22 lug 2023

ご報告が遅くなりましたが、3月8日の福岡地裁の判決では、〈リウマチ患者の足に触れることは、患者の足の現状がどうであれ、医師が行うのでなければ衛生上危害が生ずる恐れがあるので、医行為に該当する〉という判断が示され、〈義肢装具士でない者がリウマチ患者である被保険者の足に触れて提供した靴型装具に療養費を支給しない久留米市の処分は間違っていない〉というものでした。

 つまり、久留米市長は、久留米市の国民健康保険の被保険者市民が、久留米大学医療センターの医師の指示で購入した靴型装具の代金について、その靴型装具が治療の役に立たないからではなく、医師に指示された技術者が違法行為によって作製したものであるから、療養費を支給しなくても良い、という判決でした。

 この判決には、二つの意味があります。

 一つは、保険者と被保険者との権利義務関係に関して、もう一つは、公務員の告発義務に関してです。

まず第一の点。

 保険者は被保険者に対して「療養の給付」の義務を負っており、被保険者は、自分や扶養家族の傷病についての「療養」を保険者に給付させる権利を有しています。

 また、保険医療機関は、保険者の被保険者に対する義務である「療養の給付」を担当する義務を負っています。

 だから、被保険者に必要な療養の内容を確定し、療養を給付するのは保険医ですから、療養の必要な被保険者は保険医療機関を受診し、保険医の指示に従うことで、療養の給付を受けることになり、保険者に対する権利を行使することができるのです。

 ところで、本件では、保険医療機関を受診した被保険者に対して、保険医が、治療に必要な「治療材料である装具」を(保険医療機関が支給できないから)外部の業者から購入させ、指示通りに使用させることで治療が完了しています(久留米市は、本件に関して、被保険者が自費で購入した装具代金以外の療養に関する費用の全てを、久留米大学医療センターへ「診療報酬」として支払っています)。

 ということは、被保険者の療養を保険医療機関が担当し、被保険者の療養が終了しているにもかかわらず、保険者が保険医療機関に担当させて被保険者に給付しなければならない「療養」の一部(治療に必要な治療材料)を、保険者が未だ給付していないことは何人も否定できない事実です。つまり、保険者は義務不履行状態であるし、被保険者は権利の未行使状態であるということです。

 この状態について、判決は、保険医の指示に従ったことで被保険者としての権利が未だ行使できていない被保険者の権利の行使を認めず、保険者の義務不履行を容認したわけです。そして、その理由が、保険者の代理人である保険医が技術者に違法行為をさせたからであるというのですから、被保険者である原告の皆さんが納得できるはずがありません。

次に第二点。

 判決は、本件の具体的事例について、〈リウマチ患者の足に触れることは、患者の足の現状がどうであれ、医師が行うのでなければ衛生上危害が生ずる恐れがあるので、医行為に該当する〉と判示していますので、本件においては、医師の指示で、無資格者が医行為を行った、つまり、保健師助産師看護師法第31条第1項違反の行為があったという事実を認定しています。

 このことは、上記第一点との関連では、久留米市長が、被保険者である原告に対して療養費を支給しないことが認められるのは、久留米市民である被保険者に対して、医師の指示で技術者による違法行為が行われていたからであるということですから、久留米市長としては、市民に対する違法行為があったことを認知しないはずはないということです。

ところで、刑事訴訟法第239条は、以下のとおりです。

1.    何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。

2.    官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

 したがって、この判決に従えば、「官吏又は公吏」に該当する久留米市長は、靴型装具を提供した私たちが、「二年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処」(保助看法第43条第1項)されるべき犯罪を犯したと「思料」しないはずはありませんから、私たちを告発しなければならないことになったわけです。

 ということで、原告の被保険者様は、「ことは、自分一人の問題ではなく、久留米市民全体の権利に関わることだから」との思いで、控訴されましたので、福岡高裁での控訴審が間もなく開始されることになりました。

 また、私たちとしては、久留米市長からの告発があれば、司法の場で無罪を勝ち取るべく準備しなければならないことになりました。

 私たちは、厚労省に対して、多くの皆さんのご賛同の署名簿を添えて、「義肢装具士の不適切行為の防止のため」に出した「通知」に関して、その趣旨と無関係な解釈を誘引する「不適切な記述を改める」ことを要請しましたが、1年を経過しても何の回答もありません。

 厚労省が放置している間に、「通知」は一人歩きして、健康保険関係諸法上の「療養の給付」義務と「療養費の支給」権限をめぐる法解釈や、刑事訴訟法が規定する公務員の告発義務の顕在化といった、当初の想定---治療用装具を誰が提供するか---を超えた所にまで波紋を広げてきています。

 厚労省に対しては、改めて、回答を求めていきたいと思っています。

Copia il link
WhatsApp
Facebook
X
E-mail