「こんな被害が出るのなら、もっと具体的に伝えておいてほしかった」をなくす予報。相次ぐ台風や豪雨災害に備え、避難行動を後押しするインパクト予報の充実を!

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【キャンペーンのサマリー】

初めまして。気象予報士の渡邉俊幸です。

日本の防災対策の問題の一つに、気象台が繰り返し台風や大雨の危険性を訴えても、逃げ遅れ気づかないまま災害に巻き込まれるということがあります。気象情報で危険が伝えられても人はなぜ動かないのでしょうか?

その理由の一つには、予報や気象台が使う言葉がわかりづらいからではないかと思います。例えば普通の人は「最大風速30メートルの暴風」や「1時間雨量で80ミリ」と聞かされても、ほとんどの場合ピンときません。

逆に、「暴風で建物が倒壊する可能性がある」、「道路冠水が起こって交通障害が発生する」という影響を伝えられた方がこの先どうなるかが分かりやすいです。こうした影響を伝える新しいタイプの予報インパクト予報と呼ばれます。

インパクト予報はすでにアメリカで運用されており、日本でも発表することが十分できるのですがその重要性は見過ごされています。

そこで、このプロジェクトにご署名をいただくことにより、私たちはインパクト予報を必要としているという声を気象庁長官に届けたいと思います。

インパクト予報が普及すれば、早めの避難行動が期待できます。

大雨や台風による災害被害の軽減のため、ご賛同や本プロジェクトのシェアについてどうぞご協力ください。

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この先の説明のポイントを約1分間の動画で簡単にまとめました。ぜひご覧ください。

https://youtu.be/AUXFKjs7hWo

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【本プロジェクトに関する詳しい説明】

■私たちが災害時にほしい情報

台風が接近したり、梅雨前線や秋雨前線で大雨となったりした時に気象ニュースで流れるのは進路や雨量の見込みといった情報です。しかし、本当に私たちが知りたいのは気象現象の見込み以上に、雨や風などによってどのような影響が出るかではないでしょうか?

アメリカの気象当局は、ハリケーンによってどんな影響が発生するかという予報を提供しています。特に有名な予報は2005年のハリケーン・カトリーナ接近前にニューオリンズの気象局が出したものです(*1)。

2005年8月28日(日)の現地時間午前10時11分に発表されたその予報では、進路や風速、影響時間などではなく、このハリケーンが私たちの生活に何をもたらしうるかを具体的に伝えました(予報文の原文と仮訳はこちら)。そのメッセージの中から一部を抜粋したものが次のものです。

  • この先何週間も居住が不可能となる
  • 切妻造の屋根は全て破壊される
  • 工業用の建物へダメージが発生する
  • 木造低層アパートは全て破壊される
  • 高層建築は少数が倒壊する。高層建築の全ての窓は破壊される
  • 風で飛ばされたものが当たることにより人やペット、家畜などの生命に被害が生じる可能性がある
  • 送電線が倒壊し、何週間も続く停電や水不足が起こる

この予報で使われた表現を通じて、記録的な暴風によって引き起こされる災害のイメージがくっきりと目に浮かびます。こうした形の影響予報はカトリーナ以前には発表されたことはなく、当時のアメリカの気象当局にとって画期的な取り組みでした(*2)。

この影響予報が発表された当時、地元行政当局は住民に対して避難の準備を速やかに行い、避難情報に留意するように呼びかけていました。カトリーナの影響を詳しく述べたこの予報はそうした呼びかけを行う上で非常に助けになったとされています(*1)。迫り来る災害が予測の中で伝えられたことが功を奏した形であると言えるでしょう。

■日本の場合は?

ここまでアメリカの例をご紹介しましたが、ここで日本の気象情報を思い出してみてください。台風だけではなく、西日本豪雨のような記録的な大雨があらかじめ見込まれる時には気象庁が緊急の記者会見を行います。その記者会見で語られる内容や気象庁のホームページで配られる資料、注意報や警報に添えられる説明文、あるいは台風などに関する数々の予測を見ると、日本ではまだまだ気象現象自体を伝えることに主眼が置かれ、影響については言及が少ないのが現状です。

例えば千葉県や東京都島嶼部を中心に住宅などへの被害や大規模な停電被害を残した2019年の台風15号の際には、気象庁による事前の記者発表で次のことが伝えられていました(*3)。

  • 9日までに予想される最大風速(最大瞬間風速)東海地方、伊豆諸島、関東地方 40メートル(60メートル)、東北地方 30メートル(45メートル)
  • 急激に雨と風が強まり、猛烈な風が吹き、海上は猛烈なしけとなり、首都圏を含め、記録的な暴風となるおそれ
  • 暴風、うねりを伴った高波、大雨による土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒を

台風による影響も伝えていますが、先に挙げたカトリーナの予報文と比べると影響が具体的にイメージしづらいと言えます。

■気象庁は影響の予報は出せないのか?

気象庁は影響予報を出すことが物理的に不可能なのでしょうか?私はそうは思いません。

気象庁が行なった2019年の台風15号の記者会見がインターネットで動画公開されているのでよろしければこちらをご覧になってみてください(*4)。気象庁による説明が一通り終わった後に記者からの質問時間がありました(7:49秒ごろより)。記者から出された問いの主なものは次の通りです。そこには台風の影響を確認するものが多数含まれていることが分かります。

  • 公共交通機関や道路への影響は?
  • 予測された最大風速や最大瞬間風速で何が起こるか
  • いつ頃が危険な時間帯か?
  • 都市部で猛烈な雨が降ると何が起こりうるか
  • いつ・どのように行動すべきか?
  • 過去の台風に匹敵するものはあるか など

これらの質問について気象庁は回答できています。影響の予報は可能です。今現在の問題は、影響を伝えること自体の優先度が決して高くないということです。これは非常に惜しいことだと思います。

■影響予報を充実させることのメリット

単に、「風速○メートルの風が吹く」「24時間で○ミリの雨が降る」などと伝えるのではなく、気象現象によってどのような影響が発生するかを伝えること。たったこれだけの光の当て方の違いですが、そこには日本の災害対応を変えていく大きな可能性が秘められています。

災害が発生した後に行政や大学などが行ったアンケート調査を見ると、「周辺の環境の変化」が避難のきっかけになったと多くの場合で指摘されます(*5)。自治体から避難勧告や避難指示、気象台から大雨の特別警報が発表されたとしても、河川が増水したり土砂崩れの前兆がみえたりするなど、影響が目に見えないとなかなか人は動きません。しかし、周辺環境に異常が発生してから逃げれば良いと考えていると、災害の展開が急な場合は逃げ遅れによる人的な被害が最悪の場合には発生してしまいます。

もし気象台からの予報で影響の予測が具体的に伝えられるようになれば、被災した自分や地域のイメージを実際に環境が悪化する前に持つことができます。

また、実況を手掛かりとして避難するのではなく、予報を手掛かりとして避難できればその分避難に当てることができるリードタイムを確保することが可能であり、また比較的安全なうちに避難することができる可能性が出てきます。

前述のアンケート調査(*5)によれば、「避難勧告等の発表」や「隣人等からの声かけ」も避難した理由の上位を占めていました。この先どうなるかという影響が予報を通じて明らかになっていれば避難勧告の発表もスムーズとなることでしょう。避難について隣人に声をかける側も危機感を持って伝えることができます。

【影響予報を充実させていくことで生まれるメリットのまとめ】

  • 災害に巻き込まれると自分の身に何が起こりうるかが分かるので、避難勧告などの発表や環境の悪化に先立って避難行動が進む可能性がある
  • 自治体が避難勧告などの発表を検討する際に判断がしやすくなる。結果として避難勧告などの未発表や発表遅れなどの低下が期待できる
  • 気象予報の中で危機感や切迫感を伝えることで隣人等からの声かけを後押しすることができる。結果、地域住民の避難を促すことができる など

このような可能性を秘めているからこそ、私は影響が必ずしも伝えられていない現状を変えていきたいのです。

■気象庁長官に望む具体的なアウトプット

私がこの署名キャンペーンで望むことは、気象庁長官に対して、台風や大雨を伝える時に光の当て方を変えてほしいということです。気象現象そのものを伝えるのではなく、その影響で人や社会はどうなるか。そちらにもフォーカスを当ててほしいのです。これを実現するために、気象庁や個々の予報官の意識を変えるだけではなく、具体的なアウトプットとして次の3つのことを望みます。

1. 影響を伝える予報文のテンプレート開発

アメリカの場合、冒頭で紹介したハリケーン・カトリーナ(2005年)の影響見込みを伝えた予報文を出すために、1990年代からテンプレートを開発して準備していました(*1)。準備無くして影響を伝える予報は出せません。日本でも、予報を受け取った人が影響や被害をイメージでき、避難行動をとる必要があるとすぐに認識できる予報文のテンプレート開発を気象庁に取り組んでもらいたいと思います。なお、影響を伝える予報の充実についてはWMO・世界気象機関もガイドラインを公開(*6)するなど、アメリカや諸外国の気象機関の先例を取り入れて具体的に検討していく下地は整っています。

2. 各地の気象台の予報担当者向けトレーニングと運用・一般への周知

実際に影響予報を作り自治体などに伝えるのは全国各地の気象台です。影響について伝える予報の定着とテンプレートがあってもいざという時に使われない事態がないように、影響予報発表のトレーニングを予報官に対して実施してください。そして、公表の準備が整った気象台から影響を伝える予報文を順次運用してもらいたいと思います。影響予報の開始について、国民への事前周知もあわせて行う必要があります。

3. 影響予報の評価・改善

影響に関する予報をスタートさせたら終わりではありません。表現方法や発表タイミングなどのさらなる高度化を行うために、評価・改善の仕組みを気象庁の中で整備してください。

皆様のご賛同が災害時の情報発表を変える第一歩となります。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

■終わりに

この度は最後までお読みいただきありがとうございました。ご挨拶が遅れましたが、私は気象情報の伝え方改善をライフワークとして活動している気象予報士の渡邉俊幸と申します。気象情報や防災情報についてご関心のある方、地域や職場で防災対策を担っている方などと積極的につながっていければと思っています。ご意見・ご感想などお気軽にご連絡ください(watanabe@wpcd.jp)。

<渡邉俊幸のプロフィール>

気象とコミュニケーションデザイン代表。2001年より愛知県内の自治体の防災担当として災害対策に従事。2005年より民間気象会社である株式会社ウェザーニュースのリスクコミュニケーターとして全国の自治体などに向けて数千回に渡り防災気象情報を提供。その後、民間シンクタンクの研究員として官公庁の委託業務実施や地域づくりに関わる。2013年より奨学金を得てオーストラリア・クイーンズランド大学修士課程にて気象情報の利用に関する研究を進める。2014年に水害対策で世界の先端を行くオランダに拠点を移し、気象情報の利用や水害対策について調査・研究を行うとともに、世界銀行の防災分野のシニアコンサルタントとしてエチオピア政府防災局等を対象とした気象災害プロジェクトにも参画。国際基督教大学卒業。1977年、愛知県生まれ。気象予報士。(詳細なプロフィールはこちら

<ブログ>

  • 気象関係者・自治体向け:渡邉俊幸の人を動かす防災情報伝達術(こちら
  • 一般の情報利用者向け:渡邉俊幸の防災情報利用術(こちら

■出典・参考文献

*1 United States Department of Commerce (June 2006). "Hurricane Katrina Service Assessment Report" (PDF).

*2 Douglas G. Brinkley. "The Great Deluge: Hurricane Katrina, New Orleans, and the Mississippi Gulf Coast".

*3 気象庁報道発表資料「台風第 15 号の今後の見通しについて」(PDF)

*4 ANNnewsCH “最大の警戒を”台風15号で気象庁会見 ノーカット(19/09/08)(youtube動画

*5 国土交通省作成資料(避難した理由・避難しなかった理由等)(PDF)

*6 WMO (2015). "WMO Guidelines on Multi-hazard Impact-based Forecast and Warning Services" (PDF).

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■「影響予報で伝えてほしいことアンケート」実施中

気象庁に「こんな影響を伝えてほしい」というリクエストはありませんか?影響予報で知りたい情報がありましたら賛同者からのコメント欄もしくはこちらのフォームを利用してぜひご連絡ください。

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※キャンペーンタイトルや呼びかけの文章は趣旨を変えない範囲内で順次修正することがあります。