Petition updateあなたとあなたの家族の未来を守るために、10万人の声を!:地方でのがん治療医と血液内科医の不足を解消するため具体策を求める

【オフトーク(Off-talk)・その9】大学病院から医師が去っていく?―それでも、日本のがん医療は守れるのでしょうか🧐

一戸 辰夫Hiroshima, Japan
Oct 18, 2026

日頃より本署名活動をご支援いただいている皆様へ

本日は、どうしても皆様に急いでお伝えしておきたいことがあり、夜分遅くに失礼することをどうぞお許しください。

すでにご存知の方も多いことと思いますが、昨日、NHKが大変気になるニュースを報じていました。
全国の大学病院に勤務する医師を対象としたアンケート調査で、半数を超える55.8%の医師が、将来は大学病院以外の医療機関で働きたいと回答したというのです。しかも、その理由として多く挙げられたのは、「労働環境が良い」(63.8%)、「給与が高い」(61.0%)というものでした。つまり、大学病院で働く医師たちの少なくない割合が、大学病院以外の医療機関の方が、労働環境や給与面で恵まれていると考えていることがうかがえます。

このニュースに接して、皆様はどのように感じられたでしょうか?
長く大学病院で働いてきた私は何とも複雑な思いを抱きました。そして、現在、皆様のご支援を受けて前に進んでいるこの署名活動を、さらに一層、社会に広げていかなければならないと強く感じています。
実は私個人は、「白い巨塔」に象徴されるような、わが国の大学病院の歴史的あり方のすべてを肯定しているわけではありません。
しかし、本来は未来の医師を育て、新しい治療法を開発し、地域の医療機関では対応が難しい患者さんを受け入れる、日本の医療を支える大切な拠点となる病院のはずです。
その医師たちを育てる大学病院そのものが、働く医師から選ばれなくなりつつあるとしたら、将来の医療に及ぶ影響は計り知れません。

ここで、ぜひ皆様に知っていただきたいことがあります。
特に、大都市圏とは異なり、県内に医学部が一つしかない地域では、その大学病院が地域の医師育成や高度医療を支える、かけがえのない拠点となっています。大学病院の教育・研究・診療機能が衰えれば、その影響は大学病院の中だけにとどまらず、地域全体の医療の質、さらには将来のがん医療の水準にまで及びかねません。
言い換えれば、現在でも各地の大学病院がどれだけ優れた医師を育てられているかということが、地域全体の医療の質を大きく左右しているのです。

もし、その大学病院から指導医が減り、若い医師が集まらなくなれば、その影響は大学病院の中だけにとどまりません。数年後、十数年後には、地域の中核病院で専門的な治療を担う医師が不足し、これまで身近な場所で受けられていた医療が、受けられなくなるかもしれません。

では、なぜ大学病院は、このような状況に陥ってしまったのでしょうか。
その背景を考えるうえで、以前のオフトークでも取り上げた2004年の「国立大学法人化」という制度改革を避けて通ることはできません。大学の自主性を高め、効率的な運営を実現することが目的の一つでしたが、その一方で、国から大学に支給される基盤的な資金(病院や教育体制を支える基本予算)は、法人化後、長年にわたって削減されてきました。
大学は限られた予算の中で、人件費を抑え、教員の採用を控えたり、退職した教員の後任を補充できなかったりする状況に直面してきました。

ところが、大学病院に求められる仕事は減るどころか、ますます増えています。
高度化する医療を患者さんに提供し、若い医師や医学生を教育し、新しい治療法を研究し、さらに地域の病院に医師を送り出さなければなりません。
人を育てるための余裕を少しずつ失いながら、より多くの仕事を求められてきた。
これが、この20年余りの「社会に十分理解されていない大学病院の実情」と、私は肌身で感じています。

もちろん、現在の大学病院の苦境は、法人化のみでもたらされたものではありません。
しかし、医師を育てるという、すぐには利益につながらない大切な仕事を、経営の効率化という物差しだけで評価してよいとは思えません。
大学病院が一人の優れた専門医を育てるためには、何年もの歳月と、多くの指導医の努力が必要です。その成果は、大学病院の決算書に、すぐには表れません。
けれども、その医師が10年後、20年後に地域の病院で多くの患者さんの命を救うことになれば、それは社会全体にとって、何物にも代えがたい財産になるはずです。
医師の育成に国の予算を投じることは、単に大学病院の経営を維持することではありません。未来の国民の命を守るため、社会全体に必要な投資なのだと思います。

最近、教育・介護・福祉など社会を支えるために必須の職種が、長い間劣悪な労働環境におかれていることに対して、「やりがい搾取」という言葉を良く耳にするようになりました。私は、医師たちにも「使命感を持ちなさい」「もっと頑張りなさい」と訴えるだけでは、もはやこの問題を解決できないと考えています。
医師もまた、一人の人間です。
「家族との時間を大切にしながら、自分の健康を守り、将来に希望を持って働きたい。」
そう考えることは、決して利己的な願望ではありません。
その当たり前の願いと、若い医師たちをしっかりと育てながら、患者さんの命を守るという医師の使命とが、両立できる仕組みをつくること。
それこそが、今、私たちの社会に求められているのではないでしょうか。

特に、白血病や悪性リンパ腫をはじめとする血液疾患、そして多くのがんの診療では、高度な専門知識と経験を持つ医師を、長い年月をかけて育てていかなければなりません。大学病院はそのために大きな役割を果たしてきました。その大学病院から、指導医たちが逃げ出したら、血液の病気や様々ながんの治療をになう若い医師たちをどのように育てていくのでしょうか。

10年後、20年後、私たち自身や大切な家族が、がんになったとき、安心して治療を受けられる日本であってほしい。その願いを実現するために、大学病院が医師を育て続けられる医療政策のあり方を、皆様とともに考えていきたいと思います。

いつも温かいご支援をいただき、本当にありがとうございます。

(参考:NHK NEWS WEB、2026年10月17日「大学病院の医師 半数以上が『将来 大学病院以外で勤務したい』」)

P.S. なお、大学病院がこのような問題を抱える背景には、わが国の「医師を育てる制度」・「医療を提供する制度」の矛盾が複雑に絡み合っており、詳しくお知りになりたい方は、これまでのオフトークをお読みいただき、私たちが行っているもうひとつの署名活動にもお力添えをいただけますと嬉しく存じます。(SNSでのシェア、ご意見もお待ちしています!)
国民に必要な医師の育成を求めるための緊急署名!!
署名サイトURL: https://c.org/BYfSxz9bvN

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【オフトーク(Off-talk)・その7】 「国立大学法人化」と「がん医療均てん化」〜ふたつの政策のねじれ(9月3日)
【オフトーク(Off-talk)・その8】 国はがん治療医の不足をどこまで認識し、対策を始めているのか?(9月26日)

一戸辰夫(「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」 代表)
[連絡先:tatsuo.ichinohe@icloud.com  いつでも皆様からの建設的ご批判・ご意見をお待ちしています](なお、このオフ・トークの内容はあくまで一戸個人の見解であり、本署名活動のサポーター方々や後援団体の立場を表明するものではありません。)

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