ゲームとネットへの偏見に満ちている、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例(案)」を廃止させよう!

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2020年1月20日に「ネット・ゲーム依存症対策条例の素案 改訂版(以下、条例)」が、香川県議会から公開されました。

条例の内容に見直しが加えられたものの、初版から問題になっている点は全く改善されていません。むしろ、「協力要請」という名を借りて、規制の内容を強化しています。

本条例については、素案の段階で廃案にさせることが最も妥当な措置です。理由は後述しますが、このような欠陥だらけの法令は、この世界にあってはならないものだからです。

なお、条例が施行されると、同様の法規の制定をよしとする機運が、ネットとゲームに偏見を持っている首長や議員が多い地方自治体へ飛び火します。実際、北海道知事は、この条例の内容を支持していることを公表しました。その意味では、もう、香川県だけの問題ではなくなりつつあるのです。飛び火を防ぐためにも、素案の段階で廃案にさせないといけません。しかし、条例制定をほう助する印象操作をはばからない地元マスメディアが跋扈する香川県内の個人だけでは、おそらく、対処できかねるでしょう。

そのことから、条例を廃案にさせる一助として、これだけの方が反対しているという多くの方の意思表明を突き付けることが必要になります。

ゆえに、皆様からのお力添えが必要なのです。

素案の原本はこちらから参照できます

初版との対照表はこちらから参照できます

【結論:そもそも“条例”として提示すること自体が間違い】

調査対象とした標本の抽出手法の記載がないので、その数字は怪しいですが、四国新聞によると、条例を見て、子どもを持つ親御さんのうち90%の方が「行政などによって指針が提供されるとありがたい」と感じたそうです。これは、換言すると「公的機関から何かしらの“ヘルシーコンピューティングガイド”を提供したほうがよい」となります。

ヘルシーコンピューティングガイドとは「健康的にコンピューターを使うためのアドバイスとヒント」をまとめたリファレンスガイドです。

後述しますが、本条例は、条例の中核部分と憲法などの関連法規とが相反する内容になっています。このため、法規に則るなら、条例を取り下げないといけません。

端的に言えば「修復不能な欠陥品」です。

そんな「欠陥品」の代わりに、教育、医療福祉、ICT推進など、県の関連部署が共同で提案する「謹製ヘルシーコンピューティングガイド」として県民に提示し、それをもとに啓発や指導などの活動を行うようにします。もちろん、これは、ITリテラシーと情報セキュリティーに関するリファレンスガイドとセットでの提示です。そうすると、エビデンスに基づき、かつ、家庭内での自主的な運用ポリシーの策定の支援に特化した内容になっているので、各家庭は、安心して各家庭の教育方針や状況に応じた、お子様に対するコンピューターの運用ポリシー作りの基礎にできます。

こどもに健康的なコンピューティング体験を行政施策の面で促すなら、以上のことで十二分に条件を満たしています。なので、それ以外のことは何も必要ないです。

そのヘルシーコンピューティングガイドで提示される「コンピューターの使用時間」に関する記載は、以下の1つだけです。

「コンピューターを連続使用する場合、60分使うごとに、10分から15分の休息を必ず入れる」

これは、厚生労働省監修「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」にも明記されていますし、疾病「VDT症候群」抑止のための措置で、使用時間に関するエビデンスもすでに確立されています。勉学や創作活動では、コンピューターは長時間連続使用されてある意味当然です。これは、コンピューターの連続使用を行うあらゆる分野の業務において、30年以上運用実績のあるルールです。

なお、医療業務で行うものに関しては、確証されたエビデンスが学会などで公表されたときに、「家庭向けのヘルシーコンピューティングガイド」は別に、医療機関向けのリファレンスガイドとして作成、展開すればいいだけの話です。現時点では、予防、治療、社会復帰、再発防止といったすべての医療工程において、エビデンスが確立されていないからです。

ただし、未就学児以下の子どもに対しては、別枠でもよいので、専用のガイドの作成が必要でしょう。乳幼児期は、視聴覚機能をはじめとして、ヒトとしての感覚機能や運動機能をバランスよく成長させる土台の形成に好適な時期です。そこに、筋肉(運動器)、感覚器の動きが半固定されるコンピューターの長時間の接触は、成人や学童以上に悪影響をもたらす可能性があります。現実的にも、時間の長さの差はあれ、ぐずりを抑えるなど子守り用途で彼ら彼女らにコンピューターを与える機会が増えています。このような新しい状況には、それに応じた新しいガイドが必要です。

というように、未就学児以下の子どもに対しても、本来は身体的な悪影響の抑止を目的に掲げて対策を出せばいいところを、本条例は、そこを無視して「ネット依存症につながるから」と、オカルトじみた理由へのこじつけを強引に行っています。

そこからでもこの条例の異様さが推察できるのですが、その異様ぶりを、ここからは、詳しく「ダメな点」として、3つに分けて掘り下げて説明させていただきます。

【ここがダメ1.「ネット」「ゲーム」を理解していない(偏見に基づいた認識のみをしている)】

[ ポイント ]

  • ゲームの構成要素の多彩さと、ゲームに対するユーザーニーズの多彩さが完全に欠落しており、ゲームの存在自体を否定する蔑視と偏見に満ちている解釈
  • サービスの多彩さと、それに対するユーザーニーズの多彩さが完全に欠落している点では、Webサービス(条例でいうネット)においても同様の解釈

現在は、コンピューターの処理能力が飛躍的に向上したこともあり、その分、表現物として実現できることが多くなっています。それに合わせて、ゲームの面白さを構成する要素も多彩化しています。このおかげで、小説のように物語性を重視したもの、芸術性の高い表現を重視したもの、対人戦での駆け引きの妙を楽しむもの、接待性を重視したものなど、私たちは、個々人の持つ「面白さ」「楽しさ」に関する価値観によりマッチしたゲームを選ぶことができるようになっています。

条例では、まず、このゲームの構成要素の多彩さすら考慮に入っていません

これは、「ネット」にもそのまま当てはまります。今は、コンピューターの使われ方は、多くのユーザーニーズを満たすため、より多様性に満ちたものになっています。実際、勉学の支援、オーディオブックなどによる読書、オンライン講座などに代表される勉学の環境そのものの提供など、学業の内容や日常生活をより豊かにするために役立っています。

コンテンツの多彩な構成要素、多彩なユーザーのニーズ…その視点が、この条例におけるネットとゲームの定義からは完全に欠落しています。いくら表現をゲームに注視しようが、条例に「スマートフォン等…インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)することができるスマートフォン、パソコン等及びコンピューターゲーム」と明記されている以上、条例は、個人のコンピューティングシーンのほぼすべてを規制対象としているのです。

それ以前に、批評する事象を極端に抽象化、単純化させ、画一的な存在に見立てて過剰に敵視する視座は、リアル社会でいう人種差別(黒人はあらゆる面において白人に劣るとか)や民族差別(新疆ウイグル族は犯罪者予備軍の集団ゆえ一か所に閉じ込めて抹殺しようとか)を行う人のものと同じです。

その視座は、「偏見」という表現で、言語的に定義されています。条例の内容を精査すればするほど、そんな思想しか感じられない本条例におけるネットとゲームの定義は、法として掲げる以前の不適切極まりないものです。その思想が少しでも残るなら、条例は自主的に取り下げられるべき存在です。

【ここがダメ2.現場の大混乱をもたらしかねない、エビデンスなき事象と結果の強引な結合を行った条項の多さ】

[ ポイント ]

  • WHO定義やエビデンス準拠でない独自解釈の「ネット・ゲーム依存症」の定義
  • 推定の域を決して出ない統計情報を強引に結果の事象として結合する、論理性の一片もない条項の多さ
  • 一部の人の偏見と独断で決めた内容を、関係者全員に法律として押し付けている

香川県議会は、条例において「射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる」と条項に断定表現として記載していますが、それは何のエビデンスを参照にしているのでしょうか。この文面だけでも、オンラインゲームがすべて射幸性が高いとも、課金システムを含めたほかのオンラインゲームのシステム構成要素も依存症を誘発するとも解釈できます。

この文言のように、ただの推測の域を出ない情報を、何の論拠も示さないまま結果の事象として結合している条項が、この条例には多すぎます。ちなみに、統計で得られる情報は、すべて「推定」です。関係性があると言い切るなら、すべてのゲームと、課金システムを含めたすべてのゲームのシステム構成要素との組み合わせを検証し、その結果がエビデンスとして示された資料の明記が必要です。

それらができないなら、条例は自主的に取り下げるべきです。

もちろん、本条例で問題点になっている「ゲームのプレイ時間の制限内容」も、統計情報を強引に結果の事象として結合した一例です。少なくとも、コンピューターの使用時間の長さが「ネット・ゲーム依存症を起こすフラグになる」と結論付けたエビデンスは存在しません

加えて、「長時間ゲームに接触した回数が多いからゲーム障害を誘発する」ことは、まずありません。そのような事例に陥る可能性のある人は、エビデンスに基づく数字を出せば、6時間以上ぶっ続けでゲームを遊んだ全ゲームプレイヤーの10%未満です。その10%未満の人たちのために、残り90%以上の何も影響がないゲームプレイヤーにまで一律に規制をかけようとしているのが、この条例です。これは「自動車はオペレーションを間違えると殺人を犯す得物となるので、自動車の製造、販売、使用を禁止する」ことを法令にするのと同じレベルの話です。

さらに、条例に言う「ネット・ゲーム依存症」の定義は、WHOによる「ゲーム障害」の定義とは全く異なります。これは、香川県が独自に、「ネット・ゲーム依存症」なる疾病を世界で初めて定義したことと同じといえます。もちろん、これには、医学的なエビデンスは存在しません。

もっと言えば、精神科医は「統合失調症」「ADHD」なら対処できますが、ゲーム障害には全く対処ができません。というのは、精神医学の知見がある方いわく、ゲームは、「統合失調症」「ADHD」に陥った人がとる「固執対象」の選択肢の1つでしかないからです。ここで、先述した「独自の疾病の定義」が、ブーメランとして跳ね返ってきます。治療に関するエビデンスすら確立していない疾病を、精神科医が仕事として責任をもって治療できるわけがありません

要するに、条例は、一部の人間が偏見に基づいて独断で決めた基準を、努力義務の形で、大多数の関係者に押し付けているもの、と言い換えられます。そして、施行された暁には、高確率で関係者の混乱を招き、特に医療機関は大迷惑になるだけです。

特に医療業務に関わることなので、事象と結果に明確な関係性があると言い切るなら、論拠となるエビデンスを示してほしいのです。それができないなら、条例は自主的に取り下げるべきです。

【ここがダメ3.法令なのに、法令違反をしている(可能性が高い)】

[ ポイント ]

  • 子どもの権利条約12条(自己の意見を表明する権利)、13条(表現の自由の権利を侵害している可能性がある
  • 日本国憲法第94条(地方公共団体の機能)を侵害する可能性がある
  • 地方自治法第14条1項(条例制定権の限界)を侵害している可能性がある

努力義務と称した「強制」の示唆は、改定後は一般家庭のみならず、すべてのゲーム開発、提供関連の事業体、具体的に言えば、「ゲームデベロッパー」「ゲームパブリッシャー」「インターネットサービスプロバイダー」、これに加えて、Google StadiaやGeForce Nowなどのクラウドゲーミングサービスも含めるなら「クラウドコンピューティングサービス事業者」にまで拡張されています。

地方自治法(14条)には「条例の適用範囲は、その条例を定めた地方公共団体の管轄地域内にすること」と明記されています。しかし、条例11条は、国内外のゲーム関連事業者すべてを対象としなければ実現できない内容です。

一方、家庭内において、正しい知識の下で子どもが健康的にコンピューティング体験の恩恵を受けるためには、各家庭の事情に応じた自主的なルール作りと運用が欠かせません。それは、公的機関からの押し付けではなく、各家庭の教育方針に基づいて作成されるべきです。この「家庭で教育方針を自由に作ることのできる権利」は、人権で守られる自由の1つに属します。人権を侵害する法令を作ることは、日本国の最高法規である憲法(94条)で禁止されています。しかし、条例が施行されると、その後の運用の仕方次第、例えば、条例制定1年後、制限時間を守れていない調査データが出ているので、順守させるため罰則規定を追加するなどの行政介入行為を強化する等…を行うと、憲法に抵触する恐れがあります。

そして、どんな目的をもってゲームなどのデジタルメディア体験をするのか、それは子ども自身で自由に選ぶことができる権利のはずです。ゲームから学べることはたくさんあります。実際、ゲームを遊びまくった結果コンピューターの仕組みに興味を抱き、ITエンジニアになるための学習を自発的に進める子どもは、外国で増えています。

条例によって、子どもは、それが向学目的であっても、コンピューターを使う自由を著しく制限されるでしょう。理由は簡単です。条例は法令だからです。法令なので、地域限定ながら、事業者の活動を制約させる拘束力があるからです。事業者の「コンプライアンス対策」によって、香川県にいるだけで、享受できるオンラインサービスの質が劣化する結果を導きます。これが原因で、条例は、子どもの権利条約(12条、13条)に抵触する恐れがあります。

法治国家で、法令が法令を侵害するなどあってはならないことです。なので、1つでもこれらの課題を残存させるなら、条例は自主的に取り下げるべきです。

以上となります。読了のために貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。読了いただいたことは、あなた様がこの問題に真摯に向かい合おうとしている証です。

なお、この内容は個人が作成したものなので、バイアスがかかっている箇所や至らぬ点がある点は否めません。そこに関しては、TwitterFacebookにてご意見をお聞かせください。

更新:2020年2月7日

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