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教育勅語の教材化と銃剣道の導入に反対します

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私たちは、日本の教育の歴史を研究する大学教員等の有志です。

教育の歴史を学ぶ者として、「教育勅語」の思想を肯定すること、その利用の判断が教育委員会にゆだねられること、そして新学習指導要領(中学校保健体育)に「銃剣道」が導入されたことを深く憂慮します。そこで教育史研究が蓄積してきた学術の成果を基盤としながら、ここに声明を著しました。

この声明は、全国の都道府県教育委員会・政令指定都市教育委員会に郵便で送付します。その上で、日本・世界のみなさまと問題を共有し、ひろくご賛同を募りたいと考えて、このページを作成しました。

           声明

「教育勅語」の教材化と、銃剣道の保健体育科への導入に強く反対します。

2017年3月31日、政府は、教育勅語について「憲法や教育基本法等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではない」という文言を含む答弁書を閣議決定しました。同4月18日には、その教材化にあたっては「学校の設置者や所轄庁において(中略)国民主権等の憲法の基本理念や教育基本法の定める教育の目的等に反しないような適切な配慮がなされているか等の様々な事情を総合的に考慮して判断されるべきもの」との答弁書を閣議決定しました。また、文部科学省は、3月31日付で告示した新学習指導要領において中学校保健体育(武道)に銃剣道を加え、4月7日に朝礼時における教育勅語の朗読を容認する答弁をおこないました。
わたしたち教育史研究者有志は、戦前・戦中期に教育勅語や軍事教練が教育現場に破壊的な影響を及ぼしてきた事実に鑑み、教育勅語の教材化と、銃剣道の保健体育科への導入に強く反対するとともに、教育委員会が政府・文部科学省の方針に追従しないことを求めます。

(1)教育勅語の思想
 教育勅語は、明治憲法で主権者とされた天皇が「臣民」に道徳を教え諭した文書であることから、国民主権、基本的人権の尊重を基本理念とする日本国憲法とは、まったく相容れないものです。
教育勅語の第一段落の冒頭で、「皇祖皇宗(こうそこうそう)」すなわち天皇の祖先が古く国を創始し、深く厚い「徳」のあり方を打ち立てるとともに、臣民が代々忠孝に励んできたのが我が国の「国体」の本質であって、それが教育の基盤であるとされています。しかし、このような考え方は「終戦翌年頭ニ於ケル詔書」(人間宣言)において否定されています。
また、教育勅語利用の意図として、「父母ニ孝ニ」から始まる諸徳目の有効性がたびたび論じられます。しかし、それらの徳目は教育勅語を引き合いに出さなければ語れないものではありません。加えて、「以テ天壌無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運ヲ扶翼」(これによって天地とともに永遠に続く皇室の繁栄に献身)するという目的に集約されるものであるため、個々の徳目を個別に取り出すことはできません。
 さらに、この「国体」のもとでは、「臣民」は徳目の順守によって「爾(なんじ)祖先ノ遺風ヲ顕彰スル」ことになるという形で、「皇祖皇宗」と「祖先」のつながりのうえに、天皇との厳然たる主従関係に置かれています。日本国憲法、教育基本法に照らして、こうした戦前のありかたに支えられた教育勅語を受容する余地はありません。同時に、「皇祖皇宗」と「祖先」という血統主義に基づく「国体」の考え方は、その血統から外れる他者への排除の論理として歴史的に作用してきました。こうした論理は、他者との共生を目指す現代社会とは相容れません。
教育勅語の徳目、およびそれを支える論理的な構造は、戦前の「国体」思想に基づく国家体制と教育とを分かちがたく結びつけたうえに成り立つものであり、現代社会においてその思想は総体として否定されるべき性格を必然的に内包しています。そのため、教育基本法の制定を経て教育勅語の排除・失効が国会で決議されたといえます。
 教育勅語はその本来的な思想から、それを否定するための歴史資料として扱うことを除けば、学校現場で「憲法や教育基本法等に反しないような形」で教材として用いることは原理的に不可能であり、想定することすらできないものです。

(2)教育勅語の利用方法
 教育勅語は、戦前の道徳教育のための教科であった修身科だけでなく学校生活のあらゆる場面に登場し、徹底した身体化が図られました。それをもっとも象徴する行為が儀式での校長による教育勅語謄本の朗読です。ほかにも暗誦や筆写、児童に自宅で毎朝朗読させることなどが行われました。
「朝礼時の朗読」を否定しない4月7日の文部科学副大臣の答弁は、教科外活動に及ぶ時間の利用と教育方法に言及した点で、教育勅語のかつてのありかたを肯定するものです。しかしこのような利用方法は、1946年10月文部次官通牒「勅語及詔書等の取扱について」により読みあげが禁止され、重ねて1948年6月文部次官通牒「教育勅語等の取扱について」で教育勅語を記した謄本等の回収を徹底した史実が示すように、歴史的に否定されています。
 朗読を肯定すれば、今後そのための謄本の配布等、教材化も進められるおそれがあります。これは学校教育が積み重ねてきた歴史と経験とを否定するものです。

(3)銃剣道の導入
 新学習指導要領の中学校保健体育(武道)に銃剣道が加えられました。戦前においてさえも、武道を含む体操科の教育課程に銃剣道が取り入れられたことはありません。戦前期の中等学校で銃剣を用いたのは、体操等科目ではなく教練においてです。教練は教員資格をもたない軍人(配属将校)が担当しました。
 戦後は自衛隊の訓練科目として存在していますが、これは軍事訓練を目的としています。国体の選手はほぼ自衛隊関係者であり、競技連盟支部も自衛隊駐屯地に置かれているところが多くあります。これを文部科学省が管轄する学校教育へと導入することは、歴史にない暴挙といえます。
現実として、指導者不足を背景とした学校への隊員派遣が予測されます。現在の学校では教員資格がなくても指導にあたることが可能であり、これがかつての「配属将校制度」を復活させるきっかけになりかねません。

以上のように、昨今の動向は学校教育が積み重ねてきた歴史的経験を否定し、教育の未来に禍根を残すものであるため、教育勅語の教材化と銃剣道の保健体育科への導入に強く反対します。

2017年4月29日    教育史研究者有志

有志の名前は以下のウェブサイトに掲載しています。https://eduhistorians.wixsite.com/manifesto

※※教育史学会・日本教育史研究会・日本教育史学会会員で有志に加わってくださる方は、eduhistorians@gmail.comにお名前とメールアドレスのご連絡をお願いします。上記会員以外の教育史・体育史に関わる研究者の方々もご相談ください※※

 

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