Petition update「あなたの病気を診られる専門医が、この地域にはいません」〜国民に必要な医師の育成を求めるための緊急署名!!

【オフトーク(Off-talk)・医学教育についてのひとりごと・その3】: 研修を終わった若手医師たちの行き先

一戸 辰夫Hiroshima, Japan
Sep 27, 2026

この署名活動をご支援くださっている皆様へ

また新しい週が始まりました。

今日は、少しだけ数字のお話をさせてください。
この署名活動を始めるかなり以前から、私はずっと一つの疑問を持っていました。
「医学部を卒業し、2年間の臨床研修を終えた最近の若い医師たちは、その後、どこへ行っているのだろう?」
という疑問です。

日本では、医学部を卒業して医師国家試験に合格すると、多くの医師が2年間の臨床研修を受けます。
その後、それぞれが内科、外科、小児科、産婦人科などの専門分野へ進んでいきます。
少なくとも、30年以上前、私が卒業して医師になった時代には、「卒業と同時に将来専門とする診療科に入り、修行を始める」。それが普通のことでした。
ところが、厚生労働省が2年ごとに行っている「医師・歯科医師・薬剤師統計」を調べてみると、少し違う景色が見えてきました。

今回は、最近の若手医師の動きをできるだけ公平に見るため、30~39歳の医師に絞って、2012年と2024年を比較してみました。

この12年間に、30代の医師全体は
65,003人 → 67,729人
へと、約4.2%増えています。
つまり、若い医師そのものが減ったわけではありません。

そこで考えてみました。
もし、すべての診療科で30代医師が同じように4.2%増えていたとしたら、2024年にはそれぞれの診療科に何人の医師がいるはずだったのでしょうか。
その「期待される人数」と、実際の人数を比較したのが、今回お示ししている図です。
すると、かなり大きな違いがありました。
形成外科は、30代医師全体の増加を考慮した期待値より69.1%多くなっています。
病理診断科は+37.6%、リハビリテーション科は+37.0%、救急科は+25.4%でした。
一方で、
小児科 −9.8%
外科 −15.8%
眼科 −17.5%
となっています。
とりわけ外科では、30代医師全体と同じ割合で増えていれば、2024年には約7,156人いる計算になります。ところが実際には、6,024人でした。
期待値との差は、約1,130人です。

ここで、もう一つ非常に気になる数字があります。
形成外科の数字には「美容外科」を含めています。
そこで、美容外科だけを取り出してみました。
30代で、主たる診療科を「美容外科」と届け出ている医師は、
2012年 131人
2018年 214人
2024年 806人
となっていました。
12年間で、約6.2倍です。
私はこの数字を見て、少し考え込んでしまいました。

ただし、ここで絶対に誤解していただきたくないことがあります。
私は、美容医療へ進む若い医師を批判したいのではありません。
医師がどの診療分野を選択するかは、一人ひとりの人生にかかわる問題です。
仕事のやりがい、収入、勤務時間、家族との生活、将来性。
さまざまな事情を考えて、自分の人生を選択するのは当然のことだと思います。
むしろ私が考えたいのは、なぜ、これほど大きな差が生まれたのかということです。

若い医師たちが変わったのでしょうか。
それとも、若い医師たちが置かれている医療制度や労働環境の方が変わったのでしょうか。

私は後者について、もう一度きちんと検証する必要があると思っています。
2004年、日本の卒後臨床研修制度は大きく変わりました。
そして、その後も専門医制度、医師の働き方、大学病院を取り巻く環境、医療費抑制政策など、若い医師たちの進路を左右する環境は大きく変化してきました。
それから20年以上が経ちました。
そろそろ私たちは、
「制度を作ったときに期待していたこと」だけではなく、「20年間で実際に何が起きたのか」
を検証してもよいのではないでしょうか。

今回の数字だけから、
「臨床研修制度が原因だ」
と結論づけることはできません。
もちろん、美容医療の市場拡大、SNSの普及、収入格差、勤務環境、専門医制度など、多くの要因があります。
だからこそ私は、国にお願いしたいのです。
2004年以降の医師養成制度の変化と、若手医師の診療科選択の変化との関係を、国として検証してください。
誰かを責めるためではありません。
若い医師たちに、「外科へ行け」、「小児科へ行け」、「血液内科へ行け」と言うためでもありません。若い人たちが選ばなくなったのであれば、
「なぜ選ばなくなったのか」を、私たち上の世代が考える責任がある
と思うからです。

そして、この問題の先には患者さんがいます。
外科医がいなければ、手術を受けられません。
小児科医がいなければ、地域で子どもを診てもらえません。
そして、がんを治療する医師がいなくなれば、どれほど優れた新薬が開発されても、それを患者さんへ届けることはできません。
医師の数だけを増やせば、医療が守られるわけではありません。

必要な医療を担う医師が、次の世代へ再生産されているか。
私は、これからの医療政策では、この視点がとても大切になると思っています。
今回お示しした図は、その答えではありません。
けれども、
「研修を終えた若い医師たちは、どこへ向かっているのか」
という問いを、社会全体で考え始めるための一つの材料にはなるのではないでしょうか。

若い医師を責めるのではなく、若い医師から選ばれる医療制度をつくる。
それが、10年後、20年後にも、必要な医療を患者さんへ届け続けるために、今の私たちが考えなければならないことだと思っています。

このグラフを見た感想など、ぜひ、多くの皆様の忌憚ないご意見をお聞かせいただけますとありがたく存じます。

署名サイトURL: https://c.org/BYfSxz9bvN

一戸辰夫(「若手がん治療医・血液内科医を支援する会」代表)[連絡先:tatsuo.ichinohe@icloud.com   いつでも皆様からの建設的ご批判・ご意見をお待ちしています]

――――――――――
図版の出典:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」2012年・2018年・2024年
※30~39歳の医療施設従事医師について、主たる診療科を基本領域に対応させて再集計したものです。
※形成外科には美容外科を含みます。
※診療科別人数の変化と臨床研修制度との因果関係を示すものではありません。
 

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