日本学術会議は防衛研究(軍事研究)禁止声明を撤廃、ガイドライン・倫理規定・審査規定の策定を中止し、全大学に防衛研究の自由を保証するよう勧告してください

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日本学術会議

 会長 山極壽一様

 各部会ご担当者様

 その他関係各位

 

 貴会議の我が国学術振興に対するご活動に対し、心より敬意を表します。そのうえで、我々は貴会議に対しお訴えしたいことがございます。

我々は貴会議に対し、

①  2017年策定の「軍事研究禁止声明」の撤廃

②  軍事研究一律禁止のためのガイドライン・倫理規定の策定中止

③  全大学に対し、防衛研究の自由を求める声明の発表

④  以上①~③をめぐり、貴会議内で(特に当事者である工学部系教員の意見を十二分に尊重した)自由で活発な議論のやり直し。

以上4点を求めます。

 新声明は1950年ならびに1967年の声明(以下「旧声明」)を引き継ぎつつ、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」は研究の秘密性や国家による統制があるため問題が多く、各大学で審査するように求めるものでした。

  私共が、1950年ならびに1967年の旧声明の撤廃を求めた署名では、(※1)

 ①防衛研究に貢献したいという研究者の学問の自由の侵害になる。

 ②近年の安全保障環境の激変を考慮すべき。

 と旧声明の撤廃と見直しを訴えてまいりました。

 しかしながら新声明では考慮されず、大変残念に思っております。

 さらに、山極会長様が新声明を受け、全大学を対象とすると思われる、防衛研究禁止のための具体的なガイドラインや倫理規定策定や各大学での審査制度創設を検討されていることを報道で存じております。

 新声明の決定を受け、改めて新声明および、ガイドライン・倫理規定や各大学での審査制度創設の策定に対し反対する理由を4点あげさせていただき、撤廃・策定中止を求め、全大学に対し防衛研究の自由を保証する勧告を出すようお願い申し上げます

 一点目は旧声明に対する撤廃を求める署名と同様ですが、新声明が、日本国憲法に保障された学問の自由・思想良心の自由を侵害する可能性が高いということです。

 言うまでもなく、学問の自由・思想良心の自由とは、公権力による学者・研究者の研究や思想信条への束縛・侵害を禁止し、自由を保証するものです。また私たち国民もまた,研究者一人ひとりの研究活動の自由を尊重することは,学問の自由の精神に沿った理念であると信じています.

 軍事研究に反対のご意見が多数あることは承知しております。しかし一方で、若手を中心に賛成や中立的な信条を持ち、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度への応募を考える研究者も少なくないと伺っています。特に同制度に反対しておられるのは文系や理学部などであり、工学部などでは賛成が多いと聞き及んでおります。現に工学系96学会で構成される日本工学会は、同声明への対応を拒んでいます。(※2)

 また、いくつかの大学で安全保障技術研究推進制度全面応募禁止を打ち出した背景には、学長個人の思想信条によるものもあれば、左翼系団体やマスコミ、左翼系教員の反発を恐れての事情があるとも聞き及んでおります。

 (参考1)岐阜大学のアンケートでは賛成25%、反対40%、中立35%。(※3)

 (参考2)筑波大学新聞が学生600人にアンケートしたところ、賛成が34%、反対が27%、理科系に限ってみると賛成が42%、反対が22%です。(※4)

それが事実であるとするならば、安全保障技術研究推進制度の当事者である工学部系教員の意見よりも、部外者であるその他大勢の文系や理学部教員の意見を、数の力を笠に着て貴会議は採用したことになります。一見民主的な検討委員会による審議に見えて、実は全く違う不誠実で欺瞞に満ちたプロセスを経て、貴会議は同声明を決定したことになります。

昨今では、地方大学を中心に,大学予算の不足が深刻な問題になっており,どこの大学も外部資金を獲得することが至上命題になってきています.こうした背景の中,安全保障技術研究推進制度のような外部資金の応募を制限したり,応募する大学や研究者を非難したりすることは,研究者の自由な研究活動を妨害し,更には大学の存続基盤を危うくさせかねない行為といえます.

 学問の自由とは,私たち皆が,研究者一人ひとりが自由に研究活動することを尊重する理念だと信じております.政治的な信条を理由にして,研究者の自由な研究活動を一律禁止するような権限はありません。

 軍事研究や安全保障技術研究推進制度に賛成・中立・反対それぞれの立場・考えで、時には議論しつつも、研究者本人各自の自由に基づいて行動すればよいのです。

 貴会議は私的団体ではなく、日本学術会議法に定められた、内閣府所管の政府外郭団体です。法的拘束力はないとはいえ、例えば日本学術会議法第5条にあるように声明などを政府に勧告する権限もあります。各種の声明や意見が研究者一人一人に与える政治的影響力は大きなものがあります。

 これは明らかな「公権力の行使」であり、日本国憲法に保障された学問の自由・思想良心の自由が間接的に侵害されうる事案と言えます。

 どうか、平和のために科学者として何ができるか、古色蒼然とした考えにとらわれず、自由に議論を重ねてください。

  よって今一度、特に当事者である工学部系教員のご意見をよく聞いたうえで、同声明は見直し、撤廃し、各人の自由に任せるべきです。

 

二点目は、安全保障を通じた研究成果の国民社会への還元の阻害になるということです。

 

 各種報道でご承知の通り、中国の海洋進出や東シナ海・南シナ海の覇権を狙った挑発的行動、北朝鮮による核兵器・ミサイル兵器の開発、そしてアメリカの核の傘による抑止力低下など、わが国が独自に防衛力・抑止力を高めて平和を維持していかなければならない、非常に緊迫・流動化した、大変厳しい国際情勢があります。

 これは、旧声明が発せられた1950年及び1967年とはまるで違う情勢です。

 今までいろいろな科学者・哲学者・政治家などが知恵を絞ってきていますが、軍事力による抑止力でしか平和を維持できないという冷厳な現実があります。激変する国際情勢の中、社会や国民が、豊かで平和な社会の維持を願っているのです。

 

ここに,国民の視点から見た,自衛隊・防衛省の役割,期待することについて、世論調査した結果があります.(※5)

それによりますと、自衛隊に良い印象を持っている方は92.2%、防衛力を強化すべきと考えている方は29.9%、防衛力を縮小すべきという回答の方は4.6%となっております.この結果から,国民の大多数は自衛隊を必要と考え,国の安全保障を確保する役割に期待していることが分かります.

防衛費の予算の一部から研究予算を支出し,それを使って研究を行うこと,及びその研究成果を,防衛力強化をはじめ広く社会に還元することは,自衛隊が果たす安全保障に寄与することになり,それは国民が期待することにつながると考えます.安全保障技術推進制度への応募を禁止することは,大局的に見ればその流れに逆らうことになります。

 

大学の存続基盤が危ぶまれる最大の原因は,文科省からの予算が削減されていることに他なりませんが,近年の財政事情を鑑みますと,現状からの大幅な予算増は見込めないのも実情です.日本の研究者の研究費は,大半が国民の税金から支出されています.文科省の予算も防衛費予算も,元は国民の税金から賄っています。研究者は国民に対し,研究費(=税金)を有効に使う義務があります。限られた予算(=税金)を有効に使って研究を進めるには,文部科学省予算以外からも研究費を獲得して,研究成果を広く社会に還元することが求められます。この流れは今後も続くことになります.

しかし先の大戦の経験から,安全保障技術研究推進制度を使えば,研究成果が軍事に利用されると非難されるかもしれません.しかし研究成果はどのように社会に還元されるのでしょうか? 言うまでもなく,研究成果は学会発表や論文投稿を通じて,社会に還元されます.これは安全保障技術研究推進制度を使おうが使わなかろうが,そのことに変わりありません。

安全保障技術研究推進制度を使って研究した場合,その研究成果は学会発表や論文発表を通じて社会に還元されます。防衛装備庁には,学会発表や論文発表の要旨をまとめた研究報告書を年度末に提出するのです。研究成果は,他の研究と同じく学会発表や論文発表を通じて広く社会に還元され,防衛省や一部企業が独占することはないのです。

もし社会に還元された研究成果の一部が防衛目的に適用されて,そのことを非難するのであれば,安全保障技術研究推進制度の使用の有無に関わらず,その研究そのものを禁止しなくてはなりません。

なぜなら、その研究が続行して成果を世に送り出す限り,その成果は防衛目的に利用され得るからです.

しかしこれは正に学問の自由への弾圧であり、研究の社会還元への妨害以外の何者でもありません。

 

 三点目。貴会議が新声明で付け加えられた点ですが、「研究の公開性」「政府による統制」は「安全保障技術研究推進制度」大きな誤りであり反対する理由にはあたらないという点です。

 

 防衛装備庁の公式サイトで見ればわかるとおり、安全保障技術研究推進制度の研究成果は学会発表・論文発表することが義務付けられており、特定秘密にも指定されることはないと明記されています。(※6)

安全保障技術研究推進制度にあるプログラムオフィサー(PO)は,研究費の不適切な使用を防止するための制度であり,研究内容に干渉するためのものではありません.POは農林水産省や,経産省傘下の法人(新エネルギー・産業技術総合開発機構,NEDOなど)の研究助成金にも同様な制度(プロジェクトマネージャー制度, PM)は取り入れられています.(※7)

 貴会議の主張は全くの虚偽であるか、勘違いとしか言えないものです。

 

四点目。貴会議の同声明では、「研究の入口」(資金の出所)だけを問題になされていましたが、「出口」(研究の成果)を含めた規制をしなければ意味がありません。

 スピンオン(民生技術の軍事利用)が盛んに行われている現状は貴会議の皆様方ならよくご承知だと思います。古くは化学肥料から火薬が作られ、農薬から毒ガスが作られました。純粋に民間利用を考えて作られた技術も、成熟してみると軍事利用の可能性も出てきます。これは成熟しないとわかりません。

日本学術会議で、安全保障技術研究推進制度を非難し,研究について審査する制度を提言した最大の理由は,研究成果が防衛目的に転用されることを危惧したためと推察しています。しかし,軍事転用を防ぐ目的で,研究費の入口だけを制限したり禁止したりしても,研究成果はどこでどのように応用されるかは,全く予想がつきません.研究費の入口を規制することは,研究成果が防衛目的に利用されることと無関係であり,研究活動を萎縮させる有害なことと言えます。

または,安全保障技術研究推進制度があるから,その研究に予算が付いて研究が進んでしまう。その結果,防衛技術に寄与する成果が生み出されてしまう.そのことを批判されるのでしょうか? もしそうだとしたら,その当該研究に科研費や他省庁の外部資金が付いてしまえば,防衛技術に寄与する成果は生み出されることになります.

 

或いは,防衛技術に寄与する可能性のある研究は,一切の予算を付けるべきではないとお考えでしょうか? もしそうだとするならば,それもまた,その研究やその研究に携わる研究者に対する弾圧以外の何者でもありません.

 

もちろん、同声明の上に構想されている倫理規定の策定や各大学への審査制度創設は論外です。この倫理規定や審査制度の基準というものが,全く不明確です.航空宇宙,電子工学,原子力、化学,生物学といった研究分野から、軍事・防衛技術に関わりの深い技術分野の研究を禁止するのでしょうか? 外国為替及び外国貿易法(外為法)に抵触するような研究(軍事転用の恐れが大きいため,留学生の指導を含めた輸出規制が法的に掛かっている)を差し止めることをお考えでしょうか? これは,21世紀の滝川事件とも言える事案と危惧しております.

 また同声明では防衛装備庁だけを問題にしていましたが、警察庁や海上保安庁などの「準軍隊」との共同研究はすでになされているわけで、それは問題になされないのでしょうか?

その基準があいまいであり、あいまいな基準の上で安全保障技術研究推進制度にのみ、不公正な狙い撃ち・言いがかりをしているとしか思えません。

 

 以上の理由から、貴会議に対し、

①  2017年策定の「軍事研究禁止声明」の撤廃

②  軍事研究一律禁止のためのガイドライン・倫理規定の策定中止

③  全大学に対し、防衛研究の自由を求める声明の発表

④  以上①~③をめぐり、貴会議内で(特に当事者である工学部系教員の意見を十二分に尊重した)自由で活発な議論のやり直し。

以上4点を求めます。

 最後になりますが、どうか、時世の変化を汲んだうえで、研究者の自由を尊重し、真に平和を維持するためにどうあるべきか、熟慮を重ねられますよう、お願い申し上げます。

  平成30年4月11日 (署名改定)    平成29年2月13日 (署名開始)

 

 防衛研究推進を求める自由市民の会 

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※1 旧声明に対する撤廃を求める署名:弊会ブログ https://blogs.yahoo.co.jp/yes_defense_research/36703533.html

 

※2 学術会議声明1年 「軍事研究」歯止め、弱く
毎日新聞 2018年3月30日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180330/ddm/003/040/087000c
「…だが、自然科学系の主要学会で指針作りは進んでいない。日本機械学会など96学会が加盟する日本工学会は昨年、学術会議の声明に対応しない方針を理事会で確認した。…」
 

 ※3 岐阜新聞 大学の軍事研究「反対」40%「賛成」25% 岐阜大
2016年12月10日09:11 
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20161210/201612100911_28598.shtml

 ※4  NHK「科学者は軍事研究にどう向き合うか」(時論公論)2017年03月27日 (月)

筑波大学新聞が学生600人にアンケートしたところ、賛成が34%、反対が27%と賛成が上回り、理科系に限ってみると賛成が42%。 

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/266251.html

 

※5 内閣府  「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」

https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-bouei/index.html

 

自衛隊に対して良い印象を持っている人            92.2%

自衛隊が存在する目的として国の安全確保

(周辺海空域,島嶼部への攻撃への対処)を挙げた人 74.3%

現在の防衛力に関して

防衛力を強化した方が良いと考える人              29.9%

防衛力を縮小したほうが良いと考える人            4.6%

 

※6 防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度 平成30年度公募資料

http://www.mod.go.jp/atla/funding/koubo/h30/h30koubo_setsumeikai_shiryo.pdf

http://www.mod.go.jp/atla/funding/koubo/h30/h30koubo_honsatsu.pdf

 

※7 農林水産省・新エネルギー・産業技術総合開発機構 

平成28年度農林水産政策科学研究委託事業

http://www.maff.go.jp/primaff/kadai_hyoka/itaku/2016/attach/pdf/boshu-1.pdf

 

NEDO 「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」(次世代人工知能技術の社会実装に関するグローバル研究開発)に係る公募について

http://www.nedo.go.jp/content/100876563.pdf

 

NEDO 「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発」に係る追加公募について

http://www.nedo.go.jp/content/100876686.pdf

 

 

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