熊本世帯分離裁判を支える会 支援者日本
2025/08/05

ご報告が遅くなり、申し訳ありません。長洲事件については、最高裁で上告棄却・不受理の決定を出しています。

弁護団から声明を預かりましたのでお送りします。

 

声明

長洲事件(生活保護廃止処分取消請求事件)最高裁判決を受けて

長洲事件弁護団

本年6月12日、最高裁判所第一小法廷(岡正晶裁判長)は、いわゆる長洲事件について、世帯分離解除、保護廃止処分の取消しを認めない福岡高裁の不当判決(2024年3月22日言渡し)に対する原告の上告を棄却し、また上告を受理しない決定をした。

この間、4万8000を超える方々にオンライン及び書面による署名に協力いただいたことに感謝する。同時に、最高裁がそうした声に耳を傾けなかったことは遺憾というほかない。

生活保護法10条は「保護は、世帯を単位としてその要否および程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる」としており、世帯分離については保護の実施機関に一定の裁量権を認めている。この裁量権は、法1条の目的(最低限度の生活の保障、及び自立の助長)が達せられるよう解釈されるべきであるが、福岡高裁判決はこの裁量権を無限定に認め、最高裁も今回、これを無批判に踏襲した形である。しかし、これでは生活保護世帯の子ども達(大学生、専修学校生)が安心して学ぶことなどできない。

世帯分離された子ども達は、就学期間中の働けない期間がある場合に備え、多少収入が多い月には少ない月の分を補填する等して就学期間全体を通じて就学費・生活費を調整しなければならない。にもかかわらず、収入が多い月は世帯分離が解除され出身世帯の扶養を強制される一方、収入が少ない月には再度世帯分離され、自らの少ない収入での就学・生活を強いられるのである。

生活保護世帯の大学生、専修学校生は、一体どうやって就学・生活していけばよいのか。

収入が多い月に家族(出身世帯)を扶養せず、自らの就学を優先すれば、家族は最低限度の生活以下の生活を強いられて苦しみ、他方、家族への扶養を実施すれば、収入が少ない月には就学・生活ができず、自らの就学は諦めて打ち切らざるを得ない。

同じ境遇の子ども達からは、「家族か、自分の将来かなんて選べない。」そんな声も聞こえてくる。

いつ世帯分離解除されるか、出身世帯の扶養を強制されるか、という不安が常に付きまとい、安心して学べない状況では、生活保護世帯の子ども達が十分に高等教育を受けることはできず、貧困の連鎖を断ち切ることなどできない。

今回の最高裁判決は、努力して働きながら大学や看護学校のような専修学校で就学する生活保護世帯の子ども達の学びを奪うもので、到底是認できない。

福岡高裁判決は、孫が准看護師の資格を取得し、原告夫婦と合算すれば最低生活を上回る収入を得たことをもって「一応の自立」を達成した等と認定したが、「一応の自立」などで就学を打ち切らせることは、生活保護世帯の子ども達が真の自立を達成することを放棄しているに等しい。

また、福岡高裁判決は、孫が看護師の資格取得を目指していたことを「主観的事情」として切り捨てた。「子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子ども(中略)の教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにする」という子どもの貧困対策法1条の目的とはかけ離れた、時代に逆行する価値判断であり、不当な評価である。学ぶ意欲や適性のある若者の希望を切り捨てるこの判断を最高裁までも維持してしまったことは誠に許しがたい。特にコロナ禍で露呈した医療崩壊は、看護師不足によってさらに深刻なものとなっているところ、若者の希望を主観的事情と切り捨てる現状ではその深刻さにますます拍車がかかるであろうことが危惧される。

私たちは、今後も生活保護世帯の子ども達の就学を諦めることなく、法整備や制度の運用の場面において、引き続き闘いを続けていく決意である。

以上

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