小田急線事件を契機に、フェミサイドの実態を解明し対策を講じてください!

小田急線事件を契機に、フェミサイドの実態を解明し対策を講じてください!
2021年8月6日夜、小田急線を走行中の電車内で、男が20代の女子大学生を刃物で刺した後、男女合計10人に怪我を負わせる事件が起こりました。
犯人は「幸せそうな女性を見ると殺したいと思っていた」などと供述していたことが報じられ、「勝ち組っぽい」と目をつけた被害女性を、複数回にわたって執拗に切りつけていたことが明らかになりました。
また犯人は電車内での犯行前に、万引きを通報した店の女性店員を逆恨みし、殺害しようとしていました。
男性も含め、20代から50代の合計10名が被害に遭った今回の事件。
しかし犯人がターゲットにしたのは、明らかに女性でした。
国連の「女性に対する暴力」特別報告者は、このような「性別を理由にした女性の殺害」を「フェミサイド」と定義しています。また、フェミサイドは「女性に対する暴力の最も極端な形態であり、女性に対する差別と不平等の最も暴力的な兆候である」としています。(※1)
小田急線刺傷事件に関して、被害者と同じ女子大生が呼びかける「フェミサイドのない日本を実現する会」は、下記のことを要望します。
- 小田急線刺傷事件をフェミサイド未遂事件と呼ぶこと:フェミサイドという用語を使用することで、事件の要因を容疑者個人の特性のみに帰するのではなく、事件の要因には女性に対する暴力と差別が関係していることを可視化する。
- 過去10年における以下①〜⑤の日本国内で起こった殺人事件(未遂含む)の女性被害者数とその合計について、最新情報を公開すること:①無差別殺傷事件、通り魔事件、②ストーカー殺人事件、③配偶者(内縁・元含む)、パートナー(元含む)による殺人事件、④強制性交等致死傷事件・強制わいせつ致死傷事件、⑤セックスワーカーに対する殺人事件、⑥トランス女性に対する殺人事件、⑦外国人女性に対する殺人事件
- 2の①〜⑦に当てはまる女性が被害者となった殺人事件(未遂含む)について、調査研究班を設置し、女性に対して重大犯罪を犯しやすい加害者の傾向を調査すること:年齢、殺人の動機、就労状況、教育状況、被害者との関係、女性全体への感情、犯罪歴の有無等
- 2、3で得た知見を生かし、毎年報告される『男女共同参画白書』と、毎年11月12日から25日に行なわれる「女性に対する暴力をなくす運動」において、性暴力やDVに加えてフェミサイドについて啓発すること
小田急線刺傷事件は、日本初のフェミサイドではありません。
これまでも、女性が性別を理由に殺された事件はいくつもあったはずです。ただそれらをまとめて呼ぶ「フェミサイド」のような言葉がなかったため、ニュートラルな「無差別殺傷事件」や「通り魔事件」、「殺人事件」と表現され、女性への差別に基づいた犯罪であることが認識されてきませんでした。
同様に、例えば日本で「DV(ドメスティック・バイオレンス)」という言葉が使われるようになったのは1990年代からですが、それ以前にDVが存在しなかったのではありません。DVという名前が認識され、DVの実態が調査されるようになって初めて、家庭内における女性への暴力が可視化されました。
したがって、「フェミサイド」という言葉を使用し、その実態を調査することは、女性に対するあらゆる暴力を根絶するために必要だと考えられます。
内閣府男女共同参画局の『女性活躍・男女共同参画の重点方針2021』(※2)によれば、「Ⅲ女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現」とあり、そのなかには「(1)女性に対するあらゆる暴力の根絶」また「(5)ジェンダー平等に関する社会全体の機運の醸成」とあります。
しかし、2021年現在の日本を見ていると、女性に対する暴力の危険は常に身近にあります。道路を歩いているだけで付きまとわれたり、駅構内を歩いているだけで故意にぶつかられたり、電車に乗っているだけで痴漢や盗撮に遭ったりします。
さらに女性が日常的に経験するそうした暴力に対して声をあげた時、被害者の方を責め、加害者を擁護したり同情したりする風潮があり、とても「ジェンダー平等に関する社会全体の機運」は感じません。
私たちは、ただ普通に道路を歩いて、電車に乗って、家に帰りたいです。女であるだけで暴力にさらされることなく、ただ無事に家に帰り着きたいです。
「たまたま狙われなかった」「たまたまその場にいなかったから生き残った」ではなく、当たり前に殺されない社会に生きたいです。
そんな日本社会を実現するため、ご賛同のほどよろしくお願いします。
出典:
(※1)Femicide Watch (2020), What do we mean by femicide?
http://femicide-watch.org/products/what-do-we-mean-femicide-editorial-team
(※2)男女共同参画局『女性活躍・男女共同参画の重点方針2021』p.12〜p.20
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/pdf/sokushin/jyuten2021_honbun.pdf
主宰:
フェミサイドのない日本を実現する会
賛同団体:
日本若者協議会ジェンダー政策委員会
痴漢抑止活動センター
Alliance YouToo
Voice Up Japan ICU支部
Speak Up Sophia
賛同人(順不同、敬称略):
上野千鶴子 認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長
石川優実 アクティビスト
大塚恵美子 前東村山市議会議員
池田政子 山梨県立大学名誉教授(心理学・ジェンダー研究)
北原みのり LOVE PIECE CLUB、アジュマブックス
野田静枝 フラワーデモ埼玉 呼びかけ人(責任者)
吉田 隆 豊島・女性施策を考える会
山下清子
鎮目博道 テレビプロデューサー
福島みずほ 参議院議員
大島史子 漫画家、韓国/朝鮮語翻訳者
伊是名夏子 コラムニスト
松永弥生 一般社団法人 痴漢抑止活動センター
女性と人権全国ネットワーク
伊藤冴子
古怒田悦子、安田晶子 Alliance YouToo共同代表
川口芳彦 高校教員