

医学部で腫瘍学を教える。がんプロで高度専門人材を育てる。専門医制度で専門家を認定する。拠点病院を整備する。地域のがん医療を均てん化する。
これらは、どれも大切な政策です。
しかし、それぞれが別々に存在するだけでは十分ではありません。
その間を、
「一人の医学生が、がん診療に興味を持ち、研修医になり、がんを治療する診療科を選び、専門医となり、地域で患者さんを診療し、そして次の世代を育てる」
という一本の道としてつなげる必要があります。
そして、その道のどこで若者が減っているのかを、国として継続的に見ていく必要があると思います。

日本学術会議が10年以上前から鳴らしていた警鐘。
文部科学省が続けてきた医学教育と「がんプロ」。
そして現在、厚生労働省が認識している「薬物療法を担う医師の確保」という課題。
今回の私たちの全国調査は、それらとは別の問題を提起しているのではありません。
これまで別々に議論されてきた問題を、「次の世代のがん治療医が育っているのか」という一点でつなげて考えてみよう、という提案なのです。
これからのがん医療を考えるとき、「どこで治療するのか」だけではなく、「誰が治療するのか」、そしてもう一つ、「次に誰が、その仕事を引き継ぐのか」
という視点が必要です。

10年後、20年後にも、住んでいる場所によって、受けられるがん治療に大きな差が生じない国であるために。今こそ、がん治療医を「現在何人いるか」だけではなく、「次の世代が育っているか」という視点から見直す時期に来ているのではないでしょうか。

ぜひ、皆様とともにこの問題を考え続け、国や関係学会とも力を合わせ、日本のがん医療を守るための具体策につなげていきたいと念願いたします。

署名サイトURL: https://c.org/wNtJ4MWsWD

追伸: 「医師を育てる制度」を見直すための新しい署名活動も行っています。こちらも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。
国民に必要な医師の育成を求めるための緊急署名!!
署名サイトURL: https://c.org/BYfSxz9bvN

一戸辰夫(「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」代表)[連絡先:tatsuo.ichinohe@icloud.com  いつでも皆様からの建設的ご批判・ご意見をお待ちしています]

 

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